保護法でいう「個人情報ファイル」とは、一定の事務の目的を達成するために特定の保有個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成した保有個人情報を含む情報の集合物をいいます(第2条第4項)。一言でいうと、個人情報のデータベースです。個人情報ファイルには、特定の保有個人情報の検索方法に応じて、電子計算機処理された個人情報ファイル(同項第1号)とそれ以外の紙等のマニュアル処理による個人情報ファイル(同項第2号)との2種類があります。マニュアル処理ファイルについて、「特定の保有個人情報を容易に検索することができる」状態にあるといえるためには、例えば、人名を容易に検索することができるように五十音順に整理していることなどが必要です。
コンピュータで処理されている個人情報について、一定の事務の目的を達成するために特定の保有個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成されている場合には、保護法第2条第4項第1号が定める電子計算機処理された個人情報ファイルに該当します。
設問の例のように、ワープロソフトを利用して個人情報を処理している場合であっても、特定の保有個人情報を検索することができるように、例えば、表形式をとり、記録項目の配列等を体系的に整理して記録しているような場合には、特定の保有個人情報を検索することができるように体系的に構成されていることから、個人情報ファイルに該当します。
これに対し、例えば、表形式をとらない文書の中に個人情報が散在的に記録されており、この中からワープロソフトの検索機能を利用して特定の個人情報を検索することができるにすぎないような状態にある場合には、特定の保有個人情報を検索することができるように体系的に構成されているとはいえませんので、個人情報ファイルには該当しません。
個人情報ファイルとは、一定の事務の目的を達成するために特定の保有個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成した保有個人情報を含む情報の集合物をいいます。このため、設問の場合には、五十音順に整理して綴っている機関が管理しているものだけが個人情報ファイルに該当することになります。
個人情報ファイルとは、一定の事務の目的を達成するために特定の保有個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成した保有個人情報を含む情報の集合物をいいます。「一定の事務」とは、個人情報ファイルの作成目的となる特定の事務を指しており、個人情報ファイルの数え方は、この「一定の事務」の範囲によって判断することになります。
例えば、年度別に整理しているものであっても、複数年度のファイルを一体として利用している事務の実態がある場合には、一つの個人情報ファイルと数えることになります。逆に、一体として利用していない場合には、年度ごとに数えることになります。
また、複数の出先機関で特定の個人情報ファイルを共有している場合には、一つの個人情報ファイルを複数の機関で利用していることになります。
行政機関が保有する個人情報には、紙文書の中やワープロソフトで作成したデータに散在的に記録されているもの(散在情報)だけでなく、データベースとして体系的に整理され、保管・利用されている「個人情報ファイル」もあります。
個人情報ファイルは、電子計算機処理であるかマニュアル処理であるかを問わず、散在情報に比べて利便性が高く、行政運営を効率的に行う上で欠くことができないものです。一方で、不適切に利用された場合や漏えいされた場合には、個人の権利利益の侵害の度合いも、散在情報に比べて大きいと考えられます。
このような個人情報ファイルの利用に伴う個人の権利利益の侵害の危険性にかんがみ、その存在及び概要を明らかにすることにより透明性の確保を図り、行政機関における利用目的ごとの保有個人情報の適正な管理に役立てるとともに、本人が自己に関する個人情報の利用の実態をより的確に認識することができるよう、保有している個人情報ファイルの名称、利用目的、記録項目などの個人情報ファイルに関する"あらまし"を記載した帳簿として、行政機関ごとに1つの「個人情報ファイル簿」を作成し、公表することとされています(保護法第11条第1項)。
個人情報ファイル簿のイメージは、次図のとおりです。
また、以下の個人情報ファイルについては、個人情報ファイル簿の作成・公表をしなくてもよいこととされています(保護法第11条第2項)。
1)及び2)については、個人情報ファイルの存在を公表することにより、国の重大な利益や犯罪捜査等に支障を及ぼすおそれがあること、また、3)から9)までについては、国民の権利利益の侵害が比較的少ないことが、個人情報ファイル簿を作成・公表する義務が適用除外されている理由です。
他の行政機関から提供を受けた個人情報ファイルについて、提供を受けた行政機関においてもその一定の事務の目的を達成するために「個人情報ファイル」として利用している場合は、保護法第11条の規定に基づき、個人情報ファイル簿の作成・公表が必要となります。
個人情報ファイル簿は、以下の二つ方法により公表することとされています。
行政機関の長は、「個人情報ファイル…を保有するに至ったときは、直ちに、個人情報ファイル簿を作成しなければなら」ず、また、「個人情報ファイル簿に記載すべき事項に変更があったときは、直ちに、当該個人情報ファイル簿を修正しなければならない」こととされています(令第7条第1項及び第3項)。
各行政機関は、行政機関における利用目的ごとの保有個人情報の適正な管理に役立てるとともに、本人が自己に関する個人情報の利用の実態をより的確に認識することができるように「個人情報ファイル簿」を作成・公表するものです。このため、個人情報ファイル簿の作成・修正は、直ちに行わなければなりません。
個人情報ファイルに記録されている「本人」は、保護法上、「他の個人の氏名、生年月日その他の記述等によらないで検索し得る者に限る」こととされています(第10条第1項第4号かっこ書)。すなわち、当人の氏名、生年月日その他の記述等により検索し得る者が「本人」となります。個人情報ファイルの中に、同じ「本人」が複数記録されている場合には、重複を除いた上で一人として数えます。
このように「本人」の数を数え、その数が1,000人未満である場合には、当該個人情報ファイルについて個人情報ファイル簿を作成・公表する義務はありません(保護法第11条第2項第1号、第10条第2項第9号、令第5条)。