資料名 資料1 視聴覚障害者等向け放送の充実に関する研究会 報告書 骨子(案) 令和5年1月27日 情報流通行政局 地上放送課 衛星・地域放送課 <1ページ> 報告書 骨子(案) 1.はじめに 2.現状 (1)国際動向・政府全体の動き @障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律 A障害者の権利に関する条約 (2)我が国における視聴覚障害者等の状況 @視聴覚障害者の状況 A高齢化の状況 (3)我が国における視聴覚障害者等向け放送の状況 @字幕放送の現状及び放送事業者の取組 A解説放送の現状及び放送事業者の取組 B手話放送の現状及び放送事業者の取組 C衛星放送の現状及び放送事業者の取組 D有線テレビジョン放送事業者の取組 (4)総務省の取組 @字幕番組、解説番組、手話番組等の制作促進 (ア)字幕番組、解説番組、手話番組等の制作支援 (イ)生放送字幕番組普及促進助成金 Aテレビジョン放送における手話通訳育成に関する調査研究 (5)視聴覚障害者等向け放送に関する情報通信技術動向 @字幕放送 A解説放送 B手話放送 (6)諸外国における視聴覚障害者等向け放送の状況 @米国 A英国 B韓国 3.課題 (1)字幕放送の充実 @生放送番組への字幕付与 A字幕の品質 B要約の放送 (2)解説放送の充実 @文字のみで表示される情報の音声化 Aテキスト情報を活用したニュース速報の読み上げ B解説の品質 (3)手話放送の充実 @人員及びコスト A手話放送に適する番組内容 B手話の品質 Cクローズドサイニング (4)その他の論点 @地域格差 A災害発生時等の対応 B生放送番組に対する字幕付与設備に係る補助事業 C認知度の向上 D幅広い障害者に対する配慮 Eインターネットを通じた情報保障 Fインターネットコンテンツにおける対応 G衛星放送における対応 4.提言 <2ページ> (1)国際動向・政府全体の動き @障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律 ・「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」(令和4年法律第50号。障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)が令和4年5月25日に公布・施行。 A障害者の権利に関する条約 ・平成20年5月、「障害者の権利に関する条約」が発効し、我が国では平成26年 1月に批准書を国連に寄託、平成26年2月に我が国について発効。 ・平成28年6月に「条約に基づく義務を履行するためにとった措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する包括的な報告」を国連の「障害者の権利に関する委員会(障害者権利委員会)」に提出。 ・令和4年8月に障害者権利委員会による報告の審査が行われ、同委員会は同年10月に総括所見を公表。 (2)我が国における視聴覚障害者等の状況 @視聴覚障害者の状況 ・聴覚障害者は、平成23年(2011年)に約32万人、平成28年(2016年)に約34万人。 ・視覚障害者は、平成23年(2011年)に約32万人、平成28年(2016年)に約31万人。 A高齢化の状況 ・令和4年(2022年)の65歳以上の高齢者人口は3,627万人となり、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は29.1%。 ・令和3年(2021年)の高齢者のいる世帯は2,580万9千世帯であり、全世帯に占める割合は49.7%と約半数。 ・また、高齢者単独世帯が742万7千世帯であり、高齢者のいる世帯の28.8%が高齢者の単独世帯。 <3ページ> 2.