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調達業務の適正かつ経済的な実施 |
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(1) |
一般競争契約の拡大等 |
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国の契約は、機会均等及び公正性の保持の観点から、会計法(昭和22年法律第35号)に基づき、一般競争に付すことを原則とし、契約の性質又は目的等に照らして一般競争に付すことが不可能な場合又は不適当である場合等一定の場合に指名競争に付す又は随意契約によることとされている。また、調達に係る予定価格(落札決定の基準とする最高制限価格又は随意契約締結の基準とする価格)が少額である場合など特別な場合には、指名競争に付す又は随意契約によることができることとされている。
一方、政府機関による調達については、内外無差別の原則の確立、手続の透明性の確保等を図るため、政府調達に関する協定(平成7年条約第23号。旧協定は昭和55年に締結)が締結されており、当該協定を実施するため、国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令(昭和55年政令第300号。以下「特例政令」という。)
が制定されている。特例政令は、政府機関が一定額以上の物品等又は特定役務を調達するいわゆる政府調達を行う場合は、一般競争入札について官報公告を必須とするなど予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号。以下「予決令」という。)で定められた通常の調達手続とは別の手続を行うこと等を規定している。平成10年度の場合、物品等については調達額が1,700万円以上のものが政府調達の対象とされており、防衛庁における対象物品等は、55品目となっている。
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今回、海上自衛隊(以下「海自」という。)の補給本部、補給処及び会計担当部隊並びに航空自衛隊(以下「空自」という。)の補給処、同支処及び会計担当部隊(以下、海自及び空自を通じて「調達部隊等」と総称する。)における平成10年度の調達契約の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。 |
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ア |
契約方式の選定 |
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調査した23調達部隊等(海自11(補給本部、2補給処及び8会計担当部隊)、空自12(3補給処、1補給処支処及び8会計担当部隊))における契約方式別の調達実績をみると、i)海自の11調達部隊等においては、総契約件数4万2,089件中3万3,216件(78.9パーセント)、総契約金額1,883億3,105万円中1,430億6,689万円(75.8パーセント)が随意契約となっており、ii)空自の12調達部隊等においては、総契約件数2万6,969件中2万3,142件(85.8パーセント)、総契約金額2,216億7,280万円中2,123億6,666万円(95.8パーセント)が随意契約となっているなど、件数及び金額のいずれにおいても随意契約の割合が高くなっている。このため、一般競争契約の割合は、海自及び空自ともに低く、特に、海自においては、件数で0.6パーセント、金額で0.9パーセントとなっている。また、これら調達部隊等のうち、年度途中に新設された1補給処を除く22調達部隊等の中には、平成10年度に一般競争契約を全く行っていないものが5調達部隊等(海自4、空自1)みられる。
こうした状況について、防衛庁では、装備品等及び役務の調達については、航空機製造事業法(昭和27年法律第237号)、武器等製造法(昭和28年法律第145号)等の適用を受けることや外国企業との技術援助契約が多いこと、装備品等の製造に高度の技術、専用の生産設備等を必要とすることなどから、対象となる業者が限定されるため、随意契約の割合が高くなるとしている。
さらに、23調達部隊等における総契約件数6万9,058件から抽出した指名競争契約590件及び随意契約717件の計1,307件(海自644件、空自663件)について、契約方式の選定状況を調査したところ、次の例のように、一般競争契約への移行を図る余地のあるもの等が、海自で53件、空自で24件の計77件(1,307件の5.9パーセント)みられる。
なお、これら77件のうち、72件(海自53件、空自19件)、契約金額で9億1,483万円(海自7億861万円、空自2億622万円)が指名競争契約となっており、抽出した指名競争契約590件(海自302件、空自288件)、契約金額268億9,375万円(海自247億8,002万円、空自21億1,373万円)に対し件数で12.2パーセント、金額で3.4パーセントに上っている。
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1. |
JIS規格を満たしていれば品質面において特に問題がないなど、特定の業者の製品に限定する必要がないにもかかわらず、要求部隊が特定の3社の製品を指定しているため指名競争に付しているもの(海自の組電池購入契約(1,541万円)等17件) |
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2. |
宿舎の補修工事等の一般的な工事であるにもかかわらず、工事については、「履行上の義務違反があるときは国の事業に著しい支障をきたすおそれがある」として、従来から、一般競争に付さずに指名競争としているもの(海自の山陽宿舎2号棟改修工事契約(3,003万円)等15件) |
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3. |
予定価格が少額であるため随意契約を行っているが、調達時期及び契約業者が同一であること等から、一括して調達することにより、一般競争に付すことが可能であるとみられるもの(空自のアダプター(パソコン周辺機器の電源を一括して操作する機器)ほか75品目及び交換カートリッジ(水道水の浄水器の交換用)ほか75品目の購入契約(計299万円)等16件) |
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4. |
海自の調達部隊等では一般競争に付している品目を、同一敷地内にある空自の調達部隊等では指名競争に付しているなど、同一品目で調達部隊等により契約方式が異なるもの(空自の水成膜泡消火薬剤購入契約(1,218万円)等2件) |
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5. |
どの地域でも販売している市販の製品であり、また、類似品を過去に一般競争に付したことがあるにもかかわらず、防衛上の所要に応じ得る業者を選定する必要がある等として指名競争に付しているもの(海自のマヨネーズほか5品目の購入契約(786万円)等3件) |
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6. |
年度末の要求で納期に余裕がない等として、指名競争に付しているもの(海自のパソコン購入契約(3,355万円)等22件) |
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なお、防衛庁は、平成11年4月に取りまとめた「調達改革の具体的措置」(防衛調達改革本部(本部長:防衛庁長官)取りまとめ)において、「衣類、車両等一般的に市販されているものについては、これを防衛装備品に導入することにつき、その可能性に常に配意し、対応可能な場合には、速やかに一般競争に移行する」こととし、一般競争契約への移行に努めているとしている。 |
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イ |
政府調達の実施 |
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政府調達については、特例政令等に基づき、一般競争に付す場合は、官報公告を50日以上行う等の一定の手続をとることとされている。しかし、23調達部隊等において政府調達の対象となった契約30件(海自10件、空自20件)を抽出して調査したところ、海自の壁面収納庫購入契約等5件及び空自の浴槽用活性濾過装置購入契約等18件の計23件については、部隊等からの調達要求時期が遅く、官報公告等の特例政令で定められた調達手続をとった場合、年度内に調達品が納入されないこと等を理由として、通常の一般競争等の手続をとっている。これら契約は、契約金額でみると、合計で7億5,011万円(海自2億6,975万円、空自4億8,036万円)となり、抽出した契約30件の合計金額10億8,698万円(海自4億7,069万円、空自6億1,629万円)の69.0パーセントを占めている。
