国立学校の安全管理等に関する行政評価・監視の結果


概略

      
背景等
平成13年6月、大阪教育大学附属池田小学校で児童生徒等の殺傷事件が発生

事故の発生要因となる学校環境の危険
    教室、体育館、校庭、運動場、遊具、理科薬品など
火災、地震など災害の発生に対する備えが不十分
学校の安全管理に関する総合的な調査
事件対策は全国初の試み

調査実施時期
平成14年12月〜15年3月
調査対象機関
 愛媛大学
       教育学部附属4校
 
 幼稚園
 小学校
 中学校
 養護学校
  農学部附属1校
 農業高等学校
      
行政評価・監視の実施

愛媛行政評価事務所(所長:赤阪正弘)は、今回の調査の結果、以下の点について改善措置を講ずべきことを通知

1.学校環境の安全管理

2.災害の発生に備えた安全管理

3.事件の発生に備えた安全管理
通知先: 愛媛大学
通知日: 平成15年3月27日
回答期限: 平成15年
4月30日まで


 通知事項 1) 学校環境の安全管理

      
制度・対策
文部科学省
 施設設備の安全点検を1学期に1回以上
(学校保健法、昭和33年)
 安全教育参考資料「生きる力をはぐくむ学校での安全教育」(平成13年度)
点検対象(教室、施設、器具、用具など)
点検項目(危険、破損、施錠、高さなど)

愛媛大学
 毎月安全点検を実施(5校)
 安全点検表を作成(4校)
      
現状・実態
 幼稚園、小学校、中学校、養護学校、農業高校の5校を調査した結果、適切な対応をとっていないものがある

 学校が安全点検の対象としていないため、危険箇所として把握していないものが3校で11か所(手すりを越えて屋上へ侵入1か所、老朽施設の金網が破損1か所、刃物類の保管が不適切1か所、通路・階段の転倒する危険性3か所など)

 学校では安全点検の対象としているが、危険箇所として把握していないものが5校で43か所(枝ばさみなど刃物類を児童生徒の周辺に置いている4か所、扉の金網等の破損1か所、滑り台等遊具の破損2か所など)

 学校は危険箇所として把握しているが、改善措置を講じていないものが2校で10か所(鉄棒の破損1か所、排水溝の破損2か所、廃材・コンクリートブロック等危険物2か所など)
      
通知要旨

愛媛大学は、施設・設備に係る危険箇所を的確に把握し、児童生徒の安全を確保するため、附属学校に対し次の措置をとるよう指導すること

安全点検項目の見直しを行い、点検表の点検箇所に児童生徒が利用する必要な箇所を追加すること、点検項目にその場所の特性に応じた項目を設定すること

点検により把握した危険箇所について、早急に修繕等の必要な改善措置をとること

安全点検表を作成していない1校は、早急に作成して危険箇所について必要な改善を行うこと


 通知事項 2) 災害の発生に備えた安全管理

      
制度・対策
消防庁、文部科学省、国土交通省
 消防計画の作成、消火等訓練、消防用設備の点検・整備の義務(消防法、昭和23年)
 安全教育参考資料で点検対象、点検項目を例示(文部科学省、平成13年度)
 文教施設の耐震性向上の推進を通知
 (文部科学省、平成7年)
 耐震診断及び耐震改修に関する指針
 (国土交通省、平成7年)

愛媛大学
消防用設備の点検を専門業者に委託、棚等の転倒防止措置、安全点検、建物の耐震診断を実施、大規模改修計画を作成
      
現状・実態
 幼稚園、小学校、中学校、養護学校、農業高校の5校を調査した結果、適切な対応をとっていないものがある

消防用設備の維持管理の不適切なものが5校で37か所(消火器の設置箇所17か所、消火栓1か所、非常扉1か所、自動火災報知設備1か所、防火扉1か所、ガス漏れ警報機3か所など)

火災・地震等の対策措置が不適切なものが5校で178か所(灯油のドラム缶の設置方法1か所、ガスコンロ周辺2か所、戸棚・書棚・ピアノ・大型テレビ等の転倒防止措置160か所、重量物の落下防止措置13か所など)

