視聴覚障害者等向け放送の充実に関する研究会 第2回 議事要旨 1 日時:令和4年12月13日(火曜日)14時から16時まで(途中休憩あり) 2 場所:Web会議による開催 3 出席者 (1)構成員 音座長、山下座長代理、岩下構成員、近藤構成員、世木構成員、吉田構成員、新谷構成員(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会)、原田構成員(日本障害者リハビリテーション協会)、堀米構成員・瀬川氏(全日本ろうあ連盟)、三宅構成員(日本視覚障害者団体連合)、小原構成員(NHK)、矢口構成員(日本テレビ)、竹内構成員(TBSテレビ)、正岡構成員(フジテレビ)、二階堂構成員(テレビ朝日)、上野構成員(テレビ東京)、八木構成員(毎日放送)、土屋構成員(中京テレビ)、秦構成員(広島ホームテレビ)、菅野構成員(BSフジ)、長谷構成員・熊井氏(J SPORTS)、岡本構成員(衛星放送協会)、二瓶構成員(日本ケーブルテレビ連盟) (2)オブザーバー 内閣府 政策統括官(政策調整担当)付参事官(障害者施策担当)付、厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 企画課 自立支援振興室、一般社団法人電子情報技術産業協会 (3)議題(4)の説明者 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 五味氏 (4)総務省 山碕大臣官房審議官、林情報流通行政局総務課長、飯倉放送政策課長、松井地上放送課長、安東衛星・地域放送課長、金子地域放送推進室長、福田地上放送課企画官、澤谷地上放送課課長補佐 4 議事概要 (1)第1回で出された利用者の立場からの意見 事務局から、資料1「第1回で出された利用者の立場からの意見」に基づき説明。 資料2に基づき、原田構成員(日本障害者リハビリテーション協会)から説明。 本研究会に参加しない障害関係団体から利用者からの意見として幅広く預かっている。 前回の発言を補足・補強するものとして、改めて申し上げたい。 全国手をつなぐ育成会連合会から、知的障害や発達障害のある方に関して次の意見があった。 災害時に、標準化されたピクトグラムなどの絵等を利用して情報を伝えることで、文章に弱い方も状況を把握しやすいのではないか、またこどもや外国人にも役に立つ情報になるのではないか。 また、漢字にルビをつける対応だけでなく、理解しやすい言葉に代える、括弧で解説する等の配慮もあるのではないか。 テレビのビープ音、警告音等に驚いてしまう方がいるため、使用する周波数等を含め、あまり物々しい感じがしないように配慮されてもよいのではないか。 手話放送に関して、災害時も含め一層の充実をしてほしい。 また、各地にある聴覚障害者情報提供施設は幅広いノウハウを持っており、特に地方局については連携するとよいのではないか。 「目で聴くテレビ」の活用も引き続きお願いしたい。 手話放送の実績を公表することと併せて、それぞれの放送事業者の取組等についても情報共有してほしい。 テレビジョン放送における手話通訳育成についても、引き続き一層の充実をお願いしたい。 日本知的障害者福祉協会からは次の意見があった。 緊急性や公共性の高い情報を誰にでも分かりやすい内容とし、視覚的に工夫された表示が必要ではないか。 災害情報等で危険な状況は伝わっても、具体的にすべきことが伝わらない場合がある。 「今は何をしてください」「逃げてください」などと明確に伝える配慮があるとよいのではないか。 これは情報のユニバーサルデザインにも?がることと考えている。 全国盲ろう者協会からは次の意見があった。 盲ろうという障害は、視覚障害者が病気や加齢で聞こえなくなる場合や、逆に聴覚障害者が見えなくなる場合があり、また、高齢になり目と耳の両方の機能が落ちていくことで誰でもなり得る障害である。 しかも、単なる視覚と聴覚の重複障害ではなく、独自の困難や特性がある障害である。 少し見える、少し聞こえるという方も多くいるため、字幕については話者の明確化、字幕の色・大きさ・コントラスト・位置・表出速度、手話通訳については位置取り、服装、背景等の見やすさ、解説放送については音声の質、高低や大きさ、読み上げの速度等の配慮が求められる。 全く見えない、全く聞こえない全盲ろう者の場合は触覚が頼りになるが、手で触るコミュニケーション方法でITが活用できるものとして点字ディスプレイがある。 字幕や解説等のデータを点字ディスプレイで取得できるような機器や技術の開発もお願いしたい。 コストやマーケットの問題で普及が進まない面もあるため、是非国からのバックアップを頂きたい。 今申し上げたことの中には、ガイドラインそのものの範囲には直接含まれないものもあろうかと思うが、是非研究会で議論・検討してほしい。 情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法は、障害者基本法の規定に基づき、あらゆる障害者を対象にしている。 また、同法に基づき、12月21日から内閣府を含む5つの担当省庁において協議の場が開始される。 これは同法第11条の規定によって、情報機器やサービスの開発・普及や質の向上を図ることを目的としている。 こうした動向からも、今後放送も含めた情報サービスにおいては幅広い方々を想定したアクセシビリティの向上が一層求められる。 (2) 放送事業者等からの意見 資料3に基づき、民間放送事業者構成員から説明。 八木構成員(毎日放送) 字幕放送への対応について、在阪局の事例を紹介する。 まず、在阪準キー局4局及び毎日放送の字幕付与率の推移について、普及目標の対象となる番組における字幕番組の割合は、2017年度には99%、2019年度から現在までは100%で推移している。 総放送時間に占める字幕放送時間の割合については、在阪準キー局4局では現在67.3%。 毎日放送では54.4%と在阪準キー局4局の中では少し少ないが、今後伸ばしていきたい。 毎日放送では字幕付与拡大に向けて、普及目標対象となる番組以外でも、深夜のドラマ、アニメ等に積極的に字幕付与を行っている。 また、生字幕を付与する体制を強化しており、現在、生放送情報番組では土曜日の朝に放送している全国ネット番組の「サタデープラス」と関西ローカル番組の「せやねん!」で生字幕付与を行っている。 スポーツ生中継でも生字幕付与を積極的に実施しており、野球、ゴルフ、ラグビー等の生中継で現在100%実施している。 ローカルニュース番組では、キー局のTBSテレビが開発したAI生字幕付与システム「もじぱ」を導入して、生字幕付与に取り組んでいる。 機材の増強、人員確保等は引き続き取り組んでいる。 「もじぱ」を活用した事例を紹介する。 2019年から実証実験が実施されてきた、音声解析AIを活用してテレビ字幕を自動的に生成するシステム「もじぱ音声認識テキスト化システム」が、2020年11月にTBSテレビで正式に導入された。 「もじぱ」は音声からリアルタイムで自動的に字幕を生成して、担当者が生成された字幕をディスプレイ上で確認して、内容を微調整して字幕を手動で付与している。 報道番組に特有な時事用語や人名等は事前に登録し、できる限り字幕として修正なく認識させることも可能なシステムとなっている。 毎日放送では、生字幕付与率の向上につながることから、2021年度から「もじぱ」の導入を検討し、今年6月にテスト運用、7月に本格稼働した。 現在は平日の昼11時50分頃のローカルニュース枠(約3分間)で生字幕付与を実施しており、さらに拡大すべく検討中である。 ニュース原稿を事前に手元に用意し、自動生成された字幕をオペレーター2人が内容確認・誤字修正を行い、送出ボタンを押すという形で、最終的な責任は人にある。 