なお、特例政令で定められた調達手続の遵守徹底を目的として、海自は平成11年11月に「政府調達業務ハンドブック」を、空自は同年10月に「政府調達の概要」をそれぞれ作成し、各調達機関に配布している。
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したがって、防衛庁は、海自及び空自の調達契約における競争性及び公正性の確保を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。 |
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調達契約に当たっては、契約方式の選定を適切に行うことにより、一般競争の導入を推進するなど、競争性を拡大すること。 |
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2. |
政府調達の対象となる物品等の調達に当たっては、特例政令で定められた調達手続を遵守すること。 |
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(2) |
競争性の適切な発揮 |
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国の契約においては、広く多数の参加者による競争を通じて、国にとって最も有利な条件の申込者を選定することが必要である。防衛庁の装備品等の調達については、特殊な仕様で市販性に乏しいものが多く、製造等の能力を有する企業が限定されること等のため、十分な競争を行うことが困難な場合もみられる。しかし、その場合であっても、できる限り、国にとって最も有利な契約が締結されるよう、一般競争又は指名競争に多数の者を参加させ、価格面での公正かつ自由な競争が適切に行われることが必要である。また、防衛装備品等であっても、特殊性が認められない物品等の調達に当たっては、競争の利点が最大限に生かされるような措置を講ずることが求められる。 |
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今回、23調達部隊等における平成10年度の調達契約から1,685件(海自738件、空自947件。一般競争契約378件、指名競争契約590件及び随意契約717件。契約金額では、海自695億7,987万円、空自465億509万円の計1,160億8,495万円)を抽出して、入札の状況、業者の受注状況等を調査した結果、 |
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i) |
長期間特定の1社のみが応札しているもの、 |
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ii) |
特定の複数の業者が順次落札しているなど落札業者が固定化しているもの、 |
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iii) |
同一物品の入札について、落札者間で落札単価が同一となっているもの |
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など、業者間での競争が十分行われていないものや不自然な入札結果を伴うものが件数で73件(4.3パーセント。海自41件、空自32件)、契約金額で390億7,010万円(33.7パーセント。海自388億1,237万円、空自2億5,773万円)みられた。
なお、当該73件に係る品目と同じ品目について、平成10年度の調達契約を更に調査した結果、同様の例が19件(契約金額の合計7,368万円)あり、73件と合わせて計92件となっている。これらの例については、以下のとおりである。
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1. |
特定の1社のみが応札しているもの等 |
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23調達部隊等のうち8調達部隊等において、以下の例のように、特定の1社のみが応札しているもの又は1社応札と同様とみられるものが4類型(海自2類型、空自2類型)、52件(海自39件、空自13件)みられ、このうち相当数の案件について、特定の1社による応札が長期間継続している。 |
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(a) |
艦船の検査・修理について、指名競争を実施したものの1社を除くすべての指名業者が入札前に入札を辞退し又は入札の際に入札辞退書を提示したため、 |
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i) |
当該特定の1社のみが応札したが、入札が不調となり随意契約に移行したか又は、 |
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ii) |
入札を行わず当該特定の1社と随意契約を行っており、結果として、毎年度特定の1社が継続して受注しているもの等がある(海自:38件、契約金額合計386億4,855万円)。 |
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(注) |
海自では、会計検査院からの指摘を受けて、平成12年1月から3月にかけて、指名競争入札制度の機能を発揮させるための措置、当初から随意契約を行う場合の基本的考え方の明確化等を内容とする指導通知を発出しており、12年度においては、9月末時点で、指名競争の対象となる16件のうち、入札が行われたものが14件(87.5パーセント)あり、改善の傾向がみられる。 |
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(b) |
通信電子器材等の輸入品について、入札の際に1社を除くすべての指名業者が入札辞退書を入札箱に提示しているものがある(空自:12件、契約金額合計8,819万円)。 |
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2. |
特定の複数業者が順次落札しているなど落札業者が固定化しているもの |
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23調達部隊等のうち4調達部隊等において、以下の例のように、各業者が順次落札しているなど落札業者が固定化しているものが4類型(海自1類型、空自3類型)、17件(海自2件、空自15件)みられた。 |
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(a) |
気象観測用気球について、従来から特定の2社が指名されて指名競争入札が行われているが、過去5年間における10回の入札では、当該2社が交互に落札している。
なお、いずれの入札においても、契約金額が予定価格とほぼ一致しており、また、5年間の合計落札金額をみた場合、2社の金額はほぼ同一となっている(空自:平成7年度から11年度までの2社の受注金額はそれぞれ計1,529万円と計1,517万円)。
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(b) |
航空機用パッキング(管等の継ぎ目に挟み漏れを防止する部品)等について、特定の2社が指名されて指名競争入札が行われている。平成10年度の入札状況をみると、平成10年9月9日、9月16日及び11年2月2日の3日間にそれぞれ2回ずつ行われた入札において、両社が各日に1回ずつ落札している。
なお、各回の落札金額は両社ほぼ同一であり、また、いずれの入札においても、契約金額が予定価格とほぼ一致している(空自:平成10年度の2社の受注金額はそれぞれ計6,554万円と計6,549万円)。
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3. |
複数の落札業者がいるにもかかわらず、契約単価がすべて同一のもの |
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空自第1補給処東京支処においては、コピー用紙の調達に当たり、平成11年3月11日と16日の2日間に一般競争入札を実施している(1日目の契約は1件で55万円、2日目の契約は23件で計7,663万円)が、これについての一連の入札状況をみると、次のとおり、落札者間で契約単価が同一となっている状況がみられる。 |