消火、通報、避難訓練のいずれかを行っていないものが4校

耐震指標が0.3以下の建物が2校で2棟(昭和44年以前の建築)あり、大規模改修の予算要求を行っているが、平成15年3月現在のところ改修は実現されていない

      
通知要旨

愛媛大学は、災害発生時の児童生徒の安全を確保し、被害を最小限にとどめるため、次の措置をとること

消防用設備の維持管理及び火災・地震等の対策措置について教職員の共通理解を図り、安全点検の点検項目の見直しを行うこと

消防法に基づく、消火・通報・避難の各訓練を行うこと

地震を想定した訓練を行うこと

引き続き建物の耐震改修の促進に努めること


 通知事項 3) 事件の発生に備えた安全管理

      
制度・対策
文部科学省
 安全管理に関する緊急対策例を提示
 (平成13年7月)
 安全点検項目例の改正の提示
 (平成13年8月)
 安全教育参考資料「生きる力をはぐくむ学校での安全教育」を配布(平成13年度)

愛媛大学
正門に警備員・監視カメラを配置、教室に警報装置を設置、安全点検の実施、危機管理マニュアルを設定など
      
現状・実態
 幼稚園、小学校、中学校、養護学校の4校を調査した結果、適切な対応をとっていないものがある

各教室の警報ベルを押しても受信機の警報表示盤で押した教室が確認できないなど警報装置の有効性を高める措置が必要である(4校)

生け垣、樹木等が障害となって裏側の区域が校舎側から死角となっており、また、外部と隔てている塀などが低いため、侵入できる箇所がある(4校)

不審者の侵入等を想定した避難訓練が不十分である(3校)

作成した危機管理マニュアルに教職員の役割分担や応急手当など必要な対応措置について具体的事項の記載がない(4校)
      
通知要旨

愛媛大学は、緊急時の児童生徒の安全を確保をするため、附属学校に対し次の措置をとるよう指導すること

事件が発生した教室等の場所が特定できるよう警報装置の表示盤の機能を改善すること

死角の原因となる障害物の有無、外部からの侵入の可能性など安全点検項目に沿った点検の実施を励行し、必要な対策を立てること

不審者への対応等の避難訓練を行うこと

危機管理マニュアルを見直し、教職員の役割分担や必要な対応措置を具体的に記載すること


 通知事項 4) 毒物及び劇物の安全管理

      
制度・対策
厚生労働省、文部科学省
 毒物及び劇物取締法
 (厚生労働省、昭和25年)
 毒物及び劇物の適正な管理について
 (文部科学省、平成10年7月)
容器の表示、専用保管庫の設置、施錠、固定措置、記録の整備、廃棄処理など

愛媛大学
 愛媛大学毒物及び劇物管理規則を制定
 (平成11年3月)
 管理責任者、取扱責任者の指定など
      
現状・実態
 小学校、中学校、農業高校の3校を調査した結果、適切な管理を行っていないものがある

長期間(少なくとも2校は1年以上、1校は4年以上)全く使用しておらず、今後も使用見込みのない薬品が多数ある(3校)
長期間使用していないため、容器の表示が見えなくなっており、書き直した際に薬品名の表示を誤っているもの、表示方法の不適切なものがある(1校)
保管庫の固定措置が取られていないもの、容器の転落防止措置が取られていないものがある(1校)
毒物、劇物と一般薬品を同一保管庫で保管しているものなど保管方法の不適切なものがある(3校)
      
通知要旨

愛媛大学は、毒物及び劇物の適正保管及び在庫管理を徹底するため、附属学校に対し次の措置をとるよう指導すること

定期的な在庫点検の励行により、今後使用する見込みのない毒物及び劇物を的確に把握し、大学の管理規則に基づき早急に廃棄処分を行うこと

毒物及び劇物は、専用容器、専用保管庫で一般薬品と区分して保管するとともに転倒、転落防止措置など防災対策をとること