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電気通信事業紛争処理委員会(第78回)議事録

議事概要 議事録 会議資料


【森永委員長】  おはようございます。ただいまから、きょうは第78回の電気通信事業紛争処理委員会を始めさせていただきます。
 本日は委員4名が出席しておられまして、定足数を満たしております。また、特別委員、まだお2人はお見えになっていませんが、6名ご出席いただくことになっております。
 議事に入ります前に、委員会発足時より委員長としてご尽力くださいました香城敏麿前委員が3月22日に逝去されました。ここで謹んで冥福をお祈りして、全員で黙祷をささげたいと思います。よろしくお願いします。
【小林上席調査専門官】  それでは、皆さんご起立願います。
 前委員長でありました香城敏麿氏のご冥福をお祈りし、1分間の黙祷をささげます。
 黙祷。
(黙祷)
【小林上席調査専門官】  ありがとうございました。ご着席ください。
【森永委員長】  では、これから議事に入りますが、本日の会議、議題の1から3までは公開の開催となります。議題4の「終了事件についての報告」につきましては、あっせんの性格上、当事者等の利益等を害するおそれがございまして、そういう情報を扱っておりますので、電気通信事業紛争処理委員会運営規程第16条第1項の規定に基づき、非公開で開催することといたします。
 したがいまして、傍聴者の皆様方には、非公開とする審議が始まる前に退室していただくことになりますので、どうぞよろしくご了承くださいませ。
 それでは、議事に入ります。議題1でございますが、「平成18年度年次報告(案)について」でございます。配付されております年次報告(案)なんですが、これは前回の委員会でもご審議いただきました。その意見を集約してまとめたものでございます。
 事務局からお願いいたします。
【小林上席調査専門官】  前回の委員会におきまして、平成18年度年次報告(案)について報告させていただいたところでございます。これにつきましてご意見をちょうだいし、また、前回の委員会終了後、あっせん事件につきまして動きがありましたので、記述を修正しております。
 お手元の資料1、年次報告(案)をごらんいただきたいと思います。それで、12ページをごらんいただきたいんですが、第II2部第1章の1の(1)あっせんについての記述の部分でございますが、前回委員会終了後に、それまで取り扱い中でありました14件につきまして、申請者から申請の取り下げがありました。また、新たに2件のあっせん申請がありましたので、その旨を記述しております。また、経過概況の表もそれに合わせてつくり直しております。
 次に、お隣の13ページでございます。前回の委員会で富沢先生から相談件数のご質問がございました。また、18年度に相談窓口の名称を変え、専用の電話番号、メールアドレスを設けるなど、取り組んでまいりましたので、第II2部第1章の4として電気通信事業者相談窓口における相談の項目を立て、18年度中に受け付けました相談や問い合わせの件数を相談内容別に記載することにいたしました。これについては、メールとか電話、それと実際に事務局のほうにおいでいただいた、受け付けした総数、59件ということで記しております。
 続きまして、14ページ、15ページをお開きいただきたいんですが、第2章のあっせん事件の処理状況でございます。このあっせん事件14件の処理状況につきましては、前回の委員会の議題4として年次報告(案)に掲載する形でご説明させていただいております。それで、その際に、年次報告への掲載につきましては、当事者のご意見も聞きまして、公表できる範囲で取りまとめて、4月20日、本日ですけれども、委員会でまた皆様にお諮りするといたしました。当事者のほうから名前を伏せた形で承諾を得られましたので、公開できる範囲で掲載しております。
 このほか、文言の修正等、細かなものはございますが、大きな変更箇所は以上でございます。
 以上です。よろしくお願いいたします。
【森永委員長】  ありがとうございました。
 ということでございますが、報告書は、ごらんのとおり、大きくは第I1部と第II2部に分かれております。それぞれについての資料が1から5までつけ足していただいておるということです。それから、前回の3月にありました委員会からの新しい動き、それを追加するなり、あるいは修正するなり今回はしていただいておるということでございます。
 何か、委員の先生方、ご意見、ご質問ございましたらお受けしたいと思います。
 今、処理中なんだけれども、2件は、これはまだ。どういうところから来たの、この処理中と書いてある2件というのは。
【小林上席調査専門官】  年次報告でございますので、年度内にあることを記載するということで。
【森永委員長】  これはもう今回は。
【小林上席調査専門官】  はい。次回の年次報告のほうに記載させていただきたいと思っております。
【森永委員長】  わかりました。
【村木事務局長】  処理中は議題4のこの話だよね。
【小林上席調査専門官】  そうでございます。
【村木事務局長】  ですから、中身ついてはこの議題4で。
【森永委員長】  わかりました。
 よろしいでしょうか。それでは、お認めいただいたということにさせていただきます。これは、この報告書を総務大臣に報告をいたすということになります。
 それでは、次でございますが、議題の2でございます。「電気通信事業の最近の動向についての意見交換」でございますが、事務局のほうからご説明いただきます。
【小林上席調査専門官】  昨年9月に開催された第73回委員会におきまして、委員会が当面重点を置いて取り組むべき活動を決めたわけでございますが、その重点活動の1つであります紛争処理に関係する情報収集等の強化を図る観点から、本日は外部から専門家をお招きしまして、意見、情報交換の場を設けております。
 第1回目のきょうは、移動体通信をめぐる、特にMVNOの実態をテーマに、その方面に大変精通しておられる情報流通ビジネス研究所の所長である飯塚周一様においでいただいております。最近の動向等をお話しいただきまして、引き続き意見、情報交換を行うことにしております。
【森永委員長】  飯塚様、きょうはどうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
【飯塚所長】  よろしくお願いします。
【森永委員長】  それではどうぞお始めください。