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i) |
1日目の入札(調達量2,000箱)においては、1社を除き応札を辞退したため入札は不調となり、当該1社と随意契約を実施している。 |
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ii) |
2日目の入札(調達量7万170箱)においては、予定価格の1箱当たり単価は、1日目の入札の1箱当たりの契約単価と同額で設定されている。 |
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iii) |
2日目の入札は、23回に分けて実施され、計11社が落札しているが、落札価格の1箱当たり単価は、11社すべてが同額となっており、また、落札価格も予定価格と一致している。 |
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iv) |
2日目の一連の入札においては、一度落札した者は予定価格の単価を推測できるとみられるにもかかわらず、落札した以降の回の入札において、自社が落札した単価より高い単価で入札している業者がみられる。 |
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なお、防衛庁では、防衛調達の改革施策をフォローアップした「調達改革の具体的措置の実施状況について」(平成12年4月)において、入札契約における競争性の強化策として、入札関連情報の広報の強化等とともに、「入札経緯や落札情報を注視し、必要な場合には、談合情報マニュアルに準じて対応する等」とし、競争原理の強化に努めているとしている。また、必要に応じ、落札状況を関係機関に連絡している。
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したがって、防衛庁は、海自及び空自の調達契約について、1社応札が長期間継続しているもの、特定の複数業者が順次落札しているもの、落札者間で契約単価が同一となっているもの等競争が十分行われていないものや不自然な入札結果を伴うものの原因の究明を行い、これに基づき入札方法を改善する等により、調達契約における競争性が発揮されるよう適切な措置を講ずる必要がある。 |
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(3) |
指名業者数の拡大 |
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国の契約においては、会計法に基づき、予定価格が少額の場合は指名競争によることができるとされ、業者が限定されているなど一般競争に付する必要がないが場合は、指名競争に付すこととされている。この場合、指名競争入札に参加する業者については、より多くの業者を参加させることによって競争性を確保するため、予決令により、なるべく10人以上の指名を行わなければならないこととされている。
また、入札に参加する業者の指名に当たっては、予決令により、指名基準を定めなければならないこととされており、海自及び空自においては、内閣及び総理府所管契約事務取扱細則(昭和39年総理府訓令第2号)に定められた指名基準を用いて、指名競争入札を実施している。
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今回、23調達部隊等の平成10年度の指名競争契約における業者の指名状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
抽出した指名競争契約590件(海自302件、空自288件)における指名状況をみると、指名業者の数が10に満たないものが、海自242件、空自225件の計467件(79.2パーセント)と大宗を占めている。これを契約金額でみると、590件の合計が268億9,375万円であるのに対し、指名業者の数が10に満たない467件の合計は254億3,359万円と94.6パーセントを占めている。
指名業者の数が10に満たない467件のうち、指名業者選定に当たっての記録が残されていないため、選定状況を確認できなかった11件を除く456件(契約金額253億6,412万円)について、指名業者の選定状況を調査したところ、次のとおり、過去の入札への参加実績や調達品目等の内容からみて、指名された業者以外にも応札可能業者があると考えられるにもかかわらず、これらの業者を指名していないなど、指名業者数を更に拡大する余地のあるものが、件数では海自で16件、空自で38件の計54件(11.8パーセント)、契約金額では海自で8,720万円、空自で8,815万円の計1億7,535万円(0.7パーセント)みられた。
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1. |
空自第1輸送航空隊においては、指名業者の選定に当たって、内閣及び総理府所管契約事務取扱細則に定められた指名基準によるほか、調達部隊等への訪問等の営業活動により契約担当者がその業者の営業範囲等を十分把握し、受注意欲ありと認めた業者を選定するとしている。このため、同部隊への登録業者(17業者)の中には、指名業者以外にも過去に同様の入札に参加していること等からみて応札が可能な業者があるにもかかわらず、受注意欲ありと契約担当者が認めた業者以外の業者を指名しておらず、指名業者が3業者にとどまっている契約等がみられる(EPカートリッジ(コピー用)の購入契約等14件、合計3,486万円)。 |
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2. |
海自小月航空基地隊においては、予定価格が少額なため随意契約とすることが認められるものについても、指名競争に付すことを原則として独自の基準を設けている。しかしながら、同基準において予定価格の金額区分に応じて定められている指名業者数は、予決令の規定に照らして不適切なもの(例えば、最上位の金額区分である「予定価格500万円以上」の場合であっても「7社以上」を指名すれば足りるとするなど)となっている。このため、調達品目等の内容や過去の入札参加実績からみて指名された業者以外にも応札が可能な業者があるにもかかわらず、指名業者の拡大のための努力が十分行われておらず、指名業者が5業者(登録業者数12)にとどまっている契約等がみられる(システム
書庫の購入契約等5件、合計836万円)。 |
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なお、防衛庁では、調達改革の具体的措置の実施状況についてにおいて、入札契約における競争性の強化策として、入札関連情報の広報の強化等とともに、平素から入札に応じる業者の数を増やすなどの開拓努力による入札環境の整備に努めた上、指名競争入札の実施に当たっては、所要の調査を実施して、契約を履行する能力のある業者をできるだけ多く指名するよう努める等とし、競争原理の強化に努めているとしている。
したがって、防衛庁は、海自及び空自における調達契約の競争性を確保するため、指名競争契約に当たっては、予決令で求められている指名業者数の確保に一層努める必要がある。
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(4) |
予定価格の決定方法の適正化と競争の活性化 |
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調達において、一般競争又は指名競争の入札における予定価格は、会計法に基づき、その金額の範囲内で最低の価格をもって申込みをした者が契約の相手方となるものであり、落札者の公正な決定や予算の効率的使用の観点から極めて重要な役割を有している。このため、予定価格の決定に当たっては、予決令に基づき、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならないこととされている。
予定価格は、落札者を決定するための基準として定められるものであるため、秘密保持が必要であることはいうまでもない。また、これが事前に探知又は容易に推定されると、業者間による価格競争に対する意欲の低下を招き、これが価格競争を阻害し、結果として落札価格の高止まりを招来するなど、競争契約の趣旨に反することとなるとされている。
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今回、23調達部隊等における平成10年度の一般競争契約及び指名競争契約から718件(海自242件、空自476件)を抽出し、予定価格と落札価格の乖離状況及び予定価格の算定状況を調査した結果、次のような状況がみられた。
