郵政事業に関する行政監察結果
−施設整備、資材調達を中心として−(要旨)

 

勧告日:平成11年8月24日
勧告先:郵政省
実施時期:平成9年12月〜11年8月

監察の背景事情等
 郵政三事業に係る施設整備、資材調達については、郵便局舎等の施設建設及び用地の取得に約 1,440億円が、また、資材調達のために約 5,892億円(いずれも平成9年度実績)が投じられており、事業全体の適切な運営を図る観点から、業務運営の効率化、合理化を推進することが課題
 本監察は、このような状況を踏まえ、郵政事業における施設整備及び資材調達に関する業務運営の実態を調査
 調査対象機関:郵政省、地方郵政局等(10)、郵便局(159)等

主な勧告事項
1 施設の整備等
(1)

郵便局設置形態の在り方の見直し

 平成10年3月末現在、全国に2万 4,693局設置。利用者需要等に対応して新設・改廃。平成4年度から9年度までに、普通郵便局は17局新設、3局廃止、特定郵便局は 447局新設、79局廃止(いずれも無集配局(無特局))、簡易郵便局(簡易局)は 110局新設、102局廃止、取り分け無特局が大きく増加。
 平成2年、簡易郵便局法の改正により簡易局を設置できる場合が拡大

   
 以下の理由から、郵便局の設置に当たっては、簡易局で需要にこたえられる場合は簡易局で対応することが合理的
   無特局と簡易局はいずれも窓口業務のみを行う点において類似のもの
   簡易局の取扱業務の範囲は近年拡大され、利用者に対し無特局とほぼ同様のサービス提供が可能(簡易局で扱えないサービスの例:料金後納郵便物の引受け等)
 

 簡易局は無特局と比べ、郵便局経営面で経済的

 住宅団地内、大学病院内、大都市部のビル内等に設置された無特局の中には、立地条件上、利用者の類型が限られ、また、簡易局では取り扱えない業務についても近接してその取扱局があるなど、簡易局設置の検討が可能であったと認められる実態あり(6事例)
 利用人口が著しく減少し設置効果が低下している無特局については、必要に応じて簡易局の代替設置の措置を講じつつ、廃止しているが、辺地等においてなお同様のものを存置している例あり(5事例)
勧告要旨

 郵政事業の経営の効率化を図る観点から、次の措置を講じること。

  1. 郵便局の新設に当たっては、想定される利用形態、取扱業務量等、地域特性を十分勘案しつつ、簡易局の設置で需要にこたえられる場合は、簡易局で対応すること。
  2. 既定の方針に基づく無特局の見直しについては、利用状況等を全国的かつ定期的に把握し、計画的な推進を図ること。

  (2)

用地取得の効率的実施及び未利用財産の処分促進

  •  平成9年度末現在、約 870万m2(台帳価格約3兆 803億円) の用地を保有
  •  平成9年度は、全国で58件、24万 4,940m2、約 292億円の用地を取得。一方、89件、4万 7,370m2を売払処分
  •  郵便局舎は、通常、用地取得の翌々年度に新増築等に着手
  •  未利用財産の売払処分については、売払予定財産に区分した後、まず地方公共団体に取得希望を照会。取得希望がない場合、一般競争入札を実施
   
 郵便局舎の増築用地が取得後5年間にわたり暫定駐車場としての使用のみ、郵便局舎の新設用地が取得後4年間にわたり使用されず、局舎建設の確度が低い状態での取得であったと認められるものあり(5事例)
 地方公共団体から取得希望なしとの回答後、速やかに一般競争入札を実施していないもの等あり(4事例)
勧告要旨

 用地取得の効率的実施及び国有地の有効利活用を図る観点から、次の措置を講じること。

  1. 用地取得に当たっては、施設建設の緊急性、優先性が高く、利用の計画が明確になっているものその他先行取得の合理的な理由があるものに限定して行うこと。
  2. 売払予定財産に区分した土地については、地方公共団体からの取得希望のないものは所定の手続に沿って一般競争入札に付するなど、処分の促進を図ること。

