勧告日 | :平成12年8月8日 |
勧告先 | :建設省 |
実施時期 | :平成10年12月〜12年8月 |
[監察の背景事情等] | |||||
○ | 我が国の高規格幹線道路網の整備目標延長は、四全総等で約1万4,000キロメートル(概成目標は21世紀初頭)。目標延長の53%が供用(7,377km:高速道路6,453km、高速代替道路441km、道路網自専道483km
〈10年度末現在〉 ) 高速道路や一般有料道路については、交通量の大きな伸びが期待できない状況にあり、今後の整備や管理に当たっては、国民・利用者の理解を得る観点からも一層の透明性・採算性の確保が課題。本四連絡道路については3ルートが概成(平成11年5月)し 、その維持管理に当たっては、同様の観点から安定的な整備費用の償還を行うとともに一層の透明性の確保が課題 このような状況の下、これら道路の整備や管理を行う道路公団及び本四公団は、業務の一層の合理化・効率化の推進が課題 政府は、閣議決定(7年2月、9年12月)において、道路公団の執行体制の効率化等、本四公団の3ルート概成時点における組織の大幅縮小、要員の大幅削減等を決定 |
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○ | 本監察は、このような高規格幹線道路をめぐる現状にかんがみ、また、閣議決定を踏まえ、高速道路、一般有料道路等の整備状況、道路公団及び本四公団の経営状況を調査し、関係行政の改善に資するため実施 | ||||
○ | 調査対象機関 | :建設省、日本道路公団、本州四国連絡橋公団、関係団体等 | |||
○ | 担 当 部 局 | :行政監察局、管区行政監察局(7)、四国行政監察支局、行政監察事務所(9) |
[主な勧告事項] | |||||
1 | 有料道路事業の透明性・採算性の確保 | ||||
(1) | 高速道路事業の透明性・採算性の確保 | ||||
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・ | 高速道路の整備目標延長47路線11,520km、10年度末現在、建設大臣から道路公団に対する施行命令延長 9,006km(78%)、供用延長 6,453km(56%) | ![]() |
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○ | 高速道路は全国プール制。7年度以降、償還実績は計画以上に進ちょく。今後の新規整備区間(路線)には交通量の少ないものも見込まれているところ | ||||
・ | 償還実績を計画に対応した形で明らかにしていないため、償還計画の達成状況の検証は現状では困難 | ||||
○ | 高速道路の完成車線は4車線以上。近年、工事実施計画の認可が行われた新規整備区間においては、供用当初に見込まれる交通量が少ないことから、初期投資を節減した暫定施工方式(用地は完成車線分で取得し、工事は暫定車線で実施)による整備が大半 | ||||
・ | 暫定施工方式により建設する区間の決定に当たっては、総建設費(暫定施工による建設費と完成車線への拡幅建設費との合計額)の節減効果が発現するまでの期間である経済年数の算出が重要 |
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(2) | 一般有料道路事業等の透明性・採算性の確保 | |||||
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(道路公団の一般有料道路) | ![]() |
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・ | 一般有料道路(10年度末現在供用中64道路:805km)は個別採算制が原則。その種別は、高規格幹線道路網を形成する高速代替道路(18道路)及び道路網自専道(12道路)並びに道路網に含まれない単独路線(34道路)。道路資産総額4兆 7,264億円、借入金残高4兆 2,997億円(10年度末) | |||||
・ | アクアラインは9年12月供用開始。道路資産額1兆 4,058億円、借入金残高1兆 4,118億円(10年度末) | |||||
・ | アクアラインは12年7月事業変更(個別採算制から他の道路との関連道路プール制に移行。公的負担による資金コストの軽減措置、償還期間の延長等) | |||||
○ | 供用58道路(供用開始間もない道路等を除く。)の中には実績交通量が計画交通量を下回るものあり(42道路・72%<10年度実績>)、今後の事業許可申請に当たっては事業投資限度額(予定される収入をもって償還期間内に償還が可能である額)を適切に見積もる必要あり | |||||
・ | 42道路中、収支差損が生じているもの26道路(62%)<10年度実績> | |||||
(注) |
収支差損の生じる道路についても、別途、料金収入の20%又は15%を損失補てん引当金として積立て |
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○ | 営業を継続しても未償還額が拡大すると推計される道路あり | |||||
・ | 償還見通しを推計すると、推計対象とした単独路線20道路のうち、償還期間満了時に道路資産額を上回る未償還額が残るもの9道路 | |||||