予定価格と落札価格については、718件(海自242件、空自476件)中、海自で57件、空自で32件の計89件(12.4パーセント)の契約において落札価格が予定価格と同額となっている。これを契約金額でみると、海自で7億9,818万円、空自で1億8,786万円の計9億8,604万円となり、718件の総額70億6,899万円(海自29億5,436万円、空自41億1,463万円)の13.9パーセントに相当する。
また、落札価格が予定価格と一致している89件のうち62件(海自33件、空自29件)について、予定価格の算定方法をみると、i)前回の調達の契約金額又は契約単価と同額を次回調達の予定価格として利用しているものが32件(51.6パーセント)、ii)事前に提出させた業者の見積価格に一定の割引率をかけて算定しているものが14件(22.6パーセント)、iii)業者の見積価格と同額を予定価格として利用しているものが9件(14.5パーセント)等となっており、業者に容易に予定価格が推定される可能性があると認められる。さらに、この62件の中には、次の例のように、予定価格が業者に推定されているとみられるものが8類型10件(16.1パーセント。海自4件、
空自6件)みられ、その契約金額は、7,809万円(海自2,354万円、空自5,455万円)と、62件の合計金額7億1,389万円の10.9パーセントとなる。
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1. |
海自補給本部においては、消防用ノズル(艦船用)を、指名競争契約又は随意契約により調達しているが、毎年度同じ業者が受注している。平成10年度の指名競争入札の予定価格の算定状況をみると、9年度の随意契約における契約単価と同額を予定価格(単価)として利用している。このため、当該契約業者は、容易に予定価格(総額)を推定できるものとなっており、指名競争入札においては、当該業者が予定価格と同額で落札している(契約金額825万円)。
なお、当該品目については、平成6年度以降の契約のすべてにおいて、契約金額が予定価格と一致している。 |
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2. |
空自第8航空団においては、VS側溝(側溝資材)を平成11年3月16日及び3月29日の両日に、それぞれ一般競争契約により調達しており、両契約は同一業者が受注している。しかし、同航空団における2日目の調達の予定価格の算定方法をみると、1日目に調達したものと同じ規格の側溝資材については落札単価と同額を予定価格(単価)として利用し、それ以外の規格の側溝資材については1日目の落札業者のみから見積単価を提出させ、その額を予定価格(単価)としている。このようなことから、当該業者は、2日目の入札では、予定価格と同額の入札価格を提示し落札している(契約金額978万円)。 |
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このように落札価格が予定価格と一致する原因としては、応札業者が限定されているため、入札において業者間の競争が十分に行われていないこと、前回の契約価格等から予定価格を推定できること等が考えられる。また、防衛庁では、以上に加え、予定価格が業者にとって必ずしも魅力的でないことも原因の一つであるとしている。
なお、防衛庁では、調達改革の具体的措置の実施状況についてにおいて、予定価格の算定に当たっては、安易に企業見積、実績資料、前例価格等によることなく、i)なるべく多くの業者から見積を徴取して比較・分析する、ii)同種の民生品又は装備品等が存在する場合には可能な限り比較する、iii)需給の状況及び数量の多寡等を念頭に置きつつ、十分な市場調査を行う等により、調達物品の特性に応じ、可能な限り様々な工夫を行い、予定価格の適正化に努めるとともに、その管理の一層の徹底を図るとしている。
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したがって、防衛庁は、海自及び空自の調達契約における公正性を確保する観点から、次の措置を講ずる必要がある。
予定価格については、これが容易に推定されることのないよう、調達改革の具体的措置の実施状況についてを踏まえ、従来の契約単価を安易に継続使用する方法等によることなく、入札の都度、取引の実例価格の的確な把握を行い、適正に定めるとともに、その管理の一層の徹底を図ること。また、競争性の拡大により落札価格が予定価格をより下回るよう、新規業者の入札参加を促し、競争の活性化を図ること。
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(5) |
契約に係るチェックシステムの充実等 |
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海自及び空自では、契約方式の適用の適否等についての事前審査を行うため、「海上自衛隊契約規則」(昭和43年3月30日付け海上自衛隊達第17号)及び「航空自衛隊調達規則」(昭和36年3月10日付け航空自衛隊達第13号)に基づき、調達部隊等に内部審査機関として、海自においては「調達要求及び契約審査会」を、空自においては「指名随契審査会」をそれぞれ設置している(以下、調達要求及び契約審査会及指名随契審査会を総称して「契約審査会」という。)。
また、海自及び空自では、防衛庁の会計監査に関する訓令(昭和33年防衛庁訓令第40号)に基づき、監査官が置かれている部隊等(以下「監査部隊等」という。)が、年1回以上、調達部隊等に対して会計監査を行うこととしている。
さらに、検査、監査等を行う職及び契約等の事務を所掌する特定の職については、「綱紀粛正のための各省(庁)の具体的措置について」(昭和44年5月23日総理府総務長官閣議報告)において、「同一の職員が原則として、3年以上在職することのないよう、適宜配置換えを行う」こととされ、また、「官庁綱紀の粛正について」(昭和54年11月26日官房長等会議申合せ)において、「同一の職員が同一の職に長年在職することのないよう人事配置の適正化を期する」こととされている。
これらを受けて、防衛庁では、調達等関係業務に従事する者の在職期間について、原則として職務の級が3級以上の事務官等及び幹部自衛官においては2年以内、2級以下の事務官等及び准曹士においては3年以内で異動させる方針で各自衛隊を指導している。また、海自及び空自では、「調達等関係業務従事者の勤務状況調査書について」(昭和62年5月13日付け海幕人第2285号海上幕僚監部総務部長通知)及び「事務官等の人事管理に関する達の運用について」(平成9年3月13日付け空幕任第280号航空幕僚長通達)に基づき、調達等関係業務の範囲を明示して、各部隊等を指導している。
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今回、海自及び空自における契約審査会の運営状況、会計監査の実施状況及び調達等関係業務に従事している職員の在職状況を調査した結果、次のような状況がみられた。 |
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ア |
契約に係るチェックシステムの充実 |
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(ア) |
契約審査会の運営状況 |
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23調達部隊等(海自11、空自12)における平成10年度の契約審査会の運営状況をみると、次のとおり、契約審査会が有効に機能していない状況がみられる。 |
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1. |
海自においては、11調達部隊等のすべてにおいて契約審査会への付議実績があるが、空自においては、12調達部隊等中、契約審査会への付議実績が皆無のものが10調達部隊等となっている。
これは、i)航空自衛隊調達規則において、調達部隊等は、指名競争契約又は随意契約の適否に関する事項等について、「必要があると認めた場合」に指名随契審査会に付議することとされているが、その必要性についての判断基準は規定されておらず、各調達部隊等に運用がゆだねられていること、ii)12調達部隊等の内部規定においても、いずれも契約担当官の判断により同審査会への付議を省略できることとされており、また、付議の省略についての判断基準が示されていないことが原因であると考えられる。
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2. |
