視聴覚障害者等向け放送の充実に関する研究会 第4回 議事要旨 1 日時:令和5年3月13日(月曜日)14時から16時まで(途中休憩あり) 2 場所:Web会議による開催 3 出席者 (1)構成員 音座長、山下座長代理、岩下構成員、近藤構成員、世木構成員、吉田構成員、新谷構成員(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会)、原田構成員(日本障害者リハビリテーション協会)、河原構成員代理(堀米構成員(全日本ろうあ連盟)の代理出席)、三宅構成員(日本視覚障害者団体連合)、小原構成員(NHK)、矢口構成員(日本テレビ)、竹内構成員(TBSテレビ)、正岡構成員(フジテレビ)、二階堂構成員(テレビ朝日)、上野構成員(テレビ東京)、八木構成員(毎日放送)、土屋構成員(中京テレビ)、秦構成員(広島ホームテレビ)、菅野構成員(BSフジ)、岡本構成員(衛星放送協会)、二瓶構成員(日本ケーブルテレビ連盟) (2)オブザーバー 内閣府 政策統括官(政策調整担当)付参事官(障害者施策担当)付、厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 企画課 自立支援振興室 (3)総務省 松井地上放送課長、安東衛星・地域放送課長、金子地域放送推進室長、福田地上放送課企画官、澤谷地上放送課課長補佐 4 議事概要 (1)報告書(案)について 事務局から、資料「視聴覚障害者等向け放送の充実に関する研究会 報告書(案)」に基づき説明。 続いて、事務局の説明に対する質疑応答を行った。 河原構成員代理 手話放送の目標設定について、今回も目標を設定することが難しいため、パーセントではなく、時間で表すということになったとお話があった。なぜ、目標達成が難しいのか、パーセンテージで表せないのかが分からない。達成ができるような数字をパーセンテージで表すということを目標として進めていくということはできないのか。時間数だと、実際の放送時間の中に対してどのくらいの割合なのか分からない。イギリスや韓国等の海外では、パーセンテージで出されているが、なぜ日本ではそれができないのか。 事務局 放送事業者の方々がどうお考えになるかは意見交換の際にお話しいただければと思うが、まずは事務局としての考え方について御説明させていただく。第3回での説明と重複するが、パーセンテージで目標値を設定するに当たっては、対象となる番組の性質や時間について、より深い議論が必要になると考えている。今後の調査、分析を通じて、また放送事業者、障害者団体の皆様との意見を交換する場にて議論するのが有効ではないかと考えている。 (2)意見交換 岩下構成員 AIや肉声による外国語の翻訳の読み上げについて要望が出されていたが、もう1点危惧しているのは、ニュース等で、主に事件の報道の際に、犯罪者や犯罪を目撃した方のコメントの際にプライバシー保護の観点からボイスチェンジャーを使っているが、非常に聞き取りにくく、何を言っているのかがよく分からないことがかなりあること。AIを使う等、より聞きとりやすいかたちにしてプライバシー保護するようなことを考えていただけないか。 事務局 どういった音声を流すかについては、放送事業者によるところが大きいかと思う。報告書では「こうすべき」と示すよりも、こういったご意見があった旨を記載することは考えられる。もし放送事業者からコメント等あればいただきたい。 小原構成員 いわゆるボイスチェンジャーによる音声の変換について、確かに聞き取りにくいという御指摘はとてもよく理解できるが、人権保護の観点から、ある程度変えないと本人の特定につながってしまう。この点をやはりどうしても第一義に考えなければいけない。一方、音声を全く変えてしまうと、本当に話しているのか、今度は真実性のほうが疑われるということになるため、そのバランスを取りながらやっている。 岩下構成員に御提案いただいたAIの活用となると、別音声で別のかたちで配信するということにならざるを得ないと思うが、技術的な点も含めて考えると、まだそこまで至っていない。また、ニュースの場合、用意するのに非常に時間もかかるということで、なかなか現実的には難しいというのが今の立ち位置。今のところ、このようにしているということを御理解いただくしかないかと考えている。 二階堂構成員(テレビ朝日) NHKの御説明にもあったように、人権保護の観点から音声を変えているというところで、ボイスチェンジの取扱いについては今後の課題と認識している。貴重な意見として、検討させていただきたい。 河原構成員代理 先ほど総務省から、目標のパーセンテージ設定をするためには、対象となる番組について調査分析しなければならないというお話があった。私個人として、皆さんが必要としている番組は手話、字幕、音声関係なく、必要性は同じだと考えている。手話だから対象外で字幕は入れるということは、ちょっとおかしいと思う。