視聴覚障害者等向け放送の充実に関する研究会 第3回 議事要旨 1 日時:令和5年1月27日(金曜日)10時から12時まで(途中休憩あり) 2 場所:Web会議による開催 3 出席者 (1)構成員 音座長、山下座長代理、岩下構成員、近藤構成員、世木構成員、吉田構成員、新谷構成員(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会)、原田構成員(日本障害者リハビリテーション協会)、堀米構成員(全日本ろうあ連盟)、三宅構成員(日本視覚障害者団体連合)、小原構成員(NHK)、矢口構成員(日本テレビ)、竹内構成員(TBSテレビ)、正岡構成員(フジテレビ)、二階堂構成員(テレビ朝日)、上野構成員(テレビ東京)、八木構成員(毎日放送)、土屋構成員(中京テレビ)、秦構成員(広島ホームテレビ)、菅野構成員(BSフジ)、長谷構成員(J SPORTS)、岡本構成員(衛星放送協会)、二瓶構成員(日本ケーブルテレビ連盟) (2)オブザーバー 内閣府 政策統括官(政策調整担当)付参事官(障害者施策担当)付、厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 企画課 自立支援振興室、一般社団法人電子情報技術産業協会 (3)総務省 山碕大臣官房審議官、林情報流通行政局総務課長、飯倉放送政策課長、松井地上放送課長、安東衛星・地域放送課長、金子地域放送推進室長、福田地上放送課企画官、澤谷地上放送課課長補佐 4 議事概要 (1)第2回会合における追加意見について 事務局から、第2回会合における追加意見について説明。 (追加意見ここから) 原田構成員 ニュース速報を含む視覚情報の読み上げについて、アプリなどインターネットとの連携と併せて、司会者・アナウンサーなど「人による読み上げ」を行うことでもかなりカバーできるのではないか。 小原構成員 現在、NHKオンデマンドサービスは副音声に対応していないが、NHKプラスでは放送と同じ解説を配信している。 山下座長代理 日本民間放送連盟からの報告では、今後5年間は目標未達成の局の目標達成に尽力するという趣旨だったが、既に目標を達成した局については、今後5年間は現状維持ということか。 (追加意見終わり) 二階堂構成員(テレビ朝日)から、山下座長代理からの追加意見に対して次の説明があった。 ユニバーサル放送の拡充については、平日朝の時間帯の情報番組への生字幕の付与、深夜帯の字幕付与等、対象番組や対象時間帯以外でも段階的に拡充していく予定である。解説放送については、新しいジャンルへの拡大や解説放送版の見逃し配信を進めていきたい。今クールのドラマについても、複数番組で解説放送版の見逃し配信を行っている。手話放送については、まずは定常的な付与体制の確立を目指したい。 ユニバーサル放送の質の向上について、障害者団体との定期的な意見交換会を今後も実施し、改善に取り組んでいきたい。具体的な施策として、検討段階ではあるが、テレビ朝日では今年度の放送設備の更新の際に字幕の文字数の拡大を検討している。障害者団体にもアンケートを取り、より見やすい字幕放送を検討していきたい。 その他、地域格差の是正に向け、キー局が中心となって全国ネット番組でのユニバーサル放送の拡充を図るとともに、目標をまだ達成していない局については、キー局と一緒に目標達成に向けた実施計画を策定していきたい。 生放送番組への字幕付与について、NICTの助成金は放送事業者のみが対象となっているが、字幕制作を外部委託している事業者が多い。今後の生字幕放送の普及のために、委託先の事業者まで対象を拡大するよう、総務省には見直しをお願いしたい。 山下座長代理から、次の回答があった。 数値目標についてはこのままであるが、文字数の拡大等の質の充実を図るとのことで、進めていただくとよいと思う。 続いて、本議題について他の構成員を含めて意見交換を行った。 新谷構成員 字幕について文字数の拡大を検討するという説明があったが、単なる文字数の拡大よりも、字幕の同時性の確保や内容の網羅性、オープンテロップや画像にかぶらないような字幕配置等をお願いしている。これらも今回の検討課題の中に入る予定か。 二階堂構成員 テレビ朝日の設備では、字幕はアナログテレビの4対3の画角のサイズに合わせて作られており、画面の中央に字幕が集まっているが、これを16対9の画角に合わせて左右に広げることを検討している。これにより、テロップや画像になるべくかぶらないような位置を探ることができるのではないかと思う。また、1行に表示できる文字数が多くなるため、これまで難しかった話者名の表示等がしやすくなる。 