契約審査会の審査は、各調達部隊等の内部規定により、原則として、会議開催によることとされている。しかし、空自において契約審査会に付議を行っている2調達部隊等においては、いずれも全付議事案を持ち回りにより審査している(空自第3補給処、同第1補給処東京支処)。また、海自では、11調達部隊等の中で、付議事案をすべて会議開催により審査していたのは2調達部隊等(海自艦船補給処、同那覇航空基地隊)のみであり、9調達部隊等においては、持ち回りと会議開催を併用して審査している。これら9調達部隊等の中には、付議事案1,240件中1,223件(98.6パーセント)を会議開催により審査している例(海自横須賀地方総監部)など、7調達部隊等において審査事項の8割以上を会議開催により審査している状況がみられる。しかし、その一方で、次のような例もみられる。 |
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i) |
海自補給本部の契約審査会は、調達要求に関する審査等を行う第1部会と契約に関する審査を行う第2部会とに分かれている。しかし、両部会の構成員がほぼ同じであり、第1部会の会議において、原則として契約に関する審議も併せて行われている(第1部会の付議事案852件中741件(87.0パーセント)は会議開催によるもの)ことを理由として、第2部会では、付議事案985件中982件(99.7パーセント)を持ち回りにより審査している。 |
ii) |
海自小月航空基地隊では、審査事項11件中10件について、持ち回りにより審査している。 |
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3. |
23調達部隊等における指名競争契約及び随意契約の総計6万6,696件(海自4万1,850件、空自2万4,846件)のうち、契約審査会に付議されているものは13調達部隊等(海自11、空自2)の5,631件(8.4パーセント。海自5,483件、空自148件)となっている。
このうち、契約方式の適否についての事前審査の結果、当初の契約方式が適切でないと判断され、他の方式に変更されたものは3件(0.05パーセント。海自の2調達部隊等におけるもの)のみにとどまっている。しかし、同じ23調達部隊等に対する当庁の調査結果では、前述の11)アのとおり、一般競争契約への移行を図る余地のあるもの等が77件認められた。この中には、契約審査会の審査を経ているものが43件あり、契約審査会において、更に的確な審査を行う余地があると認められる。
なお、空自では、このような状況を改善するため、平成12年8月に「不祥事防止及び調達改革の深化に関する施策について」(平成12年8月4日付け空幕調達第504号)を発出し、指名随契審査会の活性化について調達部隊等を指導している。
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(イ) |
会計監査の実施状況 |
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23調達部隊等に対する会計監査の事務を所掌する10監査部隊等(海自6、空自4)における会計監査の実施状況をみると、いずれも管轄している調達部隊等に対し年1回実施しており、平成10年度の監査報告書をみると、指摘事項は皆無となっている。これについて10監査部隊等では、いずれも会計監査により把握された事項は軽微なものであったためとしている。
しかし、前述の当庁の調査により一般競争契約への移行を図る余地のあるもの等の77件のうち75件(航空幕僚監部が直接会計監査を実施した調達部隊等に係る2件を除く。)については、この10監査部隊等のうちの9監査部隊等が管轄している調達部隊等における案件であることから、これらの監査部隊等による契約方式についての監査が必ずしも十分でなかったものと認められる。
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イ |
同一職への長期在職の是正 |
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12調達部隊等及びこれらが調達する装備品等を使用する13部隊等の計25部隊等(海自7、空自18)において、これらの業務に従事している職員563人(海自242人、空自321人)の在職状況をみると、同一職への在職期間が3年を超えている者(以下「長期在職者」という。)が52人(9.2パーセント。海自11人、空自41人。最長は海自職員の14年5月)おり、空自においては、その割合が12.8パーセント(321人中41人)と海自に比して高くなっている。
また、長期在職者52人の官職についてみると、自衛官57.7パーセント(海自8人、空自22人の計30人)、技官42.3パーセント(海自3人、空自19人の計22人)となっている。さらに、当該職員の平均在職期間は、自衛官が4年9月であるのに対し、技官は6年7月(特に、海自では12年10月)と長期になっている。
このように技官の在職期間が長くなっていることについては、専門職として採用され、職域及び勤務地が極めて限定的であること並びに近傍に異動できる適当な部隊等が存在しないことを理由に、やむを得ないものとして技官の異動を行っていないことに一因があると考えられる。
なお、空自においては、第8航空団基地業務群施設隊(当庁が調査した部隊)に所属し、見積書の作成等調達要求事務及び監督業務に11年間連続して従事していた技官が、平成12年1月に収賄事件で逮捕されている。
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したがって、防衛庁は、契約方式の適用の的確化等の観点から、海自及び空自における契約に係るチェックシステムの充実及び同一職への長期在職の是正を図るため、次の措置を講ずる必要がある。 |
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1. |
空自の指名随契審査会については、同審査会への付議の要否について恣意的な判断が行われる余地が生じないよう、航空自衛隊調達規則の見直しを行うとともに、調達部隊等に対してもこの趣旨に沿った関係規則の見直しを行わせること等により、同審査会の審査を要する案件の基準の明確化及び同審査会の活性化を図ること。また、海自の調達要求及び契約審査会及び空自の指名随契審査会における審査方法について、原則として会議開催によることを徹底するとともに、その審査をより的確に実施すること。 |
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2. |
契約方式の不適切な適用等を看過することのないよう、監査部隊等による会計監査をより一層厳重に実施すること。 |
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3. |
調達等関係事務を所掌する長期在職者の解消のため、適切な人事配置を図ること。特に、技官については、防衛庁全体としてとり得る対応策を検討の上、速やかに改善を図ること。 |
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(6) |
監督・検査等の公正性・効率性の確保 |
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国の契約においては、会計法に基づき、契約担当官等が、契約の適正な履行を確保するため受注者に対して必要な監督を行い、また、給付の完了の確認をするため必要な検査を行うこととされている。
また、海自及び空自の地方調達(各自衛隊が自ら行う調達)においては、航空機、艦船の修理等長期を要し、あらかじめ契約金額を確定できないものについて、代金の確定に関する特約条項(契約の履行中又は履行後において、受注者の支出等の実績に基づき契約金額を確定することを定めた条項)を付している。この場合、分任支出負担行為担当官は、契約相手方が契約履行のために支出又は負担した費用等の適否を審査する原価調査等を自らの責任において実施することとされている。
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今回、空自における監督・検査等の実施状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。 |
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ア |
常駐による監督・検査の見直し |
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防衛庁における監督・検査は、監督官及び検査官が補給処等の勤務先から企業に出向いて実施するのが通常である(ただし、企業が提出する調達品等の品質を保証する国の機関等の証明資料により、企業に出向くことなく監督・検査を実施する場合もある。)。