現在のAIの精度では、1分間のニュースで2、3か所の修正が入ることが多い。 今後の課題については、昨今、生放送の情報番組がタイムテーブルの中で大きなウエイトを占めているため、生字幕への対応強化が課題となっている。 ただ、オペレーターの確保、金銭の負担増等はローカル局では厳しいのが実情。 出演者が多い生放送情報番組では、オペレーターを増やすことで字幕自体は作成可能だが、全て画面上に送出するのは厳しく不完全な状態になってしまう。 AIを活用したリアルタイム生字幕についても、現時点では最後に人間によるチェックが必要となっている。 そのため、例えば深夜に緊急の送出が必要な場面で「もじぱ」の電源を入れれば、生字幕を出すことはシステム上可能だが、正しい字幕を出すという最終的な放送局の責任がまだ果たせていないと判断しており、そちらには踏み込んでいない。 生命・財産に関わる災害時の対応が最重要課題と認識しているので、早急にこのような形でAIも含めた緊急対応等をしっかりと取ることが重要と考えている。 正岡構成員(フジテレビ) 解説放送への取組について発表する。 フジテレビにおける過去5年間の解説付与率の実績は、2017年度が14.5%、2018年度が15.1%、2019年度が17.5%、2020年度が少し下がって13.7%、そして2021年度が18.3%だった。 フジテレビにおける今後の取組について説明する。 解説付与は2027年度まで右肩上がりでの拡充計画を予定していたが、2020年度における付与率が前年度から3.8%も減っている。 元々スケジュールの問題で解説を付与できる番組は限られているが、コロナ禍によって、収録・編集スケジュールに大幅な狂いと変更が生じた。 これにより、納品遅延が頻発し、解説を付与できる番組が前年度より激減したことが理由である。 そのため、1番目の取組として、番組制作体制の見直しを行った。 その結果、2021年度は月曜9時、木曜10時の全ての連続ドラマに解説を付与することができた。 2番目の取組として、地上波の番組のみならず、配信版の番組に字幕と解説を付与した。 今クールで放送している木曜10時のドラマ「silent」においては、主人公が聴覚障害を持っているという設定のため、放送局として字幕放送と解説放送はマストと考えた。 放送局の自主的な発意により、社内各所全ての協力の下、通常の地上波放送に加えて、リアルタイム配信を除く全てのAVOD(Advertising Video On Demand)・SVOD(Subscription Video On Demand)の配信版でも字幕と解説を付与して放送している。 3番目の取組として、地上波では放送されない番組に字幕と解説を付与している。 具体的には、11月17日から3回にわたって配信されている「silent」のドキュメンタリー番組について、視聴者から高い要望があったため、積極的に字幕と解説の付与を決定した。 4番目の取組として、現在ドラマ、アニメ、邦画等に積極的に解説を付与しているが、この3つのジャンル以外にも新たに解説を付与することを検討した。 その結果、2022年4月から毎週金曜23時から放送しているバラエティ番組「全力!脱力タイムズ」への解説付与を開始している。 今後も様々なジャンルの番組への解説付与を検討していきたいと考えている。 5番目の取組として、解説放送の認知の向上と地域格差の是正を図っており、系列局が制作する全国ネットの番組はもちろんのこと、ローカル番組でも解説を付与したいという相談・要請を受けた場合は、積極的に協力している。 これまでフジテレビは共同テレビに解説番組の制作を全て委託していたが、2019年度からFCC(フジクリエイティブコーポレーション)を追加しており、現在2社で解説付与を行っている。 6番目の取組として、解説放送の質の向上を目指して定期的にミーティングを実施している。 例えば、ドラマ「silent」では手話で会話を行うシーンが多くある。 手話の会話を解説放送でどのように対応するか、放送開始の2か月以上前から議論していた。 案が2つあり、1つは「手話で何々と会話している」と客観的にナレーションをつける案、もう1つは手話の台詞の部分をボイスオーバーする案。 早めに台本や映像を入手して、2案のいずれがよいか検討を重ねてきた。 結果的に後者の手話部分をボイスオーバーする形式を採用し、複数、時には4、5名のアナウンサーに発注して解説音声を収録している。 また、解説を担当するアナウンサーは非常に意識が高く、収録の前に綿密な打合せを行うようにしている。 最後に今後の課題や検討項目について。 スポーツ番組への生解説、データ放送との連携、文字スーパーの自動音声化についての研究、そして解説放送のさらなる質の向上について今後検討したい。 上野構成員(テレビ東京) 手話放送への取組について、テレビ東京の事例を発表する。 テレビ東京では、現在4つのレギュラー放送番組で手話を付与している。 このうち、「ウォッチ!7」、「東京GOOD」、「東京交差点」はいずれもVTR番組であるが、今年4月から新しく手話放送を始めた「TXNニュース」について説明する。 実際のニュース制作の流れ、制作における工夫や課題、将来的な展望と課題について説明していきたい。 「TXNニュース」は毎週日曜17時20分から17時30分までの報道番組であり、最初の5分がテレビ東京以外の系列全局で同じニュースが流れるネットゾーン編成である。 後半の5分はローカルゾーンで、若干のニュースや関東地区の天気予報を主に伝えている。 実際のニュース制作の流れについて説明する。 手話通訳者は東京手話通訳派遣センターから毎週派遣されており、16時頃に来局する。 当日のニュース構成や原稿の配布、VTRの編集が16時半頃に終わり、手話通訳者は全てのVTRを確認している。 カンボジアで開催されたASEAN関連首脳会議の最中で、放送時間ぎりぎりまで新しいニュースが入り、直前で原稿を差し替える可能性もある中、準備していただいた日もある。 そして、本番前に通しのリハーサルを行い、最終的な動きを準備する。 天気予報の天気図の動きも、気象予報士の動きを把握しながら位置関係を手話に落とし込んでいく。 原稿は、アナウンサーが書いた原稿がそのまま画面に映るプロンプターを見ながら、目線を下げないように工夫して表現している。 ニュース放送後も必要に応じて反省会を開いて、よりよいオンエアになるように意見交換を行っている。 続いて、ニュース制作における工夫について説明する。 今年4月、テレビ東京では生放送番組に手話通訳を初めて導入した。 半年が経過し、手話放送に対する経験や知見を蓄えてきている。 まず、ワイプの大きさや背景色、手話通訳のサイズ、スタジオの位置、カメラのカット割り、テロップ等を全て手話に対応した仕様に変更した。 ニュース制作において最も難しいことは読み尺の調整である。 手話はアナウンサーのコメント読みよりも平均して1、2秒程度長いため、場面に応じてクッション尺を設定している。 特に難しいのが、外国語の固有名詞が頻繁に登場する国際ネタ、かつ新しいニュース等は、指文字の使用やニュースの背景まで含めて手話を考えてもらう必要があるので、効果的に伝わるかどうか、手話通訳者と毎回慎重に尺の相談をしている。 今までの発想ではアナウンサーの尺によってニュースの構成を変えていたが、手話を優先して全体構成の秒数の設定を決めるようになった。 それから、天気予報やコロナ感染者数の統計を表示する際も、文字や画像の情報に加え、ニュアンスが正確に伝わるように手話を必ず入れるようにしている。 その分、全面CGの天気図がサイズダウンして視認性が少し犠牲になっているが、手話の見やすさとのバランスを考慮しながら、最適解を探っている状況である。 