(1) | 業務委託の推進・合理化
水資源開発公団は、水資源開発基本計画に基づく水資源の開発又は利用のための事業を実施すること等により、国民経済の成長と国民生活の向上に寄与することを目的として水資源開発公団法(昭和37年法律第 218号)により設立された特殊法人である。
水資源開発公団は、水資源開発水系に指定されている利根川等の7水系において、ダム・堰、用水路等の水資源開発施設の新築又は改築を行うとともに、その管理(操作等)等を行うこととされている。
水資源開発公団の事業資金のうち水資源開発施設の建設等に要する費用は、財政投融資資金のほか、治水特別会計からの交付金、農業生産基盤整備補助金、水道水源補助金等により賄われている。また、完成した施設の管理に要する費用は、国からの交付金、水利使用者の負担金等により賄われている。このため、同公団には、水資源開発施設の建設、管理等に要する費用をできる限り抑制し、最小限の組織・体制で効率的な事業運営を行うことが求められている。
水資源開発公団は、「特殊法人の整理合理化について」(平成7年2月24日閣議決定)において、定型業務の民間委託の推進を図ることとされたことを受け、平成7年12月に業務委託のガイドラインを定めている。同ガイドラインでは、業務を「職員自らが処理する業務」、「委託可能な業務」及び「委託する業務」の3種に区分している。このうち「委託可能な業務」として、補助的な業務であって委託した方が効率的に実施できる業務(水資源開発施設の操作・監視業務の一部等)が挙げられ、また、「委託する業務」として、専門業者に委託した方が効率的に実施できる業務(調査、測量、設計等に関する業務の一部)、単純又は定型化された業務で委託した方が効率的に実施できる業務(自動車の運転、点検・整備を行う車両管理業務等)等が挙げられている。
今回、水資源開発公団の平成11年度における業務の民間委託の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。 |
| 1. | 車両管理業務及び配水管理業務について、水資源開発公団の計51の会計機関(水資源開発公団の収入及び支出の原因となる契約等を担当するために設けられている機関)のうち、本社、支社等26機関における委託状況等をみると、次のとおりである。 |
| i) | 車両管理業務の委託状況についてみると、26機関のうち既に23機関において委託が行われているが、委託を行っていない3機関の中には、委託により経費の節減等を図り得るにもかかわらず、委託していないものが2機関(うち1機関については、調査途上の平成13年4月に委託)ある。 |
| ii) | 水資源開発公団では、ダムや基幹用水路等を管理するために管理所等を設置し、配水管理業務(配水指令、配水指令に基づくダム等の操作・監視作業等)を行っている。このうち配水管理業務の実施状況を調査した4機関について、平日の昼間における基幹的配水施設(ダム、基幹用水路等)の操作・監視作業の委託状況をみると、補助的・定型的業務であるにもかかわらず、施設の形態・規模等の相違を理由として、(i)操作・監視作業を委託していないものが2機関、(ii) 操作・監視作業の一部しか委託していないものが2機関ある。 |
| 2. | 施設等管理業務のうち、既に民間に委託している分室(支社等の会議室等を補完する施設であり、水資源開発公団全体で43か所設置)の管理業務及び寮等の給食業務(同公団全体の寮(単身者用宿舎)及び事務所の計143か所で実施)についてみると、 次のとおりである。 |
| i) | 分室については、そもそも会議室としての利用が皆無であ ったり副次的な機能である宿泊施設としての利用が低調であるもの(平成13年3月末、このような分室1か所が当省調査を契機に用途廃止され、これに伴い管理業務も廃止)がある。 |
| ii) | 給食業務を実施している寮及び事務所の中には、周辺において民間の食堂等が営業している地域に所在しているもの(平成13年3月末、こうした地域にある寮1か所及び事務所1か所の計2か所の給食業務が当省調査を契機に廃止)がある。
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| したがって、国土交通省は、水資源開発公団に対し、民間委託業務の見直しによる経費の節減等を図る観点から、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。 |
| 1. | 車両管理業務について引き続き委託を推進するとともに、これ以外の補助的、定型的な業務についても委託を推進すること。 |
