はしがき


 工業用水道事業は、地盤沈下対策や地域経済の活性化を図るための産業基盤施設として経済の発展に大きく貢献しており、平成28年度においては、供用開始している151団体が5,988箇所に及ぶ給水先に対して年間43億23百万m3の配水を行い、各事業所の安定した操業に大きな役割を果たしている。

 しかしながら今日の工業用水道事業は、産業構造の変化に伴う企業の撤退や節水型機器の普及等を背景とした料金収入の減少のほか、高度成長期に整備した施設の老朽化に伴う大量更新、耐震化や資産規模の適正化、技術の継承など多くの課題を抱えている。現在、単年度の収益的収支が黒字であったとしても、更新投資を十分に行えていない、あるいは今後必要となる更新投資への備えが十分でない場合には、中長期的な視点に立った経営課題の認識と適切な対応が求められている。

 これらへ対処するために、適正な資産規模、老朽化の進行状況、更新投資の見通しを把握し将来にわたって安定的に事業を継続するための中長期的な経営の基本計画である「経営戦略」を策定すること、及び事業の必要性と担い手のあり方を念頭に他事業との施設の共同化やPPP/PFI等による民間活用の推進といった抜本的改革を検討することが、重要な取組となる。

 総務省では、個々の施設や団体において経営状況を客観的に捉え分析を行うために、種類や規模別に分類された「工業用水道事業経営指標」を作成している。

 本書で取り上げる指標は、平成28年度地方公営企業決算状況調査をもとに、営業中の工業用水道事業(243施設及びその施設を運営する151団体)を対象とし、収益性、資産・財務の状況、効率性・生産性等、様々な角度から分析を行うためのものである。

 本書を「経営戦略」の策定や抜本的な改革を検討する上で活用し、安定的な事業経営の一助としていただければ幸いである。

平成30年3月

総務省自治財政局公営企業経営室長
本島 栄二
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平成28年度工業用水道事業経営指標