行政相談


被扶養者死亡に伴う政府管掌健康保険の異動届時に家族埋葬料の請求を教示してほしい。
(行政相談)

(熊本行政苦情救済推進会議の意見を踏まえ熊本社会保険事務局にあっせん)


【相談要旨】
   私は、ある零細事業所の役員をしている。
   平成10年7月、従業員の扶養家族(母)が死亡した際、従業員から「健康保険被扶養者(異動)届」の提出を受け、私が熊本東社会保険事務所に提出したが、家族埋葬料の請求は行わなかった。
   平成14年3月、家族埋葬料の支給のことを知った従業員から家族埋葬料を請求したいと相談を受け、社会保険事務所に問い合わせたが、すでに請求権が時効消滅しており給付できないとのことであった。
   また、社会保険事務所では、家族埋葬料は被保険者から事業所を経由して請求があった場合に支給するもので、事業所には、社会保険に関する説明会の配布資料に制度を記載して周知しているとも言われた。
   しかし、零細事業所では制度を熟知している者がいないことが多く、請求漏れに気づかない場合が少なからずあるのではないだろうか。
このような事態を防ぐため、「健康保険被扶養者(異動)届」の提出時に窓口職員が提出書類の記載欄を確認しているのだから、「異動となった事由」欄が「死亡」となっている場合には、家族埋葬料が請求できることを教示するようにしてもらえないだろうか。


【説明】
   熊本県下における政府管掌健康保険家族埋葬料請求制度の周知状況等
(1)    政府管掌健康保険における家族埋葬料請求の仕組み
・     政府管掌健康保険の適用事業所は、原則として常時5人以上の従業員を使用する事業所及び法人事業所。
・     政府管掌健康保険は、被用者保険であることもあって、被保険者やその被扶養者の異動に伴う届出は事業主が実施。
・     家族埋葬料等の支給は、被保険者等の請求によって支給され、その請求権は、請求の事由が生じたときから2年を経過すると消滅。
・     政府管掌健康保険の給付制度の被保険者への周知は、その被保険者数が多いこともあって、事業主を通じて実施。
・     家族埋葬料の請求にあたっては、事業主の証明が必要とされ、事実上、被保険者による請求は、事業主を通じて行われる場合がほとんど。
(2)    社会保険庁熊本社会保険事務局における対応
・     政府管掌健康保険を含む社会保険全般の都道府県段階での事務は、平成12年4月に都道府県から国(地方社会保険事務局)に移行(熊本県内は熊本社会保険事務局)。
・     移行後における家族埋葬料の請求件数は、平成12年度1,841件、13年度1,751件。
・     熊本社会保険事務局は、家族埋葬料の給付制度について、各事務所が主催する事業所の社会保険事務担当者を対象とした「社会保険事務説明会」において、「社会保険の事務手続」を配布し、この中で制度を紹介しているのみ。
・     健康保険被扶養者(異動)届の提出を受けた社会保険事務所では、被保険者証以外には添付書類を求めておらず、届の受付及び被扶養者の整理を行っているのみ。
   なお、被扶養者の増加に関する異動事由については、認定を行う必要があることもあって、被保険者証以外にも異動事由を示す書類の添付を求め審査を実施。
(3)    九州内各地方社会保険事務局の状況
   九州内各地方社会保険事務局の家族埋葬料請求について周知状況をみると、窓口において周知を図っているものが4事務局(佐賀、大分、宮崎、鹿児島)、中には、届出時に異動事由が死亡の場合には届出書副本(提出2部のうち写し)に家族埋葬料の請求が出来る旨のスタンプを押印し、届出人へ返戻している例や、原則として届出時には家族埋葬料の請求書を併せ提出させている例。

   熊本行政苦情救済推進会議での意見(要旨)
   政府管掌健康保険の披保険者等における正当なる給付請求権の保全を図る観点から、次のことを、社会保険事務局等に働きかけることが必要。
   給付漏れを防止するため、例えば、社会保険事務説明会や広報誌等を活用して、被扶養者等の死亡に伴う異動届時には家族埋葬料等の請求書を併せて提出するよう指導することや、被扶養者等の死亡に係る異動届時において届様式の副本に「家族埋葬料等の請求が出来る(業務上及び第三者行為による死亡を除く。)。」旨のスタンプを押印の上返戻するなどの措置を講ずること。

   当事務所のあっせん要旨
   行政苦情救済会議の意見を踏まえ、熊本社会保険事務局に対し、社会保険事務所の窓口において、被扶養者の死亡時には家族埋葬料が請求できることの周知を徹底するようあっせんした。

   改善状況
   家族埋葬料の請求について、管内社会保険事務所の受付窓口において教示するとともに、被保険者異動届副本に「死亡の場合は家族埋葬料の請求ができます(業務上及び第三者行為による死亡を除く。)。」と表示するなど請求漏れを防止する措置が講じられた。