JR鉄道利用者の安全及び利便の確保に関する行政評価・監視結果(要旨)

第1
調査実施時期・対象機関

 実施時期
 平成13年8月〜11月

 対象機関
 九州旅客鉄道株式会社、同長崎支社、管内の52駅等
  (注)実地調査対象駅は、福岡県内及び長崎県内とも各26駅

第2
実施の背景
   高齢化が急速に進展しており、また、障害者が障害のない者と同等に生活し活動する社会を目指す「ノ−マライゼ−ション」の理念の社会浸透が進んでいることなどから、高齢者、身体障害者等が自立した日常生活や社会生活を営むことができる環境整備が急務。
   公共交通機関のバリアフリー化については、平成6年3月の「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者等のための施設整備のガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)等のほか、平成12年11月には、バリアフリー施策を総合的に推進する「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(以下「交通バリアフリー法」という。)が施行されるなど、その推進が要請されている。
   この行政評価・監視は、このような状況を踏まえ、九州における公共交通機関の中核である九州旅客鉄道株式会社(以下「JR九州」という。)について、駅施設のバリアフリー化の推進状況を中心に、利用者の安全及び利便の確保状況を調査したもの。

第3  通知年月日及び通知先
1 通知年月日   平成13年12月13日
2 通知先   九州旅客鉄道株式会社

第4  担当部局
 九州管区行政評価局、長崎行政評価事務所

第5  調査結果

1    駅施設のバリアフリ−化の推進
【制度の仕組等】
   駅施設のバリアフリー化については、次のとおり、施設整備の達成目標や整備基準等が示されている。
 ・    交通バリアフリー法に基づく「移動円滑化の促進に関する基本方針」(平成121115日付け国家公安委員会等告示第1号。以下「基本方針」という。)で、1日の平均的な利用者数が5,000人以上の駅に関し、平成22年までの施設整備の達成目標を設定。
 ・    ガイドラインによる技術的標準
 ・    交通バリアフリー法に基づき、新たに建設又は大規模改良を行う旅客施設等の構造及び基準を定めた「移動円滑化のために必要な旅客施設及び車両等の構造及び設備に関する基準」(平成1211月1日付け運輸省・建設省令第10号。以下「移動円滑化基準」という。)
 (注) 移動円滑化基準による施設整備の望ましい目安として、新ガイドライン(「公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドライン」(平成13年8月))が示されている。

【調査結果】
   主要駅23駅(福岡県内20駅、長崎県内3駅)、準主要駅等11駅(長崎県内)を調査
主要駅(1日の利用者数が5,000人以上の駅)
  1)    15駅においてエレベーター又はエスカレーターは未整備となっているが、中長期整備計画を策定するなど計画的な整備が進められている。しかし、エレベーター・エスカレーター以外の設備については、i)視覚障害者誘導用ブロック(視覚障害者を誘導するための「線状ブロック」及び警告、注意喚起するための「点状ブロック」を適切に組み合わせて床面に敷設したもの)が公共通路からホームまでの間、全く敷設されていない(6駅)、ii)身体障害者対応型便所が整備されていない(9駅)などが認められ、計画的な整備は不十分。
  2)    既存施設では、整備基準等に適合していないものが認められる。
i) エレベーター
   かご内の手すりが左右壁2本(整備基準は正面壁を含め3本)のもの(3駅)。
ii) 視覚障害者誘導用ブロック
   身体障害者対応型便所等までに途切れているなど連続して敷設されていないもの(10駅)。
   点字券売機に正確に敷設されていないもの(4駅)。
   エレベーターの出入口等でブロックが上屋の支柱等に近接しているもの(2駅)。
   ホーム縁端の警告用のブロックが途中で切れたり中断しているもの(6駅)や上屋の支柱等に接している又は近接しているもの(15駅)。
   折れ曲がるなどして敷設されているもの(3駅)。など
iii) 身体障害者対応型便所・一般旅客便所

(身体障害者対応型便所)
   入口の幅が最低基準の80センチ未満のもの(1駅)。
   内部に緊急通報装置が設置されていないもの(2駅)。
   案内表示が不十分なもの(6駅)。など

