(例示の事業についてのまとめ)
 9項目の経営指標を踏まえ、A施設およびB団体の経営状況を以下のように総括する。

 A施設は契約率・施設利用率ともに平均を下回り、また契約率と施設利用率にも乖離がみられることから、料金算定分・計量分いずれの有収水量も不十分であり、現在配水能力は供給能力過剰の状態にある。その結果、減価償却費や支払利息等の固定費を給水収益によって十分に回収できておらず、また結果的に職員1人当たり給水収益が少なくなることから職員給与費の負担も大きくなっている。
 一般的に「ダムを有するもの」は給水収益対比で資本費が高くなることから、「ダムを有するもの」かつ有収水量が少ないA施設は給水原価が高くなる。このような状況下A施設は平均よりも基本料金を高く設定しているが、有収水量が少ないために十分な給水収益が得られず、料金回収率は100%を割り込んでいる。さらにその他の収益・費用項目を加味した営業収支比率、経常収支比率、総収支比率のいずれについても100%を下回っており、主たる営業収支、経常収支、総収支それぞれで赤字となっている。
 今後は、引き続き新規需要の開拓による契約率の向上や多用途への転換による未売水の解消により増収を図るとともに、将来的な需要の見通しに基づき、他事業や他施設との統廃合等の合理化や、規模の見直し、事業継続の是非について幅広く検討する必要がある。

 B団体は契約率・施設利用率ともに平均を上回っているものの、契約率と施設利用率には乖離がある。現在の料金算定分の有収水量は十分であるが施設利用率が相対的に低いことから、現在配水能力は実質的にやや過剰である可能性が高く、その場合は将来的に料金算定分の有収水量が減少する可能性を考慮しなければならない。現状では減価償却費や支払利息等の固定費は平均を下回っている一方、損益勘定職員数が平均を上回ることから職員1人当たり給水収益については平均より少なく、給水収益に対する職員給与費は平均より大きくなっている。
 B団体を構成する施設は、上記のA施設を含めてすべてが「ダムを有するもの」であるものの、給水収益対比での資本費は平均を下回っており、加えて有収水量も多いことから給水原価は低い。B団体は基本料金を平均より低く設定しているが、有収水量が十分多いため料金回収率は平均と100%の両方を上回っている。営業収支比率、経常収支比率、総収支比率のいずれについても同様であり、収益率の高い経営が実現できている。
 今後は、引き続き安定的な事業経営を継続するとともに、前述の契約率と施設利用率の乖離についての前広な対応、A施設の収支改善に係る取組等を進めつつ、アセットマネジメントを考慮した上で施設の更新計画を策定し、これらのことを収支計画に盛り込み策定した経営戦略の着実な実行が望まれる。

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平成30年度工業用水道事業経営指標