規制行政に関する調査−基準・規格及び検査・検定−結果に基づく勧告(要旨)

勧告日: 平成12年3月23日
勧告先: 環境庁、厚生省、通商産業省、 運輸省、 労働省、建設省、自治省
実施時期: 平成11年4月〜12年3月
          
調査の背景事情等

 平成11年3月30日に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画(改定)」では、基準認証等については、各省庁において、政府の直接的な規制を必要最小限にすることを基本として、同計画の指針に基づく見直しを行うこととし、行政運営の実態を踏まえた緩和・改善を推進する観点から、行政監察機能の活用を図ることとされたところ。
 本調査は、上記の閣議決定を受けて実施したものであり、勧告における指摘事項については、本年3月31日に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画(再改定)」に盛り込まれた。
 調査対象機関:関係省庁(7)、都道府県、関係団体等

  【勧告事項】
 各省庁は、以下に指摘した事項(36事項)について所要の改善措置を講じる必要がある。

国が関与する基準認証等の範囲の見直し
 
 事業者による自主検査や委託等による保守管理・点検等が行われ、行政検査では基準不適合がほとんどみられないことなどから、一律に行政検査として実施する必要性が乏しくなっており、民間の検査能力の活用等、検査の実施主体、実施方法等について見直しの必要があるもの  
      ・気象測器の検定(気象業務法)
・測量機器の検定(測量法)               
         
 
 許認可等による規制について、近年の技術革新、社会情勢の変化等に必ずしも十分に対応したものとなっていないなど、許認可等による規制を維持する必要性が乏しくなっているとみられるものや規制範囲が的確でないもの等がみられ、許認可等の規制の見直しの必要があるもの
      ・食品営業の許可対象範囲(食品衛生法)
・食品営業者に対する法定監視回数基準(食品衛生法)
・医薬品一般販売業に係る医薬品の試験検査義務(薬事法)
・医療用具販売業の届出対象範囲(薬事法)
・医療用具の製造承認対象範囲(薬事法)
・燃料電池発電設備のばい煙発生施設としての届出(電気事業法、大気汚染防止法)
・燃料電池発電設備の電気工作物としての区分(電気事業法)
・衛星航法装置の検査(石油備蓄法)
・エレベーターの製造許可(労働安全衛生法)
     
 
 法的な根拠、位置付けが明らかでなく、これを明確にする必要があるもの
      ・測量機器の検定(測量法)
   
自己確認・自主保安を基本とした制度への移行
 
 検査実施者の要件緩和、検査体制の弾力化等、自己確認・自主保安等の範囲の拡大の余地があり、その見直しを図る必要があるもの
      ・食鳥検査制度(食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律)
・高圧ガス製造施設の認定保安検査実施者の要件(高圧ガス保安法)
・フォークリフトの自主検査に係る事業内検査者研修(労働安全衛生法)
     
 
 自己確認・自主保安を行う上で必要とされる基準等を見直す必要があるもの
      ・電気主任技術者の選任及び電気工作物の保安規程の策定等(電気事業法)
・主任技術者の外部委託(電気事業法)
・第二種電気主任技術者及び第三種電気主任技術者の監督範囲(電気事業法)
・ボイラーの遠隔制御についての基準(労働安全衛生法)
     
 
 指定検査機関等の指定要件が公益法人に限定されており、これを見直す必要があるもの
      ・食品の命令検査(食品衛生法)
・測量機種登録のための性能検定(測量法)
         
基準の国際整合化・性能規定化、重複検査の排除等
 
 基準・規格が国際整合性に欠けるもの、性能規定化の趣旨が徹底していないもの等基準・規格の見直しや趣旨の徹底等が必要なもの
      ・自動車の保安基準(道路運送車両法)
        操縦装置の取付位置基準及び座席の最小奥行寸法基準、サイドスリップテスタによる直進安定性の確認方法
      ・自動車の車台番号等の打刻(道路運送車両法)
・シリンダーブロックへの型式の打刻(道路運送車両法)
・天然ガス自動車用燃料容器等の検査(高圧ガス保安法)
・クレーンの製造許可に係る材料選択(労働安全衛生法)
         
 
 検査対象に係る法適用区分の明確化が十分に徹底されていないことから検査の一部に重複がみられ、この徹底を図る必要があるもの
      ・エレベーターに係る法適用関係(労働安全衛生法、建築基準法)
         
 
 事業者の試験データの活用や試験機関の試験データの利用、国際基準の認証等による試験方法や検定方法の見直し等が必要なもの
      ・測量機種登録のための性能検定に係る製造事業者の試験データ(測量法)
・耐火構造の指定に係る試験(建築基準法)
・新ガス系消火設備の技術上の基準(消防法)
         