手話の必要性も考えた上で、やはりパーセンテージでの目標設定をしていただきたい。 48ページに「手話放送は着実に普及しているといえる」との記載があるが、実際は地方では全く進んでいないところが多くある。地方局では目標未達のところがまだまだ多く残っている。放送時間を見ても、2018年度と比較してあまり増えているようではないと思う。大阪辺りでは目標を達成している放送事業者がたったの2局しかなく、それで着実に進んでいると言えるのか疑問に思う。 37ページの3(3)C「クローズドサイニング」の箇所で、規格標準化等を行うことについて記載されているが、実際にはテレビの放送に手話又は字幕を別に作成し、放送と合わせて流すという技術としてH702の規格がある。この規格を活用する方法を考えるわけにはいかないか。 3ページに障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の記載があるが、第10条、第11条及び第13条しか言及がない。基本的な理念については第3条があるが、こちらも記載してほしい。第3条では障害者が自分に合った方法で情報を得ることができるようにしなければならないということが、理念として明記されている。放送に関しても、全ての人が自分に合った方法で見ることができるようにしなければならないと考えている。 また、「目で聴くテレビ」の他に、事業者と取り組んでいる技術に対して総務省から積極的に補助を行うこと等も考える必要があるのではないか。 二階堂構成員 地方局における手話放送について、手話通訳士の育成等も含めて、柔軟に手話放送をつける体制がまだ整っておらず、財政的な事情もあるため、早急に数値目標を設けることができないのが現状である。 事務局 地方局における手話放送について、まず記載の趣旨を御説明させていただく。48ページの「概ね現行指針の目標を達成できており、手話放送は着実に普及しているといえる」の「着実に普及」の趣旨だが、現行の指針を基準とした場合に進んでいるという趣旨で記載させていただいている。御期待されるような、より拡大しているという状況では必ずしもないことは認識している。 クローズドサイニングの箇所について、どういった記載が可能かどうかについて、今後検討させていただく。 3ページの2(1)@「障害者による障害の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」の情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法に係る箇所について、第3条についても記載をいただきたいという御意見だった思うが、前向きに記載、追記を検討したい。 最後に、先ほどの「目で聴くテレビ」等、他のところについても総務省として補助ができないかといった御意見もいただいたかと思う。この報告書の中で、こういった補助をするという言い方は難しいかもしれないが、具体的にどういったかたちで記載するかは検討したい。 世木構成員 手話放送は、字幕放送で代替することはできないのだろうか。 事務局 当事者であるろうあ連盟から御意見いただいた方がよいかと思うが、事務局としては、手話放送について御要望がある中で、対応する必要があるのではないかと感じている。 河原構成員代理 手話と字幕は全く違う。字幕は日本語であり、日本語を文字にして表示している。手話言語と日本語は全く別の言語であり、代替することはできない。例えば、難聴の方や中途失聴の方々は日本語の方がよいと思うので、字幕を見ることで情報を得られる。一方、ろうあ者の場合は手話言語を使っているため、手話を見たいという方が多くいる。字幕を見ても、日本語であるためになかなかすぐには理解できないという方も多くいらっしゃり、字幕と手話の両方が必要だということになる。 世木構成員 更に質問だが、聴覚障害者の方のうち、手話のできる方が数十パーセントいるとして、そういった方々にとっては手話が第一言語であるため、手話で放送してほしいという要望があると思うが、一方で、ここ最近、外国籍の方や外国語を母国語とする方が日本でも生活されている。今回のこの障害者の研究会の対象ではないのかもしれないが、その辺りについて今後はどう考えていく予定なのか、事務局に伺いたい。 事務局 少なくとも現時点でのアクセシビリティにおける議論や指針の関係では、外国語話者について明確に対象とはしていなかったと認識している。そういった方々の情報アクセシビリティについて、今後どう考えていくか、現時点で明確な予定はないが、一つの論点として考えられると思う。 世木構成員 マイノリティサービスに力を入れていく必要はあると思うが、もし先ほどの数値を本当に指針として盛り込むという場合には、そのサービスを始めた際に、それを享受する方がどの程度いるかを明確にしていただけると、より世間の認知度も上がっていくかと思う。