平成15年度総務省政策評価会(第3回)議事要旨


1 日時:
平成15年11月11日(火)13時00分〜14時45分

2 場所:法曹会館3階 富士の間

3 出席者:
     中邨 章 明治大学政治経済学部教授(座長)、上山 信一 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授、大住 莊四郎 新潟大学経済学部教授、北大路 信郷 静岡県立大学経営情報学部教授、城山 英明 東京大学法学部助教授、武田 安正 アクセンチュア株式会社統括パートナー
 【総務省側出席者】
  平井総括審議官、衞藤総括審議官、滝本政策評価広報課長、松林政策評価広報課企画官

4 議事概要:
 (1)平井総括審議官挨拶
 (2)事務局から配布資料について説明
 (3)質疑応答
 (4)事務局から今後の予定について説明

5 評価会においてメンバーから出された主な意見等:

(1)次期総務省政策評価基本計画策定について
政策評価の目的について、1)成果重視の行政の実現や国民へのアカウンタビリティ2)政策形成能力向上・職員の意識改革に加えて、3)政策判断や戦略計画策定といった政策のプライオリティ付けの材料とする点も柱とすべきではないか。
政策・業務目標と手段である事業との対応関係を明示していくことと、重点化する分野には予算を重点配分するといった実務的な作業が伴うことが必要。
自治体の行政評価の教訓として、事務事業に固執すれば原課の意識は向上し、具体的な改善に結びつく反面専門的になって、住民・政治家に対するアカウンタビリティは出てこないという点がある。
(業務レベルのチェックと事業評価で)今回の案は実務でも意識させつつ、(大括りの政策評価で)国民に対するアカウンタビリティも確保しようというものであることはよく分かり、システムとしては進化していると思う。評価を形骸化しないためには、現場の人にとって重要な予算編成や局内の人事にうまく突き刺さるように評価を活用する必要がある。会議にどのような資料を出すかといったディテールも含め留意すべき。
国土交通省において、評価部門と会計部門が連携して、横割り(アウトカム施策別)の予算額を計算して発表した。その結果、省内幹部がかなり緊張感を持って評価システムのバージョンアップの意味を理解したという事例は参考になる。
各部局でやっている施策を分野・政策と繋げようという試みはユニークであるが、上位目標である政策とその達成手段である施策との関係(シェアードアウトカムへの寄与度)が上手く議論できることがポイント。現状の政策の指標は、施策の(業務)指標をそのままピックアップしているものが多く今後の検討が必要。
「救命率の向上」のように政策目標と手段との関係が分かりやすいものはうまく設定されているが、全ての分野で政策目標と業務目標の指標を設けてうまく設定ができる訳ではないと思うので、分野ごとに軽重がついてもよいからやりながら改善していくべき。
このような表を作成して評価することにより、各施策がどのような過程で政策目標に至るのか、政策と施策や施策間の関係を各担当部局が意識する機会ができることは重要。
説明主体の明確化のために、政策について責任を負う政策のオーナーを明示した方がよい。
政策については官庁や地方公共団体などのクライアントサイドから、施策についてはサプライサイドから見るとよい。政策についての今の指標はサプライサイドに近いので、顧客満足度などクライアントサイドのものも入れてはどうか。
資料1−2において施策の実施手段として、予算、制度、情報提供等を示しているのはどのような政策・施策がどのような実施手段にウェイトをおいているかがよく分かる。
分野の設定は総務省のアイデンティティーに関わるものであり、将来的には、このような合理的な体系の整理に基づいて逆に部局の再編等の組織の見直しを誘発していくという戦略性もほしい。
これからの政策評価の進化は、評価部局はあくまでサポート役で、担当課・現場が中心となって意思決定プロセスや政策・業務の執行のツールとして活用するなかで、担当課・現場の建設的な意見をくみ上げるかたちで、展開できればよい。
「安全で安心な社会の実現」の分野はインプットが総務省に限るものではなく(例:救命率への病院側の影響)、扱いが難しい。一つの省で扱うことの限界を認識し、横断的な試みも行うと面白いのではないか。
5分野ではそれぞれ業務の性格が異なっている。指標についてもう少し大胆にクライアント(ユーザー)サイドの指標を立ててもよいのでは(例:「地方分権の取り組みが進んでいると思う自治体首長の割合」、地方財政で「自力による財政再建が極めて厳しいと思っている首長の比率」等)。全てがユーザーサイドの指標でなくてよいと思うが、そういう切り口で見ると現状の指標は霞ヶ関サイドから見た伝統的な指標(サプライサイドの指標)が多い。
政策レベルの指標は、エンドユーザー指向を全体に入れ込むとともに、せっかく5分野を立てているので業務の性質によって指標の色合に幅を持たせてよい。その場合には、各分野で指標の意味が異なることや、ある分野については総務省が必ずしも責任を持てないユーザーサイドの数値であることを前段で明示すればよい。
政策−施策−事務事業の体系が整理されたものは、公表することが法律で決まっているもの以外もアカウンタビリティーの観点から公表すべきであり、政策(大)から事務事業(小)を見るのが国民向け、施策・事務事業(小)から政策(大)を見るのが内部向けというようにそのプレゼンテーションの仕方に工夫が必要。
政策の括りなど従来の固定観念に囚われている部分も多く、新しい発想を取り入れていく事が必要。

