IX.繰入金の状況分析

                 損益勘定繰入金
 損益勘定繰入金対総収益(%)=────────×100
                  総 収 益
  (注) 損益勘定繰入金=総収益のうち他会計補助金 (特別利益中の他会計繰入金を除く)

                   資本勘定繰入金
 資本勘定繰入金対資本的収入(%)=────────×100
                    資本的収入
  (注) 資本勘定繰入金=資本的収入のうち他会計出資金+同他会計借入金+同他会計補助金
区    分 損益勘定繰入金
対 総 収 益
資本勘定繰入金
対資本的収入
 
うち出資金 うち借入金
19 20 21 19 20 21 19 20 21 19 20 21
当 該 団 体                        
類似団体平均                        
全 国 平 均 2.7 2.3 2.3 25.0 21.1 25.3 5.5 3.7 7.5 6.2 16.2 10.7
A  施  設
B    市 0.1 0.0 41.9 100.0 15.6 41.9 0.0 15.6 100.0

【指標の見方】
 これらの指標は、総収益、資本的収入それぞれの収入における繰入金依存度をみるものである。供用中の施設において繰入金がある場合には、独立採算の原則と工業用水道の社会的な目的を踏まえて、できるだけ繰入金への依存を減ずるための検討を進めることが必要である。
 なお、繰入金の中には、単に資金融通として計上される借入金も含むこと、また、他会計負担金名目での繰入金は除いていることに留意する必要がある。

【施設別:A施設の分析】
 損益勘定、資本勘定ともに他会計からの繰入金はない。

【団体別:B市の分析】
 B市では、資本的収入に占める他会計繰入金の割合は、15.6%と全国平均25.3%を下回っており、そのうち出資金が15.6%となっている。平成20年度の他会計繰入金のうち、他会計借入金が100.0%を占めているのは、ダムの水利権取得のためである。

【全体の傾向】
 総収益に占める他会計繰入金の割合は全国平均で2.3%、資本的収入に占める他会計繰入金の割合は全国平均で25.3%(うち出資金が7.5%で資本的収入に対する繰入金の29.6%、借入金が10.7%で同42.5%)となっている。
 損益勘定繰入金及び資本勘定繰入金は、現在配水能力規模の小さい事業において高い割合を示す傾向がある。特に、「極小規模」で「ダムを有するもの」については、対総収益で17.2%となっており、それ以外の規模のものと比べ、繰入金の割合が高い。これは、もともと規模が小さい場合には施設効率が低くなることに加え、水源であるダムに係る減価償却費等が規模に対して過大であると考えられ、水源の見直し(ダム等水源開発施設以外の水源への変更等)、資本費等の負担軽減などの対策が必要であろう。

損益勘定繰入金対総収益及び資本勘定繰入金対資本的収入(施設別)
規模別・水源別損益勘定繰入金対総収益及び資本勘定繰入金対資本的収入(施設別)
規模別損益勘定繰入金対総収益別施設数
水源別損益勘定繰入金対総収益別施設数
規模別資本勘定繰入金対資本的収入別施設数
水源別資本勘定繰入金対資本的収入別施設数
損益勘定繰入金対総収益及び資本勘定繰入金対資本的収入(団体別)
規模別損益勘定繰入金対総収益別団体数
規模別資本勘定繰入金対資本的収入別団体数


【A施設の分析】のまとめ
 以上9項目の経営分析により、A施設については次のように要約できる。

 A施設は、水源がダム等であり、他の施設に比べて資本費そのものが高く、料金も高く設定せざるを得ない状況であるが、国庫補助金の交付を受けているため基準料金制による料金設定の上限があり、上限額に料金を設定しても原価割れになってしまうため、料金収入以外にも受水企業から営業協力金を徴収している。このため、料金回収率は100%を下回っていても、損益収支において利益が生じている。
 また、費用構成比における資本費分は、全国平均と比べて大きく上回っている。企業債等の繰上償還を行ったことにより支払利息は減少傾向にあるが、減価償却費の割合が依然として大きく、給水原価が高い状態が続いている。

 

【B市の分析】のまとめ
 B市については次のように要約できる。

 B市においては、昭和36年に供用開始し、昭和49年をピークに高度経済成長期以後、水需要が大幅に下がり、契約率が低いままの状態が続いている。
 平成20年度に水道事業との統合により、職員数を大きく低減したため、費用の減少から単年度黒字となっている。更新改良事業については、企業債によらず、内部留保資金の範囲で行う計画としているため、企業債償還金率は低い。
 一方、昨年度完成したダムの償還金を利息軽減のため、他会計借入金によって一括返還しているため、今後その償還が本格化する。
 職員数の減によって費用がおさえられているため、今後も黒字基調で推移することが予想されるが、あらたな受水企業の開拓、又は不要な水利権の転用等など、契約率の上昇をはかる必要がある。

← 目次へ戻る

平成22年度工業用水道事業経営指標