2 資材調達、施設建設等に係る契約
 
  •  会計法令等により、国が行う契約は一般競争に付することが原則。指名競争又は随意契約は限定された場合においてのみ可能(契約の性質又は目的が競争を許さない場合、契約の予定価格が一定金額を超えない場合等)。また、指名競争に付するときは、競争に参加する者をなるべく10人以上指名
  •  省独自の仕様等を設定した特別仕様の物品については、通達により、仕様を見直し、市販品の採用を推進
 

 物品買入れ、役務、工事の各契約において、契約金額等からみて競争に付すべきものを随意契約にしているもの等あり(18契約)

 指名競争契約の指名業者数について、10業者以上の指名が可能であるにもかかわらず、常に3業者又は5業者しか指名していないものあり(10契約)
 本省が資材の調達計画を策定するに当たり、地方郵政局等の郵便局への交付実績を考慮することなく所要数を算出しているため、地方郵政局等への交付数が過大となり、大量の廃棄処分が行われているものあり(1調達)
 地方郵政局で調達した品目のうち38品目について、すべての品目を市販品で調達している局がある一方、その半数以上を特別仕様で調達している局あり
勧告要旨

 資材調達、施設建設等に係る契約の競争性、透明性及び資材調達の効率性等の一層の確保を図る観点から、次の措置を講じること。

  1. 契約に当たっては、可能な限り競争に付するものとし、その実効を上げるよう努めること。
  2. 指名競争契約については、予決令に定める数の業者の指名を励行すること。
  3. 資材の調達に当たっては、地方郵政局等の郵便局への交付実績を反映した需要見込みによるなど、調達計画を見込数量と実績との乖離を回避する合理的なものとすること。
  4. 特別仕様としている物品について、既往通達の趣旨を徹底し、市販品採用の一層の拡大を図ること。

3 業務の実施体制
(1)

資材調達業務要員の合理化

 平成10年度末現在、 527人(本省 116人、地方郵政局等 411人) を配置し、計画部門、契約部門、検査部門などに分かれて資材調達業務を実施

   

 契約部門及び計画部門において、職員1人当たりの業務量に地方郵政局間で格差

(例)契約部門:職員1人当たりの契約件数に郵政局間で最大37%の格差

職員7人の郵政局で1人当たりの契約件数 520件( 100)
職員9人の郵政局で1人当たりの契約件数 326件( 63)

 法令で認められ、他局では品質検査を省略している物品について、依然としてこれを行っている地方郵政局あり(7品目)
 本省等では広く民間委託している品質等検査業務について、すべて職員が自ら実施している地方郵政局あり(7郵政局)
勧告要旨

 資材調達業務の効率化を図る観点から、次の措置を講じ、要員の合理化を図ること。

  1. 契約部門及び計画部門の要員配置を見直し、その縮減を図ること。
  2. 検査部門について、現行業務を見直し、品質検査の省略についての取扱いを統一しつつその拡大を図ることにより、検査業務の簡素合理化を推進するとともに、検査業務の民間委託について、未実施の地方郵政局等における導入を始めとして、積極的に推進すること。

  (2)

施設整備業務要員の合理化

  •  平成10年度末現在、 434人(本省83人、地方郵政局等 351人) を配置し、郵便局舎等国有施設の整備(新増築、既存施設の改修など)に係る設計、工事監理等の施設整備業務を実施
  •  官庁営繕業務について、民間委託を促進するとの閣議決定(昭58.5.24)あり
   
 調査した10地方郵政局等における郵便局舎等の新増築に係る整備実績は、平成4年度と8年度とを比較すると、施設数で40%、延べ床面積で約28%それぞれ減少、一方、この間の関係要員数の減少は約16%。地方郵政局の中には、新増築業務に係る要員1人当たりの施設数でみると半減しているものあり
 郵政省は、基本設計業務について職員自ら行うことを原則とし、民間委託は、延べ床面積が 500m2未満である国有特定郵便局の局舎の新築工事に限定しているが、面積規模等委託対象範囲の拡大が可能
 工事監理業務のうち、施工業者への設計意図の伝達業務等の補助業務については民間委託が可能
勧告要旨

 施設整備業務の効率化を図る観点から、基本設計業務の民間委託の対象範囲を拡大し、工事監理補助業務について民間委託を導入するとともに、要員の合理化を図ること。