(2)総合評価の実施について
「協働」は手段であり目的ではないため、どのような焦点を持って評価するかが一見して分かるよう工夫した方がよい。
基本計画で議論した政策・施策は「何をやるか(what)」という中身の議論だと思うので、総合評価では「如何にやるか(how)」を議論すればよいのでは。例えば、「NPM」や「人事(権限委譲)」といった具体的な仕事のやり方を切り口にテーマを設定してはどうか。あるいは、「人材」等を切り口によい意味での総務省のスタイル(総務省流、総務省風、総務省WAY)を作るというテーマを設定できないか。
総合評価はかなり先取りしたやり取りをするべきだと思う。過去の評価ではなく5年後を見据えて戦略的にテーマを設定すべき。
評価手法としてのCSの使用を検討するのであれば、総合評価の場で実験してみてもよいのではないか。
総合評価は、アンケートだけやって終わりといった形でいい加減に実施することもできるが、厳密に評価しようと思うと政策インパクト分析等の難しい手法によることが必要。
元々は3省庁が統合したことで官僚組織の求心力が弱まり、政治主導となり、NPM指向になったのかという点が最重要のテーマでは。 
これまでの政策評価で培った成果を取り入れ、3つの評価対象にとらわれず、総務省としての将来像(ビジョン)が描けるような総合評価にすべき。各評価対象を横串で通すようなキーワードとして、「政策調整」という概念を取り入れてはどうか。
次期基本計画で議論した「分野」が総合評価に使えないかと考えると、1)の地方分権については、閣議決定では国と地方を一貫してみることより、むしろ「地方分権の一層の推進を図る」ことが目標なのではないか。
統合によるイノベーションをチェックするという発想に立つと、「国・地方を通じた行政制度の整備」というのは全国一律に制度を作っていく官庁であることを維持しようとしているように思われ、気になる。
人材を育成し、人を介したネットワークを通じて、地方分権を進めていくというような「人材官庁」的観点で考えると、現在の評価対象1)〜3)は全て「何をどういう手段で行うという」供給サイドの言葉で書かれている。顧客サイドから見て、何を実現するかという観点で書き直せば分かりやすくなると思う。総合評価の結果を、本体の政策評価の枠組みや組織の見直しに繋げることも想定すべき。
行政改革大綱を前提にするとしてもどの部分を対象として抜き取るのか工夫してほしい。特に1)「地方分権・行政改革」の括りだし方は単に列挙しているだけであり、全体を横断的に評価できるように括りだすべき。例えば「分権化の下での行政改革」といったものでもいいのでは。旧自治と旧総務の分権化・行政改革への考え方が、どのように有機的に連関するようになったのかを見ることは意味がある。
その際に、制度ではなく、NPM的なスタイルや行動様式の観点から横断的に議論を行うべき。そういった観点からの柔軟性を認めた分権・行革の例として「特区」がある。
また、1)「地方分権・行政改革」については、列挙されている施策の大きさ・レベルが異なっている。
2)・3)は一応イノベーション。だが1)にはイノベーションがなく、単にNPMだけでは抽象的。例えば自治体への支援・権限委譲を通じた霞ヶ関の改革といった具合に旧自治省と旧総務庁が一緒になって出てくる大きな国の枠組み全体の行革といったイノベーションが考えられないか。本当のNPMとは3300市町村と全省庁と特殊法人を全部足して眺めた時にどうするかといった次元で考えるべきもの。せっかく省庁統合したのだからそれくらいの作業をやってほしい。



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