森林開発公団の財務調査結果の概要

(現緑資源公団)

通知日: 平成11年12月27日
通知先: 農林省

財務の構造
 法人の概要
 

 公団は、奥地森林地域での林道開設及び水源林造成を行う法人として、昭和31年4月に設立(平成11年10月に緑資源公団に改称)

1. 大規模林道事業は、林道網の基幹部分となる林道(2車線)の開設・改良を実施
2. 水源林造成事業は、造林地所有者等と分収造林契約を締結し水源かん養保安林の造成を実施
   

 財務の概要
 
1. 大規模林道事業 →資産総額2,689億円。財源は補助金と地方及び受益者負担分の財投借入金
2. 水源林造成事業 →資産総額7,167億円。財源は出資金(2/3)及び財投借入金(1/3)

経営内容とその課題
 大規模林道事業
 
 借入金の償還財源である負担金等は順調に徴収→現状のキャッシュフローは健全
 全体として投入事業費に対してどの程度の事業効果が見込まれるか検証できる状況にない
 大規模林道事業を取り巻く社会経済情勢には大きな変化
   
 
1. 借入金の償還財源である負担金等は、公団が作成した徴収計画どおりに徴収
2. 事業効果については、
 

 実施計画上は、木材生産上の効果は一定の効果が見込まれている 。

→ 全32路線全体で、 投入事業費累計:4,200億円 (受益者負担累計:200億円)
  木材生産上の効果:1,600億円(H8末,当庁試算)

しかし、他産業・地域の振興等の効果は、内容が明らかにされておらず、不明
また、環境へ与える影響や環境保全に要するコストについても分析が必要
3. 事業開始時から現在に至る間に、自然環境保護への意識の高まりや森林施業の方向が変化
(人工林の造成を主としたものから多様な森林整備を目指す方向)
  → 大規模林道事業再評価では、3路線3区間の事業の中止及び休止を決定(H10.12)
   
(ポイント)
 自然環境保護への意識の高まりや森林施業をめぐる情勢の変化を踏まえるとともに、費用対効果の観点から事業効果を総合的に明らかにしていくことが課題
   

 水源林造成事業
 
(1)  借入金償還の見通し
 
 借入金に見合う造林資産は形成されているとみられる。
1.  造林木の主伐時期はおおむね植栽後50年目以降。現在のところ、主伐を行った水源林はなし
2.  借入金の元金償還及び利払いには政府出資金と借入金が充当→借入金要償還額は抑制
3.  借入金要償還額と公団分の造林資産の比較(H8'末試算)

借入金償還の見通し

 

(2)  事業の現状と課題
 
 平成8年度末現在の公団造林には、年間約28億トンの貯水能力(公団試算)
 主伐後の水源かん養効果は、造林地所有者による伐採跡地への植栽により維持
 造林地所有者の収入は販売収入の半分以下。一方、造林費は販売収入を上回る状況
  →造林費の助成制度を前提にしても、費用対収入が現状程度で維持されないと植栽は困難
 
1.  約40万haの水源かん養保安林(H8末造成実績)=年間28億トンの貯水能力(H8末現在公団試算)
=東京都上水道使用量(H8=15億m3)の約2年分に相当
2.  主伐後は造林地所有者に再植栽の義務(保安林に対する森林法上の義務)
3.  林業の現状は、造林費が造林木販売収入を上回っている状況
  造林木販売収入:造林費=100:102(H8)
 
 国産材の需要が減少し、価格は低下傾向(H2=100→H8=87)
 造林費の主要な構成要素である労務費は経年的に上昇傾向(S62=8,010円/人→H8=14,383円/人)
4.  公団造林における造林地所有者の造林木販売収入は、収入総額の50%又は40%
造林費については、別に国及び地方公共団体の助成制度(70%程度までの負担軽減)
  公団造林における造林地所有者の収入と再植栽費負担の比較
   
 造林費助成制度を前提にしても、造林木販売収入に対する造林費の割合が現状程度で維持されなけば、資金的には、収入でもって新たな植栽を行うことが難しくなるおそれ

(ポイント)
 水源林造成についての一定の事業効果は認められる。
 水源林の造成という政策目的に沿って本事業を安定的に展開していくためには、費用対収入のバランスが適切に維持されていくことが課題