はしがき


 平成14年度における工業用水道事業の経営状況をみると、供用を開始している143団体のうち、純利益を生じているものは114団体で79.7%を占めており、工業用水道事業全体の純損益は180億円の黒字となっている。
 しかしながら、工業用水道事業の中には、ダム等水源開発施設の工期延長等に伴う資本費負担の増嵩等により、水源開発に係る負担が非常に重くなる一方で、社会経済情勢の変化等による企業誘致の停滞や、受水企業の水使用の効率化等に起因する水需要の伸び悩みにより、厳しい経営を余儀なくされている事業が数多く存在している。
 また、現在、純利益を生じている事業であっても、当初計画していた水需要が減少することにより、これまで整備を行ってきた水源開発施設等が未稼動状態になっている場合もある。
 大幅な水需要の増加が見込めない現在においては、的確な需要予測に基づいた建設投資計画の作成やその見直しが必要であるとともに、未売水、未稼動水を抱える事業にあっては、水利権の他用途への転換など、事業規模の適正化を目指した取組が強く求められている。
 このような状況に対応するため、各事業体においては、需要開拓等による収入の増加、経費節減による経営の合理化等、様々な企業努力に取り組まれているところであるが、加えて今後は、民間的経営手法の有効な活用を図りながら一層の経営の効率化・健全化を図ることはもとより、地域の実情も勘案しつつ、自立性の強化に取り組むとともに、各地域に最もふさわしい経営形態のあり方について十分検討する必要がある。
 こうした工業用水道事業を取り巻く厳しい環境の中で、事業の経営状況を客観的に捉え、類型別に分類比較をし、経営分析を行うための資料として「工業用水道事業経営指標」を作成しているところである。
 本指標は、平成14年度地方公営企業決算状況調査を基礎とし、営業中の241施設及びその施設を運営する143団体について類型別に分類し、様々な角度から分析したものである。
 本指標を、今後の経営改善に当たっての尺度として積極的に活用され、経営の健全性確保の一助としていただければ幸いである。


平成16年3月
総務省自治財政局公営企業経営企画室長
          兵谷 芳康
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平成14年度工業用水道事業経営指標