空自第3補給処は、通信電子器材等の補給、調達等を担当しており、調達部調達検査課において、検査総括班のほか検査第1班から検査第5班までの6班編成で企業に対する監督・検査を実施している。このうち、検査第1班から検査第5班までの各班(以下「出先班」という。)は、同補給処の組織編成を定める「第3補給処の内部組織に関する達」(昭和55年4月5日付け第3補給処達第7号)により、その勤務地と担当する主たる契約先企業が定められており、その勤務先については、当該勤務地に所在する空自の基地、陸上自衛隊の駐屯地等が指定されている。
なお、調達実施本部では、職員が企業に常駐する場合には、物品等の調達契約を行う都度、監督・検査に要する業務量等を見積もり、常駐の必要性を吟味してその要否を決定の上、当該企業の工場を監督官等の勤務官署として指定している。
空自第3補給処の出先班における監督・検査業務の実態を調査した結果、次のような状況がみられた。 |
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1. |
出先班の職員(各班ごとに2人ないし4人で合計15人)については、出勤簿が指定された勤務先に備え付けられておらず、指定された勤務先に出勤することなく、住居から直接、契約先企業に出向いて監督・検査を実施している。また、この勤務形態は、昭和55年度以降、20年間の長期にわたって行われている。 |
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2. |
同補給処においては、これら職員の勤務形態を「巡回」であると説明しているが、その勤務の実態をみると、 |
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i) |
同補給処は、出先班ごとに特定の1企業(工場)を「主たる巡回先」と定めており、平成10年度の各出先班の監督・検査の延べ日数の合計に占める主たる巡回先における延べ日数の合計の割合は、約7割に達している、 |
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ii) |
主たる巡回先においては事務室が確保され、出勤簿も置かれている、 |
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iii) |
通勤手当は、住居から主たる巡回先までを対象として支給されており、主たる巡回先以外の契約先企業に対する監督・検査の実施に当たっては、主たる巡回先から当該企業までの行程、距離等に基づき旅費が支給されている |
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ことから、出先班の職員は、主たる巡回先である特定の1企業(工場)を事実上の勤務官署とし、当該企業にほぼ常駐しているものと認められる。 |
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3. |
常駐を行うのであれば、同じく常駐方式を採っている調達実施本部が行っている手続と同様の手続が必要となると考えられるが、同補給処においては、前述のとおり、勤務地及び主たる契約先企業が達により定められていることを理由として、このような手続をとっていない。 |
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4. |
また、出先班については、監督・検査を行う者が監督・検査を受ける者の施設に常駐していることから、常駐させるに当たり、業務の公正性の確保に一層配慮する必要がある。出先班が常駐している企業(工場)の事務室の使用料、水道光熱費、電話使用料、消耗品費等の設備・機器に関する費用等について、防衛庁は、製造費用である加工費のうちの間接経費に含まれているとしているが、その内訳は明らかになっていない。 |
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イ |
分室組織の見直し |
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空自第1補給処東京支処(以下「東京支処」という。)の下部組織として設置されている札幌、福岡及び那覇の3分室(職員数各3人)は、東京支処が調達した装備品等のうち、遠隔地に所在する部隊の保有する車両、施設器材及び電源装置の外注修理に伴う監督・検査及び原価調査を管轄区域を分担して実施している。
各分室の業務の実施状況等を調査した結果、次のような状況がみられた。 |
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1. |
各分室の平成10年度における監督・検査担当職員1人当たりの年間の監督・検査件数は、札幌分室94.5件、福岡分室71件、那覇分室10件であり、東京支処の職員1人当たりの件数409.5件に比べ、4分の1以下から40分の1以下になっている。また、各分室での監督・検査の対象は、消防車等の点検修理、発動発電機の修理、航空吸入用酸素の製造等、特に高度な専門知識を必要としないものが業務の大半を占めている。これら業務の中には、東京支処が分室管内の部隊等に監督・検査を直接依頼している例もみられることから、部隊等での実施が可能と認められる。 |
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2. |
さらに、原価調査については、 |
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i) |
那覇分室が平成10年度に実施した14件のすべて、札幌分室が平成10年度に実施した45件から抽出した2件は、それぞれ契約に基づき提出された原価報告書等を確認する方法(以下「書類審査」という。)で行っており、 |
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ii) |
福岡分室は、現在、書類審査ではなく相手方工場等において作業指示書、原価元帳等を確認しているが、同分室の対象品目は札幌分室及び那覇分室と異ならないものとなっている状況にある。
しかしながら、書類審査であれば、必ずしも現地の分室ではなく東京支処で実施することが可能とみられる。
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したがって、防衛庁は、空自における監督・検査の公正性を確保し、その効率化等を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。 |
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1. |
監督・検査対象の企業への職員の常駐については、その必要性を十分検討の上、その要否を決定し、それに伴う勤務官署の指定等勤務関係を明確にするための必要な措置を講ずること。また、常駐に要する費用負担の額を明確にすること。 |
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2. |
空自第1補給処東京支処の分室については、その業務のうち、監督・検査については管内所在の部隊等にゆだねるとともに、原価調査については実施方法等を検討し東京支処に実施させることによって、各分室の廃止を含めた組織の見直しを検討すること。 |
2 |
補給業務の迅速かつ効率的な実施 |
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海自及び空自がその任務遂行に必要とする装備品等は、艦船、航空機等のほか、これらの修理及び整備に必要な構成品、部品等、極めて広範かつ多種多様であり、また、その在庫量は膨大なものとなっている。
補給業務は、これらの広範かつ多種多様な物品を全国の部隊等からの請求等に応じて迅速に送付するとともに、在庫を的確に維持管理するものであり、部隊等が任務を達成する上で重要な後方支援業務の一つである。
部隊等に対する補給には、1)補給を受けようとする部隊等からの請求に基づいて行う「請求補給」、2)部隊等の需要を見越して行う「推進補給」及び3)補給処が部隊等における在庫の基準を設定した部品について、当該基準及び在庫状況に基づき、電算化された補給管理システムにより基地等に対して自動的に補給を行う「自動補給」(空自のみ)がある。
また、装備品等の在庫管理を適切に行うため、海自では、海上自衛隊物品管理補給規則(昭和56年12月21日付け海自達第42号)に基づき、各地方隊に設置されている造修補給所及び各航空群等に設置されている整備補給隊に対して在庫基準を、その他の部隊に対して保有基準を、また、空自では、航空自衛隊物品管理補給規則(昭和43年12月25日付け空自達第35号)に基づき、各航空団等に設置されている整備補給群補給隊に対して装備品の装備定数及び補用部品の在庫統制基準をそれぞれ設定することとされている(以下、海上自衛隊物品管理補給規則及び航空自衛隊物品管理補給規則を「補給規則」といい、造修補給所及び整備補給隊並びに整備補給群補給隊を「補給部隊」といい、海自の在庫基準及び保有基準並びに空自の装備定数及び在庫統制基準を「在庫の基準」という。)。