要望としてお伝えする。 原田構成員 4ページに障害者権利委員会の総括所見について引用いただいている。そのうちの「行動計画及びアクセシビリティ戦略を実施する」という箇所をご紹介いただいているが、英文の引用を見ると、「障害者団体と緊密に協議しつつ」という趣旨が書いてある。こちらは非常に大事な点だと思うので、是非その部分も一緒に引用してはどうか。 放送事業者と障害者団体との意見交換の場が定期的に開かれているので、どこかで是非御紹介いただければと思う。 36ページの3(2)@「文字のみで表示される情報の音声化」について要望があったとの記載があるが、こちらは今回たまたま要望があったということではなく、以前から繰り返し要望があったもの。緊急性の高い情報もこうしたものに含まれるため、是非、以前から強い要望があったという書きぶりにしてほしい。 また、同じページの3(2)A「テキスト情報を活用したニュース速報の読み上げ」について、読み上げに加えて、テキスト情報を活用した点字ディスプレイ表示にも可能性があると考えている。実際に研究もされていると理解しているので、そうしたことも御紹介いただきたい。 37ページの3(3)「手話放送の充実」について、こちらは様々な事情が書かれているが、是非、障害者団体からは一層の充実を求める声があるという記載をいただけないか。 同じページの3(3)C「クローズドサイニング」の部分で、規格の標準化について述べられているが、IPTVの国際標準や、それに対応する国内標準もできているため、そうしたものを参考にしたり踏まえたりするということも、書いていただけるとよい。 41ページに記載されている「点字ディスプレイ等に出力できるような機器や技術の開発」について、こちらも要望があるということを記載いただいているが、これについても以前から引き続き要望が出されていて、また実際に研究もされていると理解しているので、そういった書きぶりにしていただきたい。 42ページの3(4)F「インターネットコンテンツにおける対応」について、「アクセシビリティの向上に関して研究が必要である」と記載があるが、単に研究が必要であるというよりは、アクセシビリティの向上を推進していくために研究が必要だというような、前向きな書きぶりにしていただきたい。 49ページに、手話放送におけるパーセンテージによる目標設定について意見があったということを記載いただき、感謝申し上げる。こちらは引き続き意見として申し上げたい。また、目標設定ということと同時に、パーセンテージによる実績の表示ということも意見として申し上げたので、そうしたこともできれば記載いただきたい。 53ページの4(2)@「前文」の「イ 改正時期」について、「放送事業者の取組状況等を踏まえ、柔軟に検討することが望ましい」との記載があるが、利用者も参加した上で検討するということを記載いただきたい。過去の指針の改定や今回の中間見直しにあたっても、こうした研究会を開いているので、是非利用者の参加ということを書いていただきたい。 55ページの4(2)C「手話放送(地上放送関係)」の「ア 目標値」について、現行のものを維持するという方向性が示されているが、先ほども話があったとおり、依然として未達成、もしくはゼロの放送事業者も少なからずあるということから、より一層充実する努力を続けるということも併せて述べていただきたい。 最後に、先ほどの議論に対する意見となるが、手話については、確かに一つの言語ということで、外国語の問題と一緒に考えるということができると思うが、現在の指針には、障害者権利条約等に鑑み、ということが書かれている。この障害者権利条約の中に、手話がろう者の言語であり、その使用や言語的同一性等を、人権を守るために促進していくという趣旨が書かれているため、そういった点でも現指針と手話との関係が考えられるのではないか。 事務局 今いただいた御意見については、具体的な書きぶりはまた検討させていただくが、前向きに検討したい。他の障害者団体の皆様、放送事業者の皆様から、今いただいた内容について、もし御意見があればいただきたい。 新谷構成員 54ページに、多人数が同時に会話する場合の字幕付与について、「当該番組への字幕付与に関して研究が進められているところであり、その精度の状況を踏まえ、今後も検討していく必要がある」と記載されている。NHKや在京キー局では字幕付与目標について既に100%を達成している中で、同時会話の字幕付与について今後検討を進めていくというステップを明確にする意味では、総放送時間に対する比率をもっと大きく出していただいた方が取組の進捗状況が見えてきて良いのではと思うが、そこはやはり課題が多いのか。一定程度制限のかかった番組に対しての達成率は理解したので、その次は最後の目標として、総放送時間に対してどれだけの字幕が付与されているのか、年度ごとの進捗が分かるような報告書になっていればありがたいが、いかがか。 