9.繰入金の状況分析

                 損益勘定繰入金
 損益勘定繰入金対総収益(%)=────────×100
                  総 収 益

  (注) 損益勘定繰入金=総収益のうち他会計補助金 (特別利益中の他会計繰入金を除く)


                   資本勘定繰入金
 資本勘定繰入金対資本的収入(%)=────────×100
                    資本的収入

  (注) 資本勘定繰入金=資本的収入のうち他会計出資金+同他会計借入金+同他会計補助金
区    分 損益勘定繰入金
対 総 収 益
資本勘定繰入金
対資本的収入
 
うち出資金 うち借入金
25 26 27 25 26 27 25 26 27 25 26 27
当 該 団 体                        
類似団体平均                        
施設別
平均
1.8 1.3 1.6 18.2 20.8 21.9 5.1 7.1 9.9 2.8 7.1 6.5
A  施  設
団体別
平均
1.9 1.4 1.7 29.8 23.2 24.9 6.6 9.0 11.7 4.7 8.5 7.9
B    県

※施設別平均は、建設中の15施設を除く243施設についての平均であり、団体別平均は、建設中の施設しかない4団体(4施設)を除く150団体(254施設)についての平均であるため、数値に差がある。

【指標の見方】
 これらの指標は、総収益、資本的収入それぞれの収入における繰入金依存度をみるものである。供用中の施設において繰入金がある場合には、独立採算の原則と工業用水道の社会的な目的を踏まえて、できるだけ繰入金への依存を減ずるための検討を進めることが必要である。
 なお、繰入金の中には、単に資金融通として計上される借入金も含むこと、また、他会計負担金名目での繰入金は除いていることに留意する必要がある。

【事業全体の傾向】
 損益勘定繰入金及び資本勘定繰入金は、現在配水能力規模の小さい事業において高い割合を示す傾向がある。特に、「極小規模」で「ダムを有するもの」については、損益勘定繰入金対総収益で9.4%となっており、それ以外の規模のものと比べ、繰入金の割合が高い。これは、もともと規模が小さい場合には施設効率が低くなることに加え、水源であるダムに係る減価償却費等が規模に対して過大であると考えられ、水源の見直し(ダム等水源開発施設以外の水源への変更等)、資本費等の負担軽減などの対策が必要である。

【A施設及びB県の分析】
 B県においては、損益勘定、資本勘定ともに、他会計からの繰り入れを行っておらず、A施設では赤字となっているものの、団体としては繰入金に頼らない健全な経営が行われていると言える。

損益勘定繰入金対総収益及び資本勘定繰入金対資本的収入(施設別)
規模別・水源別損益勘定繰入金対総収益及び資本勘定繰入金対資本的収入(施設別)
規模別損益勘定繰入金対総収益別施設数
水源別損益勘定繰入金対総収益別施設数
規模別資本勘定繰入金対資本的収入別施設数
水源別資本勘定繰入金対資本的収入別施設数
損益勘定繰入金対総収益及び資本勘定繰入金対資本的収入(団体別)
規模別損益勘定繰入金対総収益別団体数
規模別資本勘定繰入金対資本的収入別団体数


【A施設の分析】のまとめ
 以上9項目の経営分析により、A施設については次のように要約できる。

 A施設については、平成5年に供用開始し、現在配水能力は13,000m/日となっている。
 事業の状況としては、総収支比率、経常収支比率、営業収支比率の各比率がともに100%を下回っており、契約率は施設別平均を大きく下回っている。また、契約率の伸び悩みにより給水収益が過少であり、料金収入で資本費を賄えていない。これは、計画当初の予測に対して水需要が伸び悩んでいることによるものであると考えられる。
 A施設においては、支払利息の減少などにより、給水収益に対する資本費の割合は減少傾向にあるため、新規需要の開拓による契約率の向上を図り、給水収益を増加させることが必要である。また、契約率の大幅な上昇が見込めない場合にあっては、他施設との統廃合や施設の合理化といった施設規模の見直しについても検討する必要がある。

 

【B県の分析】のまとめ
 B県については次のように要約できる。

 B県については、昭和36年に供用開始し、保有する8施設中、1施設が建設中であり、現在では施設合計の現在配水能力が761,900m/日となっている。
 事業の状況としては、収益性を示す総収支比率、経常収支比率、及び営業収支比率、財務状況を示す流動比率、及び当座比率、施設の効率性を示す契約率などが団体別平均を大きく上回っている。さらに、他会計からの繰入れを受けていないことからも、健全な経営が行われていると言える。
しかしながら、B県においては、契約率の高さに比べて施設利用率が低いことによる乖離が大きく、その乖離率が施設別平均を上回っている施設が複数あるため、今後、供給先事業所からの契約水量の減量要望により、料金収入の減少が生じることも考えられる。また、毎年度赤字となっているA施設を保有しており、将来にわたって経営改善が見込めない場合、B県全体の経営状況に影響を及ぼすことも考えられる。
 このように、団体としては健全な経営が行われている場合でも、個別施設別に見みると、厳しい経営となっている施設もあることから、そのような施設を保有する団体は、その原因を精査し、施設毎に規模の見直しや新規の需要開拓、民間活用や資産の有効活用、さらには料金改定等を視野に入れた検討を行うことにより、経営改善に努めることが重要である。

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平成27年度工業用水道事業経営指標