三宅構成員 目標値について、実績の推移を見ると、キー局、在阪準キー局及び在名広域局は既に達成していると見受けられる。目標未達成局については今後取り組むため、目標値は据置きでもよいと思うが、ここ数年間で目標を既に達成している局については目標値の見直しを一度検討していただきたい。 また、NHKでは解説放送の付与率について目標値を変更すべきと考えているか、参考までに伺いたい。 二階堂構成員 目標値は変わらないとしても、深夜帯のドラマ作品やバラエティ番組等の他の番組についても解説放送を拡大していく予定であり、できる範囲で拡大していければと考えている。 小原構成員 解説放送の目標値については今のところ大きく見直すことは考えていない。生放送番組への解説付与は非常に難しく、できる限り付与していきたいと思っているが、明確な数字として回答できる材料はない。 (2) 報告書 骨子(案)について 事務局から、資料1「視聴覚障害者等向け放送の充実に関する研究会 報告書 骨子(案)」に基づき説明後、本議題について意見交換を行った。 原田構成員 資料1の報告書骨子(案)と資料2の今後の取組の方向性(案)はそれぞれ別々にまとめられ、本研究会の成果として後日公表されるのか。 事務局 本研究会としては、報告書を公表することになる。資料2及び資料3の内容を、本骨子(案)の「4 提言」の部分に記載することを予定している。 新谷構成員 2(2)「我が国における視聴覚障害者の状況」について、聴覚障害者が平成28年に34万人とあるが、これは障害者手帳を持っている人だけの数である。例えばWHOは2018年の調査で世界人口の6.8%という報告を出しており、日本では民間団体の調査で10%前後という報告があるため、34万人しか対象者がいないと記載すると誤解を招く。障害者手帳保持者などと限定をつけなければ、報告書の記述としては不正確だと思う。 事務局 資料1では厚生労働省が公表している数字をベースに記載している。前回の報告書でも、まさに今ご指摘いただいたWHOの年次報告の情報等の多様な数値を記載しているため、具体的な数字の記載については、今後ご相談させていただければと思う。 堀米構成員 2(3)B「手話放送の現状及び放送事業者の取組」に、岡山放送の取組事例も加えていただきたい。岡山放送は、「手話が語る福祉」という手話付きのニュースを毎月放送している。聴覚障害者、手話通訳者及びテレビ局の3者で手話放送委員会を立ち上げ、手話表現を含めた検討を行っている。地方局で手話放送を普及するモデルケースになると思う。 事務局 現在の骨子(案)は、あくまでこれまでの発表内容をまとめたものであり、ご紹介いただいた取組について記載することは可能である。今後、具体的な記載についてご相談させていただきたい。 (3) 今後の取組の方向性(案)及び指針の改正の方向性(案)について 事務局から、資料2「今後の取組の方向性(案)」及び資料3「指針の改正の方向性(案)」に基づき説明。 (10分間の休憩) (4)意見交換 新谷構成員 第2回の資料7にあったように、昨年10月から、NHKの国会中継で、特に委員会審議において字幕を付与していることを非常に前向きで貴重な試みとして高く評価したい。このような取組を踏まえると、現在の指針をこのまま維持するという方針は、生字幕の拡大の方向性からしても難しいと思う。字幕付与可能な放送番組の例外として、技術的に字幕を付与することができない放送番組があり、国会中継が含まれていたと理解している。しかし、現在の技術の進歩も踏まえ、国会中継においても生字幕を付与することが可能になってきたのであれば、普及対象目標の番組について当然見直す必要があると思う。 また、字幕の誤りに対する視聴者の許容度とあるが、手話放送や解説放送にも誤りはあり得る。これを許容するか調べるという方向なのか、放送自体の公共性を考えて、放送法第9条の訂正放送との関係を整理するのか、議論の方向性を伺いたい。誤りを認めるかではなく、訂正放送の議論から一度切り離し、情報の同一性をどこまで許容するかを議論しなければ、難しい議論に発展するのではないか。 事務局 1点目については、実際にどの程度生放送に字幕を付与することができるか、是非NHKからご発言いただければと思う。頂いたご意見を踏まえ、今後指針の対象となる番組については引き続き検討していく必要があると考える。 訂正放送と許容度についても、今後どこに焦点を当てた議論をしていくかも含め、ご相談させていただきたい。 新谷構成員 訂正放送と誤りの許容度の問題は、どの場で検討していくのか。この研究会ではなく、総務省主導で何か別の場を設けて進められるのか。 