「公表資料」    労働者派遣事業の適正な運営を!


人材派遣に関する行政評価・監視−労働者派遣事業を中心として−の調査結果



 

 

平成131214
総務省  愛媛行政評価事務所



 

    調査実施の背景
  (1 )  平成1112月に「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(以下「労働者派遣法」という。)が改正され、従来、ソフトウェア開発、事務用機器操作等26業務に限って認められていた派遣労働が、港湾運送業務、建設業務等特定の業務を除き、原則自由化。このため労働者派遣制度を活用する余地が格段に増加。
  (2 )  これらを背景に愛媛県内の労働者派遣事業の事業所数は、平成8年度の73事業所から平成13年度(8月1日現在)には108事業所へと増加。特に、登録型の派遣労働者を派遣する一般労働者派遣事業は20事業所から40事業所に倍増。
  (3 )  この評価・監視は、派遣労働者の適正な労働条件の確保を図る観点から、派遣元事業所及び派遣先事業所の業務運営並びに労働局(公共職業安定所)の指導監督状況を調査。

 (
参考) 一般労働者派遣事業 : いわゆる「登録型派遣事業」といわれるもので、派遣を希望する労働者を自社名簿に登録しておき、派遣先から依頼があった場合に、登録者の中から派遣する事業。(厚生労働大臣の許可)
特定労働者派遣事業 : 派遣の対象となる労働者が常用労働者だけの労働者派遣事業(例:自社の社員を他社に一定期間派遣)。(厚生労働大臣への届出)

    調査対象機関
    愛媛労働局、松山公共職業安定所、新居浜公共職業安定所
  派遣元事業所12(一般9、特定3)、派遣先事業所8
  このほか派遣労働者19人から派遣労働の実態について意見聴取

    調査実施期間
    平成13年8月〜11

    調査結果の処理
    愛媛労働局に対し平成131214日に結果を通知


(問い合わせ先)
  愛媛行政評価事務所
  担当:第1評価監視官
  電話:089−941−7701









  調査結果の概要

1.  派遣労働者の就業条件の確保等

(1 )  派遣労働者の就業条件の確保
    就業条件の明示状況をみると、1)派遣契約書及び就業条件明示書における業務内容の記載が具体的ではなく、派遣労働者からみて分からないもの(7派遣元事業所)、このため、業務内容が合わないとして就労1日で派遣をとりやめた者がみられるもの(1派遣元事業所)、2)就業条件明書について、苦情処理担当者など法定事項を明記していないなど不備があるもの(3派遣元事業所)がみられた。
    就労管理の状況をみると、派遣契約書及び就業条件明示書において時間外労働の有無や時間外労働時間数を明記していないにもかかわらず、派遣先において時間外労働させているなど就労管理が不適切なもの(6派遣元事業所、1派遣先事業所)がみられた。

  《派遣労働者からの意見》
派遣労働者19人から次のような意見が寄せられた(詳細は資料参照。以下、同様。)
  就業条件明示書の記載内容では不十分、実際の仕事とギャップがある(9人)
  契約外の仕事をさせられることがある(12人)
  派遣元や派遣先が苦情相談に十分対応してくれない(5人)  など。

(2 )  派遣先事業所による派遣労働者の特定行為
    派遣先事業所においては、1)1人の派遣労働者を受け入れる際に、2派遣元事業所から候補者を出させ事前面接を行い、派遣労働者を決定しているもの(1事業所)、2)氏名、年齢、住所、経歴等が記載された履歴書等を事前に受け取った上で、派遣労働者を決定しているもの(3事業所)がみられた。
    派遣元事業所においては、派遣先からの依頼により履歴書等を事前に送付したり、事前面接に応じているもの(3事業所)がみられた。

  《派遣労働者からの意見》
  派遣が決まる前に派遣先による事前面接等があった(13人)
  学歴や結婚予定などプライベートなことを聞かれるのは不愉快、容姿・年齢・学歴で品定めされることに  憤慨など

(3 )  派遣期間の遵守
   愛媛県内の9一般労働者派遣事業所において、派遣労働者の派遣期間について調査した結果、合理的な理由なく派遣労働者を同一の業務に同一の就業場所で継続して3年を超えて派遣しているものが4事業所あり、派遣先における常用雇用の機会が不当に狭められかねない状況がみられた。


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 改善意見  

   愛媛労働局は、派遣労働者の就業条件等を確保することにより派遣労働者の雇用の安定を図るとともに、派遣先事業所における常用雇用の機会が不当に狭められることを防止する観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1)    派遣労働者の就業条件の確保については、労働者派遣契約の締結及び就業条件の明示を適正に行うとともに、派遣先事業所において適正な就労管理が行われるよう、派遣元事業所及び派遣先事業所に対し、指導の徹底を図ること。
2)    派遣先事業所による派遣労働者の特定行為については、労働者の能力に応じた公平な就業の機会の確保が妨げられること等から、派遣先事業所への実地指導や求人説明会、関係事業主団体の会議等の機会をとらえて、労働者派遣法及び派遣先指針を周知するとともに、その遵守について指導を行うこと。
3)    派遣期間については、取扱要領に抵触する派遣を行っている場合は、派遣元事業所及び派遣先事業所に対し、取扱要領に示された派遣期間を遵守するよう一層の指導を行うこと。

     ※   根拠法令については資料参照。



2.  派遣元事業所及び派遣先事業所における事務の適正化

 調査の結果、次のとおり、事務運営の改善が必要な状況がみられた。
(1 )  派遣元事業所
  1)    派遣元管理台帳について、一部の派遣労働者について台帳を作成していないなど、その整備や記載内容に不備がみられるもの(5事業所)
2)    派遣先に対する派遣労働者に係る社会保険の適用状況等についての通知が、書面ではなく口頭で行われているもの(2事業所)
3)    個人情報適正管理規程を作成していないもの(4事業所)
4)    会社の代表者及び役員の変更の際に必要な変更届出が行われていないもの
(2 )  派遣先事業所
  1)    派遣先責任者について、派遣労働者に係る就業実績の派遣元への通知等を配属部署に任せ、その内容を把握していないなど、派遣先責任者が業務を適切に実施していないもの(2事業所)
2)    派遣先管理台帳について、社会保険及び雇用保険の被保険者資格取得届に関する事項が記載漏れとなっているもの(6事業所)

   一方、調査した松山・新居浜公共職業安定所における派遣元事業所及び派遣先事業所に対する指導監督状況をみると、i)指導方法については、基本的に口頭指導となっており、指導後の改善状況についても確認が行われていない、ii)派遣先事業所に対する実地指導について記録が残されていないなど、必ずしも効果的な指導とはなっていない。


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 改善意見  

   愛媛労働局は、労働者派遣事業の適正な運営を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。
1)    派遣元事業所に対しては、改善が必要な事項が認められた場合は、原則として文書指導を行うこととし、改善効果の確保のために改善状況について適宜確認を行うなど、より一層指導の徹底を図ること。
2)    派遣先事業所に対しては、指導内容の記録を適正に管理し今後の指導に活用するなどにより、指導監督を効果的に実施するとともに、労働者派遣法及び派遣先指針の周知徹底を図ること。

     ※   根拠法令については資料参照。