地方農政事務所が実施する業務に関する行政評価・監視の結果(要旨)



第1  実施時期・対象機関等
 実施時期 : 平成16年8月〜11月
 対象機関 : 九州農政局、地方農政事務所(福岡、佐賀、大分)、
登録検査機関(9)、生鮮食品等小売店舗(30) 等
 担当局所 : 九州管区行政評価局、佐賀行政評価事務所、大分行政評価事務所

第2  実施の経緯、目的
 平成15年7月1日、地域に密着して食品のリスク管理業務、主要食糧(米麦)に関する業務等を展開するため、食糧事務所を廃止して地方農政事務所を設置。
 近年、「食」の安全・安心に対する消費者の関心が高まってきているが、米の品質表示に関し、米袋に銘柄、精米年月日の不適正な表示を行なう例が多発し、また農産物検査員による米穀の産地・品種・銘柄の不適正な検査証明も発覚。
 この評価・監視は、食品の安全及び食糧の安定供給の確保を図る等の観点から、改編後の地方農政事務所における食品に係る消費・安全業務、主要食糧に係る業務等及び管理業務の実施状況を調査し、関係行政の改善に資するため実施。

第3  通知年月日及び通知先
 通知年月日  :  平成17年2月18日(金)
 通知先 :  九州農政局

第4  調査結果の概要
1 農産物検査法に基づく登録検査機関における業務の適正化
 
 農産物検査を実施することにより、農産物の公正かつ円滑な取引とその品質の改善とを助長し、あわせて農家経済の発展と農産物消費の合理化とに寄与。
 農産物(米穀)検査では、種類、生産年度、銘柄(産地品種)、品位等の検査を行い、これらの検査証明は、包装表面等に表示。
 農産物検査は、これまで、国が一元的に実施してきたが、平成12年の法改正により、その実施主体を国から農林水産大臣の登録を受けた民間の検査機関に変更。
 地方農政事務所は、登録検査機関に対し毎年度1回の監査を実施するとともに、登録検査機関の検査場所に対し、概ね、毎年度2回以上,巡回指導を実施。
 平成16年8月末現在の登録検査機関は、福岡農政事務所管内は33機関、佐賀農政事務所管内は20機関、大分農政事務所管内は24機関
    〔調査結果の要旨〕
 登録検査機関における業務の実施状況
 調査対象農政事務所管内の登録検査機関(9)を抽出し、平成15年度を中心として業務の実施状況をみると、次のような不適切な事例がみられた。
1)  検査請求者別検査台帳が未作成、検査結果を検査台帳に未記載、検査台帳に品種、検査数量、検査日等を誤記、検査台帳(平成13年度)の未保存など、帳簿の記載等が不適切(7登録検査機関)
2)  検査請求書(平成14年度)の未保存、検査請求日の未記載など、検査請求書の管理等が不適切(3登録検査機関)
3)  銘柄名を誤って検査証明欄に記載、産地の証明が出来ない品種について産地名を削除していない、検査年月日を誤記、検査員認印が不鮮明など、検査証明書の記載内容等が不適切(4登録検査機関)
4)  内部監査を実施していない、内部監査における指摘が不十分など、内部監査の実施が不適切(5登録検査機関) 等
 登録検査機関に対する監査
 調査対象農政事務所における登録検査機関に対する平成13年度から15年度の監査の実施状況をみると、次のように監査の実施が不十分な状況がみられた。
1)  監査の結果、改善指摘、指導を行なったものについて、改善報告を求めていないことから、2年連続して同一の指摘がなされているもの(2登録検査機関)、当局が調査したところ、監査の指摘が未改善のままとなっているもの(3登録検査機関)
2)  当局が9登録検査機関を調査した結果、改善を指摘すべき事項がみられたが、監査においてこれを指摘していない例。
3)  監査において不適切事項を把握し、改善指導を行なっている事項があるにもかかわらず、九州農政局にすべて「適」として報告。
 登録検査機関に対する巡回指導
 調査対象農政事務所における登録検査機関の検査場所に対する平成15年度の巡回指導の実施状況をみると、次のように巡回指導が適切に行われていない状況がみられた。
1)  調査対象86検査場所中、巡回指導を行なっていない検査場所が23、巡回指導が1回に止まっている検査場所が8。
2)  巡回指導に用いる巡回指導等実施野帳等は、巡回指導事項別に「適」、「不適」の状況を記録するものとなっていないため、適正な業務運営が行なわれているか判断できない。
3)  巡回指導において、登録検査機関の検査証明について年産、産地、銘柄の記載漏れ、等級証印、検査員認印の押印漏れなど農産物検査制度にかかわる重要な事項を指摘しているにもかかわらず、巡回指導の結果について、すべて「適」として報告。

