第1 |
実施時期・対象機関等
1 実施時期 |
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平成17年12月〜18年3月 |
2 対象機関 |
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福岡管区気象台(地方気象台を含む。)、長崎海洋気象台、九州地方整備局、県、市町村、関係団体 |
3 担当局所 |
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九州管区行政評価局、佐賀行政評価事務所 |
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第2 |
実施の経緯、目的
○ |
近年、我が国では記録的な自然災害が多発しており、九州では、平成17年に、福岡県西方沖地震、西日本を中心とした梅雨前線豪雨、台風第14号による洪水等により死傷者、家屋倒壊等の被害が発生 |
○ |
福岡管区気象台等では、気象観測・予報業務の高度化・効率化に努めているところであるが、なお一層の観測体制の充実や防災気象情報等の適時・的確な対応が求められている |
○ |
この行政評価・監視では、気象業務法(昭和27年法律第165号)に基づき福岡管区気象台等が行う各種気象の観測、発表の体制及び防災気象情報等の発表状況等について調査し、関係行政の改善に資するため実施 |
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第3 |
通知年月日及び通知先
1 通知年月日 |
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平成18年3月29日(水) |
2 通知先 |
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福岡管区気象台、長崎海洋気象台、九州地方整備局 |
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第4 |
調査結果の概要 |
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○ |
気象庁は防災活動に直結する防災気象情報を実現するため、これまで以上に細かな区域での注意報・警報の発表を目指して二次細分区域設定指針を定め、気象台に二次細分区域の細分化を可能な限り進めるよう平成13年に通知 |
○ |
九州内の二次細分区域数は、平成13年4月の33区域から15年4月には57区域までに増加したが、15年以降の増加はない |
[調査結果の要旨]
二次細分区域の新たな設定または分割を検討する余地のあるものが、次のとおりみられた。
1) |
福岡県「福岡地方」に水防地方本部が置かれる区域ごとに二次細分区域を設定 |
2) |
佐賀県「南部」の二次細分区域「鳥栖」地区を鳥栖土木事務所と神埼土木事務所の管轄区域ごとに分割設定 |
3) |
大分県「北部」、「南部」の両地区にそれぞれ二次細分区域を設定 |
[改善所見の要旨]
福岡管区気象台は、次の措置を講ずるよう検討する余地がある。 |
1) |
福岡県内における二次細分区域の設定及び二次細分区域の細分化を推進すること |
2) |
管内の地方気象台に対して二次細分区域の設定及び二次細分区域の細分化を推進するよう指導すること |
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○ |
記録的短時間大雨情報は、大雨警報発表中に数年に1度しか起こらないような短時間の激しい雨を観測もしくは解析した場合に、さらに強く警戒を呼びかけるため発表 |
○ |
発表基準は、アメダス観測値またはレーダー・アメダス解析雨量から数年に1回程度発現する1時間雨量のうち予め大きい方で決めておき随時見直し |
○ |
福岡県内の発表基準は平成13年4月100mm から110mm に、佐賀県内は平成13年4月90mm から110mm に見直され、現在に至る |
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[調査結果の要旨]
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発表基準の目安となる福岡県及び佐賀県内における平成13年から17年まで5年間のアメダス観測値・解析雨量の100mm 以上の発現状況は、福岡県内では、5年間で100mm 以上が5回(うち1回(平成16年)が110mm で記録的短時間大雨情報発表)となっているのに対して、佐賀県では、100mm 以上は平成13年に1回(110mm で記録的短時間大雨情報発表)発現した後は認められない。
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[改善所見の要旨]
福岡管区気象台は、管内の地方気象台に対して降雨実績等を踏まえて発表基準の見直しを検討するよう指導する余地がある。 |
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○ |
気象台と河川事務所(県)が共同して指定河川の水位を予測し、水位が警戒水位を超えて災害が発生するおそれがある場合に洪水注意報を、また、危険水位を超えて重大な災害が発生するおそれがある場合に洪水警報を発表 |
○ |
九州内では、国管理河川の20水系41河川、県管理河川の2水系2河川で実施 |
[調査結果の要旨]
福岡県、佐賀県及び宮崎県内の8河川51件の洪水予報について、次のような状況がみられた。 |
1) |
洪水予報の発表が基準より遅れているもの(2河川) |
2) |
洪水予報を補足する情報の充実が望まれるもの(3河川) |
3) |
洪水予報の事務処理に1時間以上を要しているもの(4件) |
[改善所見の要旨]
