中小企業退職金共済事業団の財務調査結果の概要
(現勤労者退職金共済機構中小企業退職金共済事業本部)

通知先: 労働省
通知日: 平成11年7月30日

財務の構造

 
事業の概要
  1. 事業団は、中小企業を対象とした退職金共済制度を運営する法人として、昭和34年7月に設立
    (平成10年4月、建設業・清酒製造業・林業退職金共済組合と統合し勤労者退職金共済機構が設立)
  2. 退職金共済制度は、事業団が中小企業者からの掛金を運用し退職金を支払う仕組み
     → 加入企業数:約41万社、加入従業員数:約280万人
  3. 国は事業団の事務費を補助し、加入者の掛金を助成
財務の概要
  1. 資産総額:2兆9,400億円
                     }累積欠損金(責任準備金の積立て不足)= 1,100億円
  2. 負債総額:3兆 500億円

事業内容とその課題

 
中小企業退職金共済事業
(1) 収支の状況
将来の退職金支払に備える「責任準備金」は法定の予定利率で積立て
○  一方、資産は運用利回りで形成されるため、「責任準備金」との関係で損益が発生
平成4年度以降継続的に当期損失が発生
H8に予定利率を引き下げたが運用利回りは更に低めに推移、当期損失の解消に至らず
  1. 予定利率(法定)と運用利回り(実際)には乖(かい)離
       予定利率<運用利回り→当期利益
       予定利率>運用利回り→当期損失
  2. 運用利回りは平成元年度以降低下
     S62 6.76 % → H8 3.84%
               ↓  
  3. 国は予定利率をH3 、H8に引下げ
    H3 6.6 % → 5.5%
     (対象は新規加入者のみ→引下げ効果小さい)
    H8 5.5% → 4.5%
     (全加入者に適用するも運用利回りは更に低めに推移→当期損失解消に至らず)
               ↓
  4. 累積欠損金が拡大 →H8 ▲ 1,100億円
    ※ 理論上積算されるものである責任準備金の積立て不足により直ちに退職金の支払が困難となるものではない。
    予定利率・運用利回りと当期損益の推移
(2) 事業をめぐる状況
新規加入者数が減少する一方、脱退者数は増加傾向
こうした状況が続けば、運用資産が減少し運用益の低下のおそれ
  1. 新規加入者数 H2 40.3万人(ピーク)→ H8 34.9万人
    脱退者数   H2 28.7万人 → H8 34.8万人
  2. 掛金等収入と退職金等給付金の差は縮小
    H4 935億円(ピーク) → H8 248億円
                 ↓
 ○ こうした状況が続けば、運用資産が減少し運用益低下のおそれ

新規加入者・脱退者数と掛金・給付金の差
(3) 累積欠損金の解消方策
累積欠損金の増加抑制のため、国は平成11年度から予定利率を4.5%から3.0%に引下げ
これにより累積欠損金は徐々に減少するものの平成15年度末でも約1200億円残る見込み
 引下げ後の損益見通し(労働省推計 H10.1)
 当期損失はH11に解消 (以降連年当期利益発生)
              ↓  
 累積欠損金も徐々に解消されるもののH15末でも約1,200億円が残る見込み
               ↓
 長期的には累積欠損金の解消を図らなければ将来の退職金に与える影響に懸念

予定利率をH11から3%に引き下げた場合の累積欠損金等の推移
(ポイント) 
 今後、累積欠損金については加入者間の公平性に配慮しつつ、中長期的に解消する必要
 (予定利率の機動的な見直し、運用利回り向上のための資産運用の一層の効率化等)