最後に、今後について、番組に協力いただいている手話通訳者は、ニュースを制作する番組制作者と同等以上の非常に高いニュースの専門的知識、表現等の技能を持っており、敬服している。 そういった高い技能を持つ手話通訳者の絶対数の問題があるのではないか。 ある手話通訳者は、手話教室への参加から始めて、放送での手話通訳者になるまで6年かかったそうだが、それでも早いとのこと。 人口に比例して手話通訳者の地域偏差もあると思うので、全国各地域の手話放送の高いレベルの需要に応えるには課題があると認識している。 「TXNニュース」は前半5分がネットゾーン編成であり効率的であると感じているが、意識して放送時間を増加させることは別途検討する必要がある。 それ以外にも、複数話者が同時進行で会話する長時間番組では必要な手話通訳者の数が最低4人と大幅に増えることや、収録番組では正確性を担保するために制作に長時間かかってしまう等の課題もある。 災害報道では、緊急で手話通訳者を手配する余裕もなく、今後長期的に取り組んでいかなければならないと認識している。 続いて、緊急災害時におけるユニバーサルサービスの対応と課題について報告する。 テレビ東京では、主に国民の関心事や緊急災害が発生した場合に、放送中の番組に割り込んで臨時ニュースを伝えるカットイン放送や、番組内容を変更して特別報道番組として編成する報道特番対応等、様々な形で速やかに放送する仕組みを持っている。 その中で、難聴者や視覚障害者の方にも的確に情報をお届けする方法について説明する。 まずは、緊急時におけるリアルタイム字幕の対応状況について、テレビ東京は番組全体の字幕制作をテレビ東京メディアワークスに委託している。 現状の総務省指針に基づいて字幕対応は対象番組の100%を維持しているが、それに加えて「ワールドビジネスサテライト(WBS)」のような複数話者のいる番組でもレギュラーでリアルタイム字幕を付与している。 タイムテーブルの状況によってリアルタイム字幕対象番組は度々見直されるが、現状では深夜帯等は生放送番組がなく、付与対象時間帯でもないため、24時間体制ではない。 この状況が即応体制にも関わってくる。 生字幕の付与について、「WBS」、「ひるサテ」等の複数話者がいる番組と「ゆうサテ」、「TXNニュース」等のアナウンサー1人で対応する番組では、人数、コスト、手法が全て異なる。 緊急災害における生放送対応については、4名1チームで専門的な技能を積んだ複数のスタッフによる「WBS」や「ひるサテ」の体制が必要である。 そのため、時間帯によって緊急放送における対応のスピードが異なる。 例えば、昨年10月7日の「WBS」の放送時間内に千葉県北西部を震源とする地震が起きたが、比較的早期の生字幕付与が可能な時間帯であったため、そのままスタッフがカットイン終了後の24時28分まで4人1チームで生字幕を付与した。 逆に、11月3日に北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことでJアラートが発令された際は、朝7時51分から8時52分までカットインを行ったが、生字幕の付与に時間がかかる可能性が高い時間帯のため、スタッフが生字幕の体制を構築できなかった。 したがって、タイムテーブルの編成によって対応状況が変わってくる。 ただ、東日本大震災のような例もあるので、特に大きな災害が起きた場合は、まずは字幕制作者の安全を確保することを前提としつつ、最大72時間の報道特番を想定したローテーションで対応するべく、準備を整えている。 続いて、解説放送や手話放送に関する緊急災害時のユニバーサル放送の取組について、緊急事態における放送では、報道局員を含め体制が十分に整っていないケースが大半であるため、特にアナウンサーからの情報伝達に留意している。 地名や震度をはっきり繰り返しアナウンスすることを主として、例えば、外部の専門家が「御覧の地図のような状況です」とコメントする場合でも地名を口頭で述べる等、音声だけでも十分に情報が伝わるようなアナウンスを心がけている。 また、気象庁や総理官邸での官房長官会見等、重大な発表の際には、できる限り手話通訳者の映像を同時に取り込むことを目指している。 最後に今後の課題について2つ挙げる。 まずは、AI技術をベースとした自動字幕生成技術について、認識率は研究者の多大な尽力により向上しており、テレビ東京でも導入を検討している。 しかし、現状では認識率は100%ではなく、特に、命に関わる緊急災害報道において字幕の情報に致命的な誤りが含まれる可能性を排除できないため、そのジレンマとの向き合い方は放送局全体に関わる課題と捉えている。 また、手話通訳者を手配し、独自に手話通訳者を入れた放送を行うことができるのがベストだが、人材の確保や放送局側の受入れ体制の準備、それに関わる経済合理性の問題等、現実的な課題の克服は引き続き課題となっている。 秦構成員(広島ホームテレビ) ローカル局の現状と課題について発表する。 まず、系列県域局の状況について、具体的な数値は総務省資料を参照されたいが、在京キー局、在阪準キー局、在名広域局では字幕放送の割合がほぼ100%であるのに対して、ローカル局では90%に達していない。 ローカル局の解説放送の割合や手話放送の時間でも在京・在阪・在名局に追いついていない。 地上系民間放送のうち、在京キー局5局、在阪準キー局4局、在名広域局4局を除くローカル局は全国に101局存在しており、全体に占める割合は88.6%と非常に多い。 今回は、ローカル局の現状を説明するため、広島のテレビ局4局に対して調査・確認を行ってまとめている。 字幕放送については、全国ネット番組、8月6日(原爆の日)や年始の特別番組、レギュラーのミニ番組等で実績がある。 解説放送については、全国ネット番組のみ解説放送をそのまま受けて放送している。 手話放送については、広島県からの県の広報番組に手話を入れてほしいという指示に対応しており、各放送局で実績があった。 生字幕システムはいずれの局も持っていないが、それぞれキー局の支援により生字幕対応を行ったことがあると報告を受けている。 緊急災害時にはL字の対応をしている。 字幕放送における課題について、制作時間の増加や機器導入費用の負担、ランニングコスト等がネックになって導入できていない。 解説放送における課題については、人材の確保、作業の時間の増加、納品までの時間の増加がある。 特に、制作の体制の負担の増加、コストの増加等、人材確保の課題が最も大きい。 手話放送における課題は、手話通訳士の人材確保、作業時間の増加、制作の体制の負担増、コストの増加、放送時のチェック体制がある。 配信コンテンツへの対応実績はない。 字幕付きCMに関しても対応を確認したところ、各局とも字幕付きのCMやその訴求のCMを放送して、視聴者、アドバタイザー、広告会社の認知と理解を広げてきた。 地元の広告会社やアドバタイザーにも、今年10月から全てのCM枠で字幕付きCMの受入れを開始したことを文書で案内しており、字幕付きCMの普及促進の実施に向けて動いている。 また、正しく字幕が重畳され、放送されるために、字幕付きCM素材の放送前確認の実施を進めている。 課題について、字幕付きCMの制作方法や配慮すべきこと、対応可能な制作会社について問合せが数件来ており、今後増えてくることが予想される。 ただ、素材の制作や制作期間増が課題であり、アドバタイザーと広告会社の理解が必要となる。 また、テレビ局での字幕の放送前確認のため、これまでのCMの確認、ファイリング等と比べて、時間的・人的な負担が3倍に増えることが課題となっている。 菅野構成員(BSフジ) 民放BS局のユニバーサル放送における現状について報告する。 