(一般旅客便所)
   大小便器や便所入口の階段に手すりが付設されていないもの(7駅)。など
iv) その他の設備
   改札口の幅が最低基準の80センチ未満のもの(3駅)。
   ホーム端の転落防止柵が一部設置されていないもの(6駅)。
   階段の手すりについて、一部付設されていないもの(2駅)や上部の2段目から付設されているなどのもの(3駅)、点字表示が不十分なもの(15駅)。
   券売機の点字表示が不十分なもの(2駅)。など

準主要駅等11駅(1日の利用者数が5,000人未満の駅)
1) i) エレベーター又はエスカレーターが整備されていない(11駅)、ii)身体障害者対応型便所が整備されていない(9駅)などが認められるが、主要駅を優先して整備することから、現状では整備計画は未策定。
2)  既存施設では、整備基準等に適合していないものが認められる。
i) 視覚障害者誘導用ブロック
   階段の上下端の敷設が不十分なもの(5駅)。
   ホーム縁端の警告用のブロックが上屋の支柱に接しているもの(2駅)、階段の上下端で階段に接している又は近接しているものなど(5駅)。など
ii) その他の設備
   券売機の点字表示が一部貼付等されていないもの(4駅)
   通路のスロープが急勾配となっているもの(3駅)。
   階段等に手すりが付設されていないもの(7駅)。など
【改善所見】
   JR九州は、主要駅について、1)移動円滑化基準で示されている視覚障害者誘導用ブロック、身体障害者対応型便所等の設備について、基本方針の目標年次である平成22年に向けて計画的な整備を行うこと。2)既存施設については、移動円滑化基準や新ガイドラインに照らして管内駅の施設の見直しを行い、移動円滑化基準等に適合していないものは、その機能等が発揮できるよう必要な改善を行うこと。また、準主要駅等についても、主要駅に準じて対応することが望ましい。


2  利用者の安全及び利便の確保
(1)  駅施設の維持管理
【制度の仕組等】
   駅施設は、「機械保全業務基準」(平成6年10月1日付け施達第4号)等の関係規程等に基づき法定又は技術的な保守点検が行われいるほか、各駅が日常の保守点検を実施。
【調査結果】主要駅23駅、準主要駅等11駅を調査
   各駅では、当務(宿直)職員や駅長等が朝夕等に駅構内の巡回点検を実施しているが、日常点検の実施内容、方法等は各駅に任されており、維持管理が不十分なものが認められる。

1)    ホ−ムに歩行に支障をきたすおそれがある亀裂、窪み等があるもの(5駅)やホ−ム縁端の警告用のブロック上に灰皿を設置しているもの(2駅)。

2)    身体障害者対応型便所で可動式手すりが壊れているなど利用しにくいもの(2駅)。また、一般旅客便所で案内表示が改札口付近にない、表示板が壊れているなど所在等が分かりにくいもの(3駅)。

3)    案内標識や表示が内部電球切れなどで見えにくいもの(4駅)。など
【改善所見】
   JR九州は、利用者の立場に立った点検の対象施設、事項、方法等を内容とする点検要領等を作成し、これに基づき各駅において駅施設の点検を行うとともに、改善を要するものは早急に改善措置を講ずること。



(2) 無人駅の管理
【制度の仕組等】
   無人駅(駅員無配置駅)は、「地区統括駅長設置及び業務運営規程」(昭和63年7月11日付け営達第12号)等により指定された駅(以下「管理駅」という。)が管理を担当。
【調査結果】無人駅18駅(福岡県内6駅、長崎県内12駅)を調査
   管理駅は、所管無人駅について定期的に巡回しているが、無人駅の管理の内容、方法等は管理駅に任されており、安全等の確保が不十分なものが認められる。
 1)    ホーム縁端に警告用のブロックが敷設等されていない、また、ホーム端に転落防止柵が設置されていないもの(8駅)。
 2)    ホーム等に続く急勾配の階段やスロ−プに手すりが付設されていないもの(3駅)。
 3)    券売機に緊急時の連絡駅、電話番号が表示されていないもの(1駅)。
【改善所見】
   JR九州は、管理駅における所管無人駅についての管理の内容、方法等を明確にし、無人駅を適切に管理すること。