事務局 イメージとしては、今後の取組の中で触れたフォローアップ会合や、あるいは別の場で総務省として検討した方がよいということであれば、そちらでも検討していきたいと考えている。 新谷構成員 現時点での考えについては了解。単なる誤りの問題と、要約における問題があるので、検討課題に入れていただきたい。 原田構成員 資料2に「総務省において調査分析を行う」、「フォローアップ会合を開催する」、「検討の場を設ける」等の記載があるが、どのようなものをイメージしているのか。 資料3の手話放送の目標については「実績に即した目標を設定する」とあるが、放送事業者によって変更するのか。残念ながら実績がゼロの放送事業者もあるが、現在の指針を下回る目標になることはないか。 事務局 1点目については、障害者団体及び放送事業者による既存の意見交換の場を活用するか、総務省で研究会のような形で新たに正式に開催するか、打合せや意見交換のような形とするのかという点も、皆様のご意見を伺いながら考えていきたい。 2点目については、現行指針においては、NHKの衛星放送を除く部分と地上系民放キー局が対象となっており、それぞれ15分という目標設定がされているが、これを引き下げることは現時点では想定していない。一方で、例えばNHK(教育)については約4時間という実績があるため、もう少し高い目標を設定できないかと考えている。実現可能性も含めて、NHKのご意見も伺いたい。 近藤構成員 フォローアップ会合について、参加する構成員の対象を高齢者団体にも広げていただきたい。80歳以上で字幕を必要とする視聴者は1000万人を超えており、こうした人も参加できるよう配慮していただきたい。 また、昨年開催された「ICT東京フォーラム2022」では、字幕の自動生成技術が紹介されていた。聞いてみたところ、聴覚障害者団体は開発に参加しているが、中途難聴者団体はご存知ないようであったため、ご興味のある方にご紹介したいと思う。 事務局 フォローアップ会合への高齢者団体の参加について、第2回における近藤構成員からの発表のとおり、必ずしも障害者に限らず、高齢者もこの取組の対象として入れていくべきであると考えていることから、どのような構成員に参加していただくかも含め、今後皆様のご意見を聞きながら検討していきたい。 堀米構成員 手話放送の実績は、指針の目標を達成できている局と地方局との格差が大きい。実績がゼロの局は10局、目標を達成していない局は29局ある。目標未達成局に対しては、令和9年度までの段階的な目標を設定してほしい。 また、NHKやキー局が地方局に支援することのほか、「目で聴くテレビ」を購入して放送を視聴することや、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法で規定される自治体の責務を果たすために、自治体の放送番組で手話放送を行うことを働きかけるといった工夫をしていただきたい。 事務局 特に地方局における手話放送の目標設定については、民間放送事業者からもご意見を頂きたい。事務局としては、実現可能性がある目標設定をする必要があると現時点では考えている。また、様々な地方自治体での取組についても必要である旨報告書の中で触れたい。具体的な内容については、今後ご相談させていただきたい。 二階堂構成員 手話放送におけるキー局と地方局の格差が大きいことについて、地方では手話通訳者があまり多くないため、まずはキー局で全国ネットの番組でなるべく手話を付与し、全国の視聴者が手話放送を享受できる形で支援していきたい。また、手話通訳者が増えれば地方でも手話番組が増えていくと考えられるため、引き続き手話通訳者の育成をお願いしたい。 三宅構成員 大規模災害発生時等の対応について、「大規模災害発生時等」という表現では、災害に重きを置いているような印象を受ける。視覚障害者の中には、災害のほか、自分の住んでいる地域で犯罪が発生し、それが解消されたことにいつまでも気付くことができずに不安な状況に置かれることもある。「等」の部分をもう少し広げ、生命や安全を脅かすものに関することを含めた記載にしていただきたい。 地方局及び衛星放送の目標値については、NHKやキー局が支援する取組を引き続きお願いしたい。NHK及びキー局に関しては、既に令和9年度の目標を達成しているところがあるため、目標値という言葉を使っている以上は、実現可能なところを見据えながら、少しでも数値を上げる方向で検討していただきたい。 事務局 1点目については、指針自体に書き込むか、報告書の中で書き込むかについては今後検討したい。放送事業者の方で、生命や安全を脅かすものを含める書き方について何かご意見があれば頂きたい。 