 
 検査方法等が区々となっているもの、一律に規制することの合理性に欠けるものなど、検査方法、基準等の見直しが必要なもの
      ・高圧ガス製造施設に係る開放検査(高圧ガス保安法)
・食品営業の許可に係る施設基準等(食品衛生法)
         
 
 検査申請書の添付書類や申請方法の見直しが必要なもの
      ・高圧ガス製造施設の完成検査及び保安検査に係る申請手続(高圧ガス保安法)
・クレーンの製造許可申請に係る提出書類(労働安全衛生法)
         
その他公的色彩の強い民間の基準認証等の見直し
 
 民間の自主的制度であるとされている基準認証等について、公的なものであるとの誤認を与えることのないよう、運用等を見直す必要のあるもの
      ・石油燃焼器具の検査制度
・消防用設備等の点検済表示制度
         

 

 

資 料

勧 告 36 事 項 の 概 要

国が関与する基準認証等の範囲の見直し
 (1) 基準認証等の範囲の見直し
 
気象測器の検定(気象業務法)
一定の能力を有する民間(営利法人を含む。)の検査を受けたものについて国の検査を省略できる新制度の導入を図るとともに、現行の検定の実施方法について民間の負担軽減を図る観点から見直し(運輸省)
測量機器の検定(測量法)
検定機関に係る指定の基準を示すこととし、また、民間事業者における機器検定の実施を可能とする措置を講じる。(建設省)
   
 (2) 許認可等による規制の見直し
 
食品営業の許可対象範囲(食品衛生法)
飲食店営業の許可を必要とする自動販売機による営業の範囲について見直し(厚生省)
食品営業者に対する法定監視回数基準(食品衛生法)
食品営業に係る法定監視回数基準の見直し(厚生省)
医薬品一般販売業に係る医薬品の試験検査義務(薬事法)
医薬品の管理の実態等を踏まえ、その在り方について検討(厚生省)  
医療用具販売業の届出対象範囲(薬事法)
医療用具販売業の届出が不要な医療用具の範囲の拡大(厚生省)
医療用具の製造承認対象範囲(薬事法)
医療用具のクラス分類における区分の見直し及び日本工業規格等基準の策定による製造承認を不要とする医療用具の範囲の拡大(厚生省)
燃料電池発電設備のばい煙発生施設としての届出(電気事業法、大気汚染防止法)
ばい煙発生量の実態等に即し、規制対象から除外する範囲の拡大等を検討(通商産業省、環境庁)
燃料電池発電設備の電気工作物としての区分(電気事業法)
小出力の燃料電池発電設備を事業用電気工作物から一般用電気工作物に区分を変更することについて検討(通商産業省)
衛星航法装置の検査(石油備蓄法)
船舶安全法上の検査又はそれと同等以上の検査を経ているものは、別途の検査を不要化(通商産業省)
エレベーターの製造許可(労働安全衛生法)
製造許可手続の簡素化について検討(労働省)
   
   
 (3) 基準認証等の根拠の明確化
 
測量機器の検定(測量法)
測量機器の検定及び測量機種登録については、法的位置付けを含め、その在り方を検討(建設省)
   
自己確認・自主保安を基本とした制度への移行
 (1) 自己確認・自主保安等の範囲の見直し
   ア 検査実施者の要件緩和、検査体制の弾力化等
 
食鳥検査制度(食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律)
国及び都道府県に設置された食肉・食鳥処理問題調整協議会を活用し、より柔軟な検査体制の推進を含め、検査の在り方について検討(厚生省)
高圧ガス製造施設の認定保安検査実施者の要件(高圧ガス保安法)
自ら保安検査を実施することができる認定保安検査実施者の認定基準について再検討することにより、コンビナート関連事業者以外の第一種製造者についても認定保安検査実施者への移行を推進(通商産業省)
フォークリフトの自主検査に係る事業内検査者研修(労働安全衛生法)
特定自主検査を行う資格を取得するための事業内検査者研修については、開催箇所を見直し(労働省)
   
   イ 自己確認・自主保安を行う上で必要とされる基準等の見直し
 
電気主任技術者の選任及び電気工作物の保安規程の策定等(電気事業法)
共同受電の場合の電気主任技術者の選任及び電気工作物の保安規程の策定等について、電気工作物の設置及び保安管理に問題がないことを前提として、複数事業者による一括化を認める運用を明確化
主任技術者の外部委託(電気事業法)
工場等において業務用電力以外の電力の供給を受ける場合の主任技術者の選任について、保安が確保される一定規模の範囲において、受託業者の実態も踏まえ外部への委託を可能とすることを検討(通商産業省)
第二種電気主任技術者及び第三種電気主任技術者の監督範囲(電気事業法)
第二種電気主任技術者及び第三種電気主任技術者が監督できる範囲の拡大について、事故等により他者に及ぼす影響等を考慮しつつ検討(通商産業省)
ボイラーの遠隔制御についての基準(労働安全衛生法)
安全性を損なわない範囲で、遠隔制御方式ボイラーの対象となる基準、点検基準等について見直し(労働省)
   