さらに、海自及び空自では、補給規則等に基づき、i)使用部隊において在庫の基準を超過して保管している物品がある場合には、速やかに補給部隊に返納すること、ii)長期保管物品の取扱いについて、補給処等は、「非適用物品」(当該自衛隊で使用しないこととなった装備品等を指す。空自では、同様のものを指して「非適用品目」という。)、「過剰物品」(過去5年以上被請求実績のない物品のうち、当該部隊等において、将来とも需要の発生する確率が小さいと認める物品等を指す。空自では、同様のものを指して「非活動品目」又は「余剰品目」という。)等の在庫等を計画的に調査し、当該物品の転活用又は不用の決定を推進することとされている。
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今回、海自及び空自の補給処及び補給部隊並びに使用部隊(以下これらを「補給部隊等」という。)における補給及び在庫管理の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。 |
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ア |
請求補給の迅速化及び在庫の基準の遵守 |
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(ア) |
請求補給の迅速化 |
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海自及び空自は、物品の請求補給の実施に当たり、それぞれ、緊急度に応じた4段階の標準的な補給期間(以下「標準補給期間」という。)を設定している。艦船及び航空機の不可動につながるような最も緊急度の高い物品の場合、海自で「7日」、空自で「速やかに」(2日ないし3日以内)、最も緊急度の低い物品の場合、海自で「30日」、空自で「30日以内」が標準補給期間とされている。
調査した48の補給部隊等(海自19、空自29)において、物品の請求補給における請求から補給までの所要日数をみると、次のような状況がみられた。
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1. |
抽出した補給件数 4,069件(海自1,943件、空自2,126件)のうち、約4分の1の974件が標準補給期間とされる期間を超えている(海自445件、空自529件)。このうち、標準補給期間とされる期間の最長である「30日」又は「30日以内」の3倍に当たる3か月以上を要しているものが、海自で445件のうち152件(34.2パーセント)、空自で529件のうち88件(16.6パーセント)みられ、中には、1年以上の期間を要しているものがみられる(海自2件)。また、このように標準補給期間とされる期間を超えているものの理由をみると、「補給処、補給部隊等に在庫がなかったため」とするものが、海自で319件(理由不明の126件を除く。)のうち164件(51.4パーセント)、空自で362件(同じく167件を除く。)のうち338件(93.4パーセント)と大宗を占めている。 |
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(注) |
空自では、在庫の有無にかかわらず、標準補給期間が適用されており、海自では、補給部隊に在庫がある場合についてのみ、標準補給期間を適用することとされ、補給部隊に在庫がない場合については、補給処等に対する「請求移達」及び補給処等における補給指示の決定までの時間(日数)を定め、当該時間(日数)内の処理に努めるとともに、他補給部隊等から管理換する場合は、当該部隊において、定められた時間(日数)内に発送することとしている。本監察においては、補給の実態を把握し、使用部隊の立場に立って所要の改善策を探る観点から、海自について補給部隊に在庫がない場合においても同様に把握することとした。 |
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2. |
当該物品を欠くと任務の遂行が不能になる等、緊急性を要する物品(上記の緊急度に応じた4段階の標準補給期間のうち上位2区分(海自で10日、空自で7日以内)に該当するもの)の補給についても、その期間を超えて補給されているものが、海自で516件のうち72件(14.0パーセント)、空自で1,236件のうち175件(14.2パーセント)みられる。これらの中には、補給の遅延及び整備によりF−15戦闘機1機が42日間任務に就くことができなかった例や、エンジン部品の不可動に伴って輸送機が与えられていた任務から外される等の支障が生じた例(いずれも空自)などがみられる。 |
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(イ) |
在庫の基準の遵守 |
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在庫の基準が設定されている海自及び空自の29補給部隊等(海自10、空自19)における在庫の基準の遵守状況をみると、次のような状況がみられた。 |
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1. |
在庫の基準を超過した物品を保有する補給部隊等が、海自で10補給部隊等のうち7補給部隊等、空自で19補給部隊等のうち9補給部隊等みられ、中には、在庫の基準を超過した物品数が全保管物品数の2割に上っている部隊がみられる(空自第8航空団整備補給群補給隊)。
なお、これらの16補給部隊等において在庫の基準を超過した物品のうち590品目(海自140品目、空自450品目)を抽出したところ、その合計金額は、46億7,600万円(海自1億9,300万円、空自44億8,300万円)に達していた。
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2. |
在庫の基準を超過している590品目について在庫の基準を超過した原因をみると、「推進補給又は自動補給されたため」とするものが、海自で127品目(原因不明の13品目を除く。)のうち47品目(37.0パーセント)、空自で329品目(同じく121品目を除く。)のうち167品目(50.8パーセント)を占めており、中には、 |
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i) |
在庫統制基準の見直し時期の2か月前に前年度の当該基準に基づいて不足分を自動補給しており、当該基準の見直しの結果、基準数が減少したため、以後当該基準を超過したまま保管しているもの(空自第3航空団整備補給群補給隊のF4EJ戦闘機用ジャイロスコープ(光学照準装置)、超過数量3個(3,400万円相当))、 |
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ii) |
20個の部品が推進補給され、既に在庫が充足しているにもかかわらず、誤って、更に25個推進補給されているものなど、短期間の間に2度推進補給を実施しているものが計3件(海自第22航空群第22整備補給隊第22補給隊のSH−60J哨戒機のコネクティングリンク(ヘリコプター回転翼の角度調整部品)、超過数量30個(2,500万円相当)、ほか2件(計1,000万円相当)) |
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等の事例(海自の4部隊、空自の4部隊)がみられる。
在庫の基準を超過していることについて、海自及び空自では、「部隊の在庫の基準は、部隊の運用に支障を生じないための目安であり、各部隊の在庫の基準を一時的に上回っても、輸送コスト等を考え、直ちに他部隊に回すことはせず、必要が生じたとき回送することとしている」としているが、仮にこれを前提とするにしても、1.及び2.の状況からみると、改善の余地があるものと考えられる。
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(ウ)
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需給統制の在り方 |
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以上のような状況に対し、海自及び空自における装備品等の需給統制等の状況を調査した結果、次のような状況がみられた。 |
