防衛庁調達業務等に関する行政監察
−海上自衛隊及び航空自衛隊を中心として−結果(要旨)

勧告日 :平成12年12月26日
勧告先 :防衛庁
実施時期 :平成11年12月〜12年12月

 

 

 

監察の背景事情等
 防衛庁の調達・補給業務については、厳しい財政事情の下、防衛大綱に示された防衛力の水準を維持するためには、調達コストの削減や補給業務の効率化等が課題。また、入札手続等については、一層の透明性の確保が課題。(なお、防衛庁においても、同様の観点から、平成11年4月に「調達改革の具体的措置」を取りまとめ、その後もフォローアップを行い、調達における競争の拡大などの調達改革を推進中)
 この監察は、調達実施本部(平成11年3月26日勧告)及び陸上自衛隊(平成12年1月14日勧告) に引き続き、海上自衛隊(以下「海自」という。)及び航空自衛隊(以下「空自」という。)の平 成10年度における調達業務等について調査
 調査対象機関:防衛庁(本庁)、海自、空自、事業者

勧告事項
 調達業務の適正かつ経済的な実施
  (1)  一般競争契約の拡大等
   

 国の契約は、原則一般競争契約。指名競争契約や随意契約については、会計法令で定められた少額の場合(随意契約の場合:工事250万円以下、財産の買入160万円以下等)や、緊急の必要により競争に付すことができない、業者が少ない又は他に業者がいない等一定の要件を満たせば可能

(会計法)

     調査した23調達部隊等(海自11、空自12)の契約6万9,058件(海自4万2,089件、空自2万6,969件)の大部分(81.6%)が随意契約
      ・ 5調達部隊等(海自4、空自1)で一般競争契約が皆無
     抽出した随意契約及び指名競争契約の1,307件(海自644件、空自663件)の中には、一般競争契約への移行を図る余地のあるもの等が5.9%77件(海自53件、空自24件)、金額にして9億2,184万円(海自7億861万円、空自2億1,323万円)あり
 
(例)
1.  JIS規格を満たしていれば品質面において特に問題がないなど、特定の業者の製品に限定する必要がないにもかかわらず、要求部隊が特定の3社の製品を指定しているため指名競争に付しているもの
 
(海自:組電池1,541万円等17件)
2.  隊員宿舎の補修工事等の一般的な工事であるにもかかわらず、「履行上の義務違反があるときは国の事業に著しい支障をきたすおそれがある」として従来から一般競争に付さずに指名競争としているもの
(海自:宿舎改修工事3,003万円等15件)
3  海自の調達部隊等では一般競争に付している品目を、同一敷地内にある空自の調達部隊等では指名競争に付しているなど、同一品目で調達部隊等により契約方式が異なるもの
(空自:水成膜泡消火剤1,218万円等2件)
   
【勧告要旨】
 調達契約に当たっては、契約方式の選定を適切に行うことにより、一般競争の導入を推進するなど、競争性を拡大すること。
  (2)  競争性の適切な発揮
     抽出した契約1,685件(海自738件、空自947件)中には、業者間での競争が十分行われて いないものや不自然な入札結果を伴うものが、4.3%73件(9類型)(海自41件、空自32件)、 金額にして390億7,010万円(海自388億1,237万円、空自2億5,773万円)あり
 
(例)
1.  特定の2社を指名して入札しているが、平成10年度の入札状況をみると、同一日に2回行われた入札(10年度計6回)において、両社が1回ずつ落札。なお、各回の落札金額は両社ほぼ同一、また、契約金額が予定価格とほぼ一致
 
(空自:航空機用パッキング等。2社の受注金額はそれぞれ計6,554万円と計6,549万円)
2.  同一日に複数の入札が実施され、11社が落札しているが、落札単価はすべて同額、また、落札価格が予定価格と一致。さらに、一度落札した者は予定価格の単価を推測できるとみられるにもかかわらず、落札した以降の回の入札において、自社が落札した単価より高い単価で入札
 
(空自:コピー用紙23件7,663万円)
3.  指名競争を実施したものの1社を除くすべての指名業者が入札前に入札を辞退し又は入札の際に入札辞退書を提示したため、i)当該特定の1社のみが応札したが、入札が不調となり随意契約に移行したか又は、ii)入札を行わず当該1社と随意契約を行っており、結果として、毎年度特定の1社が継続受注 しているもの等
 
(海自:艦船の検査・修理38件386億4,855万円)
   
【勧告要旨】
 1社応札が長期間継続しているもの、特定の複数業者が順次落札しているもの、落札者間で契約単価が同一となっているもの等競争が十分行われていない契約や不自然な入札結果を伴う契約については、その原因の究明を行い、これに基づき入札方法を改善する等により、調達契約における競争性が発揮されるよう適切な措置を講ずること。
  (3)  予定価格の決定方法の適正化と競争の活性化
     抽出した718件(海自242件、空自476件)中、12.4%89件(海自57件、空自32件)において契約金額が予定価格と一致。この中には、予定価格が業者に推定されているとみられるものが10件(海自4件、空自6件)、金額にして7,809万円(海自2,354万円、空自5,455万円)あり
     
