石油公団の財務調査結果の概要

通知先: 通商産業省
通知日: 平成11年4月30日

財務の構造

事業の概要
 公団は、昭和42年、石油開発会社に対する資金の提供等を行う法人として設立
 昭和53年に国家石油備蓄業務が追加
  1. 探鉱投融資・債務保証事業
     国の出資金を基に実施 → 資金回収は、探鉱の成否や油価・為替の動向に左右
  2. 国家石油備蓄事業
     備蓄の財源は民間借入金が主 → 備蓄目標(5,000万kl)は平成9年度に達成
財務の概要
  1. 探鉱投融資・債務保証事業 → 資産総額1兆3,725億円
  2. 国家石油備蓄事業 → 石油資産1兆3,082億円、備蓄基地建設貸付金1兆372億円

経営内容とその課題

探鉱投融資・債務保証事業
(1) 事業展開の状況
自主開発原油の確保には、一定の成果(輸入原油総量の約15%)
探鉱事業のリスクは高く、昭和63年度以前に設立の探鉱会社の半数以上が解散
  1.  自主開発原油の確保という政策の下、21世紀初頭に 120万バーレル/日を目標
     → 実績:輸入原油総量の約15%(67万バーレル/日)と、一定の成果
  2.  投融資は2次のオイルショックを経て増加するも、投融資先会社の解散が増加
     → 昭和63年度以前に設立された探鉱会社のおおむね半数以上が解散
    原油輸入総量に占める自主開発原油の割合とその推移
    会社解散の割合(年次別)
  3.  これまでの損失処理は、4,081億円、引当金残高は、1,179億円(平成8年度末)
(2) 投融資等の現状
ア 公団財務の状況(財務諸表の分析)
資金の回収可能性について注意深く見守っていく必要がある債権4,245億円
 =投融資等(1兆600億円弱)の約4割
 ・利息が棚上げられている債権: 3,550億円 (平成8年度)
 ・長期未収金        : 696億円 ( 〃   )
  1. 投融資等の残高約1兆4,100億円中、相当部分について回収の見込みが立っていないものは、3,500億円強(∵投融資先会社が解散予定)
                                ↓
  2. 公団の財務内容(1.の3,500億円を除いた1兆565億円について、財務諸表等からその内容の分析)
    財務諸表分析
 (ポイント)
財務分析の結果では、資金の回収可能性について注意が喚起されている状況
  イ キャッシュフロー分析からみた損益(通産省による見通し)
通産省のキャッシュフロー分析は、出融資先会社の将来の損益の見通しを立てるもの
分析では、最終的な損益は▲2,490億円〜3,760億円との結論
  1.  キャッシュフロー分析は、油価・為替に一定の前提を置き、石油の埋蔵量を元にした生産見通しに基づき、投融資先会社から公団へ将来支払い可能な金額を分析
  2.  この分析対象は、当庁の財務諸表分析の対象となる出融資先と概ね一致
  3.  通商産業省による損益見通し  
(金額:平成9年度ベース)
分析に際しての設定条件
(油価、為替)
回収
不能額
収益の
見込み
最終損益
の見込み
16.1ドル/バーレル、110円/ドル
▲6,870
4,380
▲2,490
20.7ドル/バーレル、145円/ドル
▲5,140
8,900
3,760
→油価・為替の変動により左右
 (ポイント)
分析の前提条件である油価・為替の変動に注意を払いつつ、適時適切に損益の動向を見通し、出融資先会社について的確な措置を講ずることが必要
(3) 投融資効果と今後の課題
自主開発原油の輸入量や投融資先からの配当は昭和40年代設立会社からのものが多い
投融資先会社の探鉱開発コストがメジャーと遜色なしとの通産省試算は精査の要あり
  1. 投融資額と原油輸入量の比較では、昭和40年代前半のものの効果が高い
  2. 配当収入は、昭和40年代に設立された会社からのものがほとんど
    投融資百万円当たりの原油輸入量
    配当収入の経年推移
  3. 通産省による探鉱開発コストの比較結果(出融資先会社≒メジャー)
     → 比較期間や手法に差異 / コスト算出方法の共通化が必要
 (ポイント)
自主開発原油の輸入を確保する上で、投融資の重点化を検討することが必要
投融資効果の検証を進めることが必要
多額の公的資金に依存する事業であり、今後ともディスクロージャーの一層の推進が必要 
   
国家石油備蓄事業
国家石油備蓄事業を継続するには多額の補給金・交付金が必要
閣議決定に基づき、経費節減の努力を推進中
  1. 備蓄石油の購入及び基地建設のための借入金利息は、全額、国の補給金を充当
    → 平成27年度までに約 9,400億円、その後も、毎年約 370億円が必要
  2. 石油の保管費用は交付金を充当 / 平成8年度:1,760億円
  3. 国家備蓄基地での石油保管コストは、運転経費でみると、民間タンク借上げより割安
    (現時点で、全体的なコストは、減価償却費が大きくて、備蓄基地が割高)
  4. H7.2.24 、H9.12.26 閣議決定に基づく措置
    1.  基地利用料の算定方式の標準化(=経費の抑制)
    2.  備蓄石油の新規積み増しの抑制(=減価償却費の負担の軽減)
 (ポイント)
緊急時対策としての重要性を踏まえつつ、引き続き、事業の一層の効率的な実施に努めることが課題