はしがき

 地方公営企業は、住民の日常生活に欠くことのできない上・下水道、交通、電気・ガス、病院等のサービスの提供を通じて、住民生活の向上や地域の発展に大きな役割を果たしています。
 平成26年度における地方公営企業の決算状況をみると、事業数は8,662事業、従事する職員の数は34万2,782人となっており、決算規模は約18兆7,789億円と、地方公共団体の普通会計における歳出決算額の約19%に相当しています。また、建設投資額は約3兆7千億円にのぼり、地方公共団体の普通会計における建設事業費の約25%に相当し、社会資本の整備に寄与しています。
 このように、地方公営企業の提供するサービスは、住民生活の向上や地域の発展のために重要な役割を果たしている一方で、公営企業を取り巻く経営環境は、施設等の老朽化に伴う更新投資の増大、人口減少等に伴う料金収入の減少などにより厳しさを増しています。
 地方公営企業が、将来にわたり住民生活に必要なサービスを提供し、その本来の目的である公共の福祉を増進していくためには、その経営環境の変化に適切に対応し、公営企業のあり方を絶えず検討していくことが求められるとともに、自らの判断と責任に基づき、経営の健全化等に不断に取り組む必要があります。
 そのため、公営企業会計の適用拡大や経営比較分析表の公表による「公営企業の見える化」の推進、事業廃止・民営化を含む抜本的な改革の検討、経営戦略の策定を通じた経営基盤強化等を通じ、公営企業の経営の改革を進めることとしています。
 また、公営企業会計制度と民間の企業会計制度の整合性を図るため、平成23年度に地方公営企業法施行令等を改正し、その改正内容が平成26年度予決算から適用され、法適用企業については、総資産が7兆5,206億円減少し、資本対負債の比率は前年度の9対1から3対7に変化するとともに、総収支(純損益)は、6,223億円の赤字となるなど、各公営企業の資産の状況や損益構造がより一層明確化されています。
 こうした状況に鑑みれば、公営企業間の経営状況の比較を行う客観的な指標としての公営企業決算統計の活用の幅はますます拡大していくものと考えます。
 地方公営企業年鑑は、公営企業決算統計調査をもとに、昭和30年に昭和28年度決算を第1集として発刊して以来、今年度の平成26年度決算の集録をもって第62集を数えることになりました。本年鑑が、公営企業経営の基礎資料として大いに役立つものと確信し、それぞれの分野において十分に活用されることを期待しています。
 最後に、本年鑑の基礎となりました公営企業決算統計調査に当たっては、各地方公共団体の関係者に多大な御協力を頂いたことを厚くお礼申し上げます。

 平成28年3月
総務省自治財政局長
安田 充

■目次へ戻る