事務局 総放送時間との関係については、この報告書ではあくまで指針との関係ということで、対象番組を分母とした数値を記載しているが、毎年、総務省にて取りまとめて公表している実績では、総放送時間との割合についても記載し、公表している。報告書の中でどういったかたちで書くかについては、検討させていただきたい。 新谷構成員 54ページの字幕放送の書きぶりが「その精度の状況を踏まえ、今後も検討していく必要がある」だけで終わってしまうと、何が次の課題として大きなものかというのがクローズアップされないのではないか。これだけ生字幕における同時会話の問題点が挙げられているのだから、ワンステップ進める意味では、「今後も検討していく」で終わりにしてほしくない、もう少し何か書いてほしい。ターゲットとしては、総放送時間に対する割合というのを大きく出せるのではないか。 事務局 具体的にどのように記載するかは検討させていただきたいが、記載しているとおり、まずは精度がどれぐらい実用に耐えうるものか等を見続けることが今の段階では必要なのではないかと考える。今後の見直しに向けて、例えばある程度精度が高まってきたということが確認され、導入も進んできたというようなことがあれば、どういった目標設定をするかといった議論になるではないか。 新谷構成員 また別の機会に議論したい。 近藤構成員 研究会の場にて、高齢者の多くが難聴で困っている、また、難聴の家族と同居することでテレビの音の大きさに大変困っている方がいるという高齢化の現状について報告させていただいた。この項目を入れていただき、感謝申し上げる。 今後は高齢者団体も声を取り上げていただけるようになるということで大いに期待しているが、そもそもの字幕放送というものの認知度のあまりの低さについて、我々はずっと取り組んでいる。字幕放送があるのに、そのことが知られていない。知っていても、字幕ボタンが分かりにくい。改善する方法を具体的に、社会福祉協議会や障害者団体の皆様と高齢者団体の皆様が一緒に声を上げていけるような活動を少しでも進めればと思っている。毎年様々なセミナーや講演を開催する中で、字幕の問題などを紹介して、高齢者の方が字幕放送を利用できるようにお手伝いしている。是非皆さんの地域、放送事業者でもそういったことをより理解していただいて、字幕放送のありがたさや大切さが高齢者に届くように切に願っている。是非字幕放送が高齢者に認知されていない、そのことが問題なのだということをもう少し大きく書いていただけると嬉しい。 事務局 今いただいた御意見は、40ページの3(4)C「認知度の向上」に係るところかと思う。どういったかたちで具体的に追記できるかについては、検討させていただきたい。具体的な取組については、今後開催することを考えているフォローアップの会合や、様々な関係者が集まる場で議論できればいいと考えている。 (10分間の休憩) 三宅構成員 原田構成員の意見に関連して、文字スーパー等のテキスト情報の読み上げについては、過去5年間の私たちが中央省庁等に提出している陳情の項目を研究会第1回に資料として提出したが、この5年に限らず、以前から意見を出しているため、以前からというのをより強調した書き方で報告書に記載していただきたい。 また、情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法に関連して、予算的、費用的なことに関してはなかなか記載が難しいかと思うが、放送事業者が取り組もうとしていることに関しての総務省の姿勢や考え等をもう少し報告書に記載いただければと思う。 事務局 1点目の以前から要望があったということを記載、強調いただきたいということについては、前向きに検討したい。 2点目の、総務省としての今後の支援と予算についての姿勢をより示していただけないかという御指摘については、研究会の報告書であることから、総務省の姿勢や考えを宣言するというのは、若干性質が異なってしまうのではないかと考えている。一方で、そういった御意見が示された、そういったことが望ましいといった御意見があった旨は追記できるかと思うので、検討したい。 河原構成員代理 先ほどの民放連からの話で、地域局では手話通訳者の数が足りないため難しいというようなお話があったが、それに対して、堀米構成員から地域の聴覚障害者情報提供施設と連携して進めるという話があったと思う。今回、特にその取組に関する文章が全く見当たらない。地域の聴覚障害者情報提供施設と連携して、手話放送の充実のために取り組むと記載いただきたい。 また、やはり手話通訳者の数が足りないので、国でも取組を進める必要があると考えている。今、手話通訳者の養成は全て厚生労働省の管轄となっていて、厚生労働省の事業で行っている。以前は福祉分野の通訳養成がメインだったが、今後は全ての分野・範囲において手話通訳が必要になる。