【飯塚所長】  限られた時間の中で、このMVNOを語るのはかなり難しいのでございますが、MVNOそのものにつきましては簡単にご説明いたしまして、今後どうなっていくかというあたりを重点的にお話しさせていただきます。その後、ご質問等を承りたいと思います。
 まず、最近の移動体通信市場の動向をさっとご説明させていただきます。
 まず、4ページをご覧ください。1世帯に2台程度携帯電話が普及する時代になり、就労人口との比率で見れば100%を超えているような普及率の携帯電話、PHSでございますけれども、それまで6,000万台を占めておりました固定電話、加入電話、これと移動体、携帯電話の加入数が2000年から2001年にかけて逆転しております。以降、移動体通信のほうは順調に加入を伸ばしまして、2006年9月では、PHSと携帯電話を合わせまして9,800万、今年に入りましては1億台を突破したという状況にございます。固定電話の方はご覧の通り漸減しているような状況にございます。
 次の5ページをご覧ください。こちらは、携帯電話の加入数の推移、これを事業者さん別に表したグラフでございます。2006年度3月末、今年の3月末に統計が出まして、携帯電話だけで9,672万加入と、前年度比で5.4%の増ということでございます。この5.4%をどう見るかということでございますが、1994年に行われた端末の自由化以来の伸び率から申し上げますと、昨今に至っては1けた台の伸びにとどまっている。特に2004年から2006年と大体5%から6%の前年比増ということで、よく最近では携帯電話市場も飽和局面に到来したという言われ方をしております。
 その中で、昨年の10月の終わりごろにMNP、いわゆる番号ポータビリティーという制度が導入されまして、これによって同じ番号で事業者さんをお客さんがかえられるというサービスが始まったわけでございますけれども、それを中心に最近は既存事業者間での競争が高まりつつあるということでございます。ただし、市場全体の伸びが大分鈍化している中での競争でございますので、どちらかといえばシェアの取り合いというような競争軸を形成しているような形になっております。この図でご覧になってわかる通り、KDDIさんが健闘しているということでございます。
 6ページは、先ほどの飽和局面を伸び率で示したものでございますけれども、これを見て一目瞭然でございますが、94年から98年ぐらいまでの伸びは相当なものでした。しかし、ここ数年は横ばいに近いような形です。
 7ページをご覧ください。事業者毎のシェア推移ということで、これは累計加入ベースでございます。それぞれの事業者がシェアをどう下げて、どう上げたということについて、それぞれのポイントを示しました。最近では、MNP制度でドコモさんが漸減傾向を辿っておりますが、いずれにしましても、新規需要がそれほどない中で、累計加入ベースのシェアというのが下がっても、いまだに50%超のシェアを有しておるドミナントな事業者ということでございます。
 純増数ベースでのシェアを表したのが8ページです。こちらを見ましても、96年から2000年ぐらいまでにかけては、年間1,000万台程度の新規加入がありました。これだけ急に伸びた市場でございますけれども、ツーカーさんはKDDIさんに合併されまして、現在はKDDIさんの増減分に含まれますので、やはり2003年、04年あたりから随分と純増数が少なくなってきたことがおわかりかと思います。
 9ページに参ります。今後の市場発展の諸要素ということで、1つの絵を書いてみました。携帯電話とPHSの加入数ベースの伸びをグラフ化したものに、市場の黎明期から急成長局面、安定成長局面、現在の市場飽和局面というステージを当てはめまして、そのすぐ下に制度面の大きな動きを書いております。最近ではMNP、そして本日のメーンテーマであるMVNOということになっておりますけれども、このMVNOが今後の流れと非常に密接不可分な状況にあるということをご理解いただきたいと思います。
 それでは、MVNOとは何ぞやというところをご説明させていただきます。
 まず概略を申し上げますと、MVNO、これは「モバイル・バーチャル・ネットワーク・オペレータ」という呼ばれ方をしております。日本語に訳せば「仮想移動通信事業者」ということになります。これに対して、国から周波数免許を割り当てて事業を行う、既存通信事業者をMNOというような呼び方で両者を対比、位置づけるような形で取り上げられております。
 このMVNOでございますが、基本的には先ほど申し上げましたMNOと違いまして、国から周波数免許を割り当てられていない、あるいは無線の運用にかかわる設備を持っておらず、MNOから無線ネットワークのインフラを借りて、最終ユーザーに自社ブランドで役務を提供する事業者を指しております。
 これは90年代後半、欧州でこういうような形の事業者が登場してきまして、有名なのはイギリスのヴァージンモバイルというところがございます。MVNOは最近ですと北米、オーストラリア、特に北米あたりでもかなり加入者を伸ばしております。ただし、それ以外のMVNOで大きなところがあるかというと、そういうことはございません。唯一の規模的な成功例としては、ヴァージンモバイルぐらいかなという程度のものでございます。しかし後ほど申し上げますが、特に欧米等ではこのMVNOという存在はごく普通の事業者、あるいはサービスとして一般に受け入れられております。
 下に書いてあります規制もそうですけれども、MVNOとは何ぞやという明確な定義については、ITUをはじめまして、世界的に統一された厳密な定義というものは特に存在しておりません。ITUの報告書などでも何回か言及されてはおりますが、MVNOについてITUや規制機関、そういったところで具体的に何かをしようというようなものでもございません。各国の規制機関、あるいは団体によってその扱いや定義、それぞれがしておるというのが現状です。これは、それぞれの市場環境や国内事情、そういったものに拠る部分が少なくないというところが背景にあるかと考えております。11ページの規制内容についても、その有無も含めまして各国によって対応がまちまちでございます。
