勧告日 | : | 平成13年6月8日 |
勧告先 | : | 厚生労働省 |
実施時期 | : | 平成11年12月〜13年6月 |
○ | 医薬品は、人の生命と健康を守るために不可欠であり、有効性・安全性が確保された医薬品の開発と安定的な供給が要請される。近年、科学技術の進歩により効き目の優れた医薬品が開発される一方、時に重い副作用をもたらすものが増加。これに対応するため、副作用情報の迅速・的確な収集、医療関係者等への提供及び健康被害が発生した場合の適時・適切な救済が重要。いわゆる後発医薬品については、このような観点からの適切な対応や医療関係者からの信頼性の確保による有効活用が求められている。 また、厚生労働省が推進している医薬分業について、薬歴管理、服薬指導を適切に実施し重複投薬や相互作用を回避するという分業本来の目的が十分達成されていないのではないかとの指摘あり |
○ | 調査対象機関:厚生労働省、都道府県(22)、医療機関(61)、製薬企業(34)、薬局(63)、関係団体等 |
○ | 担当部局:行政評価局、管区行政評価局(7)、四国行政評価支局、行政評価事務所(12) |
![]() |
・薬事法に基づき、製薬企業等は、副作用情報の収集に努め、未知又は重篤な副作用症例の発生を知ったときには、厚生労働省に対し症例の具体的内容を報告する義務あり(報告期限:副作用症例の内容により15日又は30日以内 )。また、同法に基づき、医療機関は、製薬企業等が行う副作用症例の収集に協力するよう努めなければならないとされており、副作用症例に関する情報提供を行っている。 ・厚生労働省は、医療用医薬品の副作用情報の収集体制の整備等に関して製薬企業等が遵守すべき「市販後調査基準」(省令)を設定しているが、医療機関に対しては特段の定めなし |
![]() |
○ | 製薬企業等が副作用症例の発生情報を入手するまでに半年以上経過しているものが、調査した15製薬企業等119件中6製薬企業等12件あり 市販後調査基準に基づく「市販直後調査」の実施(平成13年10月開始予定)により、重篤な副作用症例の収集が製薬企業等に義務付けられるが、対象医薬品、実施期間が限定 |
○ | 副作用の発生情報を得た製薬企業等が、その具体的内容に関する情報提供を医療機関に依頼したが協力を得られず、厚生労働省に報告できなかった例や報告するまでに長期を要した例あり |
○ | 調査した61医療機関のうち37機関は、副作用症例に関する情報提供を個々の医師の判断にゆだねているなど組織的な取組を未実施。このため、当該医療機関で発生した副作用症例に関して、情報提供を行っていない例あり。一方、医薬品情報室を設置するなど組織的に取り組んでいる24医療機関では、副作用症例に関する情報提供を的確に実施 |
![]() |
||||||
![]() |
![]() |
![]() |
||||
![]() |
![]() |
・ 薬剤師法に基づき、薬剤師は、調剤した医薬品の適正な使用のために必要な情報(薬剤の名称、保管上の注意事項、服用上の注意事項、効能・効果、副作用等)の患者への提供義務あり ・ 厚生労働省は、情報提供の方法は口頭又は文書のいずれによってもよい旨通知 |
![]() |
![]() |
||
![]() |
医薬品に関する情報の患者への提供は文書によることを原則とするよう医療機関及び薬局を指導すること。 ![]() |
![]() |
![]() |
![]() | 後発医薬品(新薬として既に製造承認を受けている医薬品(先発医薬品)と有効成分、規格、効能・効果等が同一の医薬品)の品質確保が重要で、その製造承認の審査は、先発医薬品との同等性を評価・確認する観点から実施。なお、後発医薬品は先発医薬品に比して安価であり、後発医薬品の利用が推進されれば、国民の医療費負担は軽減 | ![]() |
○ | 後発医薬品の品質を確保するため、厚生労働省は、後発医薬品の承認審査に際して、同等性評価に加え、平成10年以降、主成分の溶出度合の測定試験の規格に適合しているか評価を実施。しかし、これらの承認審査データの情報は医薬関係者に十分提供されていない。 |