2点目については、現時点での考え方は資料3のとおりであるが、ご発言いただいたとおり、実現可能性を踏まえた放送事業者のスタンスもぜひ伺いたい。 二階堂構成員 「大規模災害発生時等」の表現については、ご指摘のとおり震度6以上の地震や大きな台風が想定されるが、例えば2021年10月に電車内で刺傷事件が発生した際には衆議院議員総選挙の選挙報道から緊急ニュースに切り替えているため、このような事例も含めてうまく表現できるとよいと思う。 また、民放としては、目標値にとらわれずに各局の努力によって実績の数値を上げていきたい。 小原構成員 大規模災害発生時等の「等」の範囲は非常に難しいが、重大な事件については、特設ニュースに速やかに入ることも含めて判断しており、今後も徹底していく。 目標値について、技術開発も併せて行っているが、解説を可能な限り付与し、目標値にとらわれず、できるだけの前進を果たしていく構えで考えている。 三宅構成員 1点目については、「等」とまとめられてしまうと、重大な事件について見えにくいため、是非検討いただきたい。 2点目については、確かに努力いただいていることは承知しているが、数値を見て既に達成していると見られてしまうため、実現可能性も見据えながら引き続き検討いただきたい。 吉田構成員 第2回で近藤構成員から紹介があった、高齢者が字幕放送にアクセスできない状況について懸念しており、私がソーシャルワーカーの育成や社会福祉士の育成をしている中でも強く実感している。例えば社会福祉協議会と連携し、高齢者が字幕放送にアクセスできるような環境を整備するという方向性を今後考えていただけるとよい。例えば、社会福祉協議会や厚生労働省が主導して、研修を全国的に広める等のプログラムを考えていただきたい。私も協力しながら、高齢者の方がテレビの字幕をより身近に、簡単に使えるような環境を作れるようにしたい。 事務局 高齢者についても今後積極的に考えていく必要があると考えている。今後関係省庁とも意見交換しながら進めていきたい。報告書にもこういった取組が必要でないかという形で記載できればと思うので、またご意見いただきたい。 山下構成員 今後、技術革新が進み、字幕放送や解説放送もより行いやすくなるという面もあるが、放送事業者と障害者団体のコミュニケーションもより取りやすくなると思う。対面だけでなくオンラインという手段もできたため、両者のコミュニケーションの活性化についてもこれからの5年間に期待したい。 これを踏まえて2点申し上げたい。1点目は、ローカル局の数値目標の達成の遅さについて。資料2に、「まずは全ての局において」とあるが、ローカル局自身がどの程度遅れているかという緊迫感が少ないと思う。岡山放送の優れた取組もご紹介いただいたが、ローカル局だから遅れていてよいわけではない。ローカル局の視聴者に障害者がいないわけではないということを、しかと緊迫感を持って知っていただくことが重要である。 もう1点は、資料3には数値目標について「現行のものを維持する」とあるが、この1行だけでは満足しない面もあると思う。例えば、ただし書として、既に目標を達成している局については、品質の観点や、より高い自己基準を設定すること等を記載すると良いと思う。放送事業者が目標値にとらわれずに取り組むと発言したことを受けて、さらに高い目標を各々設定し、5年後に披露いただけることを希望する。 事務局 1点目について、もちろんローカル局各社において取り組んでいるところだと思うが、今後も積極的に取り組んでいただけるような環境を、放送事業者及び障害者団体の皆様と一緒に作っていきたい。 2点目については、特にキー局については、既に指針の目標値よりも高い目標を内部で設定しているのかもしれないが、大変前向きな取組だと思う。指針への書きぶりは今後検討させていただきたいが、現時点でもしお考えがあれば、放送事業者からもご意見を頂きたい。 小原構成員 ローカル局が目標を達成できるよう、NHKでも字幕について様々なトライアルを行う等、現行の指針の区切りである2027年に向けてできる限りのことをして、字幕付与率を上げていきたい。 自主目標については、毎年の目標値をNHK内で決め、それを確実に達成することで字幕付与率を100%にすることができたという過程がある。自主目標がないわけではないが、解説・手話についても様々な技術開発も含めて取組を進めている。今すぐ目標値として提示できるものがあるか、確信を持っては言えないが、着実に取組を実行するためには内部の目標値は当然必要だということを念頭に進めたい。5年後に取組状況をお伝えできるかどうかは、今この場では何とも言えないが、そのような点を大事にしながら取組を進めたい。 