キー局系民放5局の字幕放送の割合について、2017年以降の推移を表にまとめている。 昨年度、従来からのBS2K放送に関して、普及目標の対象番組における字幕放送の割合(5局の平均)は54.2%、総放送時間における割合は28.8%である。 2018年に開始したBS4K放送の昨年度の割合(5局の平均)は、普及目標の対象番組に対して54.3%、総放送時間に対して27.3%となっている。 このように、BS2K放送とBS4K放送の字幕付与の割合はほぼ同じである。 現状、民放各局ともBS2K放送とBS4K放送はサイマル放送を行っている時間が大半であり、全ての番組において2K放送側に字幕が付与されていれば、4K放送側にもリアルタイムで変換し、字幕が送出される仕組みで運用している。 2K放送と4K放送が非サイマルの時間帯もあるが、それぞれに対して字幕素材を作成・登録すれば字幕の送出が可能となっている。 生放送番組に関しては一部対応している局もあるが、大半が未対応であることも1つの課題である。 字幕付きCMに関しては、字幕素材を登録すれば送出できるため、2K・4Kともに受入れ可能である。 いずれにしても、今後もより多くの番組に字幕付与ができるよう、衛星放送としても役割を果たすべく取り組んでいきたい。 解説放送への取組に関しては、昨年度の付与割合が2K・4Kともに5社平均で対象番組の1.5%であった。 BSフジにおいては2時間ドラマとアニメにおいて解説放送の実績がある。 自社での解説の付与を増やしていかなければなけないと認識しているので、各局とも研究を重ねて、引き続き努めていきたい。 手話放送に関しては各局とも実績がないが、他社の事例をしっかり研究して、実現の可能性を探っていく所存である。 二階堂構成員(テレビ朝日) 最後に現状の課題と今後の取組について説明する。 まず、行政指針の目標達成の状況について、昨年度の民放各局の実績を平均値ではなく局数でまとめ直している。 関東・関西・中京の広域13局について、いずれも目標をクリアできていない局があり、字幕放送は2局、解説放送は3局、手話放送は4局が目標に届いていない。 また、県域局(ローカル局)も同様に、字幕放送の目標に9局が届いていない。 キー局系BS局は、2K放送では2局、4K放送では1局が字幕放送の目標に届いていない。 目標を達成する局も増えてきているが、全ての局が目標を達成するために、キー局が中心となって支援していきたい。 また、目標をクリアした局についてもさらなる番組の拡大に向けて検討していきたい。 研究会の第1回で目標の見直しの提言があったが、まずは全局が現在の目標を達成することを第一に考えている。 その上で、次の行政指針が出される2027年度に向けて、関係者で検討を開始していく方向がよいのではないか。 特に手話放送に関しては、現在の行政指針が策定された5年前と比べて番組が増えているが、ようやくスタートラインに立ったというのが現状。 字幕放送や解説放送と同じような数値目標を設定するためには、今後の手話番組の拡大の状況と合わせて慎重に検討を進めていきたい。 地域格差の解消に向けての現状の課題と今後について、ローカル局は在京キー局、在阪準キー局、在名広域局と比べて経営規模が小さいため、コロナ禍の影響により、経営環境の悪化や設備導入の遅れ、運用人員の確保等の課題が非常に大きい。 そのため、キー局、準キー局等の全国ネットの番組で対応をさらに強化することによって、ローカル局でも字幕放送や解説放送の比率を上げるとともに、キー局が開発した「もじぱ」等のシステムをローカル局へ展開することで運用支援を図っていきたいと考えている。 引き続き、設備やシステムを導入する際の助成金等の対応や、自動字幕システムの開発等の新技術の研究も進めていきたい。 最後に、ユニバーサル放送の質の向上に向けて、全国字幕放送普及推進協議会を発展的に解消して、全国ユニバーサル放送推進協議会に改編した。 字幕放送だけでなく、解説放送や手話放送についても、放送局側の情報共有や技術的な相互協力の新しい枠組みとして強化していきたい。 また、リモート会議という特性を活用して、在京キー局とNHKが実施してきた障害者団体との意見交換会を在阪準キー局や在名広域局に拡大することを検討したい。 拡大によって障害者団体から意見があった質の向上等についても図っていきたい。 新しい技術やシステムの研究についても、全国ユニバーサル放送推進協議会の枠組みでNHKと民放局が歩調を合わせて取り組み、TVer(ティーバー)等の動画配信サービスについても一歩一歩着実にユニバーサル放送の対応の強化を図っていきたい。 資料4に基づき、岡本構成員(衛星放送協会)から説明。 衛星放送協会の現状を説明する。 その後、生放送番組が多い中で字幕の対応を積極的に行っているJ SPORTSから説明する。 衛星放送協会の会員は大半が有料の専門チャンネルであるため、チャンネルによっては、生放送番組多く放送しており、対応の難易度があがる。 そういった中で、「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」に基づいて、字幕等の付与率向上に各社取り組んでいる。 衛星放送協会が行った令和3年度の調査では、BS放送事業者13社21チャンネル、CS放送事業者20社54チャンネルについて、字幕付与率はBS・CS双方の全体平均で約75%となっている。 CS110度放送事業者の平均は約60%である。 BS・CS放送は専門放送であるため、生中継が多いスポーツ等、対応が難しいチャンネルがある。 一方、外国の映画は吹き替え版と字幕版を同月内に放送しており、字幕版の放送情報を案内している。 視聴者のニーズに応じて、複数チャンネルを持っている放送局では同時間帯に吹き替え版と字幕版を放送している。 衛星放送協会では、生放送番組の課題の解決のため、協会内での事例を共有しながら、会員社全体での情報アクセシビリティ等の向上に取り組んでまいりたい。 資料5に基づき、長谷構成員及び熊井氏(J SPORTS)から説明。 J SPORTSの字幕の取組を説明する。 J SPORTSはBS放送の免許を取得してから10年以上、字幕制作に取り組んできており、様々な試行錯誤をしながら、字幕の付与率を上げる努力をしてきた。 当社の制作体制と、協力会社との連携が非常に重要である。 J SPORTSでは4チャンネルの全てで字幕付き番組を放送している。 2012年3月に字幕放送が開始して、今年でちょうど10年を迎えた。 2021年度の字幕付与実績は4チャンネルを平均して80%、「J SPORTS 4」単独では99%であった。 字幕を付与している番組、競技は多岐にわたり、野球、ラグビー、スキー、サイクルロードレース、モータースポーツ等で幅広く字幕付与を行っており、年間4,200時間の字幕放送制作を行っている。 J SPORTSの字幕制作は2チーム体制で行っており、リスピーカーによる音声認識方式の生字幕チームと、手起こしチームがある。 全体の7割を生字幕チームが担当しており、この体制の維持に対して年間1億円程度のコストとなっている。 次に、生字幕放送の制作体制のうち、運用管理の負担を軽減させるための効率化を図る観点から説明する。 J SPORTSの生字幕放送の制作体制は、運用管理スタッフが2名、リスピーカー、文字修正スタッフ及び制作データは全て外部委託している。 この体制の最も大きな特徴は、委託先の文字修正者が音声文字変換設備と修正設備を持ち込んで、文字修正や用語辞書登録作業を行っていること。 これによって、自社で設備を資産として持たずに制作体制を構築している。 以前は設備を自社で購入して、辞書登録作業とスタッフの育成は1人で担当していたが、現体制においては委託先の社内でトレーニングを積んだ修正スタッフが派遣されており、リスピーカーは実際にスポーツ中継番組で活躍する若手のスポーツ実況アナウンサーを多数起用している。 