旅客船等の安全対策に関する行政評価・監視結果


平成13年3月28日
四国行政評価支局
【行政評価・監視の背景事情等】
 旅客船等による四国の旅客運送は、本州四国連絡橋が開通したものの、四国と本州・九州間の全輸送人員の3割を占めるなど公共交通機関として重要な役割を維持
 四国本島と離島間においては、人又は灯油、液化石油ガス等を含めた生活物資のほぼ唯一の輸送手段
 瀬戸内海は、狭水道、島しょが多く、船舶の交通がふくそうしているため、旅客船の衝突、接触等の事故が毎年7〜10件発生しており、海上運送の安全対策の一層の推進が課題
 この行政評価・監視は、船舶の安全運航及び旅客の安全確保を図る観点から、旅客船等の安全対策の実施状況を調査し、関係行政の改善に資するために実施

【調査の実施時期等】
実地調査時期平成13年1月〜3月
調査担当部局四国行政評価支局、徳島行政評価事務所、愛媛行政評価事務所
調査対象機関四国運輸局、徳島・松山・今治・宇和島各海運支局、高松・小松島・松山・今治・宇和島各海上保安部
事業者(香川・徳島・愛媛3県の26事業者。業種別の抽出状況は、次表のとおり)

事業者の業種別抽出状況
(単位:事業者、%)
区       分 事業者数(平成13年1月末現在) 抽出事業者数 抽出率
旅客船、フェリ−
(定員13人以上)
旅客定期航路事業 56 18 32.1
旅客不定期航路事業
(遊覧船等)
26 5 19.2
そ の 他 不定期航路事業等
(海上タクシ−等)
43 3 7.0
 計  125 26 20.8
(注)抽出事業者が使用する船舶(乗船調査した船舶)の船種別内訳は、
旅客船 ……6、フェリ− ……14、遊覧船 ……3、海上タクシ−……3の合計26隻である。

【結果の通知】
〇通知年月日: 平成13年3月28日
〇 通 知 先: 四国運輸局
(本件に関する問い合わせ先)
四国行政評価支局
   担当: 評価監視官
   電話: 087−831−9208    

行政評価・監視結果の概要  < 26事業者中17業者、延べ38件の不適切事例 >

運航管理の適正化
 旅客船等を運航する事業者は、海上運送法の規定に基づき、運航管理者の選任等の運航管理組織及び旅客・車両の乗下船時における作業方法等を内容とする運航管理規程を作成して地方運輸局長に届出し、これを遵守することとされている。

 26事業者における運航管理状況を調査した結果、以下のとおり、運航管理規程を遵守していない事例等がみられた。
(1)運航管理規程が遵守されず、安全確保措置が適切でない事例
1作業基準
  • 旅客及び車両の乗下船時には、係留ロ−プにより係船する必要があるが、これを遵守していないもの:1事業者〔香川(写真No.1参照)〕
  • 積載した車両には車止めを施す必要があるが、約半数の車両に車止めをしていないもの及び一部の車両について必要な車両間隔を確保していないもの:2事業者(香川1、愛媛1)
        ※ 四国で旅客船等を運航する事業者に関係する事故が平成8〜12年度(12月末現在)の5年間に43件発生。中には、下船準備のため車止めを外し、車と支柱との間に挟まれて負傷するなどの船内車両事故が2件発生している。

  • 航行中は、旅客が車両区域へ立入らないように旅客区域と車両区域と間の通路又は昇降口を遮断する必要があるが、この遮断措置を講じていないこと等から、旅客が着岸前に階段や車両甲板で下船待ちしているもの:8事業者(香川4、愛媛4)
        ※岸壁への接触による衝撃によって、階段で下船待ち中の旅客が転落した事故が3件発生

2事故処理訓練
  • 事故処理に関する訓練を年1回以上実施する必要があるが、この訓練を実施していないもの:1事業者(徳島)
(2)その他
 運航管理体制を改めているにもかかわらず、運航管理規程を変更していないもの及び一部の待合所に、旅客が遵守すべき事項を掲示していないものなど:8事業者(香川2、徳島2、愛媛4)

