運輸施設整備事業団の財務調査結果の概要

 

通知日: 平成11年12月27日
通知先: 運輸省

財務の構造
 事業の概要
 
1.  船舶整備公団(S34設立)と鉄道整備基金(H3設立)とを統合し、平成9年に設立
2.  船舶の共有建造業務、旧国鉄等債務等の償還業務等を実施

 財務の概要
 
1.  資産総額(H8末)は8兆9,673億円(新幹線鉄道施設の割賦譲渡元金 8兆2,245億円、共有建造業務資産 5,612億円など)
2.  船舶の共有建造業務の主な財源は債務性資金(H8:借入金 185億円、債券 185億円)
3.  旧国鉄等債務等の償還業務の財源はJR本州3社からの新幹線割賦譲渡収入

事業内容とその課題
船舶の共有建造業務
 
 実質的な損益は近年悪化する傾向
 引当金は各年度の収支差相当額をそのまま計上(H9:16.2億円) → リスクに連動していない
 未収金は近年増加。その貸倒リスクは、H9末残高97.9億円に対し16.6億円程度(当庁推計)
 
1.  共有建造業務のスキーム
 
 事業団が負担した費用は、共有期間中に船舶使用料として回収するとともに、共有期間満了後に残存持分を譲渡することにより、全額回収するスキーム
   
2.  損益の状況
 
 基本的に順ざや(H9:事業利回り5.28%>調達利回り4.85%)
 実質的な損益は近年悪化する傾向
 実質的損益がマイナスであっても、引当金戻入額で相殺
 → 損益計算書上、収支は均衡
 引当金は各年度の収支差相当額をそのまま計上

実質的な損益と引当金戻入・繰入額の推移

3.  未収金残高と貸倒リスク
 
 回収と貸倒処理により未収金の処理が進む一方、新規発生額は近年増加傾向
 

船舶使用料未収金残高の推移

未収金の回収・貸倒状況

  (注) 「貸倒額」は、マイナス表示した。
 
 現状では、貸倒リスクは引当金とほぼ均衡。
 H9末未収金の貸倒リスク 16.6億円 ←→ H9末引当金 16.2億円
   
4.  未収金残高は増加傾向にある一方、近年実質的な損益の悪化により引当金の計上額は下がらざるを得ない状況
 
未収金残高 H7末 : 74.3億円 H9末 : 97.9億円
引 当 金 H7末 : 24.1億円
H9末 : 16.2億円

(ポイント)

 引当金は、将来発生が予測されるリスクに備えるべきものであることから、今後もリスクに見合った引当金の計上が必要

 債務等の償還業務
 
(1)  債務償還の仕組み
 
 債務は、JR本州3社から受け取る新幹線割賦譲渡収入で償還する仕組み
 平成3年の新幹線鉄道施設譲渡計画等で、債務償還の基本スキームが定まっている。

償還財源と債務償還の関係

(2)  旧国鉄等債務等の償還
 
 旧国鉄等債務等の償還財源として受け取る各年の新幹線割賦譲渡収入額は、前年度までの借換債務を元本に含めて毎年度再計算され決定
→ 現行のスキームを維持すれば、償還は順調に完了
   
(3)  対清算事業団債務の償還
 
1.  償還及び無利子貸付け実施のスキーム
 
 新幹線割賦譲渡収入の受取期間(25.5年)と清算事業団への債務の償還期間(60.0年)との期間差から生じた手元資金を活用して、常磐新線等を対象に無利子貸付等事業を実施

対清算事業団債務の償還

2.  事業は、対清算事業団債務の償還が可能であることが前提
 
  → 毎年度予算作成時に運輸省及び事業団が債務の償還確実性を検証
 
   
3.  平成11年度以降も、常磐新線等の整備への無利子貸付けを継続

(ポイント)

 対清算事業団債務の確実な償還を進めるためには、現行のスキームによる債務償還のための収支バランスが失われないよう留意する必要