測量行政に関する行政評価・監視結果(要旨)


第1   調査実施時期・対象機関等
     1 実施時期: 平成15年12月〜16年3月
  2 対象機関: 国土地理院地方測量部
測量計画機関(国の出先機関16、県の出先機関8、市5)、関係団体等
  3 担当部局: 九州管区行政評価局、長崎行政評価事務所、鹿児島行政評価事務所

第2   実施の経緯、目的
      国土地理院九州地方測量部は、測量法(昭和24年法律第188号。以下「法」という。)に基づき、基本測量の実施、測量標(三角点、水準点等)の維持管理、測量計画機関が実施する公共測量の指導及び調整等の業務を実施。
   この行政評価・監視は、測量行政の効率的及び適正な運営を確保する観点から、測量標の維持管理状況、公共測量に対する指導・調整の実施状況等を調査し、関係行政の改善に資するために実施。

第3   通知年月日及び通知先
     1 通知年月日 平成16年4月15日(木)
  2 通知先 国土地理院九州地方測量部

第4   調査結果の概要
  1 測量標の維持管理
   
〔制度・仕組み〕
 測量標(三角点、水準点等)は、基本測量や公共測量のための必要な標識(注)。何人も、測量標を移転、き損等によりその効用を害してはならない(法第22条)。
 九州地方測量部は、「基準点維持管理に関する規程」(平成4年3月本院制定)に基づき、現地調査、現況情報報告等により測量標を維持管理。規程では、測量標の維持管理の円滑化のため、地方公共団体における測量行政に関する窓口の一元化について協力を依頼、連絡調整を円滑に行うために窓口台帳を備える等と規定。
 国土地理院は、インターネットで測量標の位置等を「点の記」等として情報公開。
(注)九州地方測量部管内には平成15.3.31現在17,226点

〔調査結果の要旨〕
 福岡県、長崎県及び鹿児島県の都市部及びその周辺部の測量標595点中、その約20%に当たる113点を調査した結果、亡失等の異常点が16点(14.2%)。
 上記113点に係る「点の記等」の中には、要図の基準点と参照点の位置関係が現地と異なる、所在地が旧市町村名となっているものなど不適切なものが21点(18.6%)。
 九州地方測量部は、地籍調査担当窓口等個々の窓口は把握しているが、一元化された地方公共団体の窓口を十分把握・調整していない。

  【改善所見】
 九州地方測量部は、測量標の適切な維持管理を図るため、次の措置を講じること。
 地方公共団体における測量行政に関する窓口の一元化について協力を依頼、窓口台帳を整備し、会議の開催等により継続的な連絡・調整を図ること。
 異常が確認された測量標の原因の把握に努め、原因者が特定された場合は、書面指導など必要な措置を講じ、再設、廃点等の措置を速やかにとること。また、測量標の 重要性等について周知、徹底を図ること。
 インターネット等で一般から測量標の現況について情報提供を求めるなど、広く情報収集に努め、点の記等の整備に利用すること。

  2 公共測量の適正な実施
 
〔制度・仕組み〕
測量計画機関の義務
1  公共測量を実施しようとするときは、あらかじめ計画書を国土地理院の長に提出し、技術的な助言を求める(法第36条)。
ii2  測量標を使用する場合は、国土地理院の長の承認を得る(法第26条)。
iii3  公共測量の成果を得たときは、遅滞なくその写を国土地理院の長に提出する(法第40条)
(注)i1〜iii3の国土地理院の長の権限は、地方測量部長等に委任。
九州地方測量部は、国家基準点(三角点、水準点等)に加えて、公共測量機関が設置した公共基準点についても、インターネットでの情報公開を開始(16年3月)。

〔調査結果の要旨〕
 計画書の提出が不十分(対象期間:平成12年4月〜15年9月、一部12月)
 測量計画機関19機関が実施した公共測量に該当すると思われるもの269件中、計画書の未提出は161件(59.9%)。
 測量標の使用承認申請が不十分(同)
 測量計画機関13機関で、測量標の使用承認申請未提出は91件中、49件(53.8%)。
 公共測量成果の提出漏れ(同)
 測量計画機関19機関で、計画書を提出した公共測量のうち終了した92件中、測量成果の未提出は11件(12.0%)、遅延は5件(5.4%)。

【改善所見】
 九州地方測量部は、法に基づく諸手続きが励行されるよう次の措置を講じること。
 測量計画機関等を対象とした説明会等の開催により計画書提出等の周知に努めること。
 測量計画機関に対し、測量法の所管窓口の設置を依頼するとともに、文書により計画書提出等の周知を図ること。
 測量成果未提出のものを的確に把握して、未提出のものについては、督促を書面で行う等測量成果の提出の徹底を図ること。

  3 公共測量成果の審査事務の促進
 
〔制度・仕組み〕
 測量部は、測量成果の送付を受けたときは、すみやかにこれを審査して、測量計画機関にその結果を通知する義務(法第41条第1項)。
 測量部は、審査の結果、充分な精度を有すると認める場合は、意見を附して、その測量の種類、実施の時期及び地域等を公表の義務(法第41条第2項)。
 測量部では、計画書に対する助言書の中で、精度の確保等を図ることを目的として検定機関で測量成果の検定を受けるよう助言。

〔調査結果の要旨〕
 九州地方測量部が平成14年度に審査した全測量成果304件中、受付後審査書を発送するまでに6か月以上を要しているもの78件(25.7%)。
 78件中、検定機関の適正である旨の検定証明書が添付されているにもかかわらず、6か月以上を要しているもの25件(32.1%)。
 九州地方測量部が測量計画機関に助言を行った407件中、304件は検定機関による検定を助言。このうち、助言に従い受検したものは145件(47.3%)。

【改善所見】
 九州地方測量部は、公共測量成果を管理しその公開を推進するため、測量精度の確保を図り、審査事務の処理期間の短縮を図る観点から、次の措置を講じること。
 測量計画機関に対し、測量成果の検定機関での受検について、引き続き必要な助言 を行うとともに、提出された測量成果の審査期間の短縮を図ること。
 現在滞留している審査案件に関しては、処理の促進を図ること。