彼らは選手名や競技用語等、競技に関わる情報のインプットや文字変換率向上のための発声トレーニングが全て不要で、従来行っていたスタッフ教育は最初のレクチャー以外には発生せず、負担はかなり軽くなっている。 ディレクターについても、多くの生字幕放送の制作実績を持つ委託先がポストプロダクションとしての強みを生かし、生字幕放送制作時のディレクション、各スタッフ間の調整や制作に関わる資料の入手、運用体制内外のコミュニケーションを行っている。 この3者それぞれの強みを生かした運用体制構築によって、運用管理者の負担は制作全体の進捗管理のみとなっている。 最後に、生字幕放送制作に当たっては、開始序盤は困難なことや試行錯誤は様々あるが、変換ソフトや修正システム等の技術は日々進歩している。 スタッフの知識や経験も増え、文字変換率が向上し、文字修正のタイピングは速くなっていくので、より正確な字幕がより早く放送できるようになっている。 これを長く続けていくことでノウハウを蓄積して、制作者側はもちろんのこと、視聴者にもメリットを受け取っていただけるのではないか。 資料6に基づき、二瓶構成員(日本ケーブルテレビ連盟)から説明。 ケーブルテレビ業界は、コミュニティチャンネル放送をベースに、地域の様々なシーンで日頃から地域住民に寄り添うユニバーサル対応を心がけている。 コミュニティチャンネル放送では、地域における市町村レベルの細やかな日々の生活情報やニュース番組、地域スポーツや祭り等の中継を放送している。 災害対応では、コミュニティFMとの連携やラジオの再送信をしている。 高齢者スマホ教室等、地域情報の受け手となる人のデジタル利活用推進にも努めている。 自治体ニュースや広報番組の手話通訳は、行政からのリクエストに応じて対応を進めているのが実情。 また、スマホアプリで加入者に限らず、広く市民への情報発信を心がけている。 例えば、防災情報として、道路や河川に設置されたライブカメラ映像を配信している。 ケーブルテレビ業界の特徴として、多くの事業者が定点カメラ映像と文字情報による常設のチャンネルを平時から運用することで、災害時に役立つよう努めている。 日本ケーブルテレビ連盟の会員事業者への情報発信支援施策について、2021年6月に発表した「2030ケーブルビジョン」に基づき、本年4月にケーブルテレビ業界のプラットフォーム機能の1つで332社に活用いただいているコンテンツマネジメントシステムであるAJC-CMSに、字幕対応につながるAI文字起こし機能、文字起こしを生かした多言語対応の2つの基本機能を実施した。 「2030ケーブルビジョン」のミッションペーパーでは、2030年のケーブルテレビが担うべきミッションと目指すべき姿を記した。 ミッションは「地域DXで地域を豊かに、人々を笑顔に」と定めている。 このビジョンに基づいて設定したアクションプランの中から、今回の研究会に関連する動きの1つとして開発・リリースに向けて掲げたゴールを紹介する。 1つ目は高齢社会や弱者に優しい社会の実現に向けて、障害者やお年寄りに寄り添えるケーブル業界へ。 2つ目は、在日外国人対応や海外の情報発信にも挑戦できるケーブルテレビ業界へ。 これらに向けて、ケーブルテレビ業界では字幕対応や多言語対応について、10年の計で業界が着手しやすい環境を整えることにした。 連盟に加盟する約350の会員社には、小規模事業者や共聴組合事業者、自治体等の総接続世帯数1万世帯未満の事業者数が147社と、ロングテールな構造にある。 これにより、個社の努力による自助には限界があるため、共助の仕組みで会員社の活動をサポートすることにした。 本格的な字幕対応に向けた課題について、日本ケーブルテレビ連盟が用意した仕組みはあくまでも字幕データ生成の補助的な支援機能にとどまり、字幕生成工程の作業支援と放送に関わるソフト・ハード両面での行政の支援の拡充を希望している。 その理由として、1点目は、AJC-CMSが提供するAI文字起こし機能の範囲は、リアルタイム字幕以外の字幕生成作業工程をサポートすることにとどまっている点、2点目は、本格的な運用に当たっては、放送前段階で必要なソフトやハードの設備面の事業者負担が重い点がある。 具体的には、各社の設備状況によって異なるが、字幕制作レイアウトソフトや字幕プレビューソフト、字幕MXF重畳ソフトを準備するために約300万円、用意した字幕を送出装置から放送に送り出すためのハード対応で数百万円を要する。 AJC-CMSのフローを示す。 ケーブルテレビ事業者は、完パケ映像や映像素材等の映像ファイルをAJC-CMSに登録する。 登録後、AI文字起こしや多言語化の機能によって字幕の基になる文字を起こす。 その後マンパワーにより文字起こしの内容確認等の作業やチェックを経て、字幕データが完成される。 字幕生成後、字幕制作レイアウトソフト、字幕プレビューソフト、字幕MXF重畳ソフトの3つによる工程を経て、字幕を送出装置から放送に送り出す。 なお、簡易なアウトプットとして字幕付きウェブ素材を生成するコースも用意し、ウェブサーバーやアプリサーバーを介して配信することが可能な仕組みとなっている。 引き続き、会員事業者とともに一層のユニバーサル対応の推進に努めてまいりたい。 (10分間の休憩) 資料7に基づき、小原構成員(日本放送協会)から説明。 NHKでは、2018年に策定された「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」を踏まえて、毎年独自の目標を定めて番組の充実に取り組んでいる。 経営計画についても「あまねく伝える」を重点項目に掲げて、人にやさしい放送・サービスの充実に努めている。 字幕放送について、令和3年度、総合テレビでは対象番組の100%に字幕を付与した。 その他の放送波でも独自に定めた目標を毎年着実に達成している。 緊急災害時における障害者への情報提供は非常に重要な課題と受け止めており、台風の接近時等、あらかじめ緊急ニュースの放送が予想される場合には要員を配置し、深夜の時間帯も対応している。 2022年9月には台風14号の上陸が予想されたことから、外部の字幕制作会社3社に協力を要請して、3日連続で、終夜放送で字幕を付与した。 また、8月の大雨特別警報の際も終夜で字幕を付与している。 深夜・早朝の時間帯に災害が発生した場合、要員体制の関係ですぐに字幕を付与できないこともあるが、字幕放送が始まる前に、必要な情報について文字スーパー、L字放送の表示等により確実に届くようにしている。 前回の研究会で、字幕付与に地域格差があるという指摘があった。 NHKの地域放送局でも、字幕付与設備やオペレーターの確保が課題となっている。 地域放送局での字幕付与に向けて、先月、AI音声認識装置を活用して、自動で生字幕を付与する実証実験を近畿ローカルで行った。 音声を字幕に変換する精度やスピードの向上、利用者のニーズ等を踏まえて、今後の実現可能性を検討していく。 字幕付与可能番組についても指摘があった。 NHKでは今秋の臨時国会から、正確性、政治的公平性等をできる限り損なわずに制作できると判断した場合、国会中継として放送する本会議と各委員会の全てに字幕を付与する取組を始めている。 今回の臨時国会では、10月17日の衆議院予算委員会で初めて実施し、計11回実施した。 また、新たな取組として、「ぴったり字幕」の改良を進めている。 これは、生放送でありながら字幕が遅れずに表示されるサービスで、視聴者から好評である。 設備面、コスト面での課題があるが、改良を続け、早ければ来年度中に一部の定時番組で運用をスタートしたい。 