放送に関しても、各省庁が手話通訳の養成、研修の取組も必要があるということを記載いただきたい。 また、「目で聴くテレビ」では手話も字幕も放送番組に付与して放送していて、実際、TBSの番組でも使われている。このような方法もあるということも、具体例として記載いただきたい。このような方法があれば、放送事業者自身で手話通訳の手配ができなくても、「目で聴くテレビ」に手話、字幕を作成いただき、自分の番組に付与し、放送できる。アイ・ドラゴンというアダプタが必要だが、ろうあ者の多くはアイ・ドラゴンを持っており、厚生労働省も日常生活用具として指定しているため、比較的自己負担も少なく導入できる。いろいろな機器とサービスを組み合わせて効果的に使い、手話放送を見ることができるようになっており、そのような取組もあるということを記載いただきたい。 事務局 1点目の各地域での聴覚障害者団体との連携について、おそらく13ページに記載している、前回、堀米構成員から御紹介いただいた岡山放送の事例が一部関係しているかと思うが、具体的な書きぶりについてはまた御相談させていただきたい。 2点目として手話通訳者の育成について御意見をいただいた。広く一般的なものとしては厚生労働省が行っているが、総務省としてはテレビジョン放送に特化した研修を行っており、22ページに記載している。引き続き、行っていくことを今後の方向性としてお示ししているところ。 また、「目で聴くテレビ」やアイ・ドラゴンのお話を追加でいただいた。どういったかたちで追記ができるかについて、検討させていただきたい。 河原構成員代理 確かに手話通訳者の研修について掲載されているが、厚生労働省が養成した手話通訳者を、総務省が利用してテレビのための通訳を養成しているということになるのではないか。厚生労働省だけではなく、総務省としても、放送のための通訳が必要であり、それを認識していただくためにも、総務省としても厚生労働省と連携して養成に取り組むという方法もあるのではと思い、意見させていただいた。是非検討いただきたい。 事務局 手話通訳者の育成については、もちろん厚生労働省とも連携、協議しながら進めていく必要があると考えている。 新谷構成員 質問になるが、BS放送の例で、NHKの非常に人気のあった番組が、NHKが再放送した際には字幕が付いていたが、BSの独立放送にその素材が恐らく譲渡され、その後再放送された際には、字幕がカットされていた。せっかくNHKが字幕素材を作ったのに、なぜ譲渡されると字幕を削ってしまうのか。譲渡に当たって何らか条件があったからBS放送事業者は字幕を外したのか。その辺りの状況について御説明いただきたい。 小原構成員 NHKで字幕付きで放送していた番組が、BS放送事業者に譲渡された際に字幕がなくなっていたという趣旨か。 新谷構成員 そのとおり。以前、こういった事例として解説放送について三宅構成員からもお話があったと思うが、せっかく資源として字幕を付与した素材ができ上がっているのに、わざわざ外すというのがよく分からない。素材を移すときの一般的な条件として、少なくとも放送する際には、素材としてあるものは基本的にそのまま流すべきではないかと思い、質問させていただいた。 小原構成員 契約を担当していないので、番組を譲渡するに当たってどのようなかたちの条件がついているのかも含めて、確認するためのお時間をいただければと思う。 岩下構成員 そもそも今回の研究会は視聴覚障害者等向けのサービスについて検討するということになっているが、やはり放送に字幕、解説をつけるのはお金がかかる。そういったことを一部のマイノリティーの方のために行うというのは、世の中は本音からいうと受け入れないだろう。先ほど認知度を向上させたいという近藤構成員のお話があったが、高齢者を含めて、実は音声解説にしても、字幕にしても、一般の方達にとって非常にメリットがあるということを、こういったクローズドな場ではなく、例えば民放のCMの一部に取り入れるとか、番組の中でアピールする等、より一般の方も利用できるようにしていくことが大事ではないかと思っている。私は毎日新聞で「ユニバーサロン」というページを作っているが、障害者のために作成しているのではなく、共生社会を実現するために一般の方達をどうやって巻き込んでいくかを考えている。 例えば、具体的なことをいうと、NHKの毎週日曜日の昼にEテレで将棋と囲碁の番組を放送しているが、この番組の素晴らしいところは、番組の中で女性のアシスタントが必ず棋士が打った手を必ず音声で読み上げてくれる。以前からこの囲碁の番組では必ず行っていたことで、決して視覚障害者のためにやっているわけではない。こういったことをNHKもアピールすればいいのではないか。こうして普通に行われていることが、皆さんのために役立っているのではないか。 先ほどうるさい環境の中で字幕があると助かるとお伝えしたが、料理中には音声解説が便利である。