国立大学等における放射性同位元素等の管理に関する行政評価・監視の結果
平成13年12月21日
総務省 山梨行政評価事務所
〔調査の実施時期等〕
○ 調査対象機関 : |
山梨大学、山梨医科大学、国立甲府病院、国立療養所西甲府病院 |
○ 調査実施時期 : |
平成13年8月〜11月
|
〔調査実施の背景事情等〕
○ |
国立大学や国立病院では、教育や学術研究の多様化及び医療需要の増加などに伴い、多くの放射性同位元素等を保管・使用 |
○ |
医療機関においては、医療技術の発達や医療需要の増加に伴い、多くの感染性廃棄物が発生 |
○ |
これら放射性同位元素等については「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」、また感染性廃棄物については「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」などの関係法令で規制 |
○ |
全国的にみると、放射性同位元素等については、管理が必ずしも十分ではないこと等から安全上の問題が疑われる事例が散見され、また感染性廃棄物についても、本来特別な管理が必要であるのにもかかわらず、一般廃棄物に混入して処理されたり、あるいは不法投棄されている等の問題が発生 |
○ |
この調査は、このような状況を踏まえ放射性同位元素等及び感染性廃棄物による危害を防止する観点から、山梨県内の国立大学及び国立病院等における、これらの管理状況等を調査
|
〔調査結果の処理〕
平成13年12月21日付けで、各調査対象機関の長に対し、調査結果を文書により通知、改善を要請
1 放射性同位元素等の管理状況
○ |
国立大学及びその附属病院では、教育や学術研究の多様化及び医療需要の増加等に伴い、多くの放射性同位元素等を保管、使用 |
○ |
これら放射性同位元素等については、放射線障害防止法等の関係法令に基づき厳しく管理することが求められている
|
⇒使用者等に、文部科学大臣への許可申請、放射性同位元素等の使用施設等にかかる基準の遵守、放射線量等の定期的な測定、放射線障害予防規定の作成、放射線業務従事者等に対する教育訓練や健康診断の実施等の義務付け |
|
〔調査結果〕 |
○ |
今回、山梨大学及び山梨医科大学(医学部及び附属病院)における放射性同位元素等の管理状況等について調査した結果、施設基準の不遵守等、国民の身体生命の安全に関わるような重大な支障は認められなかったが、管理運営などの面で、次のような改善を要する事項が認められた。
(1) |
立入制限標識の設置
放射性同位元素等の使用に係る変更承認申請書において、管理区域への立入を制限する旨を表示した標識の設置箇所である10箇所のうち、1箇所について標識が設置されていないもの(山梨大学)。 |
(2) |
放射線量等の測定記録
使用者等は、放射線障害のおそれがある場所にかかる放射線量及び放射性同位元素による汚染の状況の測定の結果については、測定箇所、測定方法、測定をした者の氏名等の事項を記録しなければならないとされているところ、これらのうち一部について記載されていないもの(山梨大学)。 |
(3) |
健康診断
使用者等は、放射線業務従事者等に対して、管理区域に立ち入った後1年を超えない期間ごとに健康診断を実施し、その結果については、そのつど記録を行って、写しを受診者に交付しなければならないとされている。しかし、3ヶ月ごとに実施している健康診断の記録の写しの交付を、健康診断のつどではなく、毎年1回実施している定期健康診断の結果の備考欄に総括的に記載することで代替しているもの(山梨医科大学医学部及び附属病院)。 |
(4) |
関係帳簿の管理
使用者等は、法令に定められた事項を記載した帳簿を備え、これを1年ごとに閉鎖し、閉鎖後5年間保存しなければならないとされているが、次のような事例が認められた。
ア) |
放射性同位元素等の保管に従事する者の氏名を記載するとされているところ、一部について使用した者の所属している研究室名等が記載されているもの(山梨大学)。 |
イ) |
帳簿上では、研究に使用することがないとして廃棄物保管庫に保管廃棄すると記載されている放射性同位元素が、研究に使用可能な放射性同位元素を保管するための貯蔵室に保管されているもの(山梨大学)。 |
ウ) |
放射性同位元素等の使用に従事した者の氏名を記載すべき欄に、使用した者の氏名ではなく、放射線による処理を依頼した者の氏名等が記載されているもの(山梨医科大学附属病院)。 |
エ) |
放射性同位元素の保管帳簿において、当該放射性同位元素の購入以来廃棄時までの15年間にわたり、帳簿の閉鎖をしていなかったもの(山梨医科大学附属病院)。 |
|
(5) |
国に対する管理状況報告
