自動車運送事業における事故防止対策に関する行政評価・監視結果(要旨)


第1   調査実施時期・対象機関等
     1 実施時期: 平成14年12月〜15年3月
  2 対象機関: 九州運輸局、福岡運輸支局、長崎運輸支局
18事業者(バス事業者6、タクシー・ハイヤー事業者4、トラック事業者8)
  3 担当部局: 九州管区行政評価局、長崎行政評価事務所

第2   実施の経緯、目的
      バス事業、タクシー、ハイヤー事業、トラック事業の事業者数、車両数及び交通事故件数は、いずれも増加
   事業用自動車には大型車が多く、その乗車人員も多いこと等から、いったん事故が発生した場合の被害や社会的な影響も大
   この行政評価・監視は、自動車運送事業における安全を確保し、事故防止の徹底を図る観点から、自動車運送事業者に対する指導・監督の実施状況等を調査し、関係行政の改善に資するために実施。

第3   通知年月日及び通知先
     1 通知年月日 平成16年5月26日(水)
  2 通知先 九州運輸局

第4   調査結果の概要
  1 同一事業者における同一原因・同一内容の事故の再発防止対策の徹底等
   
〔制度・仕組み〕
 事業者は、重大事故を引き起こした場合、事故の発生日時、事故の種類、事故の原因等を記載した事故報告書を30日以内に陸運支局に提出義務あり
(注 ) 重大事故:死者、重軽傷者を生じた事故等。このうち、事故の責任が事業者側にあると判断される事故を有責重大事故とした

〔調査結果の要旨〕
 福岡県及び長崎県において自動車運送事業を経営する18事業者を調査
 平成11年4月から14年9月末までの間に、有責重大事故について事故報告書を提出しているものは12事業者で、その事故は46件(死者9人、重傷者49人)。
 うち、同一原因・同一内容の事故を7回(※)繰り返しているバス事業者が1事業者
 乗客が着座するのを確認せずに発進する等車内客の動静に対する安全確認の不良又は不履行により、乗客が転倒負傷(この事故による重傷者は7人)
 これに対し事業者は、形式的な社内指導の繰り返しにとどまっている。
 18事業者のうち10事業者は、平成13年5月1日から14年9月末までの間に有責重大事故に係る事故報告書を18件提出。このうち、提出期限を遵守していないものが3事業者、4件(22.2%)。

  【改善所見】
 事故情報分析システムにより、同一事業者が繰り返し引き起こしている事故のうち、原因の種類が同一の事故の検索を行い、この検索を行った事故に係る事故報告書に基づき、同一内容の事故を特定すること。
 また、同一原因・同一内容の事故を再発している業者に対し、再発を防止する上で有効と認められる方策を提示するとともに、その方策の実施について指導し、励行状況の確認を行うこと。
 事故報告書の提出が遅延している事業者に対し、期限内の提出の励行を指導すること。

  2 運行管理及び車両整備管理の徹底
 
〔制度・仕組み〕
運行管理
1  営業所ごとに、運行管理者の選任の義務付け
ii2  運行管理者は、1)過労運転を防止するため、適正な乗務割の作成とこれに従った運転者に対する乗務指示、2)運転者の疾病、疲労、飲酒等の有無を確認するため、乗務しようとする運転者に対する点呼等の業務を実施
車両整備管理
1  営業所等ごとに、車両整備管理者の選任を義務付け
ii2  車両整備管理者は、車両の定期点検等車両整備の管理に関する業務を実施

〔調査結果の要旨〕
 運行管理者としての勤務実態のない者を選任しているもの等(5事業者)
: 2名以上の運行管理者の選任・配置が必要とされている支店において、選任されている2名のうち1名は支店での勤務実態のない本社の役員
 運転者の拘束時間が労働時間の改善基準(国土交通省告示)で定められた基準を遵守していないもの等(5事業者)
: 1か月間の基準拘束時間は293時間であるが、事故を引き起こした運転者の直前の1か月間の拘束時間は331時間で38時間超過、また、同期間において1日の拘束時間(13時間)を超える日が16日ある
 点呼を実施していないもの、運行管理者又は代務者でない者が点呼を実施しているもの等(14事業者)
: 営業所に運行管理者が1人配置されているが、代務者が配置されていないため、日曜日や早朝の時間帯(5時以前)は運行管理者が不在、乗務前の対面による点呼が実施されていない
 整備管理者を選任していないもの等(8事業者)
: 平成11年4月に退職した整備管理者の後任の整備管理者を選任していない
 定期点検(3か月に1回)を定められた頻度で実施していない(1事業者2台)

【改善所見】
 事業者に対し、道路運送法、道路運送車両法等の関係法令等にのっとり、運行管理・車両整備管理を徹底するよう指導すること

  3 運転者に対する特別指導、適性診断の的確化
 
〔制度・仕組み〕
 事業者は、死者又は負傷者が生じた事故を引き起こした運転者(事故惹起運転者)、新たに雇い入れた運転者(初任運転者)等に対し、特別指導を行い、かつ、適性診断を受けさせる義務あり
1  特別指導(事業者が実施)
   事故防止のために留意する事項、危険の予測及び回避等について合計6時間以上
ii2  適性診断(国土交通大臣の認定を受けた機関が実施)
1) 特定診断 : 事故惹起運転者に対して、心理テスト等による診断、事故の再発防止のために必要な運動機能の改善に関する助言・指導
2) 初任診断 : 初任運転者に対して、心理テスト等による診断、事故の未然防止のために運転行動について留意すべき点に関する助言・指導

〔調査結果の要旨〕
 事故惹起運転者に対して特別指導を実施しないまま乗務復帰させているもの(3事業者)。
 初任運転者に対して特別指導を実施していないもの(1事業者)
 特定診断の対象者に対して適性診断を受診させないまま乗務に復帰させているもの(4事業者)
: 有責重大事故(回転禁止区域で転回、後方バイクと衝突し、バイク運転者は重傷)を引き起こしているが、当該運転者に対する特定診断は受診させないまま、事故の2日後には乗務復帰させている
 初任診断の対象者に対して適性診断を受診させていないもの(6事業者)

【改善所見】
 事業者に対して、特別指導及び適性診断の制度について周知徹底を図り、その対象者に確実に受講・受診させること