 このように、MVNOを簡単に言えば、周波数免許を割り当ててもらっている事業者から無線のネットワークを借りて、最終ユーザーに役務を提供する事業者ということですけれども、一体どういうことなのかというイメージをもう少し湧かせていただくために、簡単な絵を載せました。それが12ページでございます。 これは簡単に携帯電話の基本的なネットワークを表したものです。MVNOは、周波数を割り当てられていないので、MNOから無線網を借りると先ほど言いましたけれども、実際のところは基地局と携帯電話の間が無線になっておるわけですが、この基地局から先は当然のことながら固定の回線で全部つながっております。この基地局の無線部分だけ周波数割り当てを受けていないので、そこだけを借りているのかなというイメージになりそうですが、そういうことでは決してございません。この無線から先の固定にかかわる位置情報とかパケット交換機、回線交換機、あるいはPSTN(公衆電話回線)、インターネットにつながるゲートウエイ装置、顧客情報や課金認証情報、それぞれの機能を実際には借りる形で運用することになります。
 それをもう少し概念的に表したのが13ページの図でございます。真ん中のホームベース型の三角を、先ほどの絵に対応させる形で出してありますけれども、一番左の無線インターフェースが基地局から先の無線部分ですね。そこから右に行きまして、伝送/交換からネットワーク運用、認証/課金、顧客データベース管理、最後のマーケティング/販売、これは端末販売とかそういったことも含みますけれども、それぞれのレイヤーと申しますか、機能を切っていった場合、MVNOがどこまでMNOから機能、あるいはその設備を借りるかという形は、これだけいろいろな違いがございます。MVNOによっては、ほとんど基地局から先の設備に関しては自社で持ちたいような事業者もいるでしょうし、あるいは、端末のブランドだけを自社のものにして、そこから先はほとんどMNOのネットワークを借りるというような簡単な形態、これは再販に近いような形だと思いますけれども、いろいろなパターンがございます。
 中には、このMNOとMVNOの仲介役をするようなMVNE、「モバイル・バーチャル・ネットワーク・イネーブラー」という風に言われるような存在もございます。これはあとで申し上げますけれども、今回総務省さんが改定されたガイドラインの中でもMVNEというものに対しての定義が盛り込まれました。特に、MVNOという立場の企業は、通信に疎いようなところも多くございますので、そういったところに対してコンサルティングや認証課金プラットフォームなどを提供するような機能を実際に提供する事業者でございます。
 次に、海外がどのようになっているかをざっくりと見ていきたいと思います。主要国におけるMVNOの動向ということで、EU、北米、アジアと分けてみた場合、いろいろな既存の事業者さんがMVNOにさまざまなな形で貸しております。英国やフランス、ドイツ、フィンランド、北米と、それぞれ規制があったりなかったり、あるいは香港のように開放を義務づけたりと、まちまちでございます。韓国では、これは携帯電話ではございませんけれども、広帯域ブロードバンド無線アクセス事業者に対して、将来的にかなり加入者数が増えていったら、あなたたちはMVNOにもインフラを貸しなさいよというようなことを示唆するようなケースもございます。
 16ページは欧州の状況でございます。欧州は第2世代の携帯電話に当たりますGSM方式、これは世界のデファクトと言える携帯電話の方式がほとんどでございますけれども、ここでまずMVNOという事業者が登場したわけです。
 この背景にはいろいろございますが、まず欧州はプリペイド型のサービスが主流でます。それとSIM、「サブスクライバー・アイデンティファイ・モジュール」という、日本でも第3世代の携帯電話にはございますけれども、加入者情報を小さい切手大のカードの中に入れたものを端末に差し込むと、実際にその端末が稼動するというような仕組みがあります。これはもともと欧州のGSM方式で採られていたものでございます。
 なぜこのような仕組みを持たせたかについて、少しご説明いたします。GSM方式は、そもそも旧EC統合、これに合わせてヨーロッパの標準化機関のETSIというところが中心となって、策定された規格です。ヨーロッパはご案内の通り、陸続きで色々な国がございますので、国をまたいで使うような利用シーンが多いので、そういったところの間のローミングとか、それぞれ国によって方式がばらばらだと困るだろうということで、国が異なっても、使い勝手のいいシステムをつくり上げていこうという形で標準化されたものなのです。 そういったコンセプトが海外にも広く受け入れられました。また、大航海時代からの歴史的経緯もあるかと思いますけれども、欧州となじみの深いような海外のほかの地域、アジアにおいてもそうでしょうし、中南米などもあるかと思いますが、そういったところでも受け入れられ、世界に広く普及していきました。
 欧州では、携帯電話の普及率も非常に高こうございます。資料では、100%を超える国も存在と書きました。何で100%を超えるかというと、プリペイド型の携帯電話を使うユーザーが多いので、実際には1人で2台、3台と持っているお客さんも多いのです。その中で実際に稼動しているかどうかというところで、アクティブユーザーがどのぐらいいるかというようなところで、100%を超えちゃうというようなカウントになっております。欧州の基本的なカウントの仕方としては、3カ月使っていない携帯電話に関してはインアクティブということで、それぞれの事業者さんの加入数には盛り込んではいないという形になっています。
 最近の欧州の状況を見てみますと、ようやく3G、ワイドバンドCDMA方式が立ち上がってきましたけれども、ここで行われているMVNOのサービスは、第2世代であるGSM方式携帯電話をベースにした、プリペイドの非常に安い料金を売り物にするMVNOが、いまだ大半だということでございます。最近ですと、MNOも巻き込んだ激安戦争になりまして、格安のMVNOに対抗して、既存のMNOがみずからMVNO子会社をつくってダブルブランド化を図り、激安MVNOに対抗するようなところまで来てございます。そういう状況ですので、各国の上位オペレータの収益率は、おおむねダウンしております。
 ただ、このMVNOをどう使うかによって、事業者のシェアが大きく変動するという一面もございます。イギリスなどでは、ヴァージンモバイルにインフラを貸している事業者がトップに躍り出たりしております。そういう部分では、事業者間の競争をある意味促進しているという捉え方もできます。料金が泥沼化していることから、むしろそういう料金競争から早く脱却して、高収益が期待できる3Gのネットワークを広げていきましょうというような考え方に、最近では移りつつあるということにもつながってきています。
 次に、米国の状況について触れておきます。米国においては、MVNOに対する規制は特にございません。MVNOが入ろうかどうかというような時期がありまして、その頃は、例えば反トラスト法の観点から、既存の事業者がMVNOについてどう取り扱うかを、既存事業者の判断だけに任せていいのかという議論も過去にございました。