また、例えば「どうする家康」という番組に音声解説がついているが、音声解説では画面に出てくるものの名称や、場所の名前等をきちんと言語化してくれるので、非常に質の高い番組の見方ができるようになる。そういったアピールをして一般の方をどんどん巻き込んでいくことで、予算も取りやすくなっていくのではないか。今回の報告書の中でもこういったことを記述していただけるとありがたい。 事務局 必ずしも障害を持っている方だけのためではないと言う点は、高齢者についてはこれまでの想定に入っていたものの、今回の研究会の中でよく聞く御意見だと思う。吉田構成員にお話をお伺いした際も、例えばお子さんを寝かせているときに、親御さんが字幕で放送番組の内容を見ているといった話を伺ったこともあった。今いただいた御意見については1「はじめに」に全ての人がテレビジョン放送を通じて全ての情報にアクセスするという趣旨を記載しているが、今いただいた御趣旨について具体的にどういったかたちで記載できるかは検討したい。 世木構成員 先ほどの岩下構成員の話とも関連するかもしれないが、例えば、例として、NHKの「みんなの体操」等の番組の解説音声を聞くと、いわゆる本編の音声とは全く違うかたちで作っている。一般的なドラマ等の場合には、恐らく役者のセリフの間に解説音声を入れているという形態になっていると思うが、要するに全て音を収録し直しているという音声の作り方をしている。 また、以前、テレビ放送とラジオ放送で、野球の実況の仕方がどう違うかというのをアナウンサーに聞いたことがある。ラジオの場合には、例えば「ピッチャー、振りかぶって第1球投げました。センター前ヒット」と言うが、テレビの場合には、ピッチャーが振りかぶっているのは見れば分かるので特に言わない。要するに、ラジオで伝える場合とテレビで伝える場合、つまり映像があるかないかで伝える内容というのはおそらく本質的に変わってくるということがある。 番組によっておそらく解説放送をつけることのコスト、手間が大きく変わってくると思うが、そういった議論というのがあまりされていないような気がしている。果たしてどの番組にどこまで解説を付与しなければいけないのか。例えば、野球の中継であれば、実況のアナウンサーをもう一人用意しないと恐らく対応できないのではないかと思うが、そこまでして解説放送をつけていくということが求められているのか。テレビというのは、基本的に映像と音声の両方を使って情報を表現していくというのが元々のメディアのスタイルではないかと思うが、その辺りはいかがか。 事務局 解説放送について、別途費用がかかるというところを踏まえて、どれだけ進めていくべきかという御趣旨の質問かと思う。放送法の第4条2項において、解説放送をできる限り付与するものとするとされていることを踏まえて、放送事業者の皆様には前向きに取り組んでいただきたい。一方で、おっしゃるとおり、費用負担、人員の問題から、現行の指針では、放送事業者の規模等に応じて目標設定がされていると理解している。今いただいた費用面等について、例えば、目標の設定の精緻化や、対象番組についてさらに検討するということはあると思う。 吉田構成員 他の構成員の方からの質問を踏まえ、意見が3つある。 1点目は、障害者権利条約の第2条で手話は言語であると認められているということを、例えば3ページの2(1)A「障害者の権利に関する条約」で明確に記載できないか。それと関連して、第9条及び第21条で情報アクセシビリティや情報アクセスのことが書かれているため、脚注部分でも構わないので、明確に記載するということが可能であればお願いしたい。 2点目に、認知度の向上のために民放のCMで共生社会をうたっていくこと、その中でも字幕番組がどうして必要なのかということを取り上げるということについて、私からも要望する。一般の方を巻き込んでいくというのは、バリアフリーを超えてユニバーサルな社会を作っていくためにも必要なことだと思うが、そういった文言を今後の検討課題に入れていただけるとありがたい。民放のCMというのがどうしてもハードルが高いようであれば、例えばSNSを使って発信する、広めるということも可能だと思うので、民放、NHK等から、こうした字幕番組、解説放送があり、こういった使い方があるということを、SNSを使って発信していただけると、認知度が高まっていくのではないかと思う。今後の検討課題に入れていただけるとありがたい。 3点目が、44ページの図表16「地上放送における字幕放送の目標及び直近4カ年の実績」について、目標の部分に、できる限り100%に近づけるという記載があるが、これを達成するために今やらなければならないことは何なのか、この図表の中にも箇条書きで、優先順位の高いところだけでも、大まかな傾向だけでもよいので書いてほしい。そのために何が必要で、どれぐらいのコストが必要なのか、そういった議論が生まれると思うので、図表を見ただけで分かりやすい書き方があるとよい。 事務局 1点目については、検討させていただきたい。 