民営職業紹介事業及び労働者派遣事業の指導
監督に関する行政評価・監視結果(要旨)

第1  調査実施時期・対象機関
 調査実施時期   平成13年8月〜11月
 調査対象機関 福岡労働局、福岡中央公共職業安定所、小倉公共職業安定所、労働者派遣事業所(15)、民営職業紹介事業所(15)


第2  通知年月日及び通知先
 通知年月日  平成13年12月20日
 通知先 福岡労働局


第3    実施の経緯
   長引く景気低迷の影響から企業の倒産、人員整理が依然として高い水準で推移しており、これに伴い、求職者の増加が長期にわたって続くなど大きな社会問題となっている。
   このような状況において、国は、労働力の需給の適正かつ円滑な調整に果たす役割の重要性等にかんがみ、平成11年12月、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号)及び職業安定法(昭和22年法律第141号)の一部改正を行い、労働者派遣事業及び民営職業紹介事業に関する許可基準の見直しや対象業務の原則自由化など就業機会の拡大策を講じている。
   この行政評価・監視は、このような状況を踏まえ、労働者派遣事業及び民営職業紹介事業の適正な運営を確保し、労働者派遣事業等の一層の充実を図る観点から、両事業の運営状況及び関係機関の指導監督状況を調査した。

第4  担当部局
 九州管区行政評価局

第5  調査結果の概要
1    労働者派遣事業の運営状況
(1)  許可申請等の審査状況

   労働者派遣事業の許可申請(届出)事案の中に、法令に定めのない書類が添付されている事例が認められた。

 (説明)
   福岡中央及び小倉両公共職業安定所における最近の許可申請(届出)事案の中から、49件 (一般29件、特定20件)を抽出して、添付書類の状況を調査した結果、40件(一般21件、特定19件)について、次のとおり、法令に定めのない書類が添付されていた。
 1)   事業所平面図(一般18件、特定19件)
 2)   研修カリキュラム、派遣予定先企業一覧等(一般延べ11件、特定延べ7件)


<改善所見>
   福岡労働局は、労働者派遣事業の許可申請(届出)者の負担軽減を推進する観点から、公共職業安定所に対し、申請(届出)者からの許可申請等の相談、受付等の際、法令に定めのない書類等を提出させないことについて指導する必要がある。



(2)  労働者派遣事業の指導状況

   福岡中央及び小倉両公共職業安定所管内の15事業所を調査した結果、事業運営に適切さを欠くなどの事例が認められた。

(説明)
【労働者派遣契約等に適切さを欠く事例】
 1)    労働者派遣契約書を作成せずに、労働者を派遣しているもの(1事業所)
2)    労働者派遣契約書に中途解約の場合の派遣労働者の損害賠償に関する事項がないなど法定事項の記載が十分でないもの(13事業所)
3)    派遣先に派遣予定労働者を事前面接させるなど派遣労働者を特定する行為に協力しているもの(6事業所)
4)    倉庫管理業務について、法定の1年間を超える1年2か月間の派遣を行っているもの(1事業所)
5)    派遣労働者に対する就業条件を書面で交付していないもの(2事業所)又は就業条件を書面で交付しているが、中途解約の場合の派遣労働者の損害賠償に関する事項等欄がなく、あっても法定事項の一部を記載していないもの(12事業所)

【派遣労働者の雇用保険及び社会保険の取扱いが十分でない事例】
 1)    派遣元事業主が、派遣労働者の雇用保険及び社会保険への加入手続を行っていないもの(4事業所)
2)    派遣元事業主が、派遣先に派遣労働者に係る雇用保険等の加入の有無を文書で通知していないもの(1事業者)又は文書で通知しているが、雇用保険等の加入の有無を記載していないもの(5事業所)
3)    派遣元管理台帳を作成していないもの(5事業所)又は当該台帳を作成しているが、雇用保険等の加入の有無欄がないもの(6事業所)

【事務処理に適切さを欠く事例】
 1)    事業所の所在地の変更、役員の変更又は派遣元責任者の選任の届出を行っていないもの(4事業所)
2)    報告期限の経過後も事業報告書を提出していないもの(4事業所)
3)    個人情報適正管理規程を作成していないもの(4事業所)、派遣先に派遣労働者の学歴等不必要な情報を提供しているもの(6事業所)


<改善所見>
   福岡労働局は、労働者派遣事業の適正な運営及び派遣労働者の雇用の安定等を確保する観点から、派遣元事業主に対し、集団指導や定期指導の機会等を利用して、当該事業主が措置すべき次の事項について、指導の徹底を図るなどの措置を講ずる必要がある。
1)    労働者派遣契約書を適切に作成し、法令等に基づいた派遣労働者の雇用管理等を的確に行うこと
2)    雇用保険等の加入資格を有する派遣労働者を的確に把握し、未加入者の加入勧奨に努めるとともに、派遣先事業主に対し、派遣労働者に係る雇用保険等への加入状況等の情報提供を適切に行なうこと
3)    法令等に定められた業務運営上の諸手続を遵守すること


民営職業紹介事業の運営状況
(1)  許可申請の審査状況

   民営職業紹介事業の許可申請事案の中に、法令に定めのない書類が添付されている事例が認められた。

 (説明)
   福岡中央及び小倉両公共職業安定所において、平成12年以降の申請事案の中から、36件(新規15件、更新21件)を抽出して、添付書類の状況を調査した結果、14件(すべて新規)について、次のとおり、法令に定めのない書類が添付されていた。
 1)   事業所平面図(新規12件)
 2)   職業紹介許可申請趣意書、事業展開計画書等(新規延べ6件)


<改善所見>
   福岡労働局は、民営職業紹介事業の許可申請者の負担軽減を推進する観点から、公共職業安定所に対し、申請者からの許可申請の相談、受付等の際に、法令に定めのない書類を提出させないことについて指導する必要がある。



(2)  民営職業紹介事業の指導状況

   福岡中央及び小倉両公共職業安定所管内の15事業所を調査した結果、事業運営に適切さを欠くなどの事例が認められた。

(説明)
【求人者・求職者に対する情報提供が十分でない事例】
 1)    求職者への労働条件の明示を書面によらず、電話連絡等口頭で行っているもの(7事業所)
2)    事業所内に手数料表を掲示していないもの(4事業所)又は許可証と重ねて掲示しており、その内容が十分確認できないもの(1事業所)
3)    事業所内に業務の運営に関する規定を掲示していないもの(3事業所)又は折り畳んだ形で掲示しており、その内容が十分確認できないもの(2事業所)

【職業紹介責任者の選任が適切でない事例】
   職業紹介責任者が病休のため、10箇月不在であり、職業紹介責任者の資格を有しない事業主が職務を代行しているもの(1事業所)

【法定帳簿の整備が十分でない事例】
   求人求職管理簿を就職した求職者分のみ作成しているため、就職に至らなかった求職者の紹介の経過が不明であり、事後の職業紹介活動の際、十分に活用し難いもの(4事業所)

【賃金の間接払いが行われている事例】
   求職者の賃金を求人者から紹介手数料等と一括して受領して、事業所から求職者に賃金を送金しており、結果として賃金の間接払いを行っているもの(7事業所)


<改善所見>
   福岡労働局は、民営職業紹介事業の適正な運営を確保する観点から、民営職業紹介事業所に対し、集団指導・定期検査(指導)の機会等を利用して、指導の徹底を図る必要がある。