資料名 資料5 新谷構成員(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会)提出資料 タイトル 「視聴覚障害者等向け放送の充実に関する研究会」で議論いただきたいこと 令和4年11月1日 一般社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 理事長 新谷 友良(しんたに ともよし) 放送法第4条第2項が「放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送等の放送番組の編集に当たっては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。」と規定していることを受けて、総務省が1997年以来行政指針を策定し、放送事業関係の皆さまが力を合わせて放送分野のアクセシビリティ向上に努力されていることに深い敬意を表します。 情報アクセシビリティに関しては、本年5月に「障害者情報アクセシビリティー・コミュニケーション施策推進法」が成立し、また8月には障害者権利条約履行に関する日本政府報告への障害者権利委員会の審査が実施されました。そこでは、第9条「アクセシビリティ」において、「障害者団体と緊密に協議しながら、政府のすべてのレベルにわたってアクセシビリティを調和させ、ユニバーサルデザイン基準を定着させ、特に建物、交通、情報通信、その他の施設やサービス(主要都市以外も含む)が市民に開放または提供されるように、行動計画およびアクセシビリティ戦略を実施すること。」(仮訳)が勧告されております。 このような状況を踏まえて、今回の「視聴覚障害者等向け放送の充実に関する研究会」においては、従来の取り組みに加えて、新たな法律の制定や情報アクセシビリティ分野への国際的な評価を踏まえた議論を行うことが必要を考えます。以下、今回の研究会で議論いただきたい点を下記いたしますので、よろしく検討をお願いします。 1.「総放送時間に占める字幕番組の割合」と「字幕付与可能な番組における字幕番組の割合」の乖離について 放送分野における情報アクセシビリティに関する指針(2018年2月制定)では、「字幕付与可能な放送番組」とは、次に掲げる放送番組を除く全ての放送番組とされています。 - 1 技術的に字幕を付すことができない放送番組(例:現在のところ複数人が同時に会話を行う生放送番組) - 2 外国語の番組 - 3 大部分が器楽演奏の音楽番組 - 4 権利処理上の理由等により字幕を付すことができない放送番組 その結果、2020(令和2)年度の字幕放送実績は以下の通りとなっています。 NHK(総合) 「字幕付与可能な放送番組」における字幕番組の割合は98.0%(前年度比プラス0.4ポイント) 総放送時間に占める字幕番組の割合は88.7%(前年度比プラス2.1ポイント) NHK(教育) 「字幕付与可能な放送番組」における字幕番組の割合は92.7%(前年度比プラス2.8ポイント) 総放送時間に占める字幕番組の割合は82.6%(前年度比プラス3.3ポイント) 在京キー5局 「字幕付与可能な放送番組」における字幕番組の割合は100%(前年度比プラスマイナス0.0ポイント) 総放送時間に占める字幕番組の割合は65.8%(前年度比プラス0.5ポイント) 在阪準キー4局 「字幕付与可能な放送番組」における字幕番組の割合は100%(前年度比プラスマイナス0.0ポイント) 総放送時間に占める字幕番組の割合は65.6%(前年度比プラス1.7ポイント) 在名広域4局 「字幕付与可能な放送番組」における字幕番組の割合は99.6%(前年度比プラスマイナス0.0ポイント) 総放送時間に占める字幕番組の割合は57.6%(前年度比プラス0.8ポイント) 系列県域101局 「字幕付与可能な放送番組」における字幕番組の割合は86.6%(前年度比プラス3.8ポイント) 総放送時間に占める字幕番組の割合は53.1%(前年度比プラス1.1ポイント) 独立県域13局 「字幕付与可能な放送番組」における字幕番組の割合は35.5%(前年度比プラス6.7ポイント) 総放送時間に占める字幕番組の割合は15.0%(前年度比プラス0.8ポイント) NHK(BS1) 「字幕付与可能な放送番組」における字幕番組の割合は44.2%(前年度比プラス9.9ポイント) 総放送時間に占める字幕番組の割合は44.1%(前年度比プラス6.2ポイント) NHK(BSプレミアム) 「字幕付与可能な放送番組」における字幕番組の割合は89.9%(前年度比プラス2.3ポイント) 総放送時間に占める字幕番組の割合は80.0%(前年度比プラス1.0ポイント) NHK(BS4K) 「字幕付与可能な放送番組」における字幕番組の割合は87.0%(前年度比プラス1.9ポイント) 総放送時間に占める字幕番組の割合は82.4%(前年度比マイナス0.8ポイント) NHK(BS8K) 「字幕付与可能な放送番組」における字幕番組の割合は67.2%(前年度比マイナス6.6ポイント) 総放送時間に占める字幕番組の割合は68.1%(前年度比プラス1.3ポイント) 民放キー局系BS事業者5社(2K放送) 「字幕付与可能な放送番組」における字幕番組の割合は53.4%(前年度比プラス1.2ポイント) 総放送時間に占める字幕番組の割合は28.6(前年度比マイナス0.4ポイント) 民放キー局系BS事業者5社(4K放送) 「字幕付与可能な放送番組」における字幕番組の割合は52.7%(前年度比マイナス2.6ポイント) 総放送時間に占める字幕番組の割合は%27.6%(前年度比マイナス1.5ポイント) この表からは、 @字幕付与対象番組の実績がほぼ100%に達しているNHK総合・教育及び東名阪のキー局・準キー局においても、総放送時間に対する字幕付与の割合が依然として60%から90%程度にとどまっていること A県域局においては、総放送時間にとどまらず字幕付与対象番組においても字幕付与の割合が低い水準にあり、この傾向は独立県域局において特に著しいこと BBS放送については全般的に字幕割合が低いが、NHKではチャンネルごとの割合に大きな差異があること。 といった問題点が指摘できると思いますが、字幕付与のより一層の拡大のために、これら問題点を解決する具体的な取り組みを研究会で議論いただきたいと考えます。 2.字幕表示の改善について 2.1 字幕表示字数・行数についてのガイドライン 放送事業者間で字幕の切り替えタイミング、1画面の行数、1行当たりの字数などの共通したガイドラインをお持ちでしょうか?また、視聴者を交えたガイドラインの見直しは実施されておられるのでしょうか? 2.2 字幕表示位置について 現在、テレビ画面の画像・キャプション情報は非常に増えてきています。その結果、それら画像情報と字幕情報が重なり合う例が頻繁に見られます。字幕表示領域は受像機依存だとお聞きしたことがありますが、送出側で字幕表示領域を独立させることは技術的に困難なものなのでしょうか。海外の報道番組などでは、下部の独立領域に字幕が流れる例をよく見ます。 2.3 生字幕表示の同時性(タイミング)について 生字幕の同時性確保について、様々な努力を積み重ねられていることに感謝いたします。音声を完全に文字に変換した場合は、文字数が非常に多くなり、視聴者が読み切れない字幕となり、同時性を損なう場合もあります。言葉のケバや冗長な言い回しを簡潔にする、話された内容を一定程度に要約するなどによって、同時性を確保するといった試みもあってよいのではないかと思います。「技術的に字幕を付すことができない放送番組(例:現在のところ複数人が同時に会話を行う生放送番組)」に大きく関連する課題と思いますが、放送事業者のお考えはいかがでしょうか? 3.インターネット動画配信などでの字幕付与について インターネットを利用した動画配信が急速に普及しています。Netflix(ネットフリックス)などは、全番組に字幕を付けることを徹底している印象がありますが、動画配信についての字幕付与は各事業者の自己判断ということでしょうか、それとも公的な指針・ガイドラインなどの策定への動きがあるのでしょうか?