| 2. | 民間に委託している業務のうち、分室の管理業務並びに寮及び事務所の給食業務について、その必要性を見直した上、必要性のないものを廃止すること。
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(2) | 契約事務の改善
水資源開発公団が締結する契約については、国土交通大臣の認可を受けた水資源開発公団会計規程(昭和38年6月18日水公規程昭和38年第7号)第67条第1項により、1.競争に付することが不利と認められるとき、2.契約の性質又は目的が競争を許さないとき、3.災害応急復旧を行う場合その他緊急を要する場合において、競争に付するいとまがないとき、4.業務の運営上特に必要があるとき以外は、競争に付さなければならないこととされている。
さらに、工事については「工事請負契約の事務処理要領」(昭和37年10月8日付け水公達昭和37年第4号)において、また、物品購入契約については「物品購入等の契約事務処理要領」(平成6年3月31日付け水公達平成6年第6号)において、それぞれ随意契約によることができる場合が限定的に列挙されている。
なお、水資源開発公団では、「役務関係業務に関する契約及び発注手続の改善について」(平成9年2月14日9経契第80号・9技第26号)を定め、車両管理業務、庁舎等管理、設備の点検等の役務関係業務については、平成9年度から、競争入札を原則とすることとしている。
また、「特殊法人等の整理合理化について」(平成9年12月26日閣議決定)では、「特殊法人等が、公益法人、株式会社等に業務を発注する場合、独占的契約を禁止し、小規模案件、緊急案件等を除き、競争入札とする」こととされている。同閣議決定ではさらに、水資源開発公団について「小規模案件、緊急案件等を除き、競争入札とし、従来特定企業が独占的に受注してきた定型的な業務(庁舎管理・車両運転等)や現場業務(調査・測量・設計等)等についても競争入札による民間委託を行う」こととされており、その確実な実施が求められている。
なお、指名競争入札の実施に当たっては、「工事請負契約の事務処理要領」又は「物品購入等の契約事務処理要領」により、なるべく10人以上の業者を指名しなければならないこととされている。
今回、水資源開発公団の計51の会計機関のうち、本社、支社等26機関における契約事務の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。 |
| 1. | 平成11年度の役務関係業務の民間委託契約についてみると、その全部又は一部を随意契約としている機関が次のとおりみられる。 |
| i) | 庁舎管理等業務(庁舎の警備、清掃、食堂・寮の賄い業務)25機関のうち13機関 |
| ii) | 車両管理業務23機関のうち21機関 |
| iii) | 文書処理等業務(ワープロ操作、書類の整理・保存等)17機関のうち13機関 |
| iv) | 施設設備の点検等に関する業務19機関のうち16機関 |
| v) | 現場業務26機関のうち25機関 |
| 2. | 平成10年度の指名競争入札における指名業者の選定状況についてみると、有資格業者名簿に指名の対象となり得る業者が多数掲載されているにもかかわらず、(i) 過去に当該業務の契約実績がある業者に限定している、(ii) 業者の所在地を限定している、(iii) 内容が全く異なる業務を一括発注している等のため、指名業者数が10人未満となっているものがある(12機関)。
また、物品購入契約における物品の選定状況についてみると、車両購入契約について、合理的な理由もなく自動車の車種を限定し、有資格業者名簿に該当業者が1社しか掲載されていないとして随意契約としているものがある(2機関)。
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| したがって、国土交通省は、水資源開発公団に対し、契約における透明性・競争性を確保する観点から、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。 |
| 1. | 庁舎等管理業務、車両管理業務、文書処理等業務、施設設備の点検等業務、現場業務等の役務関係業務に係る契約で随意契約によっているものについて、随意契約としている理由を精査し、合理的な理由がないものについては、早期に競争入札に移行すること。 |
| 2. | 指名競争入札を行う場合、指名業者数がなるべく10人以上となるよう業者の選定を適切に行うこと。また、物品購入についても、原則として競争入札に移行すること。