二階堂構成員 ローカル局の強化については、5年前の「視聴覚障害者等向け放送に関する研究会」の際にも実施したが、民放連加盟局に本研究会の結果を確実にフィードバックし、取組を強化してもらうことを考えている。 数値目標については、各局で番組編成が異なるため、一律に目標値を定めることは非常に難しい状況である。各局の取り組み方があるため、それを踏まえた記載方法を検討できればと思う。 世木構成員 各構成員の数値に関してのこだわりが非常に強く、私の中では少し残念である。字幕や解説が付与されてほしいのはどのような番組か、正直あまりよく分からなかった。単純に数値目標が達成されているか、されてないかという議論の状況にあると感じた。 手話通訳者が少ないなど、実際に取り組むことを考えた時に難しいことは多く、技術的に難しい部分もあると思う。それを踏まえた上で、今回の指針改正案では、目標値は現行のままになるのかなと感じている。要するに、技術的に字幕等が付与できるところには既に付与されてしまっていて、あとは技術的課題があって限界に達している状況と把握しているが、いかがか。 事務局 どのような番組に字幕、解説及び手話が付与されるべきかについては、資料2にも記載している指針の対象の拡大についての検討において、今後さらにご意見をいただければと思う。これまでの構成員のご発言としては、例えば新谷構成員から国会中継の話もあったかと記憶しているが、意見の集約や議論が必要だと思う。 現在は技術的にぎりぎりのところなのではないかという点については、例えば複数話者が話している番組への字幕付与は技術的に難しいため、対象番組から外れている。第1回のヤマハからの発表の中でそのような論点があったと記憶しているが、現時点の技術で何が可能なのか、どのような技術が開発されれば対象を拡大し、実績を上げることができるのかについても今後議論していく必要があると思う。 小原構成員 現時点では、すぐに応用できる技術では限界が近づいている一方で、新しい技術の開発を続け、できる範囲を広げていかなければならないと思う。AIによる自動字幕や手話CGを自動生成する技術、スポーツ中継等に自動的に解説を付与する技術等の開発も、引き続き行っている。少しずつでも成果を出し、技術的な限界値を上げていくことも含め、この努力を続けていきたい。 二階堂構成員 世木構成員の発言にあったように、具体的な番組や時間帯等の議論をしてもらえると、民放としてはターゲットを絞りやすい。第2回でも紹介があったが、例えば民放としては、平日朝の時間帯の番組で交通情報や天気等の重要な情報があるため、生字幕を拡充してほしいという要望を受けて取り組んでいる。 また、これまで意見交換会等の場で、解説放送については特にドラマを楽しみたいという意見が多かったため、解説放送版の見逃し配信を始める等、ドラマを中心に進めてきた。もし具体的な番組やジャンルがあれば、意見交換会の場でも希望をお寄せいただければと思う。 世木構成員 どのような番組に字幕や解説をもっと付与してほしいと思っているのか、障害者団体の方にもお聞きしたい。全ての番組に一度に付与するのは難しいため、重要なものから順番に付与した方がよいと思う。現在付与されていない部分で、特にどこにニーズがあるのかを聞きたい。 堀米構成員 手話言語を使用する聴覚障害者はたくさんいるため、字幕放送と同じ条件で全ての番組に手話もつけていただきたい。あくまでも私個人の意見だが、優先順位はニュース番組やスポーツ番組、情報番組になるかと思う。 三宅構成員 二階堂構成員から説明があったように、まずはドラマやバラエティ要素のある番組から解説の付与が始まったため、その中でより解説付与が広がってほしいというニーズがあった。ただ、解説放送が普及してくると、情報源として放送を利用する視覚障害者は多くいるため、ドラマ以外の情報番組やニュース等で私たちに視覚情報が伝わるものが欲しいというニーズがある。 第1回の資料8で示したが、字幕テロップや字幕スーパーで表示されている情報が相変わらず入手できない状態であるため、何とかならないかというニーズがある。 原田構成員 確かに字幕、解説及び手話を増やしていくために、どのように優先順位をつけるかは実務上重要な視点だが、これは思ったほど易しい議論ではないと思う。もちろんニュースや災害情報、国会中継等の重要性は分かるが、娯楽番組には字幕等を付与しなくてよいわけではなく、番組に関する会話についていけないことで、日常生活で苦しい思いをすることもある。アンケートや議論をすることで優先順位をつけることはあり得るかもしれないが、簡単ではないことだけは申し上げておきたい。 