2点目として、認知度の向上について御意見をいただいた。こちらについても、今ある認知度の向上の項目の中にどういったかたてで記載できるか、検討させていただきたい。 3点目については、必ずしも44ページの図表16だけではなく、目標値と実績値を書いている図表全体についての御意見だったかと思う。この図表については現状の目標と数値を記載すると整理していることから、ご指摘いただいた優先順位や必要なこと、コストなどの書き方については検討させていただく。 近藤構成員 認知度の向上について報告書に記載いただいたということで、御礼申し上げる。もし可能であれば、2(2)A「高齢化の現状」に数字が書いてあるが、私が12月13日の研究会第2回の報告の中で、80歳以上の人口が1,206万人という、総務省の統計局の数字を発表したが、これをもし入れていただけるようであれば、日本人の10人に1人は80歳以上であること、日本人の多くが老人性難聴であるということを放送事業者に数字で御理解いただけるのではないか。できれば昨年よりも46万人増えているのだということを追加していただけるとありがたい。 事務局 御発表いただいた内容かと思うので、記載については前向きに検討したい。 河原構成員代理 先ほど吉田構成員からお話いただいた、「手話は言語である」という追記に賛成する。やはり、今日お話があったように、一般の方々はなぜ字幕放送や手話放送が必要か分からない方も多くいらっしゃると思うので、手話は言語であるということ、手話を使って生活しているろう者がいるということ、その人たちのために手話で情報を提供する必要であるということを、明記していただきたい。 先ほどからフォローアップ会合の話が出ているが、どういったものか教えていただきたい。 事務局 手話は言語であるという旨の追記についてご賛同いただいたということかと思う。 フォローアップ会合について、初出は45ページである。放送事業者等においては、まずは全ての放送事業者において現行指針の目標を達成するための一層の取組が必要であると考えられ、総務省においても、当該取組の状況等をしっかりとフォローアップしていくことが重要であることから、関係者が参加するフォローアップの場(会合)を設けることが望まれる、といった記載をしている。このような研究会の場を通じて、また5年後に同じような会議を開催するのではなく、頻度についてはまた皆様と相談させていただければと思うが、進捗状況、また、新たな取組等について共有できる場ができればと考えている。 河原構成員代理 関係者というのは、当事者団体も含まれるのか。 事務局 今回の研究会と同じようなかたちで、放送事業者、障害者団体の皆様、そして今回御意見いただいた高齢者の方をどう含めていくかも含めて、そういった方々に参加いただくことを現時点では想定している。 岩下構成員 解説放送について意見を追加させていただきたい。特にNHKであるが、今、映画を放送する際には副音声が当たり前に付いている。最近意外だったのは、Netflixといったインターネット動画では、韓国のドラマだと原語の韓国語の副音声が付いているということ。他の原語を習得するためにも利用できるということで、技術的に大変なのかも知れないが、副音声の多重放送というのか、単に英語だけではなく、原語の副音声の部分も追加するといったことも、是非NHKには検討していただきたい。 小原構成員 技術的なことも含めて、すぐできるかどうかも含めて検討させていただきたい。 三宅構成員 前回、目標値について発言した際、現状ではまだ達成していない局の方が多いので、現行のままでいかせてほしいという話があったが、民放連及びNHKから、既に独自でさらに高い目標を定めており、それに向かって取り組んでいるという話もあった。そうであるのであれば、そういったことを示していただくことも必要ではないか。そうでなければ、指針はこのまま、今までと相変わらず変化がないのかと見られてしまう可能性もあり、せっかく放送事業者が高みを目指されているにもかかわらず、それが見えていないから、やっていないのではと思われるのは、非常に損ではないかと思う。 指針の上でというよりは、各放送事業者あるいはNHKがどこかで公表するかたちで、我々は既に指針目標を達成しているが、高みを目指して独自の目標値を設定し、具体的に数値を出すかどうかというのは検討されると思うが、お示しするという方向性で進めていただきたい。 事務局 報告書(案)では、各放送事業者が自主的な目標を設定すると記載しているが、当該目標を公表できるかどうかについては、是非放送事業者の皆様の御意見をお聞きしたい。 小原構成員 2027年度までの現行の指針の目標、字幕なら100%付与するという目標に向かって、どういったステップで進めていくかというところを、独自目標を作って達成してきた。