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(3) | 組織の簡素化及び要員の効率的な配置 |
| ア | 組織の簡素化
政府は、水資源開発公団の組織について、次のとおり累次の閣議決定を行っている。
平成7年2月24日の「特殊法人の整理合理化について」では、今後の事業計画、工事の進ちょく状況等を総合的に勘案しつつ、個別ダム管理所の総合管理事務所化を推進することとしている。
また、平成9年12月26日の「特殊法人の整理合理化について」では、新たに管理を開始するダム等に係る業務は、可能な限り既存管理所に統合して処理することとしている。
さらに、平成12年12月1日の「行政改革大綱」では、今後、特殊法人等の事業及び組織の全般について、内外の社会経済情勢の変化を踏まえた抜本的見直しを行うこととしている。
水資源開発公団の組織、定員及び事業については、水資源開発公団法第35条等の規定に基づき、毎年度、国土交通大臣から予算及び事業計画の認可を受けることとされている。
水資源開発公団が実施する水資源開発施設の建設事業数(実施計画調査中のものを含む。)は、平成元年度の26事業から11年度には20事業に減少している。一方、施設の完成に伴い、管理事業数は平成元年度の30事業から11年度には47事業に増加している。このため、水資源開発施設の建設事業と管理事業の合計数は平成元年度の56事業から11年度には67事業に増加している。
水資源開発公団は、これらの事業を行うため、平成11年度末現在、本社、研修所、試験研究所、支社2か所及び開発局2か所のほか、現地組織及びその出先機関を全国で計83か所(建設事業又は完成施設の管理事業を行う計44か所の現地組織(4調査所、10建設所、1総合事業部、4総合事業所、6総合管理所、19管理所)及びこれらの現地組織の出先機関である計39か所の支所、出張所等(以下「支所等」という。))設置している。
なお、総合事業部及び総合事業所(以下「総合事業部等」という。)は、大規模用水事業等の管理事業と老朽施設の改築事業等を効率的かつ一体的に行うための組織である。
水資源開発公団では、従前から、事業の進ちょくに応じて、次のとおり段階的に現地組織の改組を行ってきている。 |
| i) | 事業採択(工事費の予算化)前の実施計画調査の段階では、建設予定事業の技術的調査を行う調査所を設置する。 |
| ii) | 事業が採択され主務大臣から水資源開発施設の規模、予定工期等の事業実施方針の指示が行われた段階では、調査所を建設所に改組する。 |
| iii) | 建設事業が完了し管理事業に移行する段階では、建設所を管理所に改組する。
建設所から管理所への改組では、当該事業が利水専用であるか又は治水及び利水を目的とするものであるかという事業目的の別ごとに、複数の建設所を統廃合し又は建設所を既存の管理所に統廃合して、総合管理所を設置している。例えば、吉野川水系では、昭和50年度に、治水及び利水を目的とする複数の水資源開発施設を管理するために、池田ダム建設所、早明浦ダム建設所及び新宮ダム建設所の3建設所を廃止し、池田総合管理所を設置している。
現地組織の出先機関である支所等についても、調査、建設及び管理という事業の進ちょくや本所又は他の支所等との間の距離等の状況を踏まえ、統廃合を行うことが求められている。
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| 今回、平成11年度における水資源開発公団の現地組織とその支所等の配置状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
水資源開発公団は、総合事業部等及び総合管理所を計11か所に配置するとともに、これらの出先機関として、既存の水資源開発施設の操作等の管理及び改築工事の監督を行う支所等を34か所に配置している。
このうち、木曽川水系の愛知用水総合事業部長久手支所(平成11年度末定員14人)、豊川水系の豊川用水総合事業所大島出張所(同6人)、利根川水系の利根導水総合事業所羽生出張所(同10人)及び木曽川水系の木曽川用水総合事業所上流出張所(同3人)の4支所等は、総合事業部等の本所又は他の支所等との間の距離がいずれも10キロメートル以内であり、総合事業部等において、支所等が実施している管理業務、改築工事の監督及び緊急時の対応を行うことが可能である。
また、上記4支所等については、平成13年度以降順次建設工事が完了する予定であるため、この完了に合わせて順次廃止し、近隣の総合事業部等の本所又は他の支所等に統合する余地がある。