生放送において同時性確保のために、冗長な言い回し等を省いて要約できないかとの指摘があった。 既にスポーツ番組等では一部を要約している。 一方、ニュースや国会中継では微妙なニュアンスが失われ、正確性や公平性が毀損されるおそれがあるため、生字幕の番組全体で行うのは現状では難しい。 次に、解説放送については、令和3年度、総合テレビでは対象番組の15.2%に解説を付与している。 解説放送は生放送での実施が難しく、夏の東京オリンピック、冬の北京オリンピックの関連番組等の生放送の番組が多かったことが影響し、前年度より1%余り低下した。 解説放送ではドラマのト書きや情景描写、出演者の表情等をナレーターが副音声による解説で伝えている。 NHKでは、映像による表現の比重が高い大河ドラマや「100カメ」等のドキュメンタリーで、より楽しんでもらえる効果的な解説を付与する方針で臨んでいる。 解説放送は、生放送への解説付与が困難であること、主音声の隙間に効果的に解説を付与できる番組が限られることから、付与の比率を大幅に上げるのは難しい状況。 外国語のインタビューを吹き替えにできないかという指摘があった。 外国人の発言については、多くの番組で吹き替えを原則とし、外国人の会見等を中継で伝える場合には同時通訳をつけて放送している。 ただし、ニュースの場合には吹き替えを準備する時間がないことがあり、インタビュー前のコメントで内容について短く触れる等して、分かりやすい放送の実現に努めている。 新たな取組として、放送技術研究所では解説音声制作・配信システムを開発している。 これはスポーツ中継の試合状況を解説する音声を利用者のスマホにリアルタイムで配信するもの。 10月のプロ野球日本シリーズにおいて実験を行い、参加者から高い評価を受けている。 2024年のパリ五輪での活用を目指し、さらなる研究を進めていく。 ニュース速報の読み上げについて、世木構成員から、読み上げ音声をデータ放送の仕組みで自動再生することは技術的に可能ではないかという指摘があった。 確認したところ、確かに技術的には可能であるが、運用に際してはいくつかの課題があった。 ニュース速報の読み上げを行う上では、速報文を音声化し、その音声をデータとして送るという2つのステップがある。 まず、音声化について、ニュース速報はパターン化された定型文と異なり、仮名や漢字が交じったテキストからなる任意文である。 ニュース速報の送出装置には読み方を事前に登録することができないので、音声合成で100%の精度を出すことはできない。 緊急時に読み間違えのリスクがあるのは極めて大きな課題だと認識している。 東京ではアナウンサーは常にスタンバイしているが、緊急性の高いニュースの場合、その後速やかに特設ニュースの対応があるため、人が読み上げる体制を取れない場合もある。 また、地域局ではアナウンサーがいない時間帯もある。 次に、音声をデータとして送るステップについて、3つの方法がある。 1つ目は、音声多重放送の主音声と副音声に加えて、主音声に速報音声を加えた新たな音声チャンネルを追加して放送するもので、送出設備の大規模な改修が必要となる。 2つ目、3つ目は音声データをファイルにして、データ放送の仕組みで送るものだが、元々のデータ放送のコンテンツが圧迫されて止まってしまったり、本線の音声が遮られたりする等の懸念がある。 緊急時にテレビの本線の音声が出ないと、命と暮らしを守ることはままならなくなるおそれがある。 こうした課題が解決できていないことから、実際の運用に至っていない。 現在、ニュース速報については、人命に関わる緊急性の高いものについては、速報テロップの表示後、速やかに中断して特設ニュースを設け、アナウンサーが内容を伝えている。 また、ニュース速報で画面に表示する情報は、「NHKニュース・防災アプリ」でもリアルタイムで提供している。 スマートフォン等では速報はプッシュ通知され、振動で利用者に伝えられる。 端末やアプリの読み上げ機能を活用すれば、速報の内容を自動的に読み上げることができる。 手話放送については、令和3年度の、1週間当たりの平均放送時間は総合テレビで1時間16分、Eテレで4時間8分となった。 「手話ニュース」と「手話ニュース845」では毎日のニュース、「週間手話ニュース」では1週間の出来事をまとめて、「こども手話ウイークリー」はこども向けに毎回1つのテーマを掘り下げて伝えている。 また、国民の関心が高いイベントや会見等を生放送する際、主催者等が現場で手話通訳を用意している場合は、原則として、その手話通訳を放送で付与して伝えるようにしている。 総合テレビのニュースへの手話付与については、体制・運用面での課題が非常に多く、時間がかかるが、引き続き検討課題としたい。 Eテレでは、NHKの人気番組を手話で楽しみたいという声に応えるシリーズ「手話で楽しむみんなのテレビ」を始めている。 「サイエンスZERO」や「プロフェッショナル 仕事の流儀」等を5分程度にまとめた動画に手話を付けてEテレで放送したり、「NHKラーニング」というネットサービスで配信したりしている。 今年度中にノウハウを蓄積することで、来年度以降、対象の番組を拡大することを検討している。 また、新たな取組として、大雨特別警報や津波警報等、気象庁から発表されたデータを基に手話CGを自動作成し、「NHKオンライン」や「NHKニュース・防災アプリ」を通じて、24時間365日、災害時にいち早く警戒避難を呼びかけるトライアルを行っている。 全日本ろうあ連盟や全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の協力を受けて利用意向調査を実施しながら、今後は震度5弱以上の震度速報等、甚大な被害が想定される災害を中心に情報拡充を図っていくことを考えている。 前回、字幕等のより分かりやすい表示について指摘があった。 NHKでは今年4月からニュースや報道番組を中心にユニバーサルデザインを大幅に拡充した。 画面に表示するオープンキャプションの文字を読みやすいユニバーサルデザインフォントにするほか、特定の色を見分けにくいと感じる方やお年寄りにも伝わりやすい色彩を使用している。 局内用にデザインハンドブックを作成して、全国に配布している。 クローズドキャプションの字幕については、NHK関連団体が契約するモニターとともに、話者による色分け、表示位置の最適化、擬音等の表現方法について検討して、字幕制作に反映させている。 手話ニュースでは、日々の放送や放送後の反省会で手話の表現について検討・改善している。 インターネットサービスでのアクセシビリティについても指摘があった。 「NHKオンデマンド」では、ここ数年で配信されたほとんどの番組で字幕を利用できる。 「NHKプラス」では、放送した字幕と同じ字幕を配信している。 見逃し番組配信では4つのニュース番組で、AI技術を活用して、字幕表示のタイミングを番組の音声に合わせて配信する生字幕同期サービスを提供している。 NHKでは2023年度に衛星波の再編を行う方針。 これに伴い、アクセシビリティに関する独自の目標も別途検討が必要になるという認識である。 新しい衛星波の具体的なコンテンツや、2026年に運用が始まる新しい放送センターの字幕室の能力を踏まえながら、新たな拡充計画を検討していきたい。 引き続き、視聴者のニーズに寄り添いながら、ユニバーサルサービスの拡充に取り組んでいく。 (3) 高齢者支援の立場からの意見 資料8に基づき、近藤構成員から説明。 高齢者の立場から字幕放送について紹介したい。 字幕放送は残念ながら高齢者にあまり知られていない。 老テク研究会は、PCやスマートフォンを購入したが使用方法が分からない方のためにボランティアを行う等、高齢者や障害者のための様々な利用支援活動を地域の方や大学の方と行っている。 