発表はしていなかったが、内々では、今年は99.5パーセント、来年は99.7パーセントといったかたちで少しずつ増やすことで達成して、現行の水準までたどり着いた。今後については、もし発表できるものがあれば発表することはやぶさかでないが、今、具体的にどういうことができるかは検討させていただきたい。 二階堂構成員 民放連としては、前回も報告したが各社によって番組の編成が異なっており、先々の編成も全く見えない状況。例えば、ドラマの数が増えると解説放送が付けやすくなり、逆にドラマの枠が減って生番組が増えると解説放送の比率も下がってしまうというようなことがあるため、先々の目標値については明言できないというのが正直なところ。ただ、目標をさらに上回るように各社ごとに努力して、さらに上を目指していくという心積もりはあるため、御理解いただきたい。 三宅構成員 承知した。私はこの研究会の中にいるから理解はできるが、一般の方々はなかなかそこに及ばないところがあるので、私ももちろん言っていくつもりだが、事業者から目指していることを示していただけると、より皆さんの理解を得られるかと思う。 山下座長代理 これから5年間同じ目標値がずっと続くというだけでは非常にもったいないので、各社で自己基準を設定して、そこに向かっていただけるといいということを申し上げて、それを書いていただいたので、大変ありがたい。 また、今回聞かせていただいて、私も新しい発見と、それからさらなる疑問、どちらも多く湧いてきた。その中で、全く率直なことで申し上げると、障害者の方々あるいは障害者団体の方々の御発言のどこが本音で、どこが建前なのかということがなかなか分かりにくい。それは自分が障害を経験していないせいなのか、もちろん勉強不足もある。また、放送事業者は、ここまで課せられていた目標を達成したということが非常に前面に出ていて、さらにこんな構想も可能だが反対されるのでは、といった点があるようにも見えた。本当に必要なもの、さらにあれば便利だというものをすり合わせ、要らないものは削除していくというようなコミュニケーションがもっと図れると良いのではないかと思った。 幸い、定期的に放送事業者の方と障害のある方、団体の方が定期会合を持たれているということもあり、フォローアップ会合もされるということなので、是非そういう機会に、建前も必要だが、本音のところで実質的に、より福祉の向上になるように、あるいは、より緊急なときの人命あるいは財産の保全に資するところを目指していっていただきたい。 音座長 今回、フォローアップ会合という、新たにコミュニケーションの場を作っていくということもあり、その意味では、5年ごとにということではなく、着実に前へ進んでいく状況を今回の報告書の中で示すことができたのではないかと考える。いただいた御意見については、事務局のほうで調整をいただき、取りまとめについては座長に御一任いただくというかたちでよろしいか。 (「はい」の声あり) 音座長 それでは、資料に関しては、必要な修正などを加えた上で取りまとめをさせていただければと思う。 (3)その他 事務局から、追加意見については、令和5年3月17日(金)までにメール等で事務局まで提出してほしい旨連絡があった。 (4)閉会 松井地上放送課長から閉会の挨拶があった。 4回にわたって非常に御熱心な議論をいただき、感謝申し上げる。改めて、音座長、山下座長代理をはじめ、構成員の皆様、各障害者団体の皆様、事業者の皆様に厚く御礼申し上げる。 今回は5年目の中間見直しということでご議論いただき、最新の状況のアップデートや、様々な取組についてお話を伺うことができた。また、今までできなかったものができるようになっているというような新しい技術、サービスの取組状況などについてもお伺いできた。 いただいた御提言を踏まえ、これから指針の見直しをすることになるが、今回の議論を通じて、新しい気づきが得られたと同時に、新しい課題を多くいただいたと思っている。総務省の持っている実績調査の数字だけでは見えない部分のデータ、情報について、まだまだもっと総務省自身が深掘りして取り組まなければいけないということを痛感した。先ほど山下座長代理からもお話があったが、総務省も交えて関係の皆様とコミュニケーションを取り合って、本質的、実質的なところの議論に入れるようにと考えている。 指針の目標を達成することも非常に重要だと思っているが、目指すべきは、必要とされる情報を全ての方に届けていくことで、これが放送の本質だと思っている。研究会の名称では「視聴覚障害者等」としているが、高齢者も含めて、必要な方全てに必要な情報を届けていく、このために何ができるのかということを、ここで議論を止めずに、フォローアップ会合を開催していくことも御提言いただいているので、総務省としてもしっかりと皆様と一緒にさらに取り組んでいく。そういったことを決意として申し上げて、今回の研究会の締めくくりとしてのお礼の御挨拶とさせていただく。今後ともよろしくお願い申し上げる。 以上