中高層分譲共同住宅の管理等に関する行政監察結果(局長通知)
(要旨)


通知日:平成11年11月16日
通知先:建設省
実地調査時期:平成10年8月〜11月

監察の背景事情等

 中高層分譲共同住宅(以下「分譲マンション」という。)は、地価水準の高い都市地域の需要等を背景にして増加
 
   分譲マンション戸数:平成10年 351.9 万戸(昭和46年の19.7倍)
   持家に占める分譲マンションの割合:全国平均10.0%、 大都市圏17.5%
   分譲マンションの管理は、区分所有者(購入者)で構成する管理組合が管理規約を策定するとともに、一般的に管理組合と管理業者が管理委託契約を締結して実施
 管理委託契約は、分譲マンションの販売時に宅建業者によって選定された管理業者が作成した案を管理組合が承認し締結するのが一般的
 建設省は、累次の監察結果等をも踏まえ標準管理委託契約書の周知、管理業者登録制度の創設等の施策を実施
 このような状況を背景として、管区行政監察局及び行政監察事務所(18局・所)において、分譲マンションの管理の適正化、区分所有者の利益保護等に資する地方監察を実施し、調査結果を公表するとともに、本庁において分譲マンションに係る諸課題の改善方策を調査・検討
 調査対象機関:建設省、都道府県、関係団体等

主な通知事項

管理業者業務の適正化

 
 建設省は、分譲マンション管理業の健全な発達による分譲マンションにおける良好な住生活の確保を目的として、中高層分譲共同住宅管理業者登録規程(昭和60年建設省告示第1115号。以下「管理業者登録規程」という。)等を定め、管理業者登録制度を創設(平成10年度末 501業者)
   
 

<登録管理業者の受託管理業務等が不適切>

 
 標準管理委託契約書では、事務管理業務(管理費の出納、各種契約の代行業務等)は根幹的な業務であるため再委託できない事務とされているが、管理委託契約書に再委託禁止規定のないものや再委託できることとしているもの(171登録管理業者との間の管理委託契約のうち68契約(39.8%))
 標準管理委託契約書では、管理費等の収納状況を管理業者が管理組合に定期的に報告することとされているが、励行していないもの(171登録管理業者中11登録管理業者(6.4%))
 管理業者名となっている修繕積立金の預金口座名義を管理組合名に変更するよう求めたが、これに応じないもの(171登録管理業者中4登録管理業者(2.3%))
 上記の事例等を理由として、管理組合が管理業者の変更を行ったもの(171登録管理業者と管理委託契約している管理組合のうち19組合(11.1%))
 しかしながら、管理業者登録規程において、不正又は著しく不当な行為を行った登録管理業者の登録を消除する規定は漠然としたものであり、同規定を運用するための基準もないため、登録の消除規定は実効あるものとなっていない。また、登録管理業者の業務の実施状況が建設省に伝達される仕組みも構築されていない。
   
 

<登録管理業者情報の提供や管理費等の預託金保護対策が不十分>

 
 登録管理業者情報の閲覧場所が限定(建設省内1か所)されているなど登録管理業者情報の入手が困難
 修繕積立金を除く管理費等は、管理業者の口座に保管されるのが一般的であり、業者の倒産のため管理費等を管理組合が放棄せざるを得ない状況となっているものあり
 (社)高層住宅管理業協会が行う管理費等保証事業の加入業者は、登録管理業者の半数(501業者中246業者)にとどまる。また、閲覧対象の登録申請書では、登録管理業者の管理費等預託金の保護対策の有無が把握できない。
通知事項要旨
1.  管理業者登録規程の「登録の消除」の規定が実効あるものとなるよう見直すとともに登録の消除基準を策定し、登録の消除を的確に行うこと。
 また、登録管理業者に関する情報を的確に把握する仕組みを構築すること。
2.  登録管理業者に係る情報の閲覧場所を拡大するとともに、登録管理業者情報についてインターネットにより一般への提供を行うこと。
3.  管理費等預託金の保護対策の有無等を記載する欄を管理業者登録規程に基づく登録申請書に設けること。

 

重要事項説明等の充実

 
 宅建業者は、分譲マンションの販売時に、管理規約案が策定されている場合には、購入予定者に対して管理費の額等一定事項を記した書面を交付して重要事項として説明を行う義務あり(宅建業法第35条第1項)
 宅建業者は、売買契約に分譲マンションの瑕疵を担保すべき責任を定めた場合には、購入予定者に対してその内容を記した書面を交付する義務あり(宅建業法第37条第1項)
   
 

<宅建業法上の義務付け事項以外であっても購入者に不利となる管理規約の規定あり>

 
 宅建業者は未販売住戸の修繕積立金を負担しなくてもよいとする規定が342管理規約中7規約(2.0%)
 宅建業者が未販売住戸の管理費を負担するのは、年間を通じ管理委託費等の支出が管理費収入を超過することとなった場合の不足分のみとする規定が6規約(1.8%)
このほか、宅建業者が近接地に中高層建物を建築する際、区分所有者の異議申立てができないとする購入者の権利を制限する規定もあり
 

<アフターサービスについては、宅建業者から購入者に対して書面が未交付>

 
 分譲マンションの購入者が宅建業者からアフターサービスとして一定期間内は無償で補修を行う旨の説明を受けたにもかかわらず(212購入者)、その内容を記載した契約内容書面の交付を受けておらず(7購入者(3.3%) )、中には補修義務の有無について宅建業者と購入者との間でトラブルが生じているものあり
通知事項要旨
1.  管理規約案のうち、区分所有者に金銭的な負担増をもたらすおそれのある事項等区分所有者が不利となる規定については、法令上、宅建業者が重要事項として説明すべき事項として位置付けること。 
2.  無償補修義務を定めるアフターサービスについては、契約内容書面として、宅建業者から購入者に的確に交付されるよう指導を徹底すること。

 

標準管理委託契約書の見直し等

 
 昭和57年1月に住宅宅地審議会は、管理組合と管理業者との間で交わされる管理委託契約の適正化を図るため、そのモデルとして、標準管理委託契約書を答申
 建設省は、管理組合、管理業者等に標準管理委託契約書を周知することにより、その活用を推進しているところ
 標準管理委託契約書では、修繕積立金の預金口座名義は管理業者名義でも可能と規定されているが、建設省は、管理組合理事長名義とするよう文書により管理業者団体等を指導
   
 

<標準管理委託契約書の周知が不十分>

 
 標準管理委託契約書の存在を承知していないとする管理組合が269管理組合中198組合(73.6%)(平成4年調査では36.4%)
 

<修繕積立金の預金口座名義が管理組合名義となっていないものあり>

 
 修繕積立金の預金口座名義は、269管理組合中17組合(6.3%) で管理業者名義となっている。このうち4管理組合では、管理組合への名義変更を求めているが管理業者が応じていない。
通知事項要旨
1.  標準管理委託契約書の一層の周知を行うこと。
2.  標準管理委託契約書について、修繕積立金の預金口座名義を管理組合の理事長名義とするよう規定内容の改正を行うこと。