現在、防災をテーマにした無料スマホ教室を実施している。 地元の香川県のケーブルテレビとも防災訓練に一緒に取り組んでいるところ。 現在、スマホサロンはオンラインとリアルで開催している。 高齢者と字幕放送についてのアンケート調査と、オンラインを使ったグループインタビューを行った。 全文はブロードバンドスクール協会のホームページで公開しているが、特に字幕放送に絞って紹介する。 回答者は仲間の高齢者で、主に70代の女性。 Androidテレビを持っている人もおり、インターネットに繋いでいる人も半分ほどいる。 テレビのリモコンで字幕ボタンを使っているかと質問したところ、「はい」が35%であった。 この結果を私は多いとは思わない。 リモコンの字幕ボタンが見つからない、使いにくいという意見や、画面や字幕表示の方法を改善してほしい、字幕の表示や大きさが分かりにくいという自由記述が6件あった。 また、便利なアプリ、字幕放送の使い方をもっと紹介してほしいという意見があった。 ドラマ等のバックの音楽が大きすぎて聞こえづらいという意見があった。 高齢者になると音のバランスが若いときと異なるようで、長らく課題となっているため、検討してもらえると有難い。 テレビ放送の字幕利用について、仙台と横浜の高齢者に聞いてみたところ、字幕放送という言葉を誰も知らなかった。 また、地デジ化の際に、「地デジになると字幕が付く」とキャンペーンしていたのを覚えているかと質問したところ、覚えている方は1人もいなかった。 仙台のスマホサロンのサポーター9名に詳しく話を聞いた。 聴覚の衰えを感じ、ニュースは聞き取れるがドラマで滑舌の悪い俳優の台詞が聞き取れず、ボリュームを上げようとすると「聞こえないのか」と言われて傷つき、テレビを見なくなってしまった人がいた。 彼女は字幕放送の存在を知らなかったため、字幕放送を使ってみたらどうかと伝えたところ、とても喜ばれた。 また、90歳になる聴覚が少し弱い男性は、高い補聴器を購入したが使用せず、テレビの音量を非常に大きくして視聴しており、家族も困っている。 このような問題は日本中で起きている。 字幕放送のことをもっと知ってもらうためにはどうしたらよいか聞いたところ、高齢者宅にテレビを設置する際には、字幕放送の切替え方法やリモコンの字幕ボタンの使用方法を教えてほしいという意見があった。 また、テレビ番組で字幕放送について紹介してほしいという声がある。 例えば、番組の冒頭で「この番組には字幕放送がある」と教えてもらえると嬉しい。 近所にスマホサロンのサポーターである90代の女性が1人で住んでおり、テレビの音が大きく近所から迷惑がられていたため、字幕放送を見られるように設定した。 1人で設定するのは難しいので、近くの方がボランティア等で訪問できるとよいのではないかと意見があった。 市政だよりや社会福祉協議会等の広報紙でも紹介してもらえると有難い。 地域の要支援者の支援活動の1つにしてはどうか。 高齢者のほとんどは字幕放送を知らない。 半数近くは字幕ボタンの存在、使い方を知らないことが予想できる。 80代以上の親と同居する家族は、テレビの音量問題で本当に困っている。 80代以上の日本人は現在1206万人もいる。 65歳以上の人は既に4人に1人と言われるが、80歳以上が1000万人を超えたのは2005年。 自治体は災害時の要支援候補として独居高齢者を把握している。 総務省や事業者には、社会福祉協議会を通じて、民生委員向けの広報紙で字幕放送を分かりやすく紹介するようにお願いしてほしい。 放送局でも、字幕放送についての説明時間を増やしてほしい。 テレビメーカーには、字幕ボタンの色を付与する等、工夫をしてほしい。 字幕ボタンを白いボタンに変える等、もう少し探しやすいボタンにしてほしい。 テレビ販売事業者には、説明書で字幕放送のことを紹介してもらえるよう、パンフレットを入れてほしい。 (4)視聴覚障害者等向け放送に関する諸外国の動向 資料9「諸外国における視聴覚障害者等向け放送制度」に基づき、三菱UFJリサーチ&コンサルティングから説明。 調査対象は米国、英国及び韓国の3か国。 字幕放送等の義務付け状況について、米国では字幕と音声解説について義務がある。 目標値について、字幕は対象番組の100%、音声解説は総視聴時間上位の地域において四半期当たり87.5時間。 英国では字幕、音声解説、手話全てに義務がある。 目標値について、字幕はBBCについては対象番組の100%、Channel 3及びChannel 4については90%、その他については80%となっている。 音声解説については起算日から10年後に対象番組の10%となっている。 手話については10年後に対象番組の5%となっている。 韓国についても、字幕、音声解説、手話、ともに義務がある。 目標値について、字幕は対象番組の地上波で100%、衛星で70%となっている。 音声解説は地上波で10%、衛星で7%、手話は地上波で5%、衛星で4%となっている。 災害発生時における規定について、米国では聴覚障害者が視覚的表現でアクセスできるようにしなければならない、視覚障害者に対しては緊急放送を最低2回は音声で伝達しなければならないという規定がある。 英国については、Ofcomが放送事業者に緊急事態に関連する発表の放送を指示する場合には、障害者がアクセス可能な方法で提供することを要求しなければならないという規定がある。 韓国については、地上波放送事業者及び一部の放送チャンネル使用事業者を対象としているが、手話放送提供の努力義務がある。 韓国放送公社(KBS)には手話放送の提供義務がある。 国会中継や政見放送への字幕、手話付与に関する制度については、韓国においてのみ関連する規定があった。 国会法には、国会が放送チャンネルを確保して本会議等を放送する場合には、手話、字幕、音声解説等を提供しなければならないと規定がある。 また、公職選挙法の規定で、選挙放送討論委員会が主催する対談・討論会の放送には字幕・手話を提供することが義務付けられている。 インターネット動画配信について、米国ではインターネットプロトコルを利用して配信される映像番組に関する字幕・音声解説の付与を義務づける規定がある。 英国では、視聴覚障害者がオンデマンド・プログラム・サービスにアクセスできるようにするための規制の導入が可能になっており、現在、規制の在り方が検討されている。 韓国では、告示で指定された一部のIPTV事業者には字幕、音声解説、手話の提供義務がある。 VOD等の非リアルタイムでの放送サービスには提供義務はないが、放送事業者やIPTV事業者に関しては、非リアルタイムでの放送への字幕等の提供に関する努力義務がある。 (5)意見交換 三宅構成員 フジテレビから見逃し配信についての取組、解説の付与方法の工夫について説明があった。 見逃し配信は、昨年の日本テレビ系列のドラマで見逃し配信に解説が付けられている例があった。 こうした取組が民放連の各局等が十分に取り組める状況になっているのか教えてほしい。 また、解説放送について、ドラマ「silent」のような事例の周知広報に何か工夫があれば教えていただきたい。 NHKに関しては、人命に関わる緊急災害等について特別な枠を設けることは理解できるが、人命に関わる範囲やどのようなときに割込みを入れるのか、基準等があれば教えていただきたい。 総務省に関しては、広島ホームテレビから大変費用がかかり、人材の確保に苦労するという説明があった。 やはり情コミ法の第10条、第13条について、国でどう考えるかが重要な課題になると思う。 費用面をなるべく軽減させるような取組、政策等は考えられないか、総務省の答えを聞きたい。 二階堂構成員 見逃し配信の状況について、基本的には各局の運用負荷が大きくならない程度であれば、限定的ではあるがドラマの解説付与は対応可能。 