1 施設の維持管理 |
(1) 放射線施設、放射線診療施設の維持管理 |
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【制度の仕組等】 |
○ |
放射性同位元素とは、放射線を出す元素(コバルト60、トリチウム等) |
○ |
「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(以下「放射線障害防止法」という。)の概要 (施設基準等)
・ |
放射性同位元素等使用室 (実験室、作業室、検査室、治療室等)等の壁や床の表面は、平滑で、腐食しにくい材料を使用 |
・ |
放射性同位元素による汚染が法令で定める一定のレベルを超えるおそれのある区域は、「管理区域」に設定、放射線業務従事者以外の一般人の立入りを制限 |
・ |
放射性同位元素の使用施設、廃棄施設等には、放射能標識、放射能表示を貼付 |
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○ |
使用者等は、放射性同位元素等の使用を開始する前に、放射線障害予防規定を作成、文部科学大臣に届出 |
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【調査結果】 |
・ |
使用室の壁、天井の一部に放射性同位元素が付着するおそれのあるひび割れ、穴等が散見(九州大学3部局、国立病院九州医療センター) |
・ |
使用室の洗浄設備に放射性同位元素が付着するおそれのある錆、汚れ等が散見(九州大学4部局、国立病院九州がんセンター) |
・ |
排水設備の一部に故障となるおそれのある腐蝕等(九州大学1部局、国立病院九州がんセンター) |
・ |
管理区域の境界、放射性同位元素の使用室、排気、排水設備(排気口、排水管を含む。)及び廃棄物容器に放射能標識等の未設置(九州大学4部局、国立小倉病院、国立病院九州がんセンター、国立病院九州医療センター) |
・ |
使用施設、貯蔵施設又は廃棄施設に所要の放射線業務従事者に対する注意事項の未掲示(九州大学1部局、国立小倉病院)
等 |
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【改善所見】 |
・ |
九州大学は、放射性同位元素等使用施設等の管理の適正化を図るため、維持管理が不十分な前記の施設・設備について改善措置を講じるとともに、各部局の「放射線障害予防規程」及び同内規に基づく自主点検、定期点検をより的確に実施する必要がある。 |
・ |
国立小倉病院、国立病院九州がんセンター及び国立病院九州医療センターは、放射線診療施設の管理の適正化を図るため、維持管理が不十分な前記の施設・設備について改善措置を講じるとともに、各病院の「放射線障害予防規定」及び同運用細則に基づく巡視、定期点検をより的確に実施する必要がある。 |
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(2) 放射線の量及び放射性同位元素による汚染の状況の測定 |
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【制度の仕組等】 |
○ |
「放射線障害防止法」の概要
放射線障害のおそれのある場所において、放射線の量及び放射性同位元素による汚染状況の測定を義務付け、具体的に測定場所 (使用施設,貯蔵施設,廃棄施設,管理区域の境界,人が居住する区域等)を明示
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○ |
「医療法」の概要
医療法適用施設も「放射線障害防止法」と同様の規定あり
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【調査結果】 |
・ |
放射線の量及び放射性同位元素による汚染の状況の測定を法令で定められた場所、方法で未実施(九州大学2部局、国立小倉病院、国立病院九州がんセンター) |
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【改善所見】 |
九州大学は、放射性同位元素等使用施設等における放射線の量及び放射性同位元素による汚染状況の測定の適正化を図る観点から、法令で定められた測定場所、測定方法での測定を的確に実施する必要がある。
国立小倉病院及び国立病院九州がんセンターは、放射線診療施設における放射線の量及び放射性同位元素による汚染状況の測定の適正化を図る観点から、法令で定められた測定場所での測定を的確に実施する必要がある。 |
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2 放射性同位元素等の使用・管理 |
(1) 放射性同位元素等の使用基準等 |
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【制度の仕組等】 |
○ |
放射線障害防止法の概要 (使用基準等)
・ |
管理区域内には、人がみだりに立ち入らないような措置を講じること |
・ |
使用中以外の放射性同位元素は容器に入れ、かつ、貯蔵室又は貯蔵箱で保管すること |
・ |
放射性廃棄物を保管廃棄するときは、保管廃棄設備に保管廃棄すること |
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○ |
「放射性同位元素に関する保管管理等の徹底について」(平成12年5月12日付け科学技術庁放射線安全課長通知)又は「密封線源の保管管理等について」(平成12年5月31日付け厚生省医薬安全局安全対策課事務連絡)により、使用予定のない放射性同位元素等は、速やかに廃棄業者に引き取りを依頼する等の措置を講ずることとされている。 |
○ |
密封小線源: |
針、シンワイヤ、ヘアピン等の形状に密封したイリジウム、セシウムなどの放射性物質。がんに冒された病巣部に直接埋め込んで照射する治療に使用。
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【調査結果】 |
・ |
診療用放射性同位元素の一部について、3月間最大使用予定数量を超えて使用(国立小倉病院、国立病院九州医療センター) |
・ |
管理区域 (放射線診療室等)への出入り口の扉が診療時間等中、常時開放されているなど、人が不用意に入室するおそれ(国立病院九州がんセンター、国立病院九州医療センター) |
・ |
実験に使用した非密封型放射性同位元素の入った資料を貯蔵室に保管することなく、実験室内の冷蔵庫で保管(九州大学1部局) |
・ |
使用予定もなく、長期間、密封小線源(密封放射性同位元素)を保管(九州大学1部局) |
・ |
実験等に使用し放射性同位元素により汚染された手袋、又は使用済みの診療用放射性同位元素のための注射器(シリンジ)等を速やかに保管廃棄室に廃棄することなく使用室又は貯蔵室に長期間収容(九州大学5部局、国立病院九州がんセンター) |
等 |
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【改善所見】 |
・ |
九州大学は、次の措置を講じる必要がある。
1) |
非密封放射性同位元素の取扱いの都度貯蔵室に返却するなど放射性同位元素の適正な保管について取扱者に対する指導を徹底すること |
2) |
長期間保管されている放射性同位元素で、今後とも使用予定のないものは、早急に廃棄業者に引き取り依頼する等の処分をすること 等 |
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・ |
