「紛争調整委員会のあっせん」とは、当事者間に学識経験者(弁護士、大学教授等の労働問題の専門家)である第三者が入り、双方の主張の要点を確かめ、場合によっては、両者が採るべき具体的なあっせん案を提示するなど紛争当事者間の調整を行い、話し合いを促進することにより、紛争の円満な解決を図る制度です。

イメージ 紛争調整委員会によるあっせん手続きの流れ




紛争調整委員会によるあっせん

 《ケース1》退職金にかかる事案(事業主・労働者双方からの申請)


     事業主は、労働者AとBの退職に際し、退職金制度がないことを踏まえ、退職金の支給を口頭で約束し、支払交渉を行ったが、度重なる交渉で感情的な対立も激しくなり、金額の隔たりも大きく、当事者同士の話し合いが不可能な状況になり、事業主及び労働者があっせん申請を行った。

 あっせんの結果、Aは○○万円、Bは△△万円支払うことで合意が成立した。

 【事業主からのコメント】
 労働者の業務成績に対してどのくらいの退職金を払ってよいか見当がつかない上に、労働者との度重なる交渉で、仕事も手につかないほど、精神的に疲労していた。公正中立な立場で、迅速な話し合いをつけてくれ、仕事に集中できるようになって感謝している。

 【労働者からのコメント】
 話し合いがつかず、退職金がちゃんと支払われるか心配だったが、納得できる金額で話し合いがつき、感謝している。





 《ケース2》セクシュアルハラスメントにかかる事案(労働者からの申請)

     申請人は、事業主からの電話やメール、食事やデートの誘い等、また言葉によるセクハラにより拒食症になった。個人的なつきあいを断った時点から勤務体制や言葉での嫌がらせが続き、身体的、精神的にも追い込まれ辞めざるを得なくなり、退職した。そのため、精神的な損害賠償として◎月分の給与に相当する補償金の支払いを求めたが応じないため、あっせん申請した。

 あっせん委員が調整した結果、要求どおり支払うことで合意が成立した。

 【労働者からのコメント】
 この制度を利用しなければ、泣き寝入りで終わっていたかもしれない。利用してよかった。





 《ケース3》労働者派遣にかかる事案(労働者からの申請)

     申請人は、派遣会社と1年間の有期契約を締結していたが、派遣先の都合により10ヶ月で派遣契約が打ち切りとなり、その後派遣会社は、別の派遣先を紹介することなく放置し、1年の契約期間到来とともに雇用期間満了による退職扱いとされた。派遣契約の終了後、放置された期間について、派遣会社に補償として◎ヶ月分賃金の支払いを求めてあっせん申請を行った。

 あっせん委員により、派遣契約の打ち切りがあったとしても、雇用期間を一方的に短縮できないこと等を踏まえ、両者の歩み寄りを促しところ、派遣会社は申請人に▽万円の解決金を支払うことで合意が成立した。

 【労働者からのコメント】
 個々の労働者は企業と個別労働関係紛争について交渉しようとしても企業から拒否されるとどうしようもない状況である。そのような中で、今回第三者機関である紛争調整委員会のあっせん委員に企業との話し合いに立ち会っていただき、解決金の支払いが合意できたことに大変感謝している。