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福岡管区気象台及び九州地方整備局は、次の措置を講ずるよう検討する必要がある。 |
1) |
洪水予報が遅れた原因を分析し、予報精度の向上を図ること |
2) |
河川の水位が警戒水位を超過し、さらに上昇する場合等にはきめ細かく情報を発表すること |
3) |
迅速で正確な洪水予報の発表となるよう、時間を要した原因を分析するとともに訓練等を実施すること |
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4 雨量観測機器等の適正化
(1) アメダス観測所の維持管理の適正化 |
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○ |
アメダス観測所は、気象予報を行うための重要な観測施設で、降水量、気温、風、日照などを10分ごとに24時間自動で観測しており、全国で約1,300か所、九州内では163か所 |
○ |
アメダス観測所においては、周囲の地形、建物、樹木等の影響をできる限り避けるように気象測器を設置 |
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[調査結果の要旨]
アメダス観測所の維持管理状況について、次のような状況がみられた。
1) |
雨量計の環境改善の余地があるアメダス観測所(5か所) |
2) |
冬季に観測を休止しているが観測が可能等なアメダス観測所(4か所) |
3) |
都市部で雨量のみを観測しているアメダス観測所(2か所) |
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[改善所見の要旨]
福岡管区気象台及び長崎海洋気象台は、観測の精度の向上や観測情報の提供の充実を図る観点から、アメダス観測所の環境整備、通年観測、観測種目の充実を検討する必要がある。 |
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○ |
気象庁は、詳細な気象現象を把握するための補足資料として、国・地方公共団体等が有する観測資料を積極的に活用 |
○ |
入手方法はできる限りオンラインとなるよう調整 |
○ |
活用する観測所は、気象業務法第6条に基づく届出観測所 |
[調査結果の要旨]
1) |
説明を十分に行っていないため、雨量データの提供を受けていない(1県) |
2) |
雨量データの提供が可能な環境となっているが、気象台はその実態を把握していない(3機関) |
3) |
気象台が活用している部外雨量観測所(1,303か所)のうち、届出のない観測所がある(150か所) |
[改善所見の要旨]
福岡管区気象台及び長崎海洋気象台は、雨量予報や解析雨量の精度の向上を図る観点から、部外資料の活用の一層の推進を図るとともに、部外観測資料を活用するに当たっては観測所の届出の確認を行う必要がある。 |
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○ |
気象庁防災業務計画を受け、気象台は、非常災害対策措置要領で、震度5弱以上で災害対策本部の設置、課長など職名で非常参集要員を指名、実効性のある防災訓練の定期的な実施等を規定 |
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[調査結果の要旨]
1) |
参集交通手段や所要時間の調査を行わず、災害対策本部構成員を指名している |
2) |
福岡管区気象台及び佐賀地方気象台では、地震対応の非常参集訓練を実施していない |
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[改善所見の要旨]
福岡管区気象台は、災害時の迅速・的確な初動体制を確保する観点から、非常参集要員の指名に当たっては、交通手段による参集の方法、所要時間等を調査の上、非常対応業務に照らして迅速な参集が可能である者を指名するとともに、非常参集要員の参集訓練を実施することが必要、また、管内の地方気象台に対しても適切な非常参集要員の指名及び参集訓練の実施を指導する必要がある。 |
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○ |
気象庁防災業務計画では、気象台は、都道府県、災害対策本部等から気象現象の状況に関する解説等を求められた場合には積極的に協力すること、また、都道府県等の協力を得て、防災関係者向けの講習会等を実施し、防災知識の普及・啓発等を図るほか、気象庁の果たす役割の説明等を行うこと等となっており、台風説明会や防災関係機関等を対象にして防災気象連絡会を開催 |
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[調査結果の要旨]
1) |
平成17年台風第14号発生時県災害対策本部が設置された県を管轄する4気象台のうち、同本部へ職員を駐在させたのは福岡管区気象台のみ |
2) |
平成17年度、福岡県、佐賀県、長崎県の139市町村(平成18年3月1日現在)のうち、防災気象連絡会に参加した市町村は福岡市、北九州市、佐賀市の3市のみ |
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[改善所見の要旨]
福岡管区気象台及び長崎海洋気象台は、次の措置を講ずるよう検討する必要がある。 |
1) |
管内の地方気象台に対し、県災害対策本部に駐在することを積極的に県へ働きかけるよう指導すること |
2) |
市町村防災担当者を対象とした講習会等を開催し、また、管内の地方気象台に対し、市町村防災担当者を対象とした講習会等を開催するよう指導すること |
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