○ | 後発医薬品の製造企業等には、副作用情報等の収集・評価・医療関係者への提供が義務付けられている(市販後調査基準)が、厚生労働省の調査結果によると、これを励行していない企業多数。これに対し、厚生労働省は、立入検査等による指導未実施 |
○ | 我が国における後発医薬品の市場占有率は10%程度(製薬企業団体推定)であり、欧米諸国(20〜40%と推定)より低い。 ・ 処方せんに先発医薬品の商品名が記載されている場合は、患者が、低価格であること等を理由に後発医薬品への変更を希望しても、薬剤師のみの判断で変更することは不可(薬剤師法)。 ・ 処方せんに記載する医薬品の名称は、一般名(例:ニトログリセリン)又は商品名(例:ニトロペン錠)のいずれでも可。調査した52医療機関中48機関は、有効成分等が同一で商品名の異なる医薬品が複数存在する実態や価格に関する情報の国民に対する提供が十分でないため、一般名で処方した場合、薬局ごとに医薬品の名称、形状、価格等が異なることにより患者に不安や混乱を与えるおそれがあること等を理由に、すべて商品名で記載。 |
![]() |
||||||
![]() |
![]() |
![]() |
||||
![]() |
![]() |
・ 医薬分業とは、医師が患者に処方せんを交付し、患者が自ら選択した医療機関外部の薬局の薬剤師が処方せんに基づいて調剤すること。その目的は、薬歴管理、服薬指導を適切に実施することによる重複投薬や併用薬との相互作用の回避等 ・ 厚生労働省は、保険診療に係る処方せん料の引き上げ、調剤報酬の新設・引上げの実施等により医薬分業を推進 ・ 都道府県薬剤師会等が設置する医薬分業推進支援センター(薬局に在庫がない可能性のある医薬品の備蓄(備蓄部門)、休日及び夜間の調剤等(調剤部門)、医薬品に関する情報の収集・提供(情報部門)の機能を単独で有するか又は併せ持つ施設)の整備費に対し国庫補助(平成11年度約8,000万円)を実施 |
![]() |
○ | 平成11年度の医薬分業率(「外来患者に対する全処方件数」に占める「保険薬局の処方せん受取枚数」の割合)は、全国平均34.8%。都道府県別では、56.4%から8.7%までと地域格差大 ・ 調査した医療機関では、収益の多寡によって、院内調剤から処方せんの発行(院外調剤)に転換するか否かを決定している実態あり ・ 診療と医薬品入手を一度で済ますことができないので不便、費用が高くつくなどの理由で、患者の半数以上が医薬分業をメリットと受け止めていない。 |
○ | 厚生労働省は、医薬分業の量的拡大が、医薬分業本来の目的に照らしてどのような効果を上げてきているかという視点からの検証を未実施 |
○ | どこの薬局に調剤を依頼するかは患者の選択にゆだねざるを得ないため、1か所の薬局で患者の薬歴(医薬品の服用歴)等に関する情報をすべて正確に把握・管理することには限界あり。 一方、厚生労働省は、「お薬手帳」(薬局等薬剤師が調剤の都度患者の薬歴等を記載し、患者が携行する手帳)の活用を推奨しているが、薬剤師による記入作業が煩さで情報量も不足等の指摘あり。厚生労働省は、薬局等が患者の薬歴等を電子媒体(フロッピーディスク等)に入力し患者自身が保有するシステムの開発に、平成12年度に着手したばかり |
○ | 医薬分業推進支援センターの中には、補助目的以外(薬剤師会館の会議室等)に利用されている例や、開設以来利用実績のない例あり ・ 調剤部門については、17施設のうち15施設が本来業務である休日及び夜間の調剤を未実施 ・ 備蓄部門については、18施設中17施設が薬局への配送サービスを未実施のため利用低調。一方、医薬品卸売業者の配送販売を利用したり、薬剤師会等のパソコンネットワークにより備蓄情報を共有し近隣の薬局間で融通し合うシステムを構築するなど別途の対策を講じて効果を上げている例あり |
![]() |
||||||||
![]() |
![]() |
![]() |
||||||
![]() |