 そういう流れがありましたが、数年前にヴァージンモバイルが北米に上陸し、ブランド力もありますが、プリペイドのサービスを売り物に加入者を増やしてきました。あるいはアメリカは多民族国家ですから、若年層や低所得層も含めいろいろなユーザー層があると思いますけれども、そういったところに対してプリペイドのサービスを普及させるような形で、MVNOが増えてございます。欧州と違いまして、米国は基本的にはポストペイが通常の料金体系となっております。
 18ページをちょっとご覧いただければと思いますが、左側に代表的なMVNOがいろいろあります。セブン−イレブンをはじめ、ディズニーなどご存じの名前もあるかと思いますけれども、それぞれがいろいろなターゲットに対してみずから特化させたサービスを提供しているということでございます。これを見ますと、大体プリペイドのサービスがおおむね多いような状況にございます。最近ですと、米国で大体50〜60はあるかと思います。そのぐらいのMVNOの数になってきておりますので、欧州に続いて、アメリカはここ数年で相当急激に増えたという感じです。
 こういった状況と比べまして、日本の場合を表したのが19ページでございます。これは表をご覧になっていただければ一目瞭然でございますが、国内にもMVNOが既にありますけれども、一部レアケースを除きまして、すべてPHSのネットワークを使ったMVNOであるということでございます。
 もう1つ特徴的なのが、国内のMVNOはすべてデータ通信系のサービスであるということでございます。音声のサービスを提供しているMVNOは、基本的にございません。データ通信といいましても、パソコンに携帯電話をつなぐ、いわゆる「モバイルコンピューティング」というようなデータ通信サービスもございますし、機械の中にPHSや携帯電話の通信モジュールのようなものを入れて、マシンコミュニケーションを行うための通信機能を持たせているようなサービスもございます。
 今までは、ほぼPHSだけだったということと、すべてデータ通信系であるということ、この2点が日本の特徴といえます。
 20ページは、、欧米と日本の比較です。22ページをご覧ください。特に欧州では、料金競争ではひどい目に遭っているとか、海外ではどうもMVNOというのはあまりイメージがよくないんですけれども、そうはいっても、ここ二、三年の状況を見ますと、MVNOという存在に対する再評価という動きが一方でございます。
 このあたりは細かく説明すると時間の関係もございますので、ちょっと深く言えませんけれども、大きく言いますと固定系の事業者はもう事業が頭打ちになりそうだということで、移動の領域に入っていきたいというような事情を抱えている。イギリスのBT、ブリティッシュテレコムが、MVNOという形でボーダフォンからネットワークを借りて携帯電話のサービスを提供するような動きがあります。
 かたや、移動体通信の事業者は、携帯電話市場が飽和局面を迎えておりますので、今までのビジネスモデルを変えていかなくちゃいけないというようなことから、このMVNOというものをうまく使ったビジネスモデルはないかというような考え方をし始めているところもございます。
 あと、先ほど申し上げましたように、ある意味でMVNOの存在は料金の下方硬直性に対する1つのプレッシャーにもなり得るということで、このMVNOを積極的に参画させようというような考え方も1つございます。
 最後は、22ページの右下のところです。固定と移動の融合をはじめ、いろいろな新しいビジネススキームの手法としてMVNOというものを使っていこうという考え方、これが非常に重要になっていくと思います。このあたりを突き詰めていきますと、u-Japanでも示されているようなユビキタス社会の実現、25ページのような、さまざまなデバイスが無線のネットワークでつながる世界を実現するためには、既存事業者だけの努力では、とてもじゃないけれども無理ですねということになります。やはり、それぞれにかかわる専門的な企業がコア・コンピタンスを生かす形で通信という機能、あるいはサービスを取り入れないと、こういう社会の実現は難しいであろうと思います。この辺の背景は、これから大きくクローズアップされてくるんではないでしょうか。
 23ページをご覧ください。これまでの移動通信市場の総括ということで申し上げますと、日本は世界でも飛び抜けて3Gの比率が高うございます。加入者ベースでは6割を突破したような形です。端末生産ベースでも毎月9割強が3G端末という状況にあります。これだけ3G化が進んでいる国は、世界でもほかにございません。
 そういう中なのですが、既存事業者さんは、今までの急成長期に脈々と構築してきた垂直統合モデルを、なかなか手放そうとしないというところが大分クローズアップされてきております。当初から3Gは、高速データ通信でいろいろなことができますねという風に言われ続けてきたんですけれども、今のままですとインフラのスペックが単にグレードアップするだけで、アプリケーションの多様化とか、そういったものは期待できないんじゃないかということになります。
 もう1つ言わせていただければ、既存事業者のアイデアだけでは、サービスの多様化を今後さらに進め行く上で、限界が出てくるのではないかなということでございます。最大公約数的な役務を提供している事業者が、きめの細かいサービスをどこまでできるのかというところに、やはり疑問符がついて回るという風に考えております。
 そういった背景から、日本でもMVNOをもっと促進していきましょうという動きが当然のことながら起こってきました。総務省さんも今年の2月にMVNO事業化ガイドラインというものを改正して、制度上かなり踏み込んだ形でMVNOを促進していこうというような動きに出ております。
 24ページをご覧ください。競争軸の多様化と融合産業の登場という絵をかきましたけれども、縦の赤い線から右、これが基本的に現在までの携帯電話のビジネスという風にお考えください。要するに、事業者さんだけで展開する垂直統合のビジネスモデルです。そこに、MVNOという多様な外部企業を入れることによりまして、この赤い点線から左のようなさまざまなサービスであるとか、販売チャネル、そういったものが全て通信の業界に絡んでくるというようなことが言えるかと思います。
 28〜29ページをご覧下さい。MVNOの参入課題と予想される影響、今後の展望ということで、箇条書き的にそっけない書き方をしてしまいましたのですけれども、ここら辺はかなり深く言うことはできるんですが、時間の関係もございますのでざっとご説明させていただきたいと思います。
