IX.繰入金の状況分析

                  損益勘定繰入金
 損益勘定繰入金対総収益(%)= ―――――――― ×100
                   総 収 益
  (注) 損益勘定繰入金=総収益のうち他会計補助金 (特別利益中の他会計繰入金を除く)

                    資本勘定繰入金  資本勘定繰入金対資本的収入(%)= ―――――――― ×100                      資本的収入   (注) 資本勘定繰入金=資本的収入のうち他会計出資金+同他会計借入金+同他会計補助金
区    分 損益勘定繰入金
対 総 収 益
資本勘定繰入金
対資本的収入
 
うち出資金 うち借入金
15 16 17 15 16 17 15 16 17 15 16 17
当 該 団 体                        
類似団体平均                        
全 国 平 均 3.0 3.0 2.8 32.5 17.9 10.7 5.7 4.5 3.8 25.2 12.2 6.3
A  施  設
B    県

【指標の見方】
  これらの指標は、総収益、資本的収入それぞれの収入における繰入金依存度をみるものである。供用中の施設において繰入金がある場合には、独立採算の原則と工業用水道の社会的な目的を踏まえて、できるだけ繰入金への依存を減ずるための検討を進めることが必要である。
  なお、繰入金の中には、単に資金融通として計上される借入金も含むこと、また、他会計負担金名目での繰入金は除いていることに留意する必要がある。

【施設別:A施設の分析】
【団体別:B県の分析】
  A施設、B県とも、平成17年度中は、損益勘定、資本勘定ともに他会計からの繰入金はない。

【全体の傾向】
  総収益に占める他会計繰入金の割合は全国平均で2.8%、資本的収入に占める他会計繰入金の割合は全国平均で10.7%(うち出資金が3.8%で資本的収入に対する繰入金の35.5%、借入金が6.3%で同58.9%)となっている。損益勘定繰入金は、現在配水能力規模の小さい事業において高い割合を示す傾向がある一方で、資本的収入に占める繰入金の割合にはこの傾向は見られない。
  特に、「極小規模」で「ダムを有するもの」については、対総収益で18.4%となっており、それ以外の規模のものと比べ、繰入金の割合が高い。これは、もともと規模が小さい場合には施設効率が低くなることに加え、水源であるダムに係る減価償却費等が規模に対して過大であると考えられ、水源の見直し(ダム等水源開発施設以外の水源への変更等)、資本費等の負担軽減などの対策が必要であろう。
  なお、建設中の事業については、全国平均の算定には含まれていないが、これら建設中の事業のみの平均でみると、供用中施設を大幅に上回る繰入が行われている。

損益勘定繰入金対総収益及び資本勘定繰入金対資本的収入(施設別)
規模別・水源別損益勘定繰入金対総収益及び資本勘定繰入金対資本的収入(施設別)
規模別損益勘定繰入金対総収益別施設数
水源別損益勘定繰入金対総収益別施設数
規模別資本勘定繰入金対資本的収入別施設数
水源別資本勘定繰入金対資本的収入別施設数
損益勘定繰入金対総収益及び資本勘定繰入金対資本的収入(団体別)
規模別損益勘定繰入金対総収益別団体数
規模別資本勘定繰入金対資本的収入別団体数


【A施設の分析】のまとめ
  以上9項目の経営分析により、A施設については次のように要約できる。

  A施設は、水源がダム等であり、他の施設に比べて資本費そのものが高く、料金も高く設定せざるを得ない状況であるが、国庫補助金の交付を受けているため基準料金制による料金設定の上限があり、上限額に料金を設定しても原価割れになってしまうため、料金収入以外にも受水企業から営業協力金を徴収している。このため、料金回収率は100%を下回っていても、損益収支において利益が生じている。
  また、費用構成比における資本費分は、全国平均と比べて大きく上回っている。特に、独立行政法人水資源機構割賦負担金利息をはじめとした支払利息の割合が大きく、支払利息の比重が小さくならない限り、給水原価が高い状態が続くことになる。
  したがって、A施設においては、高金利企業債の借換や、独立行政法人水資源機構の割賦負担金の繰上償還等により支払利息の軽減を図ることが安定的な経営を維持していくために効果的であると言えよう。

【B県の分析】のまとめ
  B県については次のように要約できる。

  B県においては、供用開始以降、受水契約が伸び悩み、さらに施設利用率も著しく低いことから、ダム使用権の転用を行うなど、後年度の負担を軽減する対策を行っている。
  料金については、平成2年度に31円だったものが、平成5年度で32円、平成6年度で34円と改定を行っている。このため、受水契約は依然伸び悩んでいるものの、平成7年度以降、単年度黒字を計上しており、平成12年度末で累積欠損金を解消している。
  ただし、施設利用率が低いままであることは、過大資産を抱えているとはいえ、対外的な説明に留意する必要がある。
  一方、経営的には他会計借入金が多く、今後その償還が本格化することから、将来的には資金不足も懸念される状況にある。
  したがって、B県においては現状における資金不足や損益上の悪化を示す数値は出ていないものの、事業規模の適正化を図るため、今後もさらに、水利権の転用等を検討するなど、過大資産の整理による資本費の縮減を図る必要がある

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平成17年度工業用水道事業経営指標