国立小倉病院は、次の措置を講じる必要がある。
診療用放射性同位元素の使用に際しては、核種ごとの需要に応じた的確な使用予定数量を把握すること |
・ |
国立病院九州がんセンターは、次の措置を講じる必要がある。
1) |
使用室の扉の管理を徹底する等により、管理区域内に人がみだりに立ち入らないようにすること |
2) |
放射性同位元素の取扱いの都度、発生した放射性廃棄物を速やかに保管廃棄室に保管廃棄するなど、廃棄物の適正な管理について取扱者に対する指導を徹底すること 等 |
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・ |
国立病院九州医療センターは、次の措置を講ずる必要がある。
1) |
使用室の扉の管理を徹底する等により、管理区域内に人がみだりに立ち入らないようにすること |
2) |
診療用放射性同位元素の使用に際しては、核種ごとの需要に応じた的確な使用予定数量を把握すること 等 |
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(2) 放射性同位元素等の使用、保管、廃棄に係る記録の作成 |
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【制度の仕組等】 |
○ |
放射線障害防止法の概要 (記帳)
・ |
使用者は、帳簿を備え、放射性同位元素については、使用、保管又は廃棄に関し、その種類及び数量を記載すること (医療法にも同様の規定) |
・ |
エックス線装置については、診療放射線技師法により、照射録を作成し、指示した医師の署名を受けること等とされている。 |
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○ |
ベクレル (Bq): 放射能 (原子核が崩壊して放射線を出す能力)の単位。ベクレル単位で表される量は、核種の壊変の活性度。 |
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【調査結果】 |
・ |
診療用放射性同位元素の使用記録について、使用時の数量 (ベクレル)を記載すべきところを入庫時の数量(使用時の放射能は、時間の経過に伴う減衰により入庫時の放射能に比べ減少している。)を記載 (九州大学、国立病院九州医療センター) |
・ |
診療用放射性同位元素の使用後の廃棄について、個々のシリンジ等 (容器)ごとに廃棄の記録がされていないため、個々のシリンジ等が確実に廃棄されたかどうか書類上確認できないもの(国立病院九州医療センター) |
・ |
放射性同位元素の廃棄量をベクレルで記載すべきところを放射性同位元素を含有する廃液量 (ミリリットル)で記載 (九州大学) |
・ |
エックス線照射録の一部に照射を指示した医師又は照射した診療放射線技師の署名がないもの(国立小倉病院、国立病院九州がんセンター) |
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【改善所見】 |
九州大学、国立小倉病院、国立病院九州がんセンター及び国立病院九州医療センターは、放射性同位元素等の使用、保管又は廃棄の状況を的確に把握するため、使用、保管又は廃棄に関する帳簿等の記載の適正化を図る必要がある。 |
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3 放射線関係業務従事職員の安全管理 |
(1) 健康診断の実施 |
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【制度の仕組等】 |
○ |
放射線障害防止法では、使用者に、放射線業務従事者に対する管理区域立入後、1年を超えない期間(人事院規則では6か月を超えない期間)ごとの健康診断の実施を義務付け
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○ |
放射線障害防止法及び人事院規則では、使用者に、放射線業務従事者として登録する前に、同従事者に対する血液、皮膚、目等を検査項目とする健康診断の実施を義務付け |
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【調査結果】 |
・ |
放射線業務従事者の中には、管理区域立ち入り後、6か月を超えない期間ごとに実施する健康診断を受診しないまま業務に従事している者あり(九州大学4部局、国立小倉病院、国立病院九州がんセンター、国立病院九州医療センター) |
・ |
新規採用され放射線業務に従事する職員の中には、健康診断で必ず検査することとされている検査項目の一部 (血液)を実施していない者あり(国立小倉病院、国立病院九州がんセンター、国立病院九州医療センター)
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【改善所見】 |
九州大学、国立小倉病院、国立病院九州がんセンター及び国立病院九州医療センターは、放射線業務従事者等の健康管理のため、関係法令等の規定を踏まえて、所要の健康診断を適切に行う必要がある。 |
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(2) 教育訓練の実施 |
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【制度の仕組等】 |
○ |
「放射線障害防止法」の概要
使用者に、放射線業務従事者が初めて放射線業務に従事する前に、放射線の人体に与える影響、放射同位元素等の安全な取扱い、放射線障害の防止に関する法令等について合計6時間の教育訓練を実施することを義務付け
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【調査結果】 |
・ |
放射線業務に初めて従事する者に対する事前の教育訓練を未実施(国立小倉病院) |
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【改善所見】 |
国立小倉病院は、放射線障害の防止を図るため、放射線業務従事者に対する法令で定めた教育、訓練の内容を確保する必要がある。 |
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(3) 被ばく線量の測定 |
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【制度の仕組等】 |
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「放射線障害防止法」の概要
使用者に、放射線業務従事者が管理区域に立ち入っている間、放射線測定器を装着させ、毎月その測定結果を記録することを義務付け
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【調査結果】 |
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放射線業務従事者による放射線測定器の紛失のため、毎月の被ばく線量測定記録の一部がない者があり (九州大学) |
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【改善所見】 |
九州大学は、放射線測定器の回収管理の徹底を図る必要がある。 |
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