資料名 資料7 小原構成員(日本放送協会)提出資料 (スライド1枚目) ユニバーサル・サービス充実に向けた取り組み (スライド2枚目) NHKでは、2018年2月に策定された総務省の「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」を踏まえ、毎年独自の目標を定めて、ユニバーサル・サービスの拡充に 取り組んでいます。 経営計画においても「あまねく伝える」を重点項目にかかげ、確かな情報・サービスを一人ひとりに届けるための「人にやさしい」放送・サービスの充実に努めています。 (スライド3枚目) 字幕放送の取り組み(1) (表ここから) 令和3年度(2021年度) 普及目標の対象となる放送番組における字幕番組の割合、総放送時間に占める字幕放送時間の割合 の順に 総合テレビ 100.0% 88.9% Eテレ 94.3% 85.1% BS1 42.8% 45.5% BSプレミアム 90.9% 83.4% BS4K 87.8% 83.4% BS8K 74.1% 68.2% (表終わり) 生放送字幕付与の場合、放送前のリハーサルの段階から字幕制作のスタッフが参加し、放送に出る言葉を辞書登録するなどして、早く正確に字幕を付与できる体制を構築しています。 台風の接近時など、緊急ニュースの放送が予想される場合には、あらかじめ字幕制作要員を配置し、深夜の時間帯でも対応。 深夜・早朝の時間帯の災害等、要員・体制の関係で、すぐに字幕を付与できない場合でも、必要な情報は文字スーパーや、L字放送での表示など、確実に必要な情報が届くようにしています。 (スライド4枚目) 字幕放送の取り組み(2) 地域格差の解消に向けて NHKの地域放送局でも、字幕を制作・送出する設備の整備や専門技能を有したオペレーターの確保が課題です。 そこで、AI音声認識装置を活用した自動生字幕放送で、字幕サービスの拡充に取り組んでいます。 (近畿管内のローカルニュースで実証実験を実施しました。期間は10月31日から11月25日まで) 現時点では、音声を字幕に変換する精度や変換のスピードなど多くの課題がありますが、障害者団体のみなさまにもご協力を頂き、将来の字幕付与のあり方として実用可能かどうか、検証していきます。この取り組みを、字幕の設備整備や人員確保といった課題の解決につなげていきたいと考えています。 (スライド5枚目) 字幕放送の取り組み(3) 国会中継 NHKでは、この秋の臨時国会から、正確性・政治的公平性などをできるかぎり損なわず制作できると判断した場合、国会中継として放送する本会議と各委員会のすべてに字幕を付与する取り組みを開始しました。 ぴったり字幕の改良「生放送でありながら字幕が遅れずに表示されるサービス」 昨年の東京パラリンピック期間中にはじめて実施しました。 放送をご覧いただいた聴覚障害のある方からは 「生放送のスタジオのやりとりに初めてリアルタイムで笑えて楽しかった」 「突っ込みを映像と同じタイミングで笑えて、生放送の楽しさを知った」 などの感想をいただきました。 設備面・コスト面での課題も改良を続け、早ければ来年度中に、一部の定時番組で運用をスタートする予定です。 字幕の要約「生放送において同時性確保のために、冗長な言い回しなどを省いて要約する取り組み」 スポーツ番組等ではすでに一部導入しています。 ニュースや国会中継では微妙なニュアンスが失われ、正確性や公平性が毀損する恐れがあり、生字幕の番組全体で行うのは現状では困難です。 (スライド6枚目) 解説放送の取り組み(1) (表ここから) 令和3年度(2021年度) 普及目標の対象となる放送番組における解説番組の割合、総放送時間に占める解説放送時間の割合 の順に 総合テレビ 15.2% 13.4% Eテレ 19.9% 17.0% BS1 3.0% 1.7% BSプレミアム 11.1% 8.1% BS4K 8.8% 6.9% BS8K 8.0% 7.9% (表終わり) 令和3年度(2021年度)、総合テレビでは対象番組の15.2%に解説を付与。 前年度と比べると1%あまり低下したが、解説放送は生放送での実施が難しく、夏の東京オリンピック、冬の北京オリンピックの関連番組など、生放送の番組が多かったことが影響。 ドラマのト書(とがき)や情景描写、出演者の表情などを、ナレーターが副音声で解説。 NHKでは映像による表現の比重が高い「朝ドラ」「大河ドラマ」などをはじめ、「100カメ」「ワイルドライフ」といったドキュメンタリーなど、音声解説の効果が高い番組を選び、より楽しんでもらえる効果的な解説を付与することを優先する方針で臨んでいます。 普及目標については、生放送への付与が困難であること、主音声の隙間に付与するため効果的に付与できる番組が限られることなどから、付与の比率を大幅に上げることは難しい状況。 (スライド7枚目) 解説放送の取り組み(2) 外国語インタビュー等の吹き替え 外国人の発言については、多くの番組で吹き替えを原則、外国人の会見などを中継で伝える場合には同時通訳をつけて放送しています。 ニュースの場合は、「吹き替えを準備する時間がない」という事態もあります。こうした場合には、インタビュー前のコメントで、内容について短く触れるなどして、分かりやすい放送の実現に努力しています。 スポーツ中継での解説音声制作・配信 NHK放送技術研究所で、スポーツ中継の試合状況を解説する音声を、利用者のスマホにリアルタイム配信する「解説音声制作・配信システム」を開発しました。 10月のプロ野球日本シリーズにおいて実験を行い、参加者へのアンケートを実施。約7割から高評価をいただきました。 2024年のパリ五輪での活用を目指し、解説音声に求められる情報を精査するとともに、解説テキスト制作の更なる自動化を図ります。 (スライド8枚目) ニュース速報の読み上げについて(1) (フロー図ここから) ニュース速報文が、視聴者の元に届けられるまでの流れを示す。 途中、@、A、Bは、実現方法を示し、それぞれ課題を後述する。 元データとして、かな漢字まじり文のニュース速報文がある。 これを音声にする方法として、@人が読む、A音声合成する の2つの方法がある。音声合成する場合は、読み方とイントネーションは人手による対応となる。 B生成された音声データが放送で送られる。データ放送を利用し、音声別チャネル、音声ファイルA、音声ファイルB が、すべてのデジタルテレビに送り届けられ、ニュース速報の音声を聞くことができる。 (フロー図終わり) ニュース速報の読み上げ音声をデータ放送の仕組みで自動再生することは、技術的に可能だが運用に課題。 元データとなるニュース速報文は、仮名や漢字が混じったテキストからなる任意文。 音声にする方法は、@「人が読む」では、24時間スタンバイが必要。A「音声合成する」では、読み方、イントネーションは人手による対応が必要。音声合成で100%の精度を出すことはできず、緊急時に読み間違えのリスクがあります。 (スライド9枚目に続く) (スライド9枚目) ニュース速報の読み上げについて(2) (表ここから) 音声データを放送するための実現方法3つと、その懸念点を示す。 B−1 実現方法 本線音声と読み上げ音声をMixした音声ESを追加送出し、BMLでそのESに自動で切り変え/切り戻し 対応受信機 ARIB運用規定(TR-B14/B15)に準拠したデジタル放送対応受信機すべて 懸念点 ・放送送出設備の大規模改修 ・送出中の番組の音声ES構成に応じた対応が必要 B−2 実現方法 読み上げ音声をAAC音声ファイルにしてデータカルーセルで伝送し、データ放送の仕組みで自動再生 対応受信機 ARIB運用規定(TR-B14/B15)に準拠したデジタル放送対応受信機すべて 懸念点 ・データ放送設備の改修 ・再生中は本線音声が止まる ・他データ放送コンテンツを圧迫 B−3 実現方法 読み上げ音声をAIFF-Cファイル(12 kHz(キロヘルツ)、96 KB(キロバイト)、数秒の細切れファイル)にしてデータカルーセルで伝送し、データ放送の仕組みで自動再生 対応受信機 ARIB運用規定(TR-B14/B15)に準拠したデジタル放送対応受信機すべて 懸念点 ・データ放送設備の改修 ・本線音声と同時に再生できる(混合バランスの制御は不可) ・断続的な読み上げとなる(音質悪い) ・他データ放送コンテンツを圧迫 (表終わり) 音声データをデータ放送の仕組みで再生する際にも懸念点があり、運用に至っていないのが現状です。 ニュース速報について、人命に関わる緊急性の高いものについては、速報テロップの表示後、速やかに中断して特設ニュースを設け、アナウンサーが、内容を伝えます。 ニュース速報として画面に出す情報は、NHKニュース・防災アプリでもリアルタイムで提供しています。 スマートフォン等では速報はプッシュ通知で通知され、振動等で利用者に伝えられます。 端末やアプリの読み上げ機能を活用すれば、速報の内容を自動的に読み上げることができます。 (スライド10枚目) 手話放送の取り組み(1) (表ここから) 令和3年度(2021年度) 1週間当たりの手話放送時間 総合テレビ 1時間16 分 Eテレ 4時間8分 (表終わり) (写真) 手話ニュースの放送画面。画面右側に縦書きで「低気圧・強い寒気 日本海側中心に大雪」のレターボックスが表示され、中央に手話通訳者が立っている。 (写真終わり) 手話ニュース 「手話ニュース」と「手話ニュース845」では毎日のニュース、「週間手話ニュース」では1週間の出来事をまとめて、「こども手話ウイークリー」はこども向けに、毎回1つのテーマを掘り下げています。 