はしがき


 工業用水道事業は、地盤沈下対策や地域経済の産業基盤施設として経済の発展に大きく貢献しており、平成17年度においては、供用開始している144団体が6,175箇所に及ぶ給水先に対して年間46億96百万m3の配水を行い、各事業所の安定した操業に大きな役割を果たしている。
  また、平成17年度における工業用水道事業の経営状況をみると、上記144団体のうち、純利益を生じているものは120団体で83.3%を占めており、工業用水道事業全体の純損益は239億円の黒字となっている。
  しかしながら、工業用水道事業を取り巻く経営環境は、産業構造の変化や水利用の合理化による水需要の伸び悩み、ダム建設期間の長期化に伴う負担増など、厳しい経営を余儀なくされている事業が数多く存在する一方で、純利益を生じている事業であっても、当初計画していた水需要が減少することにより、これまで整備を行ってきた施設等が未稼動状態になっている場合もある。
  また、昨今、公的サービス供給方法の多様化や規制緩和が進展するとともに、地方行政の効率化・活性化等の観点から、国の行政改革大綱や政府の「経済財政運営の構造改革に関する基本方針」において、地方公営企業への民間的経営手法の導入が提言される等、経営改革が強く求められている。
  こうした中、今後も安定的・効率的に事業を継続していくためには、経営の総点検や「新地方行革指針」に基づき策定された集中改革プランを実施することによって、適正な定員管理、民間的経営手法の導入、積極的な情報開示、的確な需要予測に基づく計画性・透明性の高い企業経営を推進するとともに、未売水、未稼動水の他用途への転換など、事業規模の適正化を目指した努力も必要と考えられる。
  こういった工業用水道事業を取り巻く厳しい環境の中で、事業の経営状況を客観的に捉え、類型別に分類比較をし、経営分析を行うための資料として「工業用水道事業経営指標」を作成しているところである。
  本指標は、平成17年度地方公営企業決算状況調査を基礎とし、営業中の工業用水道事業( 243施設及びその施設を運営する144団体)について類型別に分類し、収益性、資産、財務状況、効率性・生産性等の観点に立ち、様々な角度から分析したものである。
  本指標を、今後の経営改善に当たっての尺度として積極的に活用され、経営の健全性確保の一助としていただければ幸いである。


平成19年3月
総務省自治財政局公営企業経営企画室長
井上 宜也
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平成17年度工業用水道事業経営指標