来年の1月クールは、テレビ朝日も1つのドラマで解説付きの配信にチャレンジしてみようと考えており、今後ますます対応が増えていくのではないかと推定される。 解説付きの見逃し配信の周知については、特に大きく行ってはいないが、フジテレビからあればお願いしたい。 正岡構成員 ドラマ「silent」は好調であることから、配信数や視聴数のリリースを出すことが多い。 その際にフジテレビの取組として、「この番組には解説を付けていて、配信版にも付けている」旨を必ず広報からリリースしてもらうようにしている。 小原構成員 見逃し配信の解説放送については、NHKプラスでは放送と同じ解説を配信しているが、NHKオンデマンドではまだ取り組めていない。 緊急災害における人命に関わる範囲や割込みの基準等について、局内には基準がある。 1つは緊急地震速報が発せられた場合は即放送を中断し、速やかに特設ニュースに入ることになっている。 また震度6弱以上の地震が観測された場合、津波警報が発せられた場合等は全波で特設ニュースを放送することになっている。 震度4、震度5弱、震度5強等でも編集責任者の判断によって、被害が広範囲に達する可能性がある場合においては、特設ニュースに入る。 事務局 予算面での支援については、第1回の資料3のとおり、字幕番組、解説番組、手話番組等の制作費を対象とした支援や、生放送番組に対する字幕付与設備の整備費を対象とした支援を行っている。 現在の予算の使いにくい点や、現状と合わない点があるといったご意見があればお寄せいただきたい。 堀米構成員 総務省に伺うが、1点目は原田構成員も触れていたテレビジョン放送における手話通訳育成についてである。 私は群馬県に住んでいるが、群馬県の手話通訳者も何名か受講した。 群馬県知事の会見の通訳の際に配置された手話通訳者が、受講後には技術的にかなり上達していることが分かった。 講座の効果があったということになり、手話放送の時間の増加に重要な役割を果たしていると思う。 この講座が始まって5年が経過すると思うが、これまでの受講者数や都道府県の受講状況を教えていただきたい。 2点目はデフリンピックと手話放送について、2025年にデフリンピックが東京で開催されることが決まった。 デフリンピックが開催される際には様々な外国人アスリートや関係者が来日する。 現在、手話放送の時間の目標値は週当たり15分となっており、ほとんどが週末の早朝に放送されている状態である。 来日する外国人の聴覚障害者が手話放送を見る機会がないのは大変残念である。 目標値としてパーセンテージを設定する必要がある。 また、デフリンピックの開催期間中は地上波での中継等を含む取組を行ってほしい。 共生社会を目指して手話放送の増加に一緒に取り組んでいきたい。 事務局 手話通訳育成については、手元に数字がないため、後日連絡したい。 手話放送のパーセンテージの目標設定については、第1回で利用者の立場、第2回で放送事業者の双方からご意見を頂いて、今後検討していきたいと考えている。 世木構成員 1つは障害者団体に伺いたいが、ニュース速報の読み上げについて、小原構成員から自動音声合成では100%の精度では読み上げられないという話があったと思うが、要望のある障害者団体としては内容の誤りを許容できるものだろうか。 2点目は小原構成員に伺いたいが、「NHKニュース・防災アプリ」は全ての速報や文字スーパーの情報を伝えているわけではないのではないか。 例えばFIFAワールドカップや野球の中継が延長した際の番組中止の情報は文字スーパーで表示していると思うが、こういった情報は内容を読み上げられず、視覚障害者には伝わらないのではないか。 どのような方法でも構わないと思うが、検討している内容自体は15年前から言われているもので、現在でも同じ懸念点が指摘され、できないと回答されてしまうと、今後の15年も同じ理由でできないことにならないか。 設備更新やデータ放送の設備の改修の際に何らかの仕様を入れなければ解決しない問題なのではないか。 三宅構成員 ニュース速報については長年に渡り要望している。 一部誤ったものが含まれていても許容できるかについては、私たちの中には絶対に100%のものを見せてほしいという人も一部いる。 しかし、現状ではチャイム音だけで何が書かれているのか全く分からないため、簡略化されたものでも、何が伝えられたのか分かるだけでも全然違う。 あまりにも致命的な誤りでなければ、速報で伝える分には影響が少ないのではないかと考えているが、調査が必要と思われる。 小原構成員 「NHKニュース・防災アプリ」の速報は字幕スーパーの情報を全てカバーしていないのではないかという指摘があった。 アプリにはテレビで放送している文字スーパーは全て入っている一方、アプリにのみ送られるプッシュ速報の情報もある。 現状では東京都の新型コロナの感染者数等はニュース速報としてはテレビ画面に表示されないが、アプリのプッシュ速報としては配信されている。 また、地域の設定ができるので、地域の情報についても伝えている。 ただ、世木構成員のご指摘のとおり、放送では編成の変更の断り等の文字スーパーを表示しているが、ニュース速報の扱いにはなっていないため、アプリによるプッシュ通知は行っていない。 設備投資について、15年前に世木構成員が放送技術研究所に在籍していたときから技術としては確立していると伺っているが、実現していない。 データ放送の装置を使って送出するところがこの技術の1つのポイントだが、既に様々な情報がデータ放送で流れており、例えば災害対応についてのプッシュ通知、スマホを持っていないお年寄りに向けた情報、災害時の避難所の開設情報等がある。 音声情報ファイルを流すと一旦このような情報を止めなければならないことや、主音声が途切れるという課題がある。 以前からその課題を指摘されているが、設備を更新するには非常に大きな努力が必要である。 データ放送は各ローカル放送に対応して各局が出しているものもかなりあるため、各局の送出装置を全て更新するには非常に大きな設備投資が必要となる。 また、現状、データ放送が映らないテレビもかなり増えてきている中で、どの程度コストをかけてこの方式を実現するのかについては様々な議論がある。 世木構成員 説明した方法をなぜ実現しないのかということではなく、その方法が難しいようであれば別の方法を考えられないか。 この問題について15年間解決していないということはやはり問題があるように思うので、文字スーパーで表示されたテキスト情報を、編成情報も含めて外部出力できれば、アプリや音声合成システム等を使って読み上げることはできるのではないか。 小原構成員 以前と比べて変わっているのは、アプリを含むIPの普及や、スマートフォンに代表されるネット技術の普及である。 個別にカスタマイズされた情報を送る部分については、マスの情報を送るテレビよりも、IPの技術等も活用して相互に補い合っていくというのが、ここ数年の技術革新であると思う。 その中で「NHKニュース・防災アプリ」等の仕組みを使えば、比較的安価に、今まで情報が届かなかった人にも情報を伝えることが可能になってきており、その部分を補っていくことも必要であると考えている。 放送設備の大きな規格変更や設備投資と比べてどちらがコストに見合うかという問題である。 NHKが受信料の値下げを約束している中でどの程度コストをかけられるかも含めて、知恵を頂きながら追求していくことになると思う。 (6)その他 事務局から、追加意見については、令和4年12月20日(火曜日)までにメール等で事務局まで提出してほしい旨の連絡があった。 事務局から、次回会合については調整の上別途連絡する旨連絡があった。 (7)閉会 以上