 (2) 指定検査機関等の指定要件の見直し等
 
食品の命令検査(食品衛生法)
現在、公益法人により行われている検査命令に伴う食品検査については、地域による需要状況等を踏まえ、その在り方について検討(厚生省)
測量機種登録のための性能検定(測量法)
現在、検定能力を持つ唯一の公益法人で実施されている測量機種登録のための性能検定については、検査能力を有し、かつ、検査等を公正・中立に実施することができる民間法人にも拡大できるような措置を講じる。(建設省)
   
基準の国際整合化・性能規定化、重複検査の排除等
 (1) 基準・規格の国際整合化、性能規定化
 
自動車の保安基準(道路運送車両法)
操縦装置の取付位置基準及び座席の最小奥行寸法基準について、国際的な動向を踏まえて見直しを検討
また、サイドスリップテスタによる直進安定性の確認方法について、申請者の負担軽減の観点から見直し
自動車の車台番号等の打刻(道路運送車両法)
自動車の車台番号又は原動機の型式の打刻制度について、打刻字体の押印又は拓本の届出以外にも、字体を確認できる写真又は図面による届出方法を検討
シリンダーブロックへの型式の打刻(道路運送車両法)
製作者からの委託に基づく正規輸入業者によるシリンダーブロックへの型式打刻について検討(運輸省)
天然ガス自動車用燃料容器等の検査(高圧ガス保安法)
海外におけるこれらの基準・規格の緩和の動向に対応した申請等があった場合には、基準の解釈、試験方法等を含めて、これらの海外基準・規格の受入れに適切に対処(通商産業省)
クレーンの製造許可に係る材料選択(労働安全衛生法)
クレーンの製造許可に係る材料選択の弾力化の趣旨の徹底(労働省)
   
 (2) 重複規制の排除
 
エレベーターに係る法適用関係(労働安全衛生法、建築基準法)
建築基準法と労働安全衛生法(クレーン等安全規則)に係る適用区分の明確化の徹底(労働省、建設省)
   
 (3) 検査・検定等の方法・内容、周期等の見直し
   ア 事業者の試験データの活用や試験期間の試験データの利用等
 
測量機種登録のための性能検定に係る製造事業者の試験データ(測量法)
メーカーにおける製造時の試験データを活用し、検定を効率化(建設省)
耐火構造の指定に係る試験(建築基準法)
既に指定を受けたものを組み合わせた構造のうち、既に指定を受けたものと同等以上の性能があることが技術的に明らかなものについて、従前の試験成績書をもって試験が不要である場合があることを明確化(建設省)
新ガス系消火設備の技術上の基準(消防法)
新ガス系消火設備の技術上の基準については、早急に一般基準化を検討(自治省)
   
   イ 検査方法、基準等の見直し 
 
高圧ガス製造施設に係る開放検査(高圧ガス保安法)
貯槽以外の高圧ガス製造施設について、保安上問題がないことを前提に、設備の種類、構造・材質、整備・点検状況に応じて開放検査周期の延長等の見直し(通商産業省)
食品営業の許可に係る施設基準等(食品衛生法) 
食品営業の許可に係る都道府県等の施設基準等について、明確化・合理化を助言(厚生省)
   
   ウ 検査申請書の添付書類、申請方法の見直し
 
高圧ガス製造施設の完成検査及び保安検査に係る申請手続(高圧ガス保安法)
都道府県における完成検査及び保安検査の申請の取扱いについて、郵送による申請が可能なことを明確化し、事業者等に対する周知を図るよう各都道府県に対して徹底(通商産業省)
クレーンの製造許可申請に係る提出書類(労働安全衛生法)
クレーンの製造許可申請に係る提出書類については、その必要性を見直し、不要なものを求めることのないように措置(労働省)
   
その他公的色彩の強い民間の基準認証等の見直し
 
石油燃焼器具の検査制度
財団法人日本燃焼機器検査協会が自主事業として行っている石油燃焼器具検査について、公的なものとの誤認を与えることのないよう、民間検査であることを明確化する方向で同協会の検査業務規程等を改正するよう指導(通商産業省)
消防用設備等の点検済表示制度
民間の自主的制度であることを改めて明確にするとともに、消防機関における運用に当たっても、その趣旨を徹底(自治省)