 まず、既存事業者さんにおけるビジネスモデルの変化ということで、「MVNO支援ビジネス」というものが、これから出てくるかもしれませんねということが言えるかと思います。ドミナントな事業者がそう思うかどうかはわかりかねますが、新規事業者あるいは自分のところでさまざまなリソースを持っていない事業者は、やはり外部企業とのアライアンスをいろいろと考えていかなくちゃいけませんので、むしろ有望なMVNOをみずから見つけて、協業によって新たな収益を増やしていこうという考え方をするところが出てくるかもしれません。
 また、これからのIP化時代というのは、ある種水平分業が大前提の世界だと言えますけれども、その中でも相変わらず昔ながらの垂直統合型ビジネスモデルが通用するかどうかということです。特に、固定系と違う意味でドミナントだなと思うのは、端末に至るまで事業者さんがかなりの影響力を持っているということですけれども、そういうやり方でこれからのIP化社会、IPという事業構造の中でどれだけ通用していくのかという点が、そろそろ見え始めてきたのじゃないかなというところがございます。こういったところに、MVNOとの新たな関係もこれから見えてくると思います。
 30ページも今の話につながります。NGNとMVNOという風に書きましたけれども、今の移動通信事業者の垂直統合モデルは、やはり自分たちの独自仕様に基づくネットワークであるとか、あるいは端末においても各種に独自仕様、これはIPRの問題もあると思いますけれども、そういったものをいろいろ盛り込んでおるのですが、言ってみればある種クローズドなビジネスモデルを持ったような事業者がNGNという、これからのオープン化が大前提となる次世代ネットワークの時代において、どういう振舞い方をしていくのかという疑問が、これからどんどんあぶり出されてくるんじゃないかと思っております。
 ですから、MVNOはかなり深いテーマなんですが、これに関していろいろな紛争が起こったり、議論が起こったりということがあるかと思いますけれども、これは言ってみれば、将来のNGN時代に絡む問題に対しての、ある種のたたき台をつくるような作業にも似ているんじゃないかなという風に私は思っております。特に、インターコネクションとか、インターオペラビリティ、サービスのコンパチビリティ、そういったものについての本質がこれからどんどん問われてくる時代ですから、MVNOに対して、これから既存事業者がどういうスタンスを見せてくるかというところが、今後焦点になってくるのではないかと思います。
 33ページを今の話に絡めまして、あまり深くはないのですが、ざっとご説明させていただきます。当然のことながら、これからMVNOとMNO間の紛争処理事案がいろいろと出てくるかと思います。とりわけ今までの固定系の事案とは趣が異なって、おそらく紛争の焦点がいろいろな形、バリエーションに富んでくると私は予想しております。
 といいますのも、制度上は、今回総務省さんが改正ガイドラインを出されまして、かなり環境は整ったのですけれども、ビジネスベースではなかなか交渉がうまく前に進まないという話を少なからず聞きます。内容を聞きますと、個別事案的にそれぞれ見ていかなくちゃいけないところが非常に多いと実感しております。
 33ページの上に書きましたけれども、MVNOのビジネスモデルというのは非常に多岐、多様にわたりまして、交渉も非常に難航すると予想されるのですが、逆にそうでないとMVNOというものの存在意義がないという、一種のジレンマを内包したようなスキームでございますので、ここら辺が悩ましいと言えば悩ましい点です。そうはいいましても、最初の出だしは、やはり個別事案を積み重ねていくというところからスタートしていくのかなとい思っております。
 MVNOが、多種多様な高付加価値を持ったビジネスモデルを持たないで既存事業者と交渉しても、両者間におけるWin−Win関係は構築できませんので、そこら辺を考えますと、やはりMVNOはあまり通信事業者さんと競合するような条件を出したりしてもうまくまとまらないだろうなと。あくまで、「事業者さんは手が出せませんよね、自分たちはトラヒック収入ではなくて、本業の付加価値を高めるためにMVNOをやりたいのです」というスタンスが、やはり交渉事がうまく運ばれていくためのキーポイントかなと思っております。
 そういったことで、おそらくこれから処理委員会さんの方に、MVNO絡みの交渉事や事案がいろいろと持ち込まれてくるかと思います。昨年あたりから、紛争処理委員会にかけるということを言ってはばからないようなMVNOも出ておりますから、紛争処理委員会さんがこれから果たしていただく役割につきまして、大いに期待しておるところでございます。
 ちょっと時間が長くなりましたが、説明はこれで終わりにいたします。
【森永委員長】  どうもありがとうございます。大変いい勉強をさせていただきましたが、ありがとうございました。
 それじゃあしばらくの間ですが、委員の皆様、どうぞ、ご質問等ございましたら。どうぞ。
【藤原特別委員】  すみません、藤原です。ありがとうございます。
 12ページと13ページをちょっと見ていただきたいんですが、わかりやすく理解するために、雑駁な質問で申しわけないんですけれども、以前、NTTの固定回線の上にADSLサービス事業者が出てきたときに、初めて垂直統合が壊れた1つの契機になったと思うんです。固定ではそうなんです。同じことがこの携帯電話の基本構造で、全く同じように考えたときには、どのレベルのレイヤーからMVNOになってくるんでしょうか。
【飯塚所長】  すごくいいご質問だと思います。
 今日その図を持ってくればよかったんですが、基本的には固定と同じようなレイヤー、固定系と同じ切り口のレイヤーについていただく形になります。おのおののレイヤーで活躍、ビジネスをする企業がいるという、固定の事業構造がありますけれども、それと同じような構造をこれから移動通信にも当てはめていきましょうということです。
 例えば、無線の部分が一番低レイヤーということになりますと、おそらく物理ネットワークより上のレイヤー、プラットフォームとか、それから上位のレイヤーについては、全部そこをカバーするMVNOもいれば、最上位のサービスレイヤーだけを担当するようなMVNOもいるとか、それはさまざまだと思います。
【藤原特別委員】  例えば、ソフトバンクBBがNTTの局舎の中に自分の交換機と呼べないような簡単なものを置いて始めたわけじゃないですか。それと同じような形態だとすると、この中ではどんな感じになるのかなということが知りたいなと。
