はしがき


 平成15年度における工業用水道事業の経営状況をみると、供用を開始している144団体のうち、純利益を生じているものは121団体で84.0%を占めており、工業用水道事業全体の純損益は164億円の黒字となっている。
 しかしながら、工業用水道事業の中には、産業構造の変化、水利用の合理化などによる水需要の伸び悩みに加えて、ダム等水源開発施設の建設期間の長期化等に伴う建設費負担の増嵩により水源開発に係る負担が非常に重くなるなど、厳しい経営を余儀なくされている事業が数多く存在している一方で、純利益を生じている事業であっても、当初計画していた水需要が減少することにより、これまで整備を行ってきた施設等が未稼動状態になっている場合もある。
 そのため、工業用水道事業は、経費節減、需要開拓など、経営健全化の努力に取り組まれているところであるが、大幅な水需要の増加が見込めない現在においては、的確な需要予測に基づいた建設投資計画の作成やその見直しが必要であるとともに、未売水、未稼動水を抱える事業にあっては、水利権の他用途への転換など、事業規模の適正化を目指した取組が強く求められている。
 また近年では、公共サービス分野における民営化、民間譲渡、民間委託等の促進の要請など、社会経済情勢の著しい変化や厳しい経営環境の下で、事業の一層の自立性の強化と経営の活性化を図ることが重要な課題となっている。工業用水道事業においても、各地域に最もふさわしい経営形態の在り方も含めて経営の総点検を行うとともに、民間的経営手法の適切な活用を図りながら、より一層の経営の効率化・健全化を図っていく必要がある。
 こうした工業用水道事業を取り巻く厳しい環境の中で、事業の経営状況を客観的に捉え、類型別に分類比較をし、経営分析を行うための資料として「工業用水道事業経営指標」を作成しているところである。
 本指標は、平成15年度地方公営企業決算状況調査を基礎とし、営業中の243施設及びその施設を運営する144団体について類型別に分類し、様々な角度から分析したものである。
 本指標を、今後の経営改善に当たっての尺度として積極的に活用され、経営の健全性確保の一助としていただければ幸いである。


平成17年3月
総務省自治財政局公営企業経営企画室長
          河  内   隆
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平成15年度工業用水道事業経営指標