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i) |
海自の造修補給所については、艦船の転籍や行動の態様により、補給を受ける造修補給所が特定しないこともあり、造修補給所単位での需要の傾向が一定しないとの理由から、造修補給所ごとの在庫基準は設定されていない。このため、補給本部等は、全国5造修補給所の全体の在庫基準を物品ごとに期間在庫量として設定し、全国の在庫量、使用実績等をコンピュータにより把握・管理し、定期的に全国の調達所要量を算定して在庫不足分を調達した上、各造修補給所に配分している。 |
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ii) |
海自の整備補給隊については、各部隊ごとに物品ごとの在庫基準が設定されている。補給本部等は、物品ごとにコンピュータにより各整備補給隊における在庫基準、在庫状況等を把握・管理し、定期的に全国の調達所要量を算定して在庫不足分を調達する一方、各整備補給隊に対し、在庫基準を維持することができるよう随時配分を行っている。 |
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iii) |
空自においては、在庫量を一元的に管理する必要があるとの理由から、補給本部等において物品ごとに全国の在庫量、使用実績等をコンピュータにより把握・管理し、毎年1回、消費予測を行い、在庫不足分を調達した上で、各補給処において保管することとしている。 |
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しかし、次のとおり、補給の迅速化及び効率化並びに適切な在庫管理を図る上で、改善を図る余地があるものと認められる。 |
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1. |
調査した海自及び空自の部隊等においては、海自又は空自全体の需要量が調達所要量(空自の場合、消費予測。以下同じ。)を上回り、補給処等において在庫が全くない状況が生じた結果、前述(ア)のとおり、補給の遅延が生じているものがみられる。
一方で、在庫管理の状況をみると、調査した部隊等において、前述(イ)のとおり、在庫基準を超過して保有している物品も多数みられる。 |
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2. |
さらに、的確な在庫管理という観点からみると、海自においては、請求補給又は推進補給において物品の払出し等が行われた後、その事実が全国の物品の在庫量、使用実績等を集中管理しているコンピュータに入力されるまでに長期を要しているものが587事例(在庫の基準を超過しているか又は標準補給期間とされる期間を超えたもの)のうち5事例あり、その中には、推進補給を行ったことの入力が遅れたため、更なる推進補給が行われた事例も3事例みられる(前述(イ)2.ii)参照)。 |
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イ |
長期保管物品の転活用等の推進 |
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長期保管物品の転活用等の実施状況を調査した結果、次のような状況がみられた。 |
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1. |
海自及び空自の補給部隊等において、払出しが5年以上行われていない長期保管物品の中には、過剰物品に該当する物品があると考えられる。これらの物品についての今後の措置については、需要見込み等に基づいた検討が必要であるが、抽出した海自17補給部隊等のうち12補給部隊等、空自23補給部隊等のうち12補給部隊等において長期保管物品を保有しており、中には、5年以上払出しのない品目数が全保管品目数の39.7パーセントに当たる1万7,908品目(合計金額約18億5,000万円)に上る例(海自大湊造修補給所)もみられた。 |
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2. |
これらの24補給部隊等において、5年以上の長期保管物品1,155品目を抽出し、管理換、不用決定等の措置を行っていない理由をみると、「現用機器(現在供用中の装備品等)があり、使用の可能性があるため」とするものが、海自で512品目(理由不明の88品目を除く。)のうち358品目(69.9パーセント)、空自で505品目(同じく50品目を除く。)のうち155品目(30.7パーセント)となっている。しかし、一方で、「補給本部等からの指示待ちのため」として、部隊として保有すべき特段の理由を見出せないものが、海自で512品目のうち135品目(26.4パーセント)、空自で505品目のうち322品目(63.8パーセント)
となっている。 |
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3. |
抽出した長期保管物品1,155品目の保管期間をみると、10年以上経過しているものが、海自で338品目(保管年数不明の262品目を除く。)のうち136品目(40.2パーセント)、空自で311品目(同じく244品目を除く。)のうち175品目(56.3パーセント)みられる。
この中には、平成3年6月に現用機がなくなり使用見込みがないにもかかわらず、20年以上保管されているもの(海自第22航空群第22整備補給隊第22補給隊の航法装置試験器1個(506万円)等、保管期間が20年以上経過しているものが9品目(海自6品目、空自3品目)みられる。
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4. |
長期保管物品の中には、 |
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i) |
10年以上払出しが全くないまま保管されている部品であり、平成8年8月に現用航空機への使用の可能性がなくなった以降も保管されているもの(空自第2航空団整備補給群補給隊のF−15戦闘機のダクトアッシー(エンジン部品)7個(計2億円)。平成12年2月に他部隊等に管理換)、 |
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ii) |
現用機器の予備品であり、結果として7年間払出しがなかったとしているものの、その保管数が18個(在庫統制基準数は1個)と多いもの(空自第7航空団整備補給群補給隊のF−15戦闘機のブラケット(エンジンの排気ノズルの固定用部品)(計220万円))等、 |
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当該部隊等において不用となった物品や、保管数が過剰とみられる物品の長期保管事例がみられ、その合計金額は9億2,000万円となっている(海自3部隊、空自7部隊等)。 |
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5. |
平成10年度に部隊等が行った保管物品の調査の結果、部隊等の中には、788品目が非適用物品として把握されているが、補給本部等において、今後の使用見込み及び転活用の有無等に関する検討に長期間を要しているため、当庁調査時点において、788品目のうち302品目(38.3パーセント)を処理せずに保管しているものがみられる(海自1部隊)。
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したがって、防衛庁は、海自及び空自における補給業務の効率化等を図る観点から、次の措置を講ずる必要がある。 |
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1. |
在庫のない状態が極力生じることなく使用部隊からの請求に応じ速やかに対応できるよう、補給の迅速化を図るとともに、補給部隊における在庫状況、使用実績及び需要予測を的確に把握の上、推進補給及び自動補給の効率的な実施を図ること。
さらに、このために必要となる精度の高い需要予測等を行い、より適切な需給統制を実施するため、海自及び空自の補給本部等の運用する装備品等の在庫、使用実績等の集中管理に係るコンピュータシステムの運用につき必要な見直しを行い、その最大限の活用を図ること。
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2. |
非適用物品、過剰物品等については、今後の使用見込みについての検討を速やかに行い、他部隊等での使用見込みのあるものについては有効活用の方策を講ずる一方、そのような見込みがないものについては不用の決定の処理を行う等、転活用等を推進すること。 |