9.繰入金の状況分析

                 損益勘定繰入金
 損益勘定繰入金対総収益(%)=────────×100
                  総 収 益
  (注) 損益勘定繰入金=総収益のうち他会計補助金 (特別利益中の他会計繰入金を除く)

                   資本勘定繰入金
 資本勘定繰入金対資本的収入(%)=────────×100
                    資本的収入
  (注) 資本勘定繰入金=資本的収入のうち他会計出資金+同他会計借入金+同他会計補助金
区    分 損益勘定繰入金
対 総 収 益
資本勘定繰入金
対資本的収入
 
うち出資金 うち借入金
21 22 23 21 22 23 21 22 23 21 22 23
当 該 団 体                        
類似団体平均                        
施設別平均
団体別平均
2.3 2.3 2.0 25.3 22.3 27.0 7.5 7.8 7.4 10.7 8.4 8.2
A  施  設
B    県

【指標の見方】
 これらの指標は、総収益、資本的収入それぞれの収入における繰入金依存度をみるものである。供用中の施設において繰入金がある場合には、独立採算の原則と工業用水道の社会的な目的を踏まえて、できるだけ繰入金への依存を減ずるための検討を進めることが必要である。
 なお、繰入金の中には、単に資金融通として計上される借入金も含むこと、また、他会計負担金名目での繰入金は除いていることに留意する必要がある。

【A施設及びB県の分析】
 B県においては、損益勘定、資本勘定ともに、他会計からの繰り入れを行っておらず、繰入金に頼らない健全な経営が行われていると言える。

【全体の傾向】
 損益勘定繰入金及び資本勘定繰入金は、現在配水能力規模の小さい事業において高い割合を示す傾向がある。特に、「極小規模」で「ダムを有するもの」については、対総収益で16.5%となっており、それ以外の規模のものと比べ、繰入金の割合が高い。これは、もともと規模が小さい場合には施設効率が低くなることに加え、水源であるダムに係る減価償却費等が規模に対して過大であると考えられ、水源の見直し(ダム等水源開発施設以外の水源への変更等)、資本費等の負担軽減などの対策が必要である。

損益勘定繰入金対総収益及び資本勘定繰入金対資本的収入(施設別)
規模別・水源別損益勘定繰入金対総収益及び資本勘定繰入金対資本的収入(施設別)
規模別損益勘定繰入金対総収益別施設数
水源別損益勘定繰入金対総収益別施設数
規模別資本勘定繰入金対資本的収入別施設数
水源別資本勘定繰入金対資本的収入別施設数
損益勘定繰入金対総収益及び資本勘定繰入金対資本的収入(団体別)
規模別損益勘定繰入金対総収益別団体数
規模別資本勘定繰入金対資本的収入別団体数


【A施設の分析】のまとめ
 以上9項目の経営分析により、A施設については次のように要約できる。

 A施設については、昭和46年に一部供用開始し、現在配水能力は793,100m/日となっている。
 事業の状況としては、総収支比率、経常収支比率、営業収支比率とも施設別平均を大きく上回っており、また、企業債償還元金対減価償却費比率も施設別平均を下回っていることから実質的な内部留保は比較的多いものと考えられ、健全な経営状況にあると言える。これは、水源を表流水に求めているため、他の施設に比べて資本費そのものが低くなっていることや、取水池から配水先までの距離が比較的短く、大径管渠の使用割合が高いといった地理的条件などから導送配水管使用効率も施設別平均を大きく上回っているなど効率的な経営ができていることによるものと考えられる。そのため、料金も施設別平均に比べて低く設定されているが、料金回収率は100%を大きく上回っており、給水にかかる費用を料金で十分に賄うことができている。
 しかしながら、契約率、施設利用率は施設別平均を下回っており、施設に余剰がある状態と考えられる。また、供用開始が早い施設であるため、経年資産が多くなっている。今後迎える施設更新に計画的に対応するとともに、新規需要の開拓に取り組むことなどにより、将来にわたって健全な経営となるよう努める必要がある。

 

【B県の分析】のまとめ
 B県については次のように要約できる。

 B県については、昭和16年に一部供用開始し、保有する8施設中、5施設が昭和30年代後半から40年代にかけて供用を開始しており、現在では施設合計の現在配水能力が1,466,290m/日となっている。
 事業の状況としては、総収支比率、経常収支比率、営業収支比率とも団体別平均を下回っているものの100%は上回っており、企業債償還元金対減価償却費比率についても団体別平均を下回っていることから実質的な内部留保は比較的多いものと考えられる。また、流動比率、当座比率などが団体別平均よりも良好であることから見ても、比較的健全な経営状況にあると言える。
 しかしながら、A施設との比較でB県における各指標を見ると数値が悪化している。これは、他に建設の投資額が比較的高いダムを水源としている施設があり、企業債への依存や資本費が高くなる傾向にあること、契約率、施設利用率が低く余剰を抱える施設があることなどを要因とした経営状況の悪い施設を有しているためであり、A施設に依存していると見ることもできる。
 このように、複数施設を保有する団体では、施設毎の経営状況が団体全体の指標に大きな影響を与えることになる。団体全体の指標と施設別の指標、施設別の指標間で乖離が生じている場合には、その原因を精査し、施設毎に規模の見直しや新規の需要開拓、さらには料金改定等を視野に入れた検討を行う必要がある。

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平成23年度工業用水道事業経営指標