【飯塚所長】  それはちょっと技術的な話になりますけれども。
【藤原特別委員】  ネットワーク運用のあたりかなとは思うんですけれどもね。
【飯塚所長】  そうですね。ネットワーク運用と伝送/交換というところのちょうど間ぐらいのところだと思います。これは、今回の改正ガイドラインできっちり決めていますけれども、基本的にはMVNOとMNOの契約関係は卸か、あるいは今回接続という形でも解釈できるという見解を表明されているわけですけれども、どういう接続の仕方をするかというところまで、今回のガイドラインは決めてございます。
 それは、OSI参照モデルでいうレイヤー2以上の接続ということですから、基本的には相当下位のレイヤーですね。例えば、データ通信サービスでいきますと、IPアドレスをMVNOが自由に振ることができます。そのくらいの形ですから、まさしく固定でいうADSL事業者さんのやっていることに近いようなところまで入っていくわけです。
【藤原特別委員】  結局、課金を自由にできないと意味がないと思うんですよね。かなりラフな料金体系にするとかですから、定額制にしちゃうということだから、課金を従来の携帯電話事業者と別にできなきゃいけないから、そのレベルまではハード的に入っていかなきゃいけないと思うんですね。
【飯塚所長】  基本的にそういうビジネスモデルを考えるMVNOもいれば、逆に既存事業者さんの方では、そこら辺をなかなか切り離したくない、自分のサービスとして持っていたいという考えがあります。そのあたりも、インフラを提供するのを躊躇する背景の1つになっているんです。欧米などでは、課金プラットフォームは自分で用意するから、本当に無線のインフラだけ貸してくれというようなMVNOもございます。MVNEは、まさしく課金プラットフォームを自ら用意し、MVNOがあまり重い投資負担をしなくてもサービスできますよというビジネスを行う事業者ということになります。
【藤原特別委員】  あと、それと関連するのかもしれないんですけれども、PHSで既に行われているMVNOのレベルというのは、どの辺のレベルなんでしょうか。
【飯塚所長】  一番低層のレイヤー2という接続でもオーケーという形になっております。
【藤原特別委員】  いろいろなんですか。
【飯塚所長】  ええ。何でPHSを使ったMVNOが、日本でいろいろ出てきたかというと、ご案内の通り、PHSは携帯電話に押されて相当苦しかったわけですね。自分たちのリソース、これは経営効率も考えて、自分たちで全部端末開発から何からやるのはもう難しいということで、そういったところは全部外部の企業に任せましょうという形で出てきたスキームなのです。
 そういうことで、今は基本的にウィルコムさんしかいませんけれども、ウィルコムさんが、例えば法人向けに対しては、基本的に自分たちは営業をかけないで、MVNOにほとんど任せる形で、インフラから何からかなりMVNOがビジネスをしやすい形で貸しております。ですから、ある種の経営的な判断から、MVNOという外部のリソースを活用していく戦略的な考え方があったという背景がございます。これとは逆に、携帯電話事業者は、相当儲かっている状況ですから、今のところPHS事業者と考え方が異なるわけです。
【藤原特別委員】  ですから、逆に言うと、PHSでできることが何で携帯でできないんだというふうに、門戸を開けという紛争が起こるのではないかと思います。
【飯塚所長】  そうですね。それがまさしく3GになってもMVNOというものが出てこないで、3Gという高速データ通信ができるインフラができて、アプリケーションもいろいろなものが出てきますよねと当初言われてきたのに、それほど大したものは出てこない大きな背景になっていると思います。確かに、リッチコンテンツは出てきておりますけれども、もっともっといろいろなところに適用すべき部分があるじゃないかということに対し、今の事業者さんが果たしてそういう疑問に応えているかというと、あまりそうではないだろうなという風に見ております。
 海外のMVNOは、3Gじゃなくて第2世代なんですけれども、第2世代でMVNOをやっても、結局のところ音声系サービスで低料金を売り物にするぐらいしか、逆に言うとないんですね。行き着くところは料金競争だけという悲惨な状況になるんですが、3Gになりますと、料金じゃないところでいろいろな競争軸が形成されて、ひいては市場も活性化するだろうという、質的な成長が見込めるわけです。
 携帯電話事業者さんは、急速に成長し過ぎたという見方もできますし、最近では、上位レイヤーに自分たちが進出してきておりますよね、3G化で。そうすると、例えば今まではコンテンツプロバイダーのような存在が、上位レイヤーでビジネスをしてきたわけですけれども、今度はコンテンツプロバイダーさんとの関係が何かおかしくなってきちゃうくらい、既存事業者さんはより強固な垂直統合モデルを推し進める方向になってきちゃっているわけですね、インフラが高度化するにつれて。そういった形でいいのかなというような、いろいろな見方ができるかと思います。
【藤原特別委員】  3Gというのは結局、電送容量を減らすだけですから、基本的には事業者にしかメリットはないんですよ。
【飯塚所長】  そうとも・・・・・・。
【藤原特別委員】  要するに、音声として分課金している以上は、交換機の負担が減っているだけですから。
【飯塚所長】  最近ですと定額制が出てきておりますので。
【藤原特別委員】  定額制が可能になるインフラではあったんですけれどもね。基本的には、分課金をしている以上はユーザーは関係ないわけでしょう。
【飯塚所長】  そうですね。
【藤原特別委員】  だから、料金を下げられる余地があるインフラであるということはあったとしても、本来データ通信を安価でできるインフラができているのに、サービスができていないというところに問題があるわけですね。
【飯塚所長】  そうですね。
【藤原特別委員】  それは特に、携帯端末を使ったデータ通信しか定額にしないとか。だからそうじゃなくて、パソコンにすぐ突っ込めるような、全く音声を度外視したようなデータ通信ができなきゃおかしいんじゃないんですかね。