会見等での手話通訳 国民の関心が高いイベントや会見等を生放送する際、主催者などが現場で手話通訳を用意している場合は、主催者など関係者とよく協議した上で、原則として、その手話通訳を放送で付与しています。 総合テレビのニュースへの手話付与については、体制面・運用面での課題が非常に多く、引き続き検討課題になっています。 (スライド11枚目) 手話放送の取り組み(2) (画像) 「手話で楽しむみんなのテレビ」の番組ホームページ。 手話通訳者2名がそれぞれ、「プロフェッショナル 仕事の流儀」で特集された造園職人と人形操演者、集中治療医と清掃員について手話で説明する。 (画像終わり) 手話で楽しむみんなのテレビ NHKの人気番組を手話で楽しみたいという声に答えるシリーズです。 「サイエンスZERO」や「プロフェッショナル 仕事の流儀」などを5分程度にまとめた動画に、手話をつけてEテレで放送、NHKラーニングというネットサービスで配信しています。 今年度中にノウハウを蓄積することで、来年度以降、対象番組の拡大を検討しています。 (スライド12枚目) 手話放送の取り組み(3) (画像) 手話CGのサンプル画像。天気・防災手話CGは「NHKオンライン」、「ニュース・防災」アプリからアクセス可能。 「宮城県に土砂災害警戒情報が発表されました」というテキストが画面下に表示され、その内容を手話CGで表示している。 (画像終わり) 大雨特別警報や津波警報など、気象庁から発表されたデータをもとに、手話CGを自動生成し、24時間365日、災害時にいち早く避難・警戒をよびかけています。 全日本ろうあ連盟や全難聴のご協力を頂き、利用意向調査を実施しながら、今後は震度5弱以上の震度速報など、甚大な被害が想定される災害を中心に、情報拡充を行う予定です。 (スライド13枚目) わかりやすい表示等の取り組み(1) (画像) 一般的なフォントとUD(ユニバーサルデザイン)フォントとの比較。 UDフォントでは、カタカナの「ブ」の文字の濁点を「フ」の文字から少し離して、「フ」の文字の折れの部分と平行の向きにして、読みやすくしている。 (画像終わり) ユニバーサルデザイン NHKでは、今年4月から、「おはよう日本」や「ニュースウォッチ9(ナイン)」など、ニュース・報道番組を中心に、ユニバーサルデザインを大幅に拡充しました。 画面に表示するオープンキャプションの文字を、読みやすい「ユニバーサルデザインフォント」にしました。 特定の色を見分けにくいと感じる方やお年寄りにも伝わりやすい色彩を採用しました。 局内用に「放送メディアにおけるユニバーサルデザイン ハンドブック」を作成し、5月から全局に配布しております。 (スライド14枚目) わかりやすい表示等の取り組み(2) 字幕の表現・表示 クローズドキャプションの字幕については、NHK関連団体(NHKグローバル・メディア・サービス)が契約するモニターとともに、話者による色分け、表示位置の最適化、擬音などの表現方法についてリサーチを継続的に実施し、字幕制作に反映しています。 字幕の行数、文字数、位置については、放送設備の仕様の範囲内で、番組に最適な字幕表示を実施しています。 手話の表現 手話ニュースでは、日々の放送や放送後の反省会で、手話の表現について検討・改善を行っております。 (スライド15枚目) インターネット・サービスの取り組み NHKオンデマンド NHKオンデマンドのサイトでは、字幕をオン・オフして利用できる番組を配信中です。 ここ数年新たに配信されたほとんどの番組が字幕で視聴可能です。 NHKプラス 字幕放送を実施している番組では同じ字幕を配信しています。 見逃し番組配信では、放送では音声よりも表示が遅れる生放送番組の字幕について、AI技術を活用して字幕表示のタイミングを番組の音声に合わせて配信する「生字幕同期サービス」を提供しています。 現在は「おはよう日本(7時台)」「正午ニュース」「ニュース7」「ニュースウォッチ9」の4番組。他の番組についても引き続き検討していきます。 (スライド16枚目) NHKでは10月に経営計画の修正案を公表しました。 このなかでは、2023年度末までに2Kの衛星波のうち1波を削減し「新BS2K(仮称)」、「新BS4K(仮称)」に再編する方針です。 これにともないアクセシビリティに関する普及目標も別途検討が必要になると認識しています。 新しい衛星波の具体的なコンテンツや、2026年に運用がはじまる新しい放送センターの字幕室の能力を踏まえながら、新たな拡充計画を検討していきたいと考えています。 NHKでは、幼児、子どもからお年寄り、目や耳に障害のある方など、すべての視聴者が、見やすく、聞きやすく、分かりやすく、安心して視聴できる「人にやさしい」放送・サービスの充実を公共放送の使命ととらえ、経営計画でも重点事項にかかげて、拡充に努めています。 引き続き視聴者のみなさまのニーズに寄り沿い、対応していきたいと考えています。