  〔改善所見の要旨〕
  九州農政局は、地方農政事務所に対して、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。
 登録検査機関が農産物検査業務を適正に行なうよう指導を徹底すること、また、登録検査機関が内部監査を適切に行なうよう、内部監査の実施に必要な事項等を整理し、例えばマニュアル化を図るなどして、周知・徹底すること。
 監査については、1)指摘事項を文書により、登録検査機関に対して指導するとともに、改善状況を期限を定めて文書で報告させること、2)監査は、的確、厳格に、かつ、監査事項に漏れが生じないよう実施すること、3)監査の結果「不適」であるにもかかわらず「適」の評価で報告しないこと。
 登録検査機関の米穀の検査場所に対する巡回指導については、1)概ね毎年度2回以上実施すること、2)巡回指導事項毎のチェックが可能なチェック表等を作成し活用するなどして、「適」、「不適」を的確にチェックし、記録すること、3)巡回指導の結果「不適」であるにもかかわらず「適」の評価で報告しないこと。

2 JAS法に係る食品表示の適正化
 
 平成11年にJAS法が改正され、消費者向けに販売される全ての飲食料品のうち、生鮮食品については平成12年7月から名称、原産地等の表示が、加工食品については平成13年4月から原材料名等の表示を義務付け
〔調査結果の要旨〕
 店頭における食品表示の状況
 福岡県、佐賀県、大分県内の総合スーパー等の広域店舗30店舗の店頭で陳列、販売されている生鮮食品について、品質表示基準に基づく表示の実施状況を調査した結果は、次のとおり。
1)  陳列・販売している商品の一部に品質表示基準に基づく表示が欠落しているもの等が含まれている店舗が21店舗(70.0%)。
 この21店舗のうち、17店舗(81.0%)は、当局の店頭調査以前に所在地を管轄する農政事務所による平成16年度の生鮮食品の表示調査が実施されたことのある店舗。
2)  全調査商品9,190点中、116点(1.3%)が不適切。種類別では、水産物が1,599点中44点(2.8%)、農産物(米穀を除く)が4,413点中59点(1.3%)、米穀が714点中6点(0.8%)、畜産物が2,464点中7点(0.3%)が不適切。
 地方農政事務所における食品表示の適正化のための一般調査
 調査対象農政事務所が平成15年度に実施した一般調査等の実施状況は、次のとおり。
1)  一般調査の対象とする店舗について農政事務所が住所、電話番号等を把握しているものは、農林水産省が商業統計等により把握した店舗数(福岡農政事務所管内14,473店舗、佐賀農政事務所管内2,604店舗、大分農政事務所管内3,921店舗)に対し、福岡農政事務所は10,477店舗(72.4%)、佐賀農政事務所は1,968店舗(75.6%),大分農政事務所は3,216店舗(82.0%)。 
2)  農政事務所の生鮮食品の表示調査票等に、表示欠落商品の記載漏れ、誤記、表示欠落数の齟齬がある例。
3)  一般調査の結果、改善指導が必要な場合は、当該店舗に対し文書による指導を行い、改善報告が送付された時は速やかに、改善報告の内容確認のため再度、店舗調査を行なうとされているが、この再調査までに1か月半を要している例。

〔改善所見の要旨〕
  九州農政局は、地方農政事務所に対して、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。
 一般調査を実施してきた店舗であっても、品質表示基準に基づく表示が欠落している等の状況もみられることから、販売業者に対する品質表示基準について、より一層、周知、指導を徹底すること。
 一般調査の実施については、1)対象となる店舗の把握に努めること、2)調査票等の記録は的確に行なうこと、3)改善確認のための調査は迅速に行なうこと。

3 その他、地方農政事務所の業務運営の改善
  〔調査結果の要旨〕
 事業者に対する指導等が不適切なもの
1)  米穀の出荷又は販売の届出事業者を9事業者抽出し、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(以下「食糧法」という。)で定められた帳簿の備付け状況を調査したところ、6事業者において法令上記載すべき事項の一部が欠落した帳簿を備付けているなど、帳簿の不備
2)  前年度くん蒸を実施した事業者の中には、農薬使用計画書を提出していない施設がみられるが、これらのくん蒸業者について、同計画書の提出予定の確認が不十分
 行政サービス改善の取組みについて、一部の農政事務所で、「さわやか行政サービス推進委員会」を設置しておらず総点検を未実施、庁舎出入口のスロープの未設置などバリアフリー対策が不十分
 ガソリン購入契約で予定価格の決定が不適切、価格の高い小売店と契約、日常清掃業務委託契約で競争契約を行わず随意契約、庁舎警備業務委託で、1社のみから見積書を徴収

〔改善所見の要旨〕
  九州農政局は、地方農政事務所に対して、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。
 1)米穀の出荷又は販売の届出事業者に対し食糧法の遵守について十分な指導を行うこと、2)前年度くん蒸実施した事業者で農薬使用計画書の未提出の施設について同計画書の提出予定の確認を行なうこと。
 行政サービスの改善について、「さわやか行政サービス推進委員会」を設置していないところについては、同委員会を設置して総点検を実施すること、また、改善を要するものは改善計画を策定し順次改善を図ること。
 契約業務の実施にあたって、競争契約の励行、随意契約に付す場合は、あらかじめ予定価格を定め,2社以上から見積書を徴するなど適正に行うこと。