関西国際空港株式会社の財務調査結果の概要


通知日:平成12年1月27日
通知先:運輸省

財務の構造

 事業の概要
 
(1)  関西国際空港株式会社(関空会社)は、関西国際空港の設置・管理を行う法人として、関西国際空港株式会社法に基づき昭和59年10月に設立
(2)  関西国際空港の建設:航空輸送需要の増大等に対応、国が定める基本計画に基づく
 ・ 1期事業:3,500mの滑走路1本を整備。平成6年9月:供用開始
 ・ 2期事業:平行滑走路(4,000m)を整備。平成8年度:事業着手、11年7月:現地着工、19年:供用開始予定
 財務の概要
(1)  資本金は、4,950億円(内訳:国3,300億、地方公共団体895.75億、民間754.25億)(平成10年度末)
(2)  資産総額は1兆4,694億円。長期債務が1兆603億円(平成10年度末)
(3)  損益状況は、収益1,186億円、費用1,419億円で、当期損失が235億円(平成10年度)

経営内容とその課題

 経営の現状

 
 1期巨額の投資に伴い、固定的な費用が大。創業赤字が続き、累積欠損が拡大
 空港運営実績は平成10年度伸び悩みの状況。営業収益は平成10年度には減収
 長期債務の償還は借換えが大半で、縮減には至らず
 
(1)  損益状況の概況
   収益で費用が賄えず、開港以来毎年度当期損失を計上
 累積欠損は1,333億円(平成10年度末)
 
(2)  費用と収益の構造
 
1.  費用は固定的なものが大半
 1期事業で1兆5,000億円投資
償却資産 8,000億円、有利子負債 1兆円
10年度
減価償却費 343億円、支払利息 473億円
費用全体のうち、減価償却費が24%、支払利息が33%、両者で57%。固定的な費用が大半
損益状況の概況
 
2.  収益は航空輸送需要に依存
 空港の運営実績(航空機の発着回数、旅客数など)は、平成9年度までは伸び、10年度伸び悩みの状況
 
(注) 需要予測は、「第7次空港整備七箇年計画」(平成8年12月閣議決定)の予測に基づき運輸省が試算
 営業収益は、平成9年度までは増収、10年度には減収に転じる状況
(営業収益)  
平成 7年度
1,083億円
8年度
1,176億円(対前年度 8.6%)
9年度
1,204億円(対前年度 2.4%)
10年度
1,182億円(対前年度 ▲1.9%)
航空輸送需要予測と実績
   
(3)  長期債務の縮減状況
   平成6年度以降5年間で、長期債務 2,721億円を償還。うち借換社債が2,092億円
→長期債務の縮減には至らず(平成10年度末残高1兆603億円)
   
 今後の経営見通しと課題
 
 関空会社は、長期経営見通しとして、黒字転換時期などの目標を設定
 今後の経営においては、次のとおり、動向を注視すべき要因あり
 現在、需要が予測を下回る動きで推移。今後の他空港の整備による影響
 用地造成会社からの用地の貸付け・譲渡の具体的条件は今後の協議事項
 1期事業による長期債務に2期事業による有利子債務が加わり、また、将来的には用地造成会社の有利子債務も関空会社の費用に反映
   
 
(1)  関空会社の長期経営見通し
単年度黒字 発着回数が年間21万回程度に達した時点(新滑走路供用開始後7、8年程度)
累積欠損解消 上記に要する期間のおおむね2倍程度
 
(2)  今後の経営をめぐる諸要因
1.  航空輸送需要の見通し(運輸省の航空輸送需要予測は、一定の経済成長、他空港との競合などを想定して算出)
 現在、需要が予測を下回っている状況
 他の国際空港、近隣空港の整備による需要への影響
2.  用地の貸付け・譲渡条件の設定
 2期事業は、「上下主体分離方式」
空港用地(下物)造成:用地造成会社
空港施設(上物)整備:関空会社
供用当初の関空会社の用地負担を軽減、経営の健全性を確保する趣旨
 用地は、関空会社に一定期間貸付け後譲渡
 
          ↓
  貸付料、譲渡代金等の条件は今後、両社で協議
2期事業資金スキーム
3.  長期債務の累増
 償還予定額が多額
 
     ↓
   縮減は長期を要する
 2期事業で有利子債務追加
   将来的には用地造成会社の有利子債務も関空会社の費用に反映
   
(3)
 今後の経営上の課題
 2期事業は航空輸送需要への対応等から必要とされた事業で、巨額の投資が必要
 関空会社の収支構造(費用は固定的なものが大半など)から、収支向上は制約が大きい状況
 
ポイント
1.  今後の経営の在り方については、厳しい経営環境にある中で、航空輸送需要の動向、用地造成会社の状況などに対応して、適時、適切に経営見通しを見直していくことが必要
2.  収支改善のため、十分活用されていない深夜の発着枠の有効利用など、空港全体として増収につながる方策を推進することが必要