1.  指名競争契約又は随意契約により調達しているが、毎年度同じ業者が受注している品目について、指名競争契約においても随意契約における実績単価の額を予定価格(単価)にしており、当該契約業者が容易に予定価格を推定可能。当該品目については、平成6年度以降22件の契約において契約金額が予定価格と一致
 
(海自:艦船用の消防用ノズル825万円)
2.  半月の間に2回の一般競争契約が実施されたが、2回目の入札では、製品の規格ごとに1回目の契約の落札単価又は1回目の落札業者のみから提出させた見積単価の額を予定価格として利用。1回目の落札業者にとって容易に予定価格を推定できたものとみられ、予定価格と同額の入札価格を提示し落札
 
(空自:側溝資材(VS側溝)978万円)
   
【勧告要旨】
 予定価格については、これが容易に推定されないよう、従来の契約単価を安易に継続使用する方法等によることなく、入札の都度、取引の実例価格の的確な把握を行い、適正に定めるとともに、その管理の一層の徹底を図ること。また、競争性の拡大により落札価格が予定価格をより下回るよう、新規業者の入札参加を促し、競争の活性化を図ること。
  (4)  契約に係るチェックシステムの充実等
   
 海自及び空自においては、調達業務の適正化を図るため、契約事務を担当する部隊等に内部審査機関である審査会(海自:調達要求及び契約審査会、空自:指名随契審査会)を設置
     海自の11調達部隊等については、審査会が開催されているが、空自の12調達部隊等のうち、10部隊等で審査会の開催が皆無。
 空自の調達規則では、「必要がある場合に付議」と規定されているが、規則中に必要性についての判断基準の規定なし
     審査会は、原則会議開催によることとされているが、付議実績のある空自の2部隊等はすべて持ち回り審査。また、海自の11部隊等のうち2部隊等で付議案件の9割以上を持ち回り審査
     23調達部隊等における指名競争契約及び随意契約6万6,696件(海自4万1,850件、空自2万4,846件)中、審査会に付議されているもの5,631件(8.4%。海自5,483件、空自148件)。このうち、審査の結果、当初の契約方式の変更に至ったものは、海自の2部隊における3件(0.05%)のみ
   
 抽出1,307件中、一般競争契約への移行の余地のあるもの等が77件(5.9%)。このうち43件は審査会の審査を経たものであるが、契約方式について審査会からの指摘はなく、審査会の審査は不十分
   
【勧告要旨】
 空自においては、指名随契審査会への付議の要否について、恣意的な判断が行われる余地が生じないよう、調達規則の見直し等により、審査案件基準の明確化と同審査会の活性化を図ること。また、審査会の審査方法については、原則として会議開催によることを徹底するとともに、その審査をより的確に実施すること。
         
2  補給業務の迅速かつ効率的な実施
   
 請求補給:使用部隊の請求に応じ補給、推進補給:需給を見越して、使用部隊の請求を待つことなく行う補給。請求補給は、緊急度により4段階の標準補給期間を設定
※海自:
A(7日)、 B(10日)、 C(20日)、 D(30日)  
※空自:
A(速やかに)、 B(7日以内)、 C(20日以内)、 D(30日以内)  
     コンピュータにより、全国ベースで個別の物品ごとに在庫量の管理、年間所要量等の予測等を行い需給統制を図っているとしているが、補給処等に在庫がなく請求から補給までに長期を要しているものがある一方、無用の推進補給等のため在庫基準を超過しているものあり
     
 補給の所要日数が標準補給期間とされる期間を超過したものが4,069件中974件(23.9%)(海自445件、空自529件)あり
     
(例)
 F-15戦闘機1機の燃料タンクの部品をA請求したが、補給部隊及び補給処に在庫がなく補給に時間を要した(28日)ため、整備が遅れ、42日間飛行できず任務に就くことができなかった(空自第7航空団)
     
 在庫基準を超過した物品を保有する部隊が海自10部隊中7部隊、空自19部隊中9部隊あり
     
(例)
 コネクティングリンク(SH−60J哨戒機(ヘリコプター)の回転翼の角度調整部品):推進補給により既に在庫が充足しているにもかかわらず、更に推進補給を行い超過、30個2,500万円相当(海自第22航空群)
   
【勧告要旨】
 使用部隊からの請求に応じ速やかに対応できるよう補給の迅速化を図るとともに、補給部隊における在庫状況等を的確に把握の上、推進補給等の効率的な実施を図ること。さらに、このために必要となる精度の高い需要予測等を行い、より適切な需給統制を実施するため、コンピュータシステムの運用につき必要な見直しを行い、その最大限の活用を図ること。
     
3  その他
  1)  指名業者数の拡大
  2)  監督・検査等の公正性・効率性の確保