使用者等は、毎年度放射性管理状況報告書を提出しなければならないとされているところ、次のような事例が認められた。
ア) |
放射性同位元素等の受入及び払出数量の報告が、使用、保管及び廃棄等の状況を記録する帳簿の数値と一致していないもの(山梨大学)。 |
イ) |
放射性同位元素の保有数量の報告が誤記となっているもの(山梨医科大学医学部)。 |
ウ) |
当該年度において、放射性同位元素の受入及び払出の実績があるにも関わらず、その放射性同位元素にかかる報告を行っていなかったもの(山梨医科大学附属病院)。 |
|
|
|
<改善意見> |
したがって、山梨大学及び山梨医科大学(医学部及び附属病院)は、放射性同位元素等の適切な管理を確保する観点から、次のような措置を講ずる必要がある。
1) |
標識については、管理区域への立入を制限する旨を明示する観点から、放射性同位元素等の使用に係る変更承認申請書のとおりに設置すること(山梨大学)。 |
2) |
放射線障害のおそれがある場所における汚染の状況等の測定結果については、測定箇所、測定方法及び測定をした者の氏名を的確に記録すること(山梨大学)。 |
3) |
放射線業務従事者等に対しては、健康診断のつど、その記録の写しを交付すること(山梨医科大学医学部及び附属病院)。 |
4) |
放射性同位元素等の使用、保管及び廃棄等にかかる帳簿については、それに従事した者の氏名を的確に記載するとともに、記載事項に則った放射性同位元素等の管理を確実に行うこと(山梨大学、山梨医科大学附属病院)。また、これらの帳簿については、1年ごとの閉鎖を徹底すること(山梨医科大学附属病院)。 |
5) |
放射線管理状況報告書については、放射性同位元素等の管理の実態に則った的確な記載を行うこと(山梨大学、山梨医科大学医学部及び附属病院)。 |
|
2 感染性廃棄物の管理状況
○ |
国立病院等においては、医療需要の増加や試験・検査の多様化等に伴って、使用済みの鋭利な注射針や患者の血液が付着したガーゼなどの感染性廃棄物が多数発生 |
○ |
感染性廃棄物は、排出後に人に感染症を生じさせるおそれがある病原微生物が含まれ、若しくは付着し、又はそのおそれがある廃棄物とされており、生活環境の保全及び公衆衛生の向上に資する観点から、廃棄物処理法において、特別管理産業廃棄物として厳格に取扱う対象
⇒ |
厚生省(現厚生労働省)は、感染性廃棄物の適正処理についての通知を発し、同通知において示した「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」に基づいて感染性廃棄物の処理を行うよう、都道府県知事あて指示
※ |
同マニュアルでは、感染性廃棄物の取扱いに関し、1) 管理体制、2) 分別、保管、梱包、処理等の手続、3) 感染性廃棄物である旨の表示、4) 処理の委託契約、5) 産業廃棄物管理票の交付等の諸事項について、排出事業者等の指針を規定 |
|
|
〔調査結果〕 |
○ |
今回、国立甲府病院、国立療養所西甲府病院及び山梨医科大学附属病院における、上記のマニュアル等に係る感染性廃棄物の管理状況を調査した結果、感染性廃棄物の紛失等の国民の身体生命の安全に関わるような重大な支障は認められなかったが、管理運営の面で次のような改善を要する事項が認められた。 |
(1) |
感染性廃棄物の処理に係る委託契約の適正化
ア |
契約方法の適正化
法第12条の2第3項は「事業者は、その特別管理産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第14条の4第8項に規定する特別管理産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する特別管理産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。」と規定しており、産業廃棄物排出事業者が収集・運搬と処分を別の事業者に委託する場合には、それぞれ、個別の委託契約を結ばなければならないとされている。
この規定を受けて、厚生省(現厚生労働省)では、内部規定である「会計事務のチェックポイント」において、収集・運搬業者及び処分業者と個別に委託契約を締結し、従って委託料も別々に支払うよう指導している。
しかし、国立甲府病院及び国立療養所西甲府病院における平成13年度の委託契約の内容をみると、上記の内部規定の趣旨を十分に承知していなかったこと等から、処分業者の処理料込みの委託料を収集・運搬業者に一括して支払うこととされており、実質的に、個別に委託契約を締結している状況とはなっていない。 |
イ |
契約書の記載事項の適正化
