住宅・都市整備公団の財務調査結果の概要

(現都市基盤整備公団)

通知日: 平成11年12月27日
通知先: 運輸省、建設省

財務の構造

事業の概要

 公団は、住宅・宅地の供給等を行う法人として、昭和56年に設立(平成11年10月、公団を解散して都市基盤整備公団を新設)

(1) 住宅・都市整備事業  大都市地域において、住宅・宅地の安定供給と都市整備とを一体的に実施
(2) 鉄道・軌道事業  千葉ニュータウンにおいて、同ニュータウン開発と一体的に実施
財務の概要
(1) 住宅・都市整備事業  資産総額は15兆8,450億円、債務残高は13兆6,619億円
(2) 鉄道・軌道事業  141億円の債務超過。累積欠損は161億円、債務残高は290億円

経営内容とその課題

技術協力事業
(1) 事業をめぐる状況
民間住宅市場の成長等により、公団住宅のシェアが低下
○  バブル期後、民間の価格動向に対して逆行等する中で、公団価格の競争力が低下
1.  民間住宅市場の成長等により、    
S34
 
H8
  公団住宅のシェアは、住宅事業発 分譲住宅  15.3% 0.6%
  足当初に比べ大幅に低下   賃貸住宅  9.0% 2.9%

公団分譲住宅のシェア

公団賃貸住宅のシェア

2.  民間住宅の譲渡価格及び家賃は、H2をピークに地価が大幅に下落したために低下。公団住宅の譲渡価格及び家賃は、建設・造成原価上昇の影響で、H2以降も上昇あるいは低下率が緩やか
  → 公団価格の競争力が低下
3.  このような中、公団の役割が見直し → 分譲住宅は原則撤退、賃貸住宅は事業を重点化

(2) 販売実績等の不振と投資の拡大等
 公団の分譲住宅・分譲宅地の譲渡実績は急激に低下
 地価下落及び支払金利の累増で、保有用地の収益力が悪化。保有用地の回転期間が長期化しているため、金利負担の増大による収益力の更なる悪化が懸念
 債務性資金による投資の拡大とともに、債務残高が増大。債務の返済能力が低下しているため、償還の長期化が懸念
1.  分譲住宅及び分譲宅地の譲渡実績が低下(H2比:63%、40%)
  → 未契約・未募集の分譲住宅が増加
    (H2:0戸 → H8:2,461戸)

譲渡実績の推移

2.  地価の下落と支払金利の累増
  → 用地の保有経費が保有利益を上回る状況
   ※三大都市圏の宅地地価と財投金利を基に試算
 
  保有用地(工事中及び未使用の用地)の完成までに要する期間(回転期間)は長期化
 

→ 金利負担の増大で、収益力の更なる悪化
   ※回転期間:保有用地の在庫が当期完成資産化分の何倍あるかをみたもの

 
H2
H8
住宅用地  9年 16年
分譲用地  7年 18年

購入時期別の収益力状況

3.  譲渡差益等を収益と、譲渡差損等を費用とみなした、実力ベースの損益の状況が悪化
  (H2:1,101億円 → H8:▲210億円)
  ※損益計算書上、譲渡差益等は準備金繰入として費用計上し、譲渡差損等は準備金戻入として収益計上している。準備金残高はH3をピークに減少(H8:4,103億円)
   
4.  投資額が増加する中、新規借入れも増加
  → 債務残高はH2の1.3倍に増大

債務残高等の推移

5.  債務の返済能力が低下してきており、償還の長期化が懸念
  → 債務の返済能力を、債務残高に対する手持ち資金の割合(キャッシュ・フロー比率)でみると、H2の約12分の1に低下(H2:1.37% → H8:0.11%)
  ※手持ち資金:実力ベースの損益に現金の支出を伴わない費用である減価償却費及び引当金を足したもの

(ポイント) 

 事業の重点化に伴い、継続して保有する意義が薄れた用地の早期処分が必要
 長期の収支予測等を立てつつ、債務の償還計画を策定し、計画的な償還を進めることが必要
鉄道・軌道事業
 開業以来、当期損失を計上しているため、累積欠損が逓増。債務超過の状態
 収入を左右する駅利用圏内の入居実績は入居計画を大幅に下回っており、債務超過からの脱却も懸念
1.  業務収入では支払利息も賄えず、経常的に当期損失を計上
  → 累積欠損が逓増。債務超過

当期損失と累積欠損の推移

2.  平成9年度改定の長期収支計画では、27年度には欠損金が解消、31年度には償還が完了の予定
3.  平成9年度改定の長期収支計画における初年度の新規入居実績は、入居計画の54.2%(H9)。これまでの長期収支計画の下でも、入居実績は入居計画を下回る状況
  → 債務超過からの脱却も懸念

新規入居実績と新規入居計画

累計入居実績と累計入居計画

(ポイント) 
 償還が確実なものとなるよう、実績を踏まえつつ、現状に即した長期期収支計画を策定することが必要