<改善意見 >
 四国運輸局は、事業者に対し、旅客船等による輸送の安全を図る観点から、運航管理規程を整備し、それを遵守するよう指導を徹底する必要がある。


2 危険物運送の適正化
    船舶により危険物を運送する場合は、「危険物船舶輸送及び貯蔵規則」(運輸省令)において定められた方法、手続によって行うこととされている。

 26事業者における危険物の運送実態を調査した結果、以下のとおり、法令を遵守していない事例がみられた。
   (1)旅客と危険物を混載運送している事例
  • 旅客との混載を禁止されている危険物の運送に使用した容器は、空容器であっても洗浄していなければ旅客との混載が禁止されているが、ガソリン・プロパンガスなどの未洗浄空容器を旅客と混載して運送しているもの:2事業者(愛媛2)
  • ガソリンとプロパンガスを同時に積載しない条件で旅客との混載許可を受けているにもかかわらず、平成10年度から12年度までの間で合計6回、両危険物を同時に積載し運送しているもの:1事業者(徳島)
(2)危険物の積載方法が適切でない事例
  • 液体酸素搭載車両とガソリン又は灯油搭載車両は3メートル以上離して積み付けなければならないが、0.65メートルしか離していないもの:1事業者(愛媛)
  • 船舶に危険物を積載した場合のみ赤旗を掲げることとされているが、積載していない時にも赤旗を掲げており、識別が困難になっているもの:1事業者(愛媛)
(3)危険物の確認が適切でない事例
  • 指定された危険物積載区域に積み付けなければならない危険物を搭載した車両を、危険物表示があるにもかかわらず一般車両積載区域に積み付けているもの:1事業者〔香川(写真No.2参照)〕
<改善意見 >
 四国運輸局は、危険物を運送する事業者に対し、危険物の安全な運送を確保する観点から、旅客と危険物との混載禁止、危険物搭載車両の積付け等を的確に実施するよう指導を徹底する必要がある。


3 救命及び消防設備の整備等
   救命・消防設備の整備及び維持管理については、「船舶救命設備規則」(運輸省令)、「船舶消防設備規則」(運輸省令)において、航行海域や総トン数に応じて整備しなければならない設備の種類や数量、操作の利便性、機能等が定められている。

 26事業者における救命及び消防設備の整備とその管理状況を調査した結果、以下のとおり、法令を遵守していない事例がみられた。

    ※ 平成8年度以降の5年間に火災による事故が4件発生
(1)救命及び消防設備の整備が適切でない事例
  • 持運式消火器にあっては、必要数量の25パ−セント以上の予備消化剤を備え付けておかなければならないが、この予備消火剤の備付数量が不足しているもの:1事業者(愛媛)
  • 消火器を設置しなければならない手荷物室等へ消火器を設置していないもの:1事業者(愛媛)
  • 救命胴衣の着用方法を船内の見易い場所に表示しなければならないが、座席の下に表示するなどその着用方法の表示が適切でないもの:2事業者(徳島2)
(2)救命及び消防設備の維持管理が適切でない事例
  • 救命浮器は見易い色でなければならないが、日焼けにより色落ちし、識別困難な状態のまま放置しているもの:1事業者(徳島)
  • 自己点火灯及び消火器は直ちに使用できる状態にしておく必要があるが、自己点火灯に乾電池が装着されていないなど、使用困難な状態で放置しているもの:4事業者〔徳島1、愛媛3(写真No.3参照)〕
  • 持運式消火器の予備消火剤について、有効期限切れのまま放置しているもの:1事業者(愛媛)
  • 消火器を赤色のペンキで塗りつぶしているため、適用可能な火災の種類、有効期限等が不明な状態となっているもの:1事業者〔愛媛(写真No.4参照)〕
  • 消火器の設置場所について、表示した場所に設置していないもの:1事業者(愛媛)


<改善意見 >
 四国運輸局は、事業者に対し、緊急時において直ちに使用できるよう救命及び消防施設を整備するとともに、その維持管理の適正化を図るよう指導を徹底する必要がある。