2.施設の効率性

 水道事業は施設型の事業であり、適切な投資が行われているか否かが経営を左右することになる。投資が適切であるか否かは、施設の効率性を分析することにより判断することができる。
  ここでは、施設利用率、有収率、配水管使用効率という代表的な指標を用いて施設の効率性を考察する。

(1) 施設利用率
           1日平均配水量
施設利用率(%)= ―――――――― ×100
             配水能力
  当該団体 類似団体平均 全国平均 A  市
施設利用率     61.7 66.5

【指標の見方】
 施設利用率は、配水能力に対する配水量の割合を示すもので、施設の利用状況を総合的に判断する上で重要な指標である。施設利用率はあくまでも平均利用率であるから、水道事業のように季節によって需要変動のある事業については、最大稼働率、負荷率と併せて施設規模を見ることが必要である。

【全体の傾向】
 施設利用率については、給水人口規模の大きい事業が概ね高くなっている。

【A市の場合】
 A市の施設利用率は、全国平均や類似団体平均(62.7%)を上回っている。最大稼働率は74.8%、負荷率が89.0%と、季節による需要変動が少なく、比較的有効に施設が利用されている。

施設利用率グラフ


(2) 有収率
         年間総有収水量
有収率(%)= ―――――――― ×100
         年間総配水量
  当該団体 類似団体平均 全国平均 A  市
有収率     89.7 93.8

【指標の見方】
 施設効率を見る場合、施設の稼働状況がそのまま収益につながっているかについては、有収率で確認することが重要である。有収率が低いということは、漏水が多いこと、メータの不感、公共用水、消防用水等いくつかの要因が考えられるが、漏水、メータ不感等による場合は、施設効率が高くても収益につながらないこととなるため、有収率の向上対策を講ずる必要がある。
  なお、有収率が著しく低い事業においては、(1)施設利用率及び(3)配水管使用効率といった施設の効率性を分析する場合には割り引いて考える必要がある。

【全体の傾向】
 有収率については、給水人口規模の大きい事業ほど高くなっている。この理由としては、給水人口規模の大きい事業は、比較的供用開始年度が古く、維持管理期に移行していることなどから、老朽管更新等による漏水防止対策が進んでいるものと考えられる。

【A市の場合】
 A市の有収率は、全国平均や類似団体平均(87.3%)を大きく上回っている。これは、老朽管の更新等を計画的に行い、漏水防止対策が進んでいるためと考えられる。

有収率グラフ


(3) 配水管使用効率
 配水管使用効率(m3/m)=
 年間総配水量
――――――――
 導送配水管延長
  当該団体 類似団体平均 全国平均 A  市
配水管使用効率     25.92 22.60

【指標の見方】
 (1)の施設利用率に加えて、施設の効率性を示す指標である。
  配水管使用効率は、導・送・配水管の敷設延長に対する年間総配水量の割合であり、給水区域内における人口密度の影響を受ける。「3各指標」中の配水管100m当たりの給水人口の数値も併せて参照するとよい。
  なお、当該比率が高いほど施設効率は高いと言えるが、一方で給水安定性向上を目的とした管網整備の推進は当該比率の低下要因となることから、施設効率と給水安定性とのバランスを踏まえた目標設定を行う必要がある。

【全体の傾向】
 配水管使用効率については、給水人口規模の大きい事業ほど高くなっている。これは、給水人口規模の大きい事業ほど都市部を抱え、人家等の密集度も高いことによるものと考えられる。また、有収水量密度による分類に大きな差が生じているのは、地形的要因や需要構造の違いも影響しているものと考えられる。なお、水源別でダムを水源とする事業の数値が他の水源と比較して高い数値となっているのは、団体数が比較的少ないうえに、都及び指定都市等の給水人口規模の大きい事業が含まれているためである。

【A市の場合】
 A市の配水管使用効率は、全国平均や類似団体平均(26.74m3/m)を下回っている。一方、配水管100m当たりの給水人口は全国平均や類似団体平均と同程度であり、有収率も高いことから、給水人口一人当たりの需要量が比較的低いことに起因するものと考えられる。

配水管使用効率グラフ

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平成18年度水道事業経営指標