新谷構成員 社会参加においてどの部分が大切かは人によって異なるため、基本的には全ての番組に字幕等が付与されていないと困るということになる。聴覚障害者の立場から言うと、画像で多くの情報提供がある分野は、私たちは画像情報を追いかけることで、字幕がなくとも何とか参加しようとする。しかし、公的な情報媒体として放送をユニバーサルなものにしていこうという議論を積み上げてきているので、あまり極端な優先順位はないと思う。 ただ、字幕について今最後に残っている課題は、多人数が同時に発言する番組への字幕付与が技術的に難しい点であると推測できる。社会がもっとその問題を理解し、例えばトーク番組で声がかぶらないようにすることは、情報を発信する話者側が注意すべきだと思う。恐らく聞こえている方にはあまりピンとこない部分があると思う。聞こえない方や見えない方に対しては、どのような形の情報提供が適切なのかという社会の意識が、どこまで及んでいるかという視点が、非常に大切だと思う。 世木構成員 技術者として見ると、一度に全ての番組に字幕や解説を付与することは難しく、ターゲットを絞ってどこから始めるのかを決めていくことになると思う。何が重要かを明確に示してもらえると、放送事業者も取り組みやすいと思う。 堀米構成員 手話放送の目標値のパーセンテージでの設定について、対象番組の設定が必要といった説明は分かるが、私たちは字幕放送と同じ対象番組や対象時間帯を基に決めてほしいと申し上げており、そのことを改めて考えてほしい。 事務局 今頂いたご意見も踏まえ、今後具体的にどういった形で報告書に記載していくか、指針に反映していくかを検討したい。 三宅構成員 字幕スーパーの読み上げについては、今後も継続して検討すべき事項としていただきたい。第1回の資料で示したとおり、視覚障害者からは、字幕スーパーの情報がどうにか伝わらないかというニーズがずっとある。放送事業者にも技術面や費用面で様々な形で課題があると思うが、放送事業者の意見を聞き、技術的に解決できるのであれば模索していただきたいし、総務省あるいは国で支援・協力できることがあれば取り組んでいただきたい。 事務局 放送事業者の課題意識を聞きながら、どういった支援が可能か今後検討していく。ご発言いただいたような課題が示されたことは、報告書にも記載していきたい。 原田構成員 地域格差について、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法でも、全ての障害者が、その日常生活又は社会生活を営んでいる地域にかかわらず等しく情報を取得することが基本理念として挙げられている。報告書でも一歩踏み込んで、具体的な対応や論点について記載いただきたい。また、指針の中で段階的な目標を設定することも含めて引き続き検討いただきたい。 災害時の対応についても、現行の指針より一歩踏み込んだ記載をお願いしたい。大規模災害に限定せず、緊急性の高い速報については、より柔軟な対応ができるような記載もお願いしたい。 手話放送については、増えている局もあれば、依然としてゼロのところもある。具体的にどのように指針に目標を設けるかは今後の議論だと思うが、見直しを経て、とにかく増加・強化に転じるように対応いただきたい。また、パーセンテージでの目標設定及び実績の表示を引き続きお願いをしたい。数値にこだわることはどうかという話もあったが、やはり字幕放送や解説放送との並びもあり、諸外国の目標値の設定などから見ても、この方向の検討についてもお願いしたい。 政見放送や国会中継についての字幕付与は、知る権利として、依然として障害者から高い要望があることを報告書にも記載いただきたい。NHKによる最近の取組や実績についても、報告書に記載いただきたい。 視聴覚障害者以外の盲ろう者や知的障害者、発達障害者等に関わる多様な課題についても、報告書には具体例を挙げて記載いただきたい。全体的な位置づけとして、「視聴覚障害者等向け放送」や「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」という表現にもあるように、本来高齢者等も含めた幅広い人を念頭に置いたユニバーサルな放送を目指し、意図しているということを、今回の研究会でも改めて確認し、報告書にも記載いただきたい。 事務局 ご要望やご意見に留意しながら、報告書に具体的にどのように記載していくか検討していきたい。 (5)その他 事務局から、追加意見については、令和5年2月3日(金曜日)までにメール等で事務局まで提出してほしい旨、次回会合については調整の上別途連絡する旨連絡があった。 事務局から、次回会合では本研究会の報告書案について議論予定との連絡があった。 (6)閉会 以上