環境事業団の財務調査結果の概要

通知先: 環境庁
通知日: 平成11年7月30日

財務の構造

 
事業の概要
  1. 事業団は公害防止のための施設の建設譲渡等を行う法人として、昭和40年に設立
    平成4年「環境事業団」に改組(∵公害防止関係業務に環境保全関係業務を追加)
  2. 自ら公害防止施設等を建設し譲渡する建設譲渡事業、施設設置資金を企業等に融資する融資事業
    地球環境保全のための民間活動を支援する地球環境基金事業の3事業を実施
財務の概要
  1. 資産総額4,888億円のほとんどが、割賦譲渡元金等(建設譲渡事業)と貸付金(融資事業)
    → 両事業の財源は、財投からの借入金。費用と収益の差は交付金で補てん(損益ゼロ)
  2. 地球環境基金は政府出資と民間等の出えん金により造成。運用収入で民間団体への助成等を実施

事業運営とその課題

 
1 建設譲渡事業及び融資事業
(1) 事業の現状
地方公共団体向けの割賦譲渡元金や貸付金については、健全な状態(元利償還の延滞はない)
○  民間企業への建設譲渡事業の延滞債権及び延滞債権に結び付くおそれのある債権は、近年増大傾向
○  民間企業向け貸付金の延滞債権及び延滞債権に結び付くおそれのある債権も、近年増大傾向
 → 延滞債権の4分の1が、5年以上の延滞債権(回収が相当困難)
  1. 民間企業向け割賦譲渡元金(建設譲渡事業)の延滞債権等
     ・延滞債権(元本が6か月以上延滞している割賦譲渡元金)
       0(H5) → 66億円(H8)
     ・延滞債権に結び付くおそれのある債権
       利息未収債権(利息が未収となっているもので、そのほとんどは元本の償還が猶予されている。)
        518億円(H5) → 660億円(H8)
      償還猶予元本(利息は支払われているが元本の償還が猶予されているもの)
        173億円(H5) → 104億円(H8)
    民間企業向け割賦譲渡元金に係る延滞債権等の推移
  2. 民間企業向け貸付金(融資事業)の延滞債権等
     ・延滞債権 (元本が6か月以上延滞している貸付金)
      19億円(H5) → 31億円(H8) →うち8億円(26%)は5年以上の延滞
     ・延滞債権に結び付くおそれのある債権
       利息未収債権(利息が未収となっているもので、そのほとんどは元本の償還が猶予されている。)52億円(H5) → 91億円(H8)
       償還猶予元本(利息は支払われているが元本の償還が猶予されているもの)          16億円(H5) → 58億円(H8)
     民間企業向け貸付金に係る延滞債権等の推移民間企業向け貸付金の延滞債権の期間別内訳額

(2) 財務運営上の課題

延滞債権の状況からみて、貸倒引当金の計上が不十分
延滞債権に結び付くおそれのある債権も相当額存在することに留意する必要あり
担保の多くは環境保全施設そのもの → 抵当権の実行は政策目的と矛盾
  1. 貸倒引当金(=建設譲渡事業、融資事業の回収不能に備える資金)の状況
     ☆ 計上額 7.7億円 ( H8: 貸倒引当率 0.184% cf 上限引当率1.5%)
        建設譲渡事業の延滞債権 66億円 ←→ 引当金の 8.6 倍
        融資事業の延滞債権   31億円 ←→ 引当金の 4 倍
     ☆ 融資事業に係る5年以上の長期延滞債権(8億円)すら引き当てられない状況
     ☆ 延滞債権に結び付くおそれのある債権額(建設譲渡事業+融資事業) = 913億円
  2. 担保の多くは、環境保全施設そのもの → 抵当権の実行による資金回収は政策目的と矛盾

(ポイント) 

債権のリスクの軽減や政策コストを勘案した債権管理方策の検討が必要
貸倒引当金計上額の充実の検討が必要

2 地球環境基金事業
基金運用収入では一般管理費も賄えず、運営を国庫補助金に依存している現状
公的資金の投入方法について見直しの余地

○ H8の基金運用収入 1.8億円
    ↑
    | →国庫補助金で補てん(8億円)
    ↓  費用 9.8億円  (事業費7.5億円、一般管理費2.3億円)
基金運用収入等の推移
(試算) 運用収入だけで平成8年度並みの費用を賄うためのシミュレーション
i) 現行の基金積立てペースなら 18年間必要 → 公的資金投入額 250億円
ii) H8の公的資金投入量の範囲で出資金を増額投入    
       15年で積立て完了+3年間の運用益 → 公的資金投入額235億円

(ポイント)

国庫補助金依存体質からの脱却に向けた措置の検討が必要