特別管理産業廃棄物の処理に係る委託契約書は、委託者と受託者間における収集運搬又は処分の基本的な枠組を取り決めるものであり、その記載事項は厳正でなくてはならない。
国立療養所西甲府病院における平成13年度の委託契約書の内容をみると、委託業務の範囲について誤認を生じさせるおそれがある記載等が散見される。 |
ウ |
委託単価の見直し
今回、3医療機関における感染性廃棄物の処理委託費について調査した結果、次のような状況がみられた。
(ア |
) 国立甲府病院では、委託個数及び委託費は年々増加しており、平成10年度の981個(委託費 1,646,500円)が同12年度には
1,674個(同2,517,100円)と約1.7倍に増加しているにもかかわらず、委託単価は同額となっているが、この間の集配頻度等の委託条件が変わっていないこと等を考慮すれば、スケールメリット等を勘案して委託単価の引き下げを検討する余地があるものと考えられる。 |
(イ |
) 国立甲府病院と国立療養所西甲府病院は、同一の委託業者に対してほぼ同内容の委託契約を行っているが、国立療養所西甲府病院の委託単価は国立甲府病院に比べ約1.7〜1.8倍とかなり割高になっている。
また、委託個数及び委託費は年々増加しており、平成10年度の176個(委託費769,500円)が同12年度には
429個(同1,930,500円)と約2.5倍に増加していることも勘案すると、委託単価の引き下げを検討する余地があるものと考えられる。
|
|
|
(2) |
産業廃棄物管理票の管理の適正化
事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者は、法第12条の3の規定に基づき、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、当該受託者に対し、交付年月日及び交付番号等を記載した産業廃棄物管理票を交付しなければならないとされている。
また、産業廃棄物の運搬又は処分を受託した者は、運搬又は処分を終了したときは、交付された産業廃棄物管理票に運搬又は処分を担当した者の氏名及び終了年月日等を記載し、交付した者に当該写しを送付しなければならないとされている。
今回調査対象とした3医療機関における産業廃棄物管理票の管理状況をみると、1) 交付年月日や収集・運搬業者の受領者の氏名等、法令に定める事項が記載されていないもの、2) 重複した交付番号が記載されているものや、本来、収集・運搬業者の控に記載されるべき運搬終了年月日が排出事業者の控に記載されているもの等、その的確な管理に支障を生じさせるおそれがある事例が認められた。
|
(3) |
多量排出事業者に係る処理計画書の作成
法第12条の2第8項は、前年度の特別管理産業廃棄物の発生量が50トン以上である事業場を設置している事業者を多量排出事業者として規定しており、当該事業者は、当該事業場に係る特別管理産業廃棄物の減量その他その処理に関する計画を作成し、これを県知事に提出しなければならないとされている。
当事務所の試算によると、山梨医科大学における平成12年度の感染性廃棄物の発生量は 100トンを超えていたものと推計され、上記の多量排出事業者に該当する可能性が高いが、同大学では、当該規定を十分に承知していなかったことから、当該処理計画書を作成していない状況にある。 |
|
<改善意見> |
したがって、各医療機関は、感染性廃棄物の管理の的確化を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1) |
国立甲府病院及び国立療養所西甲府病院は、法令の趣旨に則った感染性廃棄物の処理委託契約に改めること。 |
2) |
国立療養所西甲府病院は、変更契約を行うこと等により記載事項の誤謬を正すとともに、今後の委託契約に際しては、記載事項の適正化について十分留意すること。 |
3) |
国立甲府病院及び国立療養所西甲府病院は、次の方策を講じること。
i |
国立甲府病院は、感染性廃棄物の委託量の増加実績を踏まえ、また、今後の委託見通し等を勘案して、委託単価を引下げることについて検討すること。 |
ii |
国立療養所西甲府病院は、他の医療機関における委託状況及び感染性廃棄物の委託量の増加実績等を勘案して、委託単価を引下げることについて検討すること。 |
|
4) |
国立甲府病院、国立療養所西甲府病院及び山梨医科大学附属病院は、自らが交付する産業廃棄物管理票の記載事項の適正確保に努めるとともに、産業廃棄物の運搬・収集又は処分を受託した者に対して、同票に係る記載の適正化を図るよう指導を行うこと。 |
5) |
山梨医科大学は、自らが多量排出事業者に該当するか否かを確認した上で、該当する場合には、処理計画書を作成し、これを県知事に提出すること。 |
|
|