したがって、国土交通省は、水資源開発公団に対し、組織の簡素化を推進する観点から、現地組織とその支所等について、相互の距離や事業の進ちょく段階等を勘案し、配置の見直しを検討するよう指導する必要がある。
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| イ | 要員の効率的な配置
水資源開発公団は、国からの交付金・補助金、水利使用者の負担金等を原資として各種の事業を行っており、その要員についても最も効率的な規模と配置で業務を行うことが要請されている。
また、特殊法人の定員については、「新たな府省の編成以降の定員管理について」(平成12年7月18日閣議決定)に基づき、国家公務員の定員管理に準じて、平成13年1月6日から23年3月31日までの約10年間の計画期間に、少なくとも10パーセントの計画的削減、新規増員の抑制等により25パーセントの純減を目指した定員削減に最大限努力することとされている。
水資源開発公団の定員は、国土交通大臣の認可を受けた予算に基づき定められており、平成11年度末現在の定員は 1,939人(本社 250人、試験研究所25人、研修所4人、支社・開発局188人、現地組織 1,472人)、現員は1,830人となっており、13 年度から17年度までの5年間において98人(各年度19人又は20人)の定員削減を行うこととしている。
現地組織の定員 1,472人の内訳は、4調査所に58人、10建設所に433人、6総合管理所に234人、19管理所に319人、 5総合事業部等に428人となっている。このうち6総合管理所には、その出先機関である支所等の一種として個々の水資源開発施設を管理する15管理所(総合管理所と並列の組織である「管理所」と区別するため、以下「出先管理所」という。)が置かれ、234人中113人が配置されている。
こうした総合管理所のうち、治水及び利水を目的とするダムを管理する3総合管理所(141人。9出先管理所の定員を含む。)は、国土交通省の地方支分部局であるダム統合管理所から放流等のダム操作の指示を受けるとともに、個々のダムを管理する出先管理所を指揮し、複数のダムの管理を行っている。
なお、水資源開発公団の総合管理所に出先管理所が置かれているのと同様に、国土交通省のダム統合管理所についても管理支所が置かれ、個々のダムの管理(ダム操作等)が行われている。
今回、平成11年度における水資源開発公団の要員の配置状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。 |
| 1. | 水資源開発公団では、ダムの管理業務を遂行するため、施設の管理目的、操作・監視、維持修繕、関係機関との調整等の業務に応じて必要な要員を配置しているとしているが、客観性のある要員配置を行っていくためには、施設の管理目的、操作・監視、維持修繕等の管理業務の内容、地域における水利事情及びその他の要因を考慮した客観的な要員配置基準の策定が効果的である。
水資源開発公団の4出先管理所が管理する4ダム及び国土交通省の4管理支所が管理する4ダムの管理要員数をみると、区々となっている。例えば、水資源開発公団管理の新宮ダム(洪水調節、農業用水及び工業用水の供給並びに発電を目的として昭和50年度に竣工。総貯水容量 1,300万トン)の管理要員数は9人であり、また、同公団管理の高山ダム(洪水調節、河川の正常な機能の維持、水道用水の供給及び発電を目的として昭和41年度に竣工。総貯水容量5,680万トン)の管理要員数は7人である。一方、国土交通省管理の柳瀬ダム(洪水調節、農業用水、水道用水及び工業用水の供給並びに発電を目的として昭和28年度に竣工。総貯水容量3,222万トン)の管理要員数は6人である。 |
| 2. | 現地組織における管理業務等の民間委託の推進(項目3−1)参照)及び現地組織とその支所等の統廃合(項目3−(3)−ア参照)に伴い、要員の合理化が可能なものがある。
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| したがって、国土交通省は、水資源開発公団に対し、要員の効率的な配置を推進する観点から、次の措置を講ずるよう指導する必要がある。 |
| 1. | 現地組織とその支所等について、業務内容等に応じた客観的な要員配置基準の策定を検討し、これを踏まえた要員配置を行うこと。 |
| 2. | 業務の民間委託の推進や組織の統廃合に伴う要員の合理化を検討すること。 |