【飯塚所長】  そうですね。あと、やはりこれに絡めてですけれども、端末も事業者さんが全部握ってますので、メーカーさんが自由に、例えばiPodとかiPhoneとかず海外で出て、それなりに人気が出ていますけれども、そういったものが出てこないんですね。結局、事業者さんにお伺いを立てて、IPRの問題もいろいろございますので、つくっていいですかというような、一種のお伺いを立てなくちゃいけないような状況でございますので、これはこれで固定系とは違った要素において、有形無形にいろいろなところに対するドミナントな力が働いていると言えます。固定の方は、端末は完全にオープンですからね。固定加入系のようなボトルネック性は問いにくいけれど、やはり無線という特殊性に乗っかった形で、事業者さんが急成長したという辺りは、やはりこれから見直されていくべき方向にあるのかなという気がしております。
【藤原特別委員】  あともう1個だけ質問、すみません、長くなって申しわけございません。
 実は、2週間前にアメリカに行って、プリペイドの携帯を買いまして、アクティベーションというのを結構苦労してやりまして、使えましたけれども、全然アメリカというのは本人認証をしないんですね。だから、相当程度日本ではちょっとあり得ないかなと思っているんです。欧米ではプリペイド式でこういう、MVNOのビジネスモデルが広がったということは、日本では多分そういう本人認証がないようなものは簡単には認められないと思うので、その辺はどうご覧になっていますか。
【飯塚所長】  プリペイドといっても、日本でもそうですけれども、一応基本的な仕組みとしては4けた程度のPINコード、銀行のATMの暗証番号のように番号を入れて、それでログインするとかいうような仕組みはやはりそれなりに用意されておりますます。プリペイドで、度数がなくても日本でいう119番とか110番ができるとか、いろいろな認証なり課金の仕組みがございまして、先ほどお話し申し上げましたけれども、基本的にはSIMという、を買うときにそれなりに本人確認をするわけです。端末は空の端末でいいわけですから。
【藤原特別委員】  電器ランドで買ったんだけれども、単にお金を払っただけですよね。パスポート見せろとも言われていないし。
【飯塚所長】  かなり深い話をしますと、海外のSIMを日本に持ってきて、日本の端末で、今はそちらのほうの研究会でもちょっとやっておるんですけれども、海外のSIMを使って日本の端末に入れて、なかには音声とかそういうものは使えるようなものもあります。端末によってさまざまなんですけれども、いろいろな観点からすれば、問題となるおそれがなきにしもあらずという部分一面ではございます。
【藤原特別委員】  すみません。ありがとうございました。
【森永委員長】  ほかに、委員の方、いかがですか。
【瀬崎特別委員】  すいません、ちょっとよろしいですか。
 米国におけるMVNOの例として、mobile ESPNの名前が挙がっておりますけれども、これは料金ではなくて、強力なブランドと、あとコンテンツで勝負するような事例だったと思うんですけれども、これが撤退したというのは、何か。こういうコンテンツではなかなか行けなかった、何か理由があるものなんですかね。
【飯塚所長】  どちらでしょうか、15ページ。
【瀬崎特別委員】  15ページにございますね。
【飯塚所長】  ESPN。
【瀬崎特別委員】  mobile ESPNですね。
【飯塚所長】  そうですね。ESPNは、ディズニーの系列かと思います。スポーツチャンネルですよね。ケーブルテレビではかなり有力なチャンネルですけれども、おととしぐらいにMVNO参入を表明して、たしか去年撤退しますというような形になりましたけれども、コンテンツ型のMVNOというのが果たして受け入れられるか、収益性があるかというところで、やはりそれなりの経営判断をされたんだと思います。
 こうした事例のように、日本においても何か特定のコンテンツ、今のコンテンツプロバイダーさんがやっているようなレベルのもので、専用ブランド端末とか、そういったものだとやはりうまくいかないだろうなとか、いろいろありますね。
 特に、今上位レイヤーでやっているコンテンツプロバイダーさんは、結局やはり事業者さんに代金回収してもらっているというスキームのビジネスですから、エンドユーザーに対するダイレクトマーケティングは、実質的に行ってないわけですね、会員が何百万人いようとも。それで月に315円とか、そういう少額課金のビジネスモデルとは、MVNOにはそのまま直接当てはめられないだろうと思います。
【森永委員長】  よろしいですか。
【瀬崎特別委員】  はい。
【森永委員長】  ほか、いかがですか。どうぞ。
【富沢委員】  1つ。飯塚さんに伺うのか、事務局のほうに伺うのかわからないんですけれども、2GのころにもMVNOの話がちょっと出たときに、ドコモさんは自分のお客さんを満足させるだけでもキャパがいっぱいだったので、ほんとうに無理だということ。多分それはうそじゃなくてほんとうだったと思うんですけれども。3Gになったらいろいろ制度的にもできてきているのでいいわけですし、例えば、ソフトバンクさんなんかだったら多分うんと余っているんじゃないかと思うんですね。auのほうはわりと前からオープンみたいな感じでちょっとドコモと差別化を図ろうとしてきているんですけれども、どうして出てこないんだろうというのが逆に不思議で、今ドコモはもういっぱいなんですかね、キャパ。
【飯塚所長】  周波数が本当に一杯であれば、MVNOとの接続の交渉時にはそれを拒否できる理由になります。32条か33条にございますよね。それの各号に該当します。ただし、正当な証拠といいますか、合理的なデータを出してくださいねということになります。ドコモさんもauさんもそうですけれども、今まで周波数がMVNOに貸すほど余っていないということで、本当にそういう部分はあるのでしょうけれど、実質上はMVNOとの話をするよりも、自分たちでいろいろやっていきたいなというところが本音としてあったと思うんですね。
【富沢委員】  あと、ほんとうにMVNOをやりたくてMNOのほうが嫌だと言った場合は、紛争の材料に今まででもなるはずですよね。でも、だれも言ってきていないということは、逆に、わからないんですけれども、MVNOとしてのビジネスモデルを考えている人がいないのかなという。つまり、文句を言ってこないんだからというところがよくわからないんですけれども、どうなんでしょう。
【飯塚所長】  まず、今回のガイドラインというのは、「改正ガイドライン」なんですね、今年の2月にできたのがある。前のガイドラインは2002年6月にできていまして、ただし、その内容というのは、既存の電気通信事業法とか電波法上でもMVNOという存在は日本で認められますよという、ある種MVNOの存在を追認するだけの内容にとどまっていたわけなんですね。実際には、ビジネスベースですの交渉ということになるんですけれども、基本的には民民交渉事ですので、法的な根拠とか、そういったものを持ち出して、紛争処理委員会さんに事案として持ち込むまでには至らなかったと見ています。
