国立病院・療養所に関する行政監察結果(要旨)


勧告日:平成11年10月29日
勧告先:厚生省
実施時期:平成9年12月〜11年10月

<監察の背景事情等>

[国立病院・療養所の概要]
 
国立病院・療養所は、昭和20年に旧陸海軍病院等を引き継いで発足
平成11年4月1日現在、国立病院82施設、国立療養所140施設、国立高度専門医療センター4施設の計226施設。病床数では、約8万床と全病院の5%
[国立病院・療養所の経営状況]
 
経常収支率(経常収入/経常支出):平成9年度 国立病院103%、国立療養所93%
国立病院特別会計予算規模:平成9年度 1兆871億円
  同特別会計に対する一般会計からの繰入率:平成9年度 16.6%(繰入額1,802億円)
 厚生省は、国立病院・療養所の統廃合等による再編成を推進中。平成11年3月には、対象施設の追加等再編成計画を見直し
 本監察は、国立病院・療養所の経営の合理化・効率化、業務運営の適切化等の状況を調査し、関係行政の改善に資するため実施
 調査対象機関:厚生省、国立病院(24) 、国立療養所(28) 、関係団体、事業者等

 

<勧告事項>

 経営管理の徹底

 
 調査対象病院(52)の平成8年度の経常収支率は、国立病院104%、療養所92%
 このうち100%未満(赤字)のものが国立病院4施設、療養所21施設の計25施設
 各施設では、経費節減、収入増加等に関する経営改善計画を作成することとなっているが、赤字の施設の中には経営改善計画に自らの経営管理指標からみた課題や改善方策が積極的に盛り込まれていない例あり(6事例)
 
(注)経営管理指標 :厚生省が各施設の経営状況の判断に用いるものとして各施設に示している指標(例:病床利用率、人件費率)
 約2割の施設で経営改善計画(収支改善の目標額)が未達成。その中には、計画策定時の検討が不十分な例(2事例)、計画達成努力が不十分な例(2事例)、達成状況が未把握の例(6事例)あり
 経営改善委員会(各施設に設置され経営上の問題を検討する組織)が実質的な検討を行っていないなど形骸化している例あり(3事例)
勧 告 要 旨

 国立病院・療養所に対し

1. 経営管理指標等からみた経営上の課題や改善方策を反映した事項を、経営改善計画に積極的に盛り込ませること。
2. 経営改善委員会等を活用して妥当な経営改善計画を策定させるとともに、計画達成状況を定期的に把握・分析させること。

 

 病院運営の効率化

 
(1)  職員配置の見直しと業務委託の推進
 医師、看護婦等の職員1人当たりの業務量が他の施設に比較して極めて少ない例あり(23事例)
 
内科医師数が同規模の施設で、医師1人当たり患者数が 4.2人:14.0人(約3倍)
 業務量の大幅減少にもかかわらず職員配置数を見直していない施設あり(3事例)
 
臨床検査部門職員1人1日当たり検査件数が平成2年度86.5件から8年度48.0件(44%減)
 技能・労務職員の採用抑制方針にもかかわらず、業務委託の可能性を十分検討せずに採用抑制対象職種を採用している例あり(4施設)。また、看護助手として採用した職員を洗濯等他の採用抑制対象職種の業務に従事させているものあり(14施設)

 

勧 告 要 旨
1. 各部門別の業務量を的確に把握し、業務量に応じた適正な職員配置とすること。他の施設に比較し業務量が少ない施設については、当該部門の定員を削減すること。
2. 国立病院・療養所に対し、採用抑制対象職種の欠員補充の抑制を徹底し、業務委託を積極的に行わせるとともに、看護助手を他の採用抑制対象職種の業務に従事させないこと。
   
 
(2)  病床利用の効率化
 経営管理指標では、病床利用率80%以下の場合病棟運営の見直しが必要とされているが、平成6年度から8年度の3年度とも一般病床の病床利用率80%以下の施設が52施設中6施設
勧 告 要 旨
 国立病院・療養所に対し病床利用率が低い病棟の統廃合を行わせること。
   
 
(3)  政策医療に係る病棟運営の効率化
 高度先駆的医療等国の医療政策として国立病院等が担う医療(政策医療)を行う病棟の収支が赤字の場合、経営努力を前提に一般会計から繰入れを行うが、赤字となっている政策医療病棟の中には、病床利用や職員配置の効率化が図られていないなど、適切な病棟運営が行われていないものあり(4事例)
 
病床利用率は85%以上が望ましいが、結核病棟の平均は78%。中には33%の例あり
人件費率(人件費/収入) は60%以下が望ましいが、脳血管障害病棟の大半は70%以上
勧 告 要 旨
 政策医療に係る病棟について、病床利用の効率化、職員配置の適正化等を推進すること。
   
 
(4)  医療機器の整備・利用の効率化
 MRI等 1,000万円以上の高額医療機器323機器のうち29機器(9%)は稼働実績が稼働見込みの70%未満と低調
勧 告 要 旨

 国立病院・療養所に対し

1. 医療機器の整備は、需要動向を的確に把握して行わせること。
2. 稼働実績の低い医療機器は、管理換え等を行わせること。

 

 会計・契約事務の適正化

 
 経営管理指標では、査定率(保険診療減額査定額/実保険診療額×100)の目標値は0.4%以下とされているが、52施設中21施設が0.4%以上で、そのうち12施設が0.6%以上と高率
 52施設の診療費の収納未済金累積額(平成8年度末現在)は、合計10億8,000万円で1施設当たり2,000万円。督促整理簿が未整備、督促が不十分、債権の時効中断措置が不適切な例あり(4事例)
 52施設では、競争契約の対象となる金額以上の契約件数中43.0%が随意契約。また一般競争契約の対象となる金額以上の契約件数中90.1%が指名競争契約又は随意契約
 指名競争契約や随意契約の実施例の中には、工事実績がある者に限定する必要がないもの等一般競争契約の余地がある例(6事例)や最新の業者名簿に基づかず指名業者を選定している例(1事例)あり
 近隣施設への価格照会、物価資料の情報収集を行わず、業者の見積価格や前年度実績価格をそのまま契約時の予定価格としている例あり(3事例)
勧 告 要 旨

 国立病院・療養所に対し

1. 診療報酬請求の査定減の原因分析を行わせ、査定減の発生防止に努めさせること。
2. 収納未済金について、督促整理簿の整備など管理を徹底させるとともに、計画的な督促を励行させること。
3. 指名競争契約、随意契約を行う場合は、その理由等を精査し、合理的なものに限定させること。また、予定価格の算定に当たっては、近隣施設の契約状況の把握、物価資料の収集を行わせること。

 

 その他の勧告事項

 
 経営改善推進費(経営改善効果を上げた施設に配分)の配分の職員への周知
 厚生省の取りまとめる経営管理指標の活用の促進(施設へのデータ送付時期の早期化)
 経営・監査指導等の実効の確保