新東京国際空港公団の財務調査結果の概要

通知先:運輸省
通知日: 平成11年5月12日

財務の構造

 
事業の概要
  1. 公団は、新東京国際空港の設置・管理を行う法人として、昭和41年7月に設立
  2. 運輸大臣が建設を指示(4,000m(現)滑走路、2,500m(平行)滑走路、横風滑走路等)→現滑走路が供用中
財務の概要
  1. 資産総額は 8,368億円。 収益・費用はそれぞれ1,400億円程度
  2. 損益の状況 →  赤字体質から出発し、次第に黒字となり、再び赤字化

  3. 費用・収益の推移
  4. 業務収入(空港使用料等)で利払いと元金償還が可能 → キャッシュフローの現状は健全

経営内容とその課題

 
最近の経営状況
公団の経営は先行投資・料金回収型
○  第2旅客ターミナルビルの供用開始により、全体の収支構造が大きく変化し、資産効率は低下
現在は、過去の利益の蓄積(「回収財源調整準備金」)を取り崩している状況
 
  1. 公団の事業は多額の投資を先行させ、これを料金で回収→損益は施設建設・供用の動向により影響
  2. (ア) 開港(昭和53年)〜昭和58年度 → 創業赤字の時期
     建設費用の利払い等が莫大
    (イ) 昭和59年度〜平成3年度  → 黒字基調
     航空需要の大幅増の一方、滑走路の整備の遅れ
    (ウ) 平成4年度〜平成8年度 → 再び赤字基調
     第2旅客ターミナルビル →「回収財源調整準備金」
     等の建設・供用開始(H4)  を取り崩し中
    財務の状況
  3.  第2旅客ターミナルビル等の建設
     → 収支構造が大きく変化
     → 最近の損益は悪化傾向
       (費用の伸び>収入の伸び)
    料金収入・施設管理費・減価償却費の伸び率の比較
  4. 現滑走路の利用は飽和状態、資産効率は大幅に低下

  5. 新東京国際空港発着回数の推移
    資産効率の推移
  6. 「回収財源調整準備金」を取り崩している現状
     → このままでは、公団の経営は再び赤字経営に
    回収財源調整準備金の繰入・戻入の状況
(ポイント) 
施設整備の遅れから、収支の好調な時期が先行したものの、今後の収支は厳しい
今後の経営見通しと課題
公団の経営見通しは、平行滑走路の完成・供用開始による収入増を見込む
需要の増加予測には不確定要素を含んでおり、予断をゆるさない状況
  1. 公団の経営見通し
    (ア) 平行滑走路がH12に完成 → H22年度発着回数:20万回
    (イ) 平成15年度ごろから収支は好転 → 累積欠損は解消傾向

    経営見通しの試算
  2. 今後の財務上の課題
    (ア) 空港使用料は、諸外国に比べ高い水準 → 空港使用料の動向が収支に影響
      (ドゴール空港の1.4倍)
      (ヒースロー空港の2.8倍)
    (イ) 需要予測
     公団の発着回数見通し/平成22年度・20万回
    → 滑走路1本当たりで、利用が飽和状態に近かった昭和62〜63年度の水準に相当
    航空機発着回数の推移
    最近の需要動向からみて増加予測には不確定要素 → 収入見通しの変動も予想される
    航空需要(空港利用旅客数)及び伸び率の推移
(ポイント) 
健全な経営の確保のため、収益動向に応じて、施設の整備・改修等を計画的に実施するなどの工夫が必要