○ | アクアラインの交通量は低迷。このまま推移すれば償還の先行きは極めて厳しい状況 | |||||
・ | 供用後の実績交通量は、償還計画上の収入額の基礎となる計画交通量を著しく下回る (10年度 9,996台/日〈同年度計画交通量2万8,702台/日の34.8%〉等)。 | |||||
・ | 経営面では、開通後の利用実態等を踏まえ、交通管理業務における道路の定期巡回の頻度等を見直す余地あり |
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(本四公団の本四連絡道路) | ![]() |
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・ | 3ルートは11年5月に概成(児島・坂出ルート<延長37.3km、昭和63年4月全線供用開始> 、神戸・鳴門ルート <延長89.0km、10年4月全線供用開始>、尾道・今治ルート<延長59.4km、11年5月一部島内区間を除き概成・供用開始>) | ||||
・ | 公団経営は極めて厳しい状況(10年度末現在の借入金残高4兆 3,702億円 <道路資産総額3兆 5,325億円、欠損金累計額 8,377億円>) | ||||
・ | 償還計画(9年12月認可) の償還期間は50年、未償還残高のピークは18年度 | ||||
○ | 昭和63年度以降償還計画を2回変更、その都度、償還計画上の収入額の基礎となる計画交通量を下方修正。しかし、実績交通量は常に計画交通量以下。また、現在の計画交通量の推計根拠とした自動車走行台キロの将来予測も下方修正されており、利用実態を踏まえた計画交通量の検証が必要 | ||||
○ | 交通量の低迷による収入の落ち込み(10年度:計画額840億円、実績額807億円) |
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2 | 業務の合理化・効率化等 | ||||
(1) | 業務委託経費の節減 | ||||
・ | 道路公団の路面清掃業務は、現行の基準の下で、同程度の交通量にもかかわらず管理事務所間で清掃頻度に違いがあるなど改善の余地(調査した33管理事務所で9事例) | ||||
・ | 本四公団の料金収受業務について、現場代理人補助者及び事務長の配置の基準不明確 |
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(2) | 競争性導入の促進 | ||||
・ | 道路公団で随意契約としている料金収受機械等技術管理業務等全6業務、本四公団の料金収受機械等保守整備業務等2業務については、随意契約の相手方以外の者でも実施可能 | ||||
・ | 本四公団の長大橋に係る維持修繕工事のうち、施工上の専門技術性が低いと考えられる工事等については、競争入札の導入が可能 |
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(3) | 組織・要員の合理化 | ||||
ア | 組織・体制の見直し | ||||
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・ | 道路公団:本社14部室、地方組織7支社・3建設局・4管理局、支社等の下部機関77工事事務所・8技術事務所・99管理事務所・27営業所。この外、試験研究所・総合研修所 | ![]() |
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・ | 本四公団:本社5部1センター2室、3管理局、管理局の下部機関6管理事務所2管理支所 | ||||
(道路公団) | |||||
・ | 管理事務所の中には、設置基準等からみて配置の見直しを検討すべきものあり | ||||
・ | 営業所の一部は、管理事務所からの到達所要時間等からみて管理事務所の直接管理が可能 | ||||
・ | 試験研究所の環境緑化センターと緑化研究室の業務内容が重複 | ||||
(本四公団) | |||||
・ | 長大橋を主体とする管理であるなどの事情があるものの、ルートごとに管理局を設置しているため、その平均管理延長(約58km)は道路公団の管理局等の10分の1以下 |
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イ | 要員管理の適正化 | ||||
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・ | 予算定員は、道路公団:10年度 8,873人、11年度 8,857人。本四公団:10年度 672人11年度 609人 | ![]() |
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(道路公団) | |||||
・ | 管理事務所の要員1人当たりの主要業務の指標を比較すると、管理事務所間で不均衡が発生 | ||||
・ | 現業職が従事する料金収受等の業務は、業務内容等からみて直営の必要性が乏しい | ||||
(本四公団) | |||||
・ | 閣議決定を踏まえ、13年度までに8年度末定員(722人)の約3分の1(240人) の削減を決定、12年度と13年度の2年間で 127人の削減が必要 |
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