【富沢委員】  例えば、ドコモさんなり何なりが、使いたいときのいろいろなルールみたいなのを開示してくれないからできないんだとかとよく文句を言う人とかがいるんだけれども、それがあまり大きな声とか力として出てこないのは、実はもうかるだけのとかというのがないのかなという気がしたんです。実際にそういう研究会とかで不満とかを聞かれているとしたら、あるのか、そのあたりがちょっと知りたかったんです。
【副島紛争処理調査官】  ちょっと私のほうからいいですか。すみません。よく私もわからないんですけれども、今の飯塚様のお話を伺っていても思ったんですけれども、欧米ではやっていたというのは、やはり音声系なわけですよね。そのときには、端末はメーカーが提供するということで、キャリアから切り離されているというのもかなり大きいんだと思うんです。周波数が余っている、余っていないという問題もあるんですけれども、今ウィルコムでやっているのは、定額制のデータ通信があるから、そこの部分で動いているんですけれども、何でかよくわからないんですが、日本で音声系のときには定額制ではなかったですし、それを再販的に、接続だろうと卸だろうと、どちらでもいいんですけれども、大口みたいな形で回線を買い込んで、再販するわけです。そういうビジネスモデルが花開かなかったですよね。
 それは何だったんだろうかというと、よくわからないんですけれども、多分そこには、ドコモなんかの回線が足りている、足りていないということもあって、余裕があったらば大口で再販事業者に渡したんだろうと思うんですけれども、そうではなかったと。その辺の構造がよく理解できていないんですけれども、田舎では多分回線が余っているわけです。都市部で回線が目いっぱいなわけです。そうすると、回線が目いっぱいになってつながりにくくなると、基地局を増設するわけです。だから、トラヒックに応じて売ってきているんです。余裕のある基地局ベースみたいなのは、どこか中都市ぐらいじゃないと回線に余裕なんかきっとなかったんだと思うんです。都市部では多分目いっぱいだったんだと思うんです。
 ですから、そういう回線の卸販売みたいなビジネスモデルをキャリア側がとらなかったと。高かったらば、そんな高い卸を得て再販事業者がもうかるわけがないという形だったんじゃないのかなと。今、ようやっと、先生が先ほどおっしゃったように、3Gも出てきまして、データ通信で定額制というのも、まだ少し高いですけれども、これからはやろうとしているということで、これから来ているものも、ウィルコムが現在やっているものも、多分日本ではデータ系で出てくるんじゃないのかなと。今、少し騒がれつつあるんじゃないのかなというふうに思うんです。どうか私のやつを修正していただければと思いますが。
【富沢委員】  すみません。音声系じゃなくて、企業系でモバイル、携帯のデータ通信も音声も含めて企業向けにそういうサービスを、例えば日本通信さんがやっているようなのを前からやりたいとみんな言っていたわけですよね。それは4年ぐらい前で2Gだったけれども、3Gがこれだけ出てきて、ソフトバンクみたいにどうにもしょうがないみたいになっているところがあるのに、何でビジネスとして出てこないのかがすごい不思議だったんです。
【飯塚所長】  それは、自分たちがやりたいと思っているからなんですよ。だから、もう少したてば自分たちのビジネスになりそうだと思うところは、やはり貸したくないですよね、基本的には。
【富沢委員】  わかりました。ごめんなさい。すみません。
【飯塚所長】  ただ、自分たちの思ってもみなかった、ひょんなところから出てくるものに関しては、言ってみれば自分たちからはどうしてもそんなアイデアは全然出てこないようなものについては少し事情が違ってくると思います。例えば、KDDIさんの携帯電話ネットワークを用いて、ココセコムさんなんかが一部やっていますけれども、このようなサービスやアイデアを、KDDIさんが出せるわけがないんですよね。セキュリティのサービス自体もKDDIさんが実質できるわけないがありませんので、そういったものがこれからどんどん出てくるというところが、やはりミソなのかなと思います。
 また法人向けのビジネスに関して言いますと、基本的に携帯電話事業者さんの垂直統合モデルは、法人の需要構造にはなじまないと思っております。法人ユーザーというのは、やはり個別のパーツを組み合わせて、ネットワークなりシステムを組みます。既存事業者さんがこれから法人市場領域にチャレンジしていこうということが一般で言われていますけれども、私はちょっと違うだろうと思っております。その領域では、システムインテグレータ系MVNOのような形の事業者が、もっと出てきていいんじゃないかなというところがあります。この辺に関しては、やはりシェアの大きい事業者さんから少ないところまで、考え方にそれぞれ濃淡がございますので、十把一からげにしては考えられないところだとは思いますけれども。
【富沢委員】  すみません。ごめんなさい。
【森永委員長】  じゃあもう1時間ほどほんとうはいろいろ勉強させていただきたいんだけれども。
【飯塚所長】  いえ、とんでもございません。
【森永委員長】  時間の制約がございますので、この辺で打ち切らせていただきまして、ほんとうに飯塚さん、どうもありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
【飯塚所長】  このMVNOに関しては、お立場が違う方といろいろと意見交換したいと考えております。また別の機会にでも、もっとディスカッションさせていただければと思います。どうもありがとうございました。
【森永委員長】  どうもありがとうございました。
 どうぞ、お忙しいでしょうから、ご退席くださいまして結構でございます。
(飯塚所長退席)
【森永委員長】  さて、それでは次、議題3、「その他」でございます。事務局のほうからお願いいたします。
【小林上席調査専門官】  次回委員会の日程等につきましては、別途調整の上、ご案内させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【森永委員長】  それで、3、「その他」まで、公開の議事は終わりました。これから議事の4に入りますが、恐れ入りますがここからは非公開とさせていただきます。

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