(3)我が国における視聴覚障害者等向け放送の状況 @字幕放送の現状及び放送事業者の取組 ・令和3年度の実績 ・NHKにおける取組 - 早く正確に字幕を付与できる体制の構築 - 緊急ニュースの放送が予想される場合の体制の構築 - すぐに字幕を付与できない場合、文字スーパーやL字放送での表示による対応 - 地域格差の解消に向けて、AI音声認識装置を活用した自動生字幕放送に係る実証実験の実施 - 国会中継への字幕付与 - 生放送でも字幕が遅れずに表示される「ぴったり字幕」の改良 - スポーツ番組等における要約の字幕の付与 ・毎日放送における取組 - 普及目標対象となる番組以外の番組への付与 - 生字幕を付与する体制の強化 - AI生字幕付与システム「もじぱ」の活用 ・広島ホームテレビにおける取組 - 字幕付きCMへの対応 (4ページに続く) <4ページ> A解説放送の現状及び放送事業者の取組 ・令和3年度の実績 ・NHKにおける取組 - 外国語インタビュー等の吹き替え - スポーツ中継での解説音声制作・配信 ・フジテレビジョンにおける取組 - 配信版への解説の付与 - 地上波では放送されない番組への解説の付与 - 新たなジャンルへの解説の付与 - 系列局への協力とさらなる解説放送制作会社の開拓 - 質の向上に向けたミーティングの開催 B手話放送の現状及び放送事業者の取組 ・令和3年度の実績 ・NHKにおける取組 - 国民の関心が高いイベントや会見等の際の現場の手話通訳の放送 - 人気番組をまとめた動画に手話を付与し、地上波放送またはネット配信 - 手話CGの自動生成 ・テレビ東京における取組 - 見やすさの観点からのレイアウト等の工夫 - 手話に要する時間も踏まえた原稿の秒数の調整 - 文字や画像の情報がある場合であっても手話を付与 (5ページに続く) <5ページ> C衛星放送の現状及び放送事業者の取組 ・令和3年度の実績 ・BSフジにおける取組 - 2K放送に字幕が付与されていれば4K側にもリアルタイムで変換しながら字幕を送出 - 2K放送と4K放送がサイマル放送ではない場合、それぞれ字幕素材を作成・登録し送出 - 字幕付きCM素材は受入れ可能 ・ジェイ・スポーツにおける取組 - 番組の内容や制作期間に応じた付与体制(リスピーカーによる音声認識方式又は手入力方式)の構築 - 外部委託による運用管理の負担軽減 - リスピーカーとして若手スポーツ実況アナウンサーを多数起用することで運用管理スタッフのリスピーカーの知識、技術教育の負担を軽減 ・衛星放送協会会員の映画専門チャンネルにおける取組 - 同一番組の「吹き替え版」「字幕版」の双方を同月内に編成し、「吹き替え版」の電子番組表等の番組情報欄において「字幕版」の放送情報の案内を実施 D有線テレビジョン放送事業者の取組 ・有線テレビジョン放送事業者の取組 - コミュニティチャンネル放送をベースとした地域情報発信におけるユニバーサル対応の実施 - 字幕放送対応に向けたAIによる文字起こしや多言語化のための業界団体による支援の実施 <6ページ> 2.(4)総務省の取組 (4)総務省の取組 @字幕番組、解説番組、手話番組等の制作促進 (ア)字幕番組、解説番組、手話番組等の制作支援 ・字幕番組、解説番組、手話番組等を制作する事業者に対し、その制作費について助成金を交付。 ・令和4年度には、民間放送事業者128者から申請のあった56,752本の番組に対して約5億1,966万円の交付を決定。 (イ)生放送字幕番組普及促進助成金 ・大規模災害時における緊急生放送番組等に字幕を付与する設備の整備を行う者に対して、助成金を交付。 ・令和4年度には、民間放送事業者3者からの申請があり、約1,905万円を交付。 Aテレビジョン放送における手話通訳育成に関する調査研究 ・テレビジョン放送における手話通訳人材を育成するための研修等を実施。 ・令和4年度には、36名(25都道府県)を対象に研修を実施。 <7ページ> 2.(5)視聴覚障害者等向け放送に関する情報通信技術動向 @字幕放送 ・NHKメディア開発企画センターの取組 - 自動生字幕放送トライアル ・ヤマハの取組 - テレビ音声の字幕を自動で生成するシステムの開発・実証 A解説放送 ・NHK放送技術研究所の取組 - スポーツ中継での解説音声制作・配信 B手話放送 ・NHKメディア開発企画センターの取組 - 天気・防災手話CG試験提供 <8ページ> 2.(6)諸外国における視覚障害者等向け放送の状況 @米国 ・字幕放送等の義務づけ状況及び現状 ・災害発生時の対応 ・その他(品質、インターネット配信等) A英国 ・字幕放送等の義務づけ状況及び現状 ・災害発生時の対応 ・その他(品質、インターネット配信等) B韓国 ・字幕放送等の義務づけ状況及び現状 ・災害発生時の対応 ・その他(品質、インターネット配信等) <9ページ> 3.(1)字幕放送の充実 @生放送番組への字幕付与 ・自動生字幕の認識精度は100%ではないことから、修正を行うための専任スタッフの配置が必要となるという課題がある。 ・自動生字幕の付与を促進するには、自動字幕の誤りが訂正放送の対象となるか等の検討を進めていくことも重要。 A字幕の品質 ・字幕の話者名表示、文字サイズ、色、コントラスト、行数、 1行当たりの字数等について、研究が必要。 B要約の放送 ・音声を完全に文字に変換した場合、文字数が多くなり、視聴者が読み切れないという課題があり、内容を一定程度要約することが考えられる。 ・NHKにおいては、スポーツ中継において一部導入済み。 ・一方、ニュースや国会中継などでは正確性や公平性を毀損するおそれがあるという課題がある。 <10ページ> 3.(2)解説放送の充実 @文字のみで表示される情報の音声化 ・ニュース速報の内容やテロップ、外国語の日本語訳字幕など、文字のみで表示される情報を音声化できないか。 ・放送事業者においては、以下のような取組を実施。 - 外国人のインタビュー等の発言については吹き替えを原則とする。 - 会見などを中継で伝える場合は同時通訳を付与する。 - 吹き替えを準備する時間が無いときはインタビュー前のコメントで内容に触れる。 - 特に生命に関わる情報は必ずアナウンサーが丁寧に読み上げる。 Aテキスト情報を活用したニュース速報の読み上げ ・ニュース速報のテキスト情報を外部に出すことでテキスト情報の読み上げを実現する、ニュース速報の読み上げ音声をデータ放送の仕組みで送信するといった対応が可能ではないか。 ・NHKにおいては、ニュース防災アプリを通じて、ニュース速報をプッシュ通知で受け取ることを可能としており、端末やアプリの読み上げ機能を活用することで、速報の内容を自動的に読み上げることが可能。 ・一方で、ニュース速報の音声データの送信に関しては、以下の課題がある。 - ニュース速報文を読んで音声化するには、24時間の人員体制が必要。 - 音声合成では読み間違えのリスク。 - 音声データを送るには送出設備の大規模な改修が必要。 - データ放送のコンテンツへの影響。 B解説の品質 ・幅広い視聴者に分かりやすい解説となるよう、解説の音質、速度等についての研究が必要。 <11ページ> 3.(3)手話放送の充実 @人員及びコスト ・手話通訳者には極めて高い専門的知識と技能が必要であり、絶対数やコストの課題がある。 ・災害時に緊急で人員を手配し、体制を構築することは極めてハードルが高い。 A手話放送に適する番組内容 ・長時間番組や複数話者への対応、テンポの速い番組等では課題がある。 B手話の品質 ・幅広い視聴者に分かりやすい手話となるよう、手話の表示位置、大きさ、通訳者の服装や背景等についての研究が必要。 Cクローズドサイニング ・手話表示をオン・オフできるクローズドサイニングが可能となるような規格の標準化等の取組が必要。 <12ページ> 3.(4)その他の論点 @地域格差 ・地上系民間放送事業者のうち、在京キー局、在阪準キー局、在名広域局を除く県域局は全国に101局存在し、全体の局数の88.6%を占める。 ・令和3年度の実績において、字幕放送については目標未達が9局あり、解説放送については46局が努力目標値に未達。 A災害発生時等の対応 ・災害発生時やパンデミック発生時における体制の確保が必要。 ・自動字幕について、命に関わる緊急放送で「誤報」のジレンマとどう向き合うかが課題。 ・放送事業者において独自に手話を用意する場合、24時間体制での人材の確保や受入れ体制が課題。 B生放送番組に対する字幕付与設備に係る補助事業 ・設備やシステムを導入した際の助成金等の支援が必要。 C認知度の向上 ・高齢者等の間でその有用性が十分に認知されておらず、利用が進んでいない。 ・メディアを通じて紹介する、リモコンのボタンを分かりやすくする、販売店から使い方を説明するといった取組が必要。 D幅広い障害者に対する配慮 ・盲ろう者、知的障害者、発達障害者等の幅広い視聴者を想定した配慮が必要。 Eインターネットを通じた情報保障 ・スマートフォンを活用した「セカンドスクリーン型情報保障」を解説放送の付与率に入れてはどうか。 Fインターネット動画コンテンツにおける対応 ・インターネット動画コンテンツの情報アクセシビリティ向上も必要。 G衛星放送における対応 ・現行の指針策定後に開始された4K放送・8K放送については、現在具体的な目標は設定されていない状況。 ・衛星放送事業